このすば カズマが冷静で少し大人な対応ができていたら。   作:如月空

15 / 74
お休みだったので何時もよりはやめの投稿です。


変わらない日常へ

≪めぐみん視点≫

 

 

「…ん……ふわぁ……。」

 

まだ、眠い……体のだるさを感じながら、私は隣で寝ているはずの愛しい人に手を伸ばす。

いつもどおりに抱きつくとすると、ピタりと肌の感触を感じた。

 

「…ぇ…?」

 

いやいやいや、流石にそんなはずは…

私は恐る恐る目を開ける…。視界に飛び込んできたのは、大好きな人の顔。

 

「――!」

 

私の大好きな人はいつものジャージとかいう服を着ておらず、毛布からはみ出ていた肩が露出されている。

先程から違和感があった毛布の感触に、私はまさかと思いつつ自分の体を手で触り確かめる。

―――えっと…パジャマはどこでしょう?というよりこれは…下着もない?

カズマが寝ぼけてスティールでもしたんでしょうか?そう思いながらも昨日の記憶が少しずつ蘇り…まさか…と思って、毛布を少し開く――

 

「――!―――!!?」

 

――毛布の中が肌色一色だった。

私は必死に昨日のことを思い出す。

確か昨日は、朝からカズマにからかわれ続けて…

私が不貞腐れていると一緒に出かけようと誘われて…

一緒に買い物して、お揃いの杖を買って…私は服をプレゼントされて…

 

「カズマ…」

 

思い出すと嬉しくなってくる。私は愛しい人の顔を見たまま、昨日の出来事を振り返り続ける。

その後は、普段行かないようなお店でお昼を食べて、

劇場にいったり…露店を回って一緒に遊んで…

後でカズマからデートのつもりだったと言われて、それがすごく嬉しかったのを覚えている。

それから、爆裂散歩に行って……そう!カズマから告白されたのだ!

 

「えへへ……」

 

顔が緩んでいくのが自分でもわかる…今は落ち着こう!

その後は…確か、私がすぐに返事をしないことに腹を立てたらしいカズマと喧嘩して、

…カズマ大人気ないですよ…ムキになった私も私でしょうけど…

えっと、それからゆんゆん達とギルドで合流して楽しくお喋りをして

お風呂に行って、部屋に戻った…

正直ここからの記憶が曖昧だ…すごく夢見心地だったのは覚えている。

 

「えっと…」

 

夢と現実が混ざっている気がするけど…昨日はカズマからの告白を受けてから

ずっと、ふわふわしていて舞い上がっていたと思う。

言わなきゃと思って、私も大好きですとカズマに伝えたはず…。

…その後、私は何かとんでもないことを口走っていた気がする…

この状態になったのは、多分私の所為だと思う。だってカズマはヘタレなんですから…

 

「そろそろ、起きたほうが良さそうですね…」

 

こんな格好をしていたら、カズマにそのまま襲われてしまう…

私はこっそりとベッドを抜け出して、体に痺れを感じた。

 

「あ……!?」

 

思い出してしまった…全部…。

と、とりあえず、着替えてしまわないと…本当に朝からカズマの相手をすることになりそうです!

自分のベッドの上にある荷物から代えの下着を取り出して着替えようとすると――

 

「ふああ、あーおはよう。めぐみ…ん!?」

 

パンツを穿こうと片足をあげたタイミングでカズマが目を覚まして、そのまま目が合ってしまった。

 

「お、おおお…!」

 

カズマが食い入るように、こちらを見てくる…

 

「ちょ!そっち向いててくださいよ!!」

 

「わわ!ご、ごめん!」

 

カズマが慌てて反対方向に体を向けたので、私は安堵のため息を付いた…

 

「はあ…なんでカズマはこうもタイミング悪く起きてくるんでしょうね…」

 

カズマのステータスは異常なほど幸運値が高かった。

多分、今回もその幸運値のお陰で目を覚ましたのかもしれない。

 

「…着替え終わるまで、こっち見ないでくださいよ?」

 

「あ、ああわかった。…ところでめぐみん?なんか俺裸なんだけど…めぐみん俺に何かした?」

 

「……この男は!…昨日私にあれだけのことをしておいて!!」

 

「ええ!?アレ夢じゃなかったのかよ!?俺大分恥かしいことを言った覚えがあるぞ!!」

 

「夢じゃないです!!というか、こっち見ないでって言ったでしょうが!!!」

 

私達が朝から騒いでいると、壁がドン!!と鳴って

 

「うるせえぞ!!しばかれてえのか!!?」

 

「「す、すみません!!」」

 

お隣さんに怒られてしまった。

 

「えっと、めぐみん…昨日のことは本当に全部、現実なんだよな?」

 

「…そうですよ。…ちゃんと責任とって貰いますからね。」

 

「え…?あ、ああ!」

 

カズマはそう言って顔を俯かせる。

 

「…あの、もしかして後悔してますか?」

 

不安になった私はカズマに聞いてしまう…

 

「い、いや!違うぞ!?…後悔とかじゃなくて…

その、俺まだ16だし結婚とかそういうのが全然想像つかなくて…」

 

これはカズマらしいとは思う。

 

「後…あいつらにはどうする?言うか?」

 

カズマはこちらを見ながら聞いてくる。…さて、そこはどうしよう。

 

「私達は元々恋人同士って思われていたわけですし…言っても関係が崩れるとは思いませんが…」

 

実際冷やかされるくらいだろう、確かに恥かしいけどそこはオトナの余裕を見せるべきだ!

 

「アクアとか絶対冷やかしてくるぞ?流石に恥かしいんだが…」

 

「いいじゃないですか!逆に見せ付けるくらい堂々とするべきです!!」

 

そう言って、私は胸を張る。

 

「お、おう…なんか、めぐみんは余裕そうだな…」

 

そんなことはない。実際今はカズマの顔を見るのも本当は恥かしい。

 

「もう!早く用意して出かけましょう。」

 

と、着替えを続けようとすると気が付いた。私は今裸だった。

 

「って、そっち向いてって言ったじゃないですかーー!!!!」

 

堪らず叫んでしまった。…ガン!!!とドアが叩かれて

 

「うるせえって、言ってるだろうが!!!」

 

「す、すみませーーん!!!」

 

また、怒られてしまった。そろそろ宿を変えたほうがいいかもしれない…

 

 

―――――――…

 

 

 

 

 

≪カズマ視点≫

 

 

「そういえば、カズマは聞いているか?何でもキャベツの売れ行きが良すぎてあっという間に完売したらしいぞ?」

 

ギルドで朝食を済ませて談笑していると、ダクネスが突然話を振ってきた。

 

「いや?初耳だが…」

 

「ホント!楽しみよねー!いくら貰えるのかしら!!」

 

アクアはキラキラと目を輝かせている……こいつ女神じゃなかったか?

 

「あ、あのー、報酬は5人で等分するんですよね?」

 

ゆんゆんが不安げに聞いてくる。それにはめぐみんが答える。

 

「当然じゃないですか?みんな、カズマの指揮で動いていたんですから。ゆんゆんは何が不満なんです?」

 

めぐみんって、ゆんゆんに当たりが強い気がする…のは気のせいじゃねえよな。昔からの友達ならこんなもんか?

 

「その…カズマさんが一番稼いでいたのに、何か申し訳なくて…」

 

ゆんゆんが実にらしいことを言う。この子、将来絶対悪い男に騙されそうだ。

 

「ゆんゆん?カズマさんのことなんか、態々気にしなくてもいいのよ?」

 

いや、気にしなくていいというのには同意なんだが…もうちょっと言い方ないのかよ!アホ女神!

 

「アクアの言う通りですよ。カズマの事など、気にする必要ありません!」

 

めぐみんまで、辛辣なことを言い始める。

 

「う、うん。それはわかったけど…その今の二人の状態は気になるんだけど…」

 

俺達の距離が普段より近い事に気づいたゆんゆんが、ジト目でめぐみんを見る。

 

「私たちのことも、態々気にする必要はありません!」

 

「えー……。」

 

ゆんゆんは不満げな声を漏らした。

 

「まあ、アンタ達は何時も通りかもしれないけど…」

 

珍しくアクアが言い淀む。それを不思議に思ったダクネスが

 

「ん…、アクア、何かあったのか?」

 

「…えっとね?昨日の夜にカズマ達と別れた後、少し飲み足りなかったから酒場に来てたのよ。

そこでね、噂で聞いたんだけどね…カズマが小さい子に悪戯していたっていう話を聞いたのよ。」

 

「「はぁ!?」」

 

驚きのあまりに、俺とめぐみんは同時に声を上げる。

 

「多分、その小さい子と間違われたのがめぐみんだと思うの!

だから二人とも少し自重した方がいいんじゃないかしら?」

 

アクアから自重などという言葉が出てきたのも驚いたが…

 

「ああ、あの時ですね。」

 

何かを思い出したらしいめぐみんに

 

「あの時ってなんだよ。」

 

「私と喧嘩してた時ですよ。正確にはその前でしょうか。

あの時のカズマは中々にゲスかったですからね。勘違いされても仕方ないかと。」

 

涼しい顔で俺を非難しやがる…今もテーブルの下で手を握っているクセに

 

「たくっ!どこのどいつだよ!俺の悪評広めている馬鹿は!!」

 

「あ、あの…喧嘩が原因なのはわかりましたけど、二人は自重する気はないんですか?」

 

「カズマがセクハラを控えればいいだけだと思いますよ。」

 

めぐみんも人の事いえないと思うんだが

 

「あの?めぐみんもだよ?ベタベタしながらカズマさんをよくからかっているじゃない」

 

「別にいいじゃないですか!ご存知の通り私とカズマは相棒なんですから!それに私達の新しい武器は見たでしょう?」

 

「う、うん!めぐみんは兎も角、カズマさんまでマナタイトの杖を使うとは思ってなかったけど。

カズマさんの戦闘スタイルなら使うとしてもワンドだと思ってたから…」

 

ゆんゆんの指摘は尤もだ。俺も実際悩んだしな。

…めぐみんめ上手く話題を摩り替えたな。

だけどこれ以上このさっきの話題を続けるのはよろしくない。

 

「そうだな。だけど、前衛は基本的にダクネス一人で十分だし、

俺も後ろから見ていられるから、指示も出しやすいっていうのもあるんだ。」

 

「う…は…そ、そうだぞ!ゆんゆん!なんなら私は全ての敵を請け負っても一向にかまわん!

…はあはあ…考えただけで武者震いが…んぅ…!!」

 

何でいきなり変態のスイッチが入るんですかね…

コレさえなければ、ダクネスはまじめで付き合いやすいんだがな…

 

「皆さん!!キャベツ販売の集計が終わりました!お呼びしますので一人ずつ取りに来てください!」

 

「あら?集計が終わったらしいわね!」

 

「じゃあ、のんびり待っていようぜ。」

 

 

――――…

 

 

 

キャベツ報酬の支払いが順調に進み、後はアクアを残すだけどなった。

 

「あ、アクアさん…どうぞー」

 

「よーし!じゃあ行ってくるわね!今回かなり頑張ったんだから!期待していなさいよね!!」

 

アクアが自信満々で立ち上がる。言うだけあって当日はかなりの量を納品していたのを俺も覚えている。

 

「おう!お前が戻ったら分配するからな!自分が稼いでいるからって文句いうなよ?」

 

「言うわけないでしょ?カズマアンタ、私を何だと思っているのよ!」

 

金に目の色変える、俗な女神かな?

 

「アンタ今、失礼なこと考えたでしょ?」

 

「…考えてないよ。そんなことより早く行けよ。ルナさん待ってるぞ?」

 

アクアはジト目を俺に送ってから、嬉しそうに報酬を取りに行った。

 

「アクア、嬉しそうですね。結構頑張っていましたしすごい金額になるんじゃないですか?」

 

「そうだな。私が知る限りだと100個以上は納品していたぞ。」

 

「アクアさんは、本当に頑張っていましたから…楽しみですね!」

 

この分だとアクアも100万エリス以上は稼いでいそうだな。

キャベツの収穫クエストなんて馬鹿らしいと最初は思ったがものだが

経験値も報酬も美味いとなるとかなり割のいいクエストだったんだな。

俺のレベルも一気に11になったし、多少身体能力が強化されて魔力も大分伸びた。

 

「あーそうだ、めぐみん。魔力消費減少スキルで制御しやすくなるって言ってたけど

アレって、一度に扱う魔力量が減るからという解釈でいいんだよな。」

 

「ええ、そうですよ。ちゃんと理解してもらっていてカズマは教え甲斐がありますよ!」

 

「そりゃーお前の教え方が解かり易かったからな。また教えてくれよな!」

 

めぐみんと二人で盛り上がっていたら

 

「ん…?アクアは何故、こんなに時間掛かっているのだ?」

 

ダクネスに言われて気が付く、確かに時間掛かりすぎじゃないか?

 

「そういえば、遅いですね。受け取るだけでここまで時間かかるなんて。」

 

アクアのほうを見ると何やら、揉めているような…どういうことだ?

 

「あ、アクアさんが戻ってきますよ。」

 

…アクアが暗い顔で俯いたまま戻ってきた……そして無言で座る。

俺は恐る恐るアクアに話しかける。

 

「あー、えーっと?アクア?何かあったのか?」

 

どうも悪い予感がする。

 

「うわああああ!!」

 

突然アクアがテーブルに突っ伏し泣き出す…周りを見ると何とかしろと目で訴えてくる。

俺にそんなこと求められても…しょうがねえな…

 

「アクアー?どうしたんだ?泣いてたらわからないんだが?」

 

出来るだけ優しく声をかけると、アクアは少し落ち着いて

 

「私、今回…すごく頑張ったのよ…」

 

「ああ、うん。ちゃんと指示も聞いてくれたし、怪我人も治療してたよな。」

 

俺が褒めるようにいうとアクアは何とか泣き止んで

 

「…私、いっぱい納品したんだけどね…なんかね。レタスばかりだったって言われたの。」

 

「レタス?」

 

俺はめぐみんの方を見る。

 

「えっと、レタスは換金率が低いですね…キャベツの1割程度です。」

 

「なんでレタスが混ざってたんだ?」

 

魔剣の男の件といい今回といい…なんつーか、こいつ不憫だな。

 

「あ、アクア。大丈夫ですよ?少しぐらい少なくても誰も文句なんかいいませんから。」

 

めぐみんも同じように思ったのか、アクアをフォローしている。

 

「うむ、報酬など些細なことだ。アクアはアレだけ頑張っていたではないか。」

 

「そうですよ!アクアさん!!私たちはお友達なんですから!!」

 

めぐみんに追随してフォローする二人

 

「それで?結局いくらだったんだ?俺、今回結構稼げているから少なくたって問題ないぞ?」

 

俺がそう言うと、アクアはルナさんから受け取った布袋をテーブルの上に置く。

 

「…20万エリスだったの…ううん、ホントは17万エリスで。おまけして貰っちゃったの…」

 

思った以上に少なかった。おまけして貰ったのか、確かに怪我人の治療に奔走してたから当然といえば当然か。

 

「じゃ、アクアの分も混ぜるぞ。皆も出してくれ。」

 

俺が布袋を置くと3人も置く

 

「というか、カズマ。その袋の膨らみは…いくら入っているんです?」

 

「ん?250万弱だけど?」

 

「「「「にひゃっ!!?」」」」

 

多分、これは俺の幸運値の高さのお陰だろう。

俺の捕まえたキャベツはどれもこれも高値が付いたらしいからな。

俺は固まっている4人を無視して金を数える…500万をちょっと割るくらいか。

 

「お、喜べみんな!500万だぞ!じゃ一人100万な!」

 

俺はそれぞれの布袋に100万エリスずつ入れていく。

 

「カズマ…500に少し足りてないじゃないですか…」

 

小声でめぐみんがそう言い、布袋を受け取る。少しは格好つけさせろっての!

 

まだ、呆然としていたゆんゆんとダクネスにも袋を渡して

 

「…カズマ、本当にいいの?」

 

ベソ掻きながら言われてもな…

 

「今までだって報酬はちゃんと分けていただろ?いいから受け取れよ!」

 

アクア涙を浮かべたまま、

 

「カズマ…ありがとね。」

 

屈託のない笑顔を向けてきた。

 

「あ、ああ!」

 

やべ!今のかなりドキっとしたぞ!

 

「むう」

 

隣から不機嫌な声が聞こえて我に帰る。

 

「あー、今日はこの後どうする?」

 

慌てて話題を変えると

 

「あ、でしたら昨日の話に出ていた、魔法具店に行ってみませんか?」

 

「おや、ゆんゆん。もう場所を調べてきたんですか?」

 

「うん!昨日ね。アクアさんが酒場に行って暇だったから散歩してたんだけど、その時に見つけたの!」

 

ゆんゆんみたいな女の子が、夜の一人歩きって危なくないか?いや強いけどさ。

 

「ごめんね!ゆんゆん、今度は私も散歩に付き合うからね!」

 

アクアも心配に思ったのか慌てているみたいだ。

 

「じゃあ、見に行ってみるか?」

 

「そうですね。いきましょうか。」

 

「せっかく、ゆんゆんが見つけてくれたんだものね。」

 

「ふむ…クエストに出られないのは残念だが、パーティーの意向なら仕方ないな。

ということでカズマ…後でこの前の魔法を――!」

 

「断る!」

 

「…はぅ…言い終わる前に即断とは、中々のやり手だな!!」

 

意味わかんねーよ。

 

変態を無視して、ウィズ魔法具店と言うお店に向かうことになった。

 




というわけで、次回はみんな大好き貧乏店主さんです。
お揃いのアクセサリーどうしようかな?このお店では買いたくないんだけど…

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。