このすば カズマが冷静で少し大人な対応ができていたら。   作:如月空

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異世界での目覚め

目が覚めると、青い空が見える。

さっきまでのことは夢だったのだろうか?

そう思い、起き上がって辺りを見回す。

目の前には綺麗な川が流れている。

 

 

「…ここは?…異世界なのか…!?」

 

―――突然敵意のようなものを感じ取り、振り返る。

 

俺は立ち上がり…敵意の気配を感じたほうに目線を送ると、何かが慌てて逃げていくように感じた。

 

「『クリエイトウォーター』」

 

スキルの発動確認をしつつ、落ち着くためにその水を飲む。

 

先程の敵意のようなものは、敵感知スキルのおかげだろうか?

 

俺は周辺を確認して、何もないことを確認すると、改めて街の中へ向かう。

 

道行く年配のお姉さんに冒険者ギルドの場所を聞き、ギルドに向かっている。

 

「おー、エルフだ!あれはドワーフか?あの耳は獣人かな?如何にも異世界って感じでいいなぁ」

 

そんなことを呟きながら歩いていると目的の場所についた。

 

「おお!ここが冒険者ギルドか、如何にもって感じの建物だな!」

 

俺は意気揚々と扉を開けて、建物の中に入っていく。

 

 

―――……

 

 

 

「いらっしゃいませー。お食事でしたら空いている席へどうぞー。」

 

いかつい、荒くれ者ばかりがいるのかと思っていたら、綺麗なウェイトレスのお姉さんが愛想よく出迎えてくれた。

 

「…えっと、冒険者になりたくて、ここに来たんですけど…?」

 

「あ、はい。では、あちらのカウンターに並んでください。」

 

お姉さんに案内された俺は、受付カウンターの列に並んでいる。

周りにいる人達は屈強な感じがして、場違い感がすごい。

 

「はい、次の方どうぞー。今日はどうされましたか?」

 

受付の女の人はおっとりとした感じの美人で、

ウェーブの掛かった髪と巨乳が大人の女性という雰囲気をかもし出していた。

 

「えっと、冒険者になりたいんですが、田舎から出てきたばかりで何もわからなくて……」

 

田舎から来たとか遠い外国から来たとか言っておけば、受付が勝手に色々教えてくれる。

 

「そうですか。えっと、では登録手数料が掛かりますが大丈夫ですか?」

 

後は受付の人の言う事に従っていけば……。

 

「……え?登録手数料?」

 

「はい、登録料は1000エリスになりますけど、よろしいですか?」

 

困った、金なんてないぞ。まさか日本円は使えないよな?

 

「えっと、自分の国のお金しか持ってなくて……これ、使えます?」

 

そう言って、自分の財布の中身を見せるが

 

「…えっと、申し訳ございません。こちらを使うことはできません。」

 

「……そ、そうですか…あの、何か仕事を紹介して頂くわけには?」

 

最初から躓き、絶望しつつもダメ押しで聞いてみる。

 

「申し訳ございません、斡旋できるのは冒険者としての仕事くらいで…」

 

最後の希望も打ち砕かれた。

 

「……わかりました、出直してきます……」

 

俺は絶望しながらギルドを後にした……

 

 

―――――……

 

 

 

ギルドを出てから1時間ほど経過していた。

俺は今、仕事を募集している所がないか探している。

このままでは食事すらできない。商店街などをあたりバイト先を探してみたが、

今はどこも募集していないらしい。

途方に暮れながら歩いていると、土木現場を見つけた。

辺りを見回すと、忙しそうに働いている人たちがいる。

 

「きつそうな仕事だな……でも、雇ってもらえるのなら最悪ここでもいいか……」

 

このままでは最悪餓死もありえる。

暫く見ていると、指示を出している人を見つけた。

俺は意を決して、その人の側に行き――…

 

「あのぉ、すみません。」

 

「なんだ?今、忙しいんだが?」

 

俺の呼びかけに、やや不機嫌そうに返してくる。

俺は相手の態度にびびりながも

 

「…あの、短期でもいいので、雇ってもらえないでしょうか?」

 

俺の言葉に、その人から不機嫌さが消えてゆき

 

「おー、なんだ!仕事を探していたのか!

今日は丁度、急ぎの仕事が入ってきてな、よし!臨時で雇ってやろう!」

 

「本当ですか!!ありがとうございます!!」

 

助かった、なんとか路頭に迷うことはなさそうだ。

 

「俺は、ここを仕切っているロウという。まぁ親方とでも呼んでくれ!」

 

いい人そうだなー、最初は機嫌悪かっただけか。

 

「はい、親方!俺はカズマっていいます。よろしくお願いします!」

 

そう言って、俺は頭を下げる。

 

「おー、カズマよろしくな!早速だが採掘作業を頼む。道具は現場にあるから自由に使え!」

 

親方に促され、採掘作業を始める―――……

 

「……きっつ…」

 

俺は始めてから30分もただずに、そう思ってしまった。

 

「よく…考えたら……引き篭もりだった…俺には…向かない仕事だよな…」

 

息も絶え絶えでそんな愚痴を口走る…

というか、そもそも俺に向く仕事ってなんだ?

正直、モンスターと戦えるのかも疑問になってきたぞ……

せっかく、女神から特典をもらったというのに、何も活かせないのかよ……

 

「…ん?……特典?」

 

思わず、俺は作業の手を止める。

そういえば、先程スキルは発動できていた。

俺の特典は、最初からあらゆるスキルが使えることだ。

そして、俺は支援魔法や身体強化魔法が使えることに気がつく。

 

「『パワード!』」

 

俺が魔法を唱えると、体が軽くなったような気がした。

作業に戻ると、先程よりあからさまに作業効率が上がっている。

更に俺は身体強化魔法も唱える。

 

「!カズマ!!支援魔法が使えるのか!!」

 

俺の様子を見に来たらしい親方が驚きの声をあげる。

 

「え、ええ、俺一応冒険者を目指してますので……」

 

「そうだったのか……ん?ならなぜ冒険者として仕事を請けなかったんだ?」

 

親方の疑問に俺はバツが悪そうに頬を掻きながら

 

「…その、この国のお金を持ってなくて…登録出来なかったんです……」

 

「…成程、それで仕事を探していたわけか。確か短期でもいいと、言っていたな。

なぁ、カズマ。明日からは暇なときでいいから来てくれないか?」

 

「えーっと…?そんな中途半端でいいんですか!?」

 

流石にコレは予想外だ、俺がそんなことを思っていると

 

「ああ、実はな。今日中に終わらせなければいけない仕事があってな、

可能な限り、他の人員に支援魔法を掛けてもらいたいんだ」

 

「えっと、そんなことでいいんですか?」

 

「ああ、作業員のために支援魔法を使ってくれる冒険者なんていないからな。

だから、時間ある時だけでもいい、これからも頼めるか?」

 

「え、ええ、そういうことなら。」

 

「それでは頼む」

 

 

――――――――………

 

 

 

他の作業員に支援魔法を使いつつ、自身も作業を手伝ったことにより

夕方頃には仕事が終わっていた。

かなり、魔法を使ったはずだが疲労感はあまりない。

 

「ご苦労だったな、カズマ。とりあえず急ぎの仕事は終わったよ。

少ないがこれはお前の日当だ。」

 

支援魔法を使ったということで1万エリスを上乗せしてもらった。

数時間の日当で15000円だと思えば破格だろう。

 

「ありがとうございます!本当に助かりました!!」

 

「いや、助かったのはこちらもだ。また時間のある時に来てくれ。」

 

俺は何度もお礼をいい、その場から立ち去った

とりあえず、腹が減った、まずは飯だ・・・・・・

ギルドでも食えたよな?とにかく向かおう。

俺は心地よい疲労感を味わいながらギルドに向けて歩き出す。

 

「…昨日まで引き篭もってた奴が、土木作業とかよくやれたもんだ…」

 

俺は自嘲気味に呟く。

思えば引き篭もった理由は幼馴染の件だが

ただ単に、それを理由にして甘えていただけだったんだなと自分で思ってしまう。

 

そんなことを考えながら歩いているとギルドについた。

 

 

「いらっしゃいませー。お食事でしたら空いている席へどうぞー。」

 

先に食事を済ませるためにカウンター席に座る。

鳥のから揚げ定食を頼み、喧騒を眺める。

騒ぐ冒険者たちを見ながら、自分も混ざりたいと思ってしまう。

俺も仲間を集めて、こんな風に楽しくやりたい。

 

「お待たせしました」

 

ウェイトレスさんから食事を受け取る。

 

「…美味いな、異世界の飯ってまずいっていうイメージがあったんだが・・・」

 

鳥のから揚げがかなりジューシィーで美味い!味がわからなかったから割高なのも選んだのだが……格安の蛙のから揚げというのがあった、それも美味いのかもしれない・・・

明日の朝食で試しに頼んでみよう。夕食に満足した俺は会計を済ませ、登録のカウンターへ向かう。

今朝会ったお姉さんがまだいたので、俺はそこに並んだ。

 

「はい、次の方どうぞー・・・あっ」

 

覚えていてくれたようだ

 

「戻ってきましたよ。登録料持ってきました。」

 

そう言って1000エリスを払う

お姉さんはそれを受け取り――

 

「はい、それではこちらのカードに触れてください。

それで貴方の潜在能力がわかりますので潜在能力に応じてなりたい職業を選んでくださいね。

選んだ職業によって、経験を積む事により様々な職業専用スキルを習得できる様になりますので、その辺りも踏まえて職業を選んでください」

 

おっと、早速きたな。

ここで俺の凄まじい潜在能力が発揮されて、ギルド内が騒ぎになったりする訳だ。俺は内心緊張しながら、カードに触れた。

 

「これでいいですか?」

 

「はい、大丈夫ですよ。サトウカズマさんですね。ステータスは…身体能力は平均以上…知力は…かなり高いですね…!!!!?なんですかこの異常に高い魔力は!!

それに加えて幸運が人並外れて高い…これならアークウィザードになれますよ!!」

 

お姉さんの興奮気味な様子に若干たじろぎながら

そういえば魔力を高めるかわりに他はあまり高めることはできないとか言ってたな。まぁ魔法が強ければ何とかなるか…

 

「それでどうします?アークウィザードは是非お勧めなんですが!!」

 

未だ興奮気味なお姉さんだったが

 

「いえ、俺なりたい職業は決まっているんですよ。……冒険者でお願いします」

 

「え、冒険者ですか?最弱職と言われる冒険者ですよ?」

 

お姉さんは困惑しているようだ。

でも、冒険者でなければせっかくもらった他のスキルが使えない。

……こともないのかもしれないが、どうなんだろう?

 

「ええ、問題ありません。冒険者でお願いします」

 

俺は驚くお姉さんにはっきりと返す。

 

「……わかりました。」

 

お姉さんは俺の表情から、なにかあると思ったのだろうか?納得はしてなさそうだったが了承してくれた。

 

「それでは、カズマさん、ギルドへようこそ!今後のご活躍にギルド一同期待しております!!」

 

受付のお姉さんから洗礼を受ける。ヤバイ、ちょっと泣きそう。これはアクアに感謝だな。

 

さて、早速依頼にいくか。俺は受付のお姉さんにそのまま依頼を受注する。

 

「何かお勧めの軽いクエストはありませんか?」

 

「え?これから行くんですか?一応ありますけど…」

 

「ええ。このままだと宿代も確保できなそうなので」

 

宿代の相場は知らないが、なるべく稼げるときに稼いでおきたい。

 

「でしたら、このジャイアントトード5匹の討伐はいかがでしょうか?」

 

討伐賞金は10万エリスか、十分だな

 

「はい、お願いします」

 

俺は討伐依頼を受けることにした。

 




支援魔法ではない身体強化魔法は
紅魔の里で、ぶろっこりー達がアクアに追い掛け回されたときに使ったと予測されている魔法です。
多分神聖魔法の支援魔法ではないと思われますし、別物として今作品ではカズマさんが使えるようになっています。
追記、身体強化魔法は自己強化魔法なので他者には使えません。

また、カズマが最初からスキルを使えるのは天界でステータスキャップのリミッターを解除された、職業冒険者に登録されているからです。ちなみに専用職扱いで転職は不可能です。

追記2、カズマの専用職冒険者は使うスキルに職業補正が掛かります。
なので、初中上級魔法を使えば、アークウィザードの職業補正が掛かります。

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