このすば カズマが冷静で少し大人な対応ができていたら。   作:如月空

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連載前から書きたかった話です。


二人のデート

 

窓から朝日が差し込み、俺は心地よい香りと柔らかさを感じて目を覚ます。

 

「………」

 

昨日は別々で眠ったはずなんだが…何故かめぐみんが俺の腕の中にいる。

俺の胸元に顔を預けて、満足そうに眠っている。

 

「……こいつマジで何してんの?」

 

夜中の内にこちらに潜り込んで来たのは間違いない。

トイレに立って、寝ぼけてこっちに入ってきた可能性もあるが…

 

「…ったく、こっちの気も知らないで…」

 

ぼそりと呟く。

…いい機会だ。たまにはこちらも反撃しないとな…

腕の中にいるめぐみんをそのまま抱きしめる。…起きたみたいだな。

 

「カ、カズマ?」

 

めぐみんを見ると、困惑した表情のまま耳まで真っ赤になっていた。うん可愛い。

慌てて離れようとするめぐみんを、俺は思いっきり抱き寄せ――

 

「――!!」「――!!」

 

過ぎたようで、互いの顔が近くなる。ヤバイ!冷静になれ!佐藤和真!お前は出来る男だ!

 

「あの、カ、カズマ…?近いですよ…?」

 

そのままめぐみんに顔を寄せていく…。

 

「ひぅ…」

 

めぐみんは顔を赤らめたまま目を瞑り、少し震える。…コレは伝説のキス待ち顔!?

俺は可笑しさと罪悪感に揺れながら――

 

「ふぇ?」

 

めぐみんの頬をつねった。

キョトンとした顔でこちらを見てくる。―やがてすべてを悟ったのか、目を輝かせた。

 

「はにほふうんへふかー!!」

 

いつのも仕返しはこれくらいにしておくか。マジで嫌われたくはないし

頬をつねっていた手を離すと、めぐみんは自分の手で頬をこねる。

 

「それは、こっちの台詞だ。…なんで俺のベッドに入ってるんだよ?」

 

「うう…それは……そう!間違えてしまっただけです!」

 

顔を赤くしながらそんなことを言ってもなぁ。

 

「昨日までこちらに寝ていたから、間違ったという事か?」

 

「う、そ、そうですよ。」

 

あからさまに挙動不審なんだが…アレか?抱き枕がないと眠れないとかいうアレか?

気持ち良さそうに抱きついていたし、昨日一昨日と俺を抱き枕にしてたから味を占めたとかか?

それとも純粋に好意からか…それなら、いいんだけどな…。

 

「ふーん?じゃあ、そういう事にしておいてやるよ。」

 

「うぐ、…カズマ意地悪ですよ…」

 

…ちょっとからかい過ぎたか?

 

「じゃ、俺は外に出てるよ。着替えるんだろ?」

 

めぐみんを放して、部屋を出る。

振り返ると…めぐみんはまだ不貞腐れているように頬を膨らませている。

 

「やりすぎたかな…」

 

俺は頭を掻きながら今日の予定を考え…

 

 

――――――――……

 

 

 

 

 

≪めぐみん視点≫

 

 

「めぐみん、今日は二人で町を回らないか?」

 

カズマが突然、そんなことを言い出す。

これはもしかして、デートのお誘いというものでしょうか?

でも、カズマに限って…そんなことはしないはず!

きっと今朝のように私をからかうつもりなんですね。そうはいきませんよ!

ここは一つ、断りましょう!!

 

「いいですけど、何処に行くんです?」

 

アレ!?どうして私は行くとか言っているんですか!?

 

「まだ、特には決めてないけど…そうだな、新しい杖でも買いに行かないか?」

 

新しい杖!?…そうだ!仕送りは続けているけど、それでも報酬は結構貯まってきている!

 

「いいですね!そうです!カズマ!どうせならカズマも買いましょう!!」

 

「ああ、そのつもりだよ。やっぱり杖があると随分制御が変わるからな。」

 

カズマも杖を…どうせなら同じデザインのものを選びたい!

 

「カズマの杖は私が選んでもいいですか!!」

 

「ああ、頼むよ。俺じゃ良し悪しがわからないからな。」

 

ふふ、楽しみです!

 

「とりあえずは朝飯食いに行こうぜ?」

 

「そうですね。私もお腹がすきました。」

 

 

 

 

ギルドでの朝食中にアクア達がやってくる。

 

「おはよー!カズマ!めぐみん!」

 

「おはようございます!カズマさん、めぐみん!」

 

「おう、おはよう。ダクネスも一緒だったか。」

 

「おはよう、カズマ、めぐみん。二人とはさっき会ったばかりだ。」

 

「おはようございます。アクアは朝から機嫌がいいですね?」

 

アクアはニコニコとした顔で

 

「昨日のキャベツの収穫すごかったじゃない!私達のパーティーがダントツで稼いだみたいよ?」

 

昨日私達が帰った後に、その話を聞いたらしい。武器を新調するから丁度いいですね。

 

「カズマ、今日のクエストはどうする?例年のことだがキャベツ狩りの後はクエストが余るらしいぞ?」

 

ダクネスがそんなことを聞いてくるが、私達の予定は既に埋まっている。

 

「悪いが今日はパスだ。めぐみんと出かける予定だからな。」

 

3人は目を丸くした後、好奇の目線を私に向けてきた。鬱陶しい!

どうせ、デートとかじゃないのでしょうから!

 

「しょ…そういうことですから、私たちは失礼しますね。」

 

3人ともニヤニヤと…あ!カズマも笑ってる! くっ…いつもの仕返しのつもりですか!

 

 

――――――――……

 

 

 

新しく杖を購入するということで、私達は杖を扱うお店にやってきた。

 

「カズマカズマ!これマナタイトの杖ですよ!コレにしましょう!!

はぁ…堪らないです!この魔力溢れるマナタイト製のこの色艶…」

 

何やら冷たい目をして、カズマは私を見ないようにして杖を手にとる。

 

「おお、結構手に馴染むもんだな…ちょっとでかすぎるが…」

 

やっぱり、遊撃のカズマが使うには大きすぎたらしい。どうせならお揃いにしたかったんですけど。

 

「威力を重視するだけなら、取り回ししやすい”ワンド”という手もありますが

カズマが扱うなら威力制御に優れる”スタッフ”タイプでしょうね。」

 

「んー、めぐみんはこれ(スタッフ)にするんだよな?」

 

「ええ、爆裂魔法にはどちらも必要ですから。」

 

カズマは暫く悩んで――

 

「よし!買うか!相棒と一緒の武器っていうのも悪くはないしな!」

 

「いいですね!そして二人で爆裂魔法を打ち込みましょう!!」

 

「付き合えねえ…とは思ったがアクア達と一緒なら可能か。

あーでもテレポートがなぁ……?…!あ、出来るじゃん!」

 

?…あ、そういえばカズマはドレインタッチが使えるんでしたね。すっかり忘れてましたよ。

 

「では、今度一緒に撃ちましょう。2発分の爆裂魔法です。きっと爽快ですよ!」

 

「あーでもなぁ、爆裂魔法ってめちゃくちゃ制御が難しいんだろ?

それに魔力もめちゃくちゃ消費するし…俺の魔力でちゃんと撃てるのか?」

 

カズマがカードを見せてくるので、それを確認すると

 

「そうですね。現状でも撃てないことはないです。

ただカズマが真剣に運用することを考えた場合は、

爆裂魔法の魔力消費軽減スキルをもっと振ったほうがいいですね。

制御がしやすくなりますし、撃った後もおそらく倒れないと思います。

ただし威力は下がってしまいますが、それでも爆発魔法よりは威力が出ると思います。」

 

ふむ、とカズマは考え込んで

 

「でも、俺とめぐみんが両方爆裂魔法を使うような状況ってあると思うか?」

 

「そうですね…普通に考えればないとは思いますけど…

でも、この間の大悪魔のような大物が現れる可能性がないとは言い切れないですよ?」

 

「確かになぁ、この前経験しちゃったしなぁ。もう二度とやり合いたくない手合いだけど。

っと、そろそろ買おうぜ?この後も行きたいところはあるしな。」

 

「そうですね。…すみません―」

 

 

――――――――……

 

 

 

 

「さて、杖も安く手に入ったし、次に行こうぜ。」

 

私達は二人ともマナタイトの杖を購入することになった。

最高額商品を2本という事で店主さんが負けてくれた。

1本100万が2本で180万に…

…ゆんゆんを連れて来ていれば、もっと安くしてもらえたかもしれない…

そんなことを考えていると、この前来た防具屋さんの前まで来ていた。

 

「ちょっと待っててくれるか?」

 

そう言ってカズマはお店に入っていく。手持ち無沙汰となった私は持っている杖を見つめて

 

「はあ…本当堪らないです…この色艶、早くコレを使って爆裂魔法を撃ってみたいです…」

 

私が杖に頬ずりをしていると

 

「こんなとこで何やってんだ?お前は。」

 

カズマが戻ってきて…い…た!

 

「…カズマ。それは?」

 

「ん?ああ、これは町にいる時用にと思ってな。どうだ…似合っているか?」

 

カズマは黒ローブに黒マントをつけた状態だった。以前私が勧めた服だ!

 

「ふあああ…に、似合ってますよ!カズマ!!やっぱり私の目に狂いはなかったんですね!」

 

言われて頬を掻きながら、照れているカズマ。本当に…カズマのこの表情が私は大好きなようだ。

 

「じゃあ、次あっちの店な。今度は一緒に来てくれるか?」

 

カズマに促されてお店に入ると、服屋さんだった。

店に入るとカズマは服を探し始める。

 

「カズマ、ここでも服を買うんですか?」

 

「ああ。…コレがいいかな?」

 

カズマが服を持って戻ってくる。アレ?これ女性用では?

 

「え・・・っと?」

 

「めぐみん、コレ着てみてくれよ。」

 

そう言ってカズマは私に服を差し出す。

 

「…カズマの服を買うのではなかったのですか?」

 

「いや、ここではめぐみんの服を買おうと思ってな。お前いつもその格好だろ?

…それにこの服なら俺の買った服とも色合い的に揃うんじゃねーか?」

 

「そ、そうですね…」

 

私は服を受け取って試着室に入る。

カズマが持ってきた服は少し大人っぽい色気があって、それでいて可愛らしいものだった。

私は黒いワンピースに着替えて、カズマに見せる。

 

「…どうですか…?」

 

自分でも子供っぽい体型だと思っている私は、不安気味にカズマに感想を聞く。

 

「…お、おお。そういうのも似合うんだな。その…可愛いぞ…」

 

うぐ!その表情もいいけど、こっちもすごいダメージが…

それに可愛いとか言ってくれるとは思っていなかった…

 

「あ、ありがとうございま…す…」

 

恥かしすぎて声を絞り出すのがやっとだった…

 

「あ、じゃあ、会計してくるよ。今日はそれ着てくれるんだろ?」

 

「せっかく買ってもらったんですからそれくらい…当然です…よ?」

 

うー、今日はカズマにペースを握られっぱなしな気がする!

でも、嬉しくて幸せで…

 

「カズマ!」

 

服屋さんを出た後、私は我慢できずにカズマの腕に抱きついてしまった。

カズマは一瞬、照れたような顔をしていたけれど、

 

「じゃ、町を回ろうぜ!」

 

そう言ってカズマは私の手を握ってくれた

 

 

 

 

 

私達は色んなところを巡り歩く。

いつもは行かない、喫茶店で昼食を取ったり

劇場に行って演目を鑑賞したり、露店を回って一緒に遊んだり…

あれ?これ完全にデートなのでは?

 

そして本日の締めはやはり―――

 

 

 

「ばっくれつ!ばっくれつ!らんらんらーん♪

ばっくれつ!ばっくれつ!らんらんらーん♪」

 

カズマのテレポートでいつもの湖畔に来ていた私達は目標を探しながら暢気に歌を歌っている。

 

「ばっくれつ!…お?アレなんかどうだ?」

 

カズマが指差したほうを見ると、そこそこの大きさの岩塊があった。

 

「いいですねー!今日はあれを消し飛ばしましょう!」

 

私は目標を定めて詠唱に入る…

 

「『エクスプロージョン!!』」

 

「おっ、今日のは良い感じだな。爆裂の衝撃波が骨身に浸透するみたくビリビリ来る。ナイス爆裂!」

 

「ナイス爆裂!ふふっ、やはりカズマは爆裂道を理解していますね。その内二人で揃って撃ってみたいですよ。」

 

「まぁ、機会があればな。さて帰るぞ。」

 

カズマが私を背負ってテレポートを…唱えない

 

「なぁ、めぐみん…その、お前に言っておきたいことがあるんだ。」

 

なんだろう?背負われているのでカズマの表情が見えない。

 

「でも、その前に聞いておきたい…その、この先何があっても俺達は相棒だよな?」

 

「そんなのは当たり前じゃないですか…あの、カズマは何が言いたいのですか?」

 

そうか、と言ってカズマは大きく深呼吸をしている。

その様子に私もドキドキしてくる。

 

「めぐみん、俺はお前のことが好きだ!」

 




というわけでかずめぐ回でした。
カズマさんの衣装は義賊の服装に似た感じで
マフラーの変わりにマントをつけています。
めぐみんの黒ワンピはweb版の後半でめぐみんが持っていた服です。

次回からは少し遅くなると思います。

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