このすば カズマが冷静で少し大人な対応ができていたら。   作:如月空

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今回の主人公は彼です。


御剣響夜

≪ミツルギ視点≫

 

 

「…ここは?…痛ぅ!」

 

頬に鈍痛を覚えて、一気に目が覚めた。

どうやらここは宿の一室らしい。

僕は、頬を撫でながら気を失う前の記憶を思い出す。

 

「アクア様…」

 

レベルアップを重ね、修行から戻った僕達は、アクア様を迎えに行くために王都に戻った。

しかし、アクア様は王都にいなかった。聞き込みを繰り返すとどうやら紅魔族の少女と他の町へ行ったらしいという情報を得た。

 

「アクア様は怒っていらっしゃった。顔向け出来ないからと言って、黙って修行に出たのは失敗だったか…。」

 

アクア様は僕を期待して下さっていた…それなのに僕は、

アクア様を危険な目にあわせ、挙句に大怪我をさせてしまった。

きっと、アクア様はこんな僕に失望をしてしまったのだろう…

 

「キョ、キョウヤ!目が覚めたの!?」

 

「キョウヤ平気?一晩経って顔の腫れは大分引いているみたいだけど、また痛むんじゃない?」

 

フィオとクレメアが部屋に入ってきて、僕を心配してくれる。

 

「ごめん、二人とも…迷惑をかけてしまったようだね。」

 

「迷惑なんて思ってない!」

 

「そうよ!キョウヤ!貴方は私たちの大切な仲間なんだからね!」

 

こんな僕をいつも優しく支えてくれる…二人には本当に救われてばかりだ…。

 

「ありがとう。」

 

お礼を言うと二人とも照れたように、はにかんでくれる。

 

「…僕が気を失った後にどうなったか……教えてくれるかい?」

 

僕が聞くと二人は答え辛そうに

 

「その、アクア…さんがキョウヤを殴った事を、最初はパーティーメンバーらしい人に咎められていたんだけど…」

 

「その咎めてた人は男のメンバーに背中を押されながら、ギルドの方に歩いていったわ。」

 

「他にいた紅魔族の女の子二人もこっちをチラっと見た後、黙って男の人に付いて行ったわね。」

 

アクア様はどうされたんだろう?

 

「…アクア様は?」

 

二人はバツが悪そうにしながら

 

「…キョウヤを殴り飛ばした後、真っ先に立ち去ろうとしたのがアクア…さんよ。」

 

「…え?」

 

それほどまで、僕はアクア様を怒らせてしまっていたのか!?

 

「その後は楽しそうに仲間と話しながら行ってしまったわ。」

 

!!…僕ではなく、他の人を選んでしまったのか!?

…いや、アクア様が望んだことならば…僕は……!

 

「キョ、キョウヤ!涙が…!?」

 

「だ、大丈夫!?キョウヤ…まだ傷が痛むの!?」

 

…僕が泣いている?

…そうか、僕は…アクア様のことを…

なら、僕がすべきことは…

 

「フィオ、クレメア…二人に頼みたいことがあるんだ…」

 

「な、何?キョウヤ!私に出来る事なら何でもするよ!?」

 

「わ、私も!キョウヤの為なら、何でも出来るからね!?」

 

二人はこんな僕に真剣に応えてくれる…僕は本当にいい仲間を持ったみたいだ。

僕は二人を交互にまっすぐと見つめて感謝の念を送る。

 

「二人に頼みたいのは、アクア様が今所属しているパーティーメンバーのことなんだ。」

 

僕がそう言うと二人は顔を見合わせる。

 

「えっと…キョウヤ、それは一体?」

 

フィオの言葉に答えるために

 

「アクア様は何度も言うとおり、僕にとってはかけがえのない恩人なんだ…

だから、あの人と一緒にいる人の人となりは知っておきたい。」

 

それによっては僕は…!

 

「わかったわ、キョウヤ。私たちに任せて!」

 

「キョウヤはもう少し休んでいて…いくわよフィオ!」

 

そう言って、二人は部屋を出て行った。

優秀な彼女達に任せておけば、すぐに情報は集まるだろう。

僕は再び眠りに付いた…

 

 

 

―――――――――…

 

 

 

 

 

 

 

<時間を遡って、ミツルギを殴り飛ばした後>

 

 

≪アクア視点≫

 

 

 

ギルドについた私たちは報告を済ませて食事を取っている。

 

「と、いうことだ。だからアクアを責める必要はないぞ。」

 

カズマはダクネスに経緯を説明してくれた。話を聞いたダクネスも流石に彼の事は怒ったみたい。

 

「まったく、とんでもない奴だな!アクアに迷惑を掛けたばかりか、

ギルドやこの町の冒険者達にまで迷惑を掛けるとは!!」

 

「私がアクアさんと会った時はアクアさんはお金どころか冒険者カードすら持ってませんでしたからね…それなのに、王都の危険なクエストに連れ回していたらしいですよ!!」

 

でも、そのお陰でゆんゆんに会えたんだけどね…私は親友を慈しむ目で見る。

 

「でも、本当…あの時ゆんゆんに会えてなかったらと思うと、恐怖が込み上げてくるわ…

本当にありがとうね、ゆんゆん…。貴方は私の最高の友達よ!」

 

私がそう言うとゆんゆんは恥かしそうに頬を染める。本当に可愛いわね、何か妹でも出来た気分ね。

 

「ですが、あの人はこれで引き下がってくれますかね?」

 

「どうだろうな?…アクアに殴られた理由を考えてくれていればいいけどな。」

 

引き下がってくれないと私が困るわ!…正直、顔も見たくないもの。

 

「心配しすぎだとは思うが、カズマどうだろう?今日はアクア達を送っていくというのは?」

 

う…、それは子ども扱いみたいで少し嫌なんですけど…

 

「そうだな、仲間がストーカーに狙われているっていうんじゃ、気が気じゃねーからな!」

 

「では、アクアを送ってから帰りますか。」

 

カズマとめぐみんが、ダクネスの提案に乗ってくれる。

ちょっと、恥ずかしいけど…こうして皆に心配されるというは悪い気がしないわね。

 

「じゃあ、アクアさん!帰りましょう、私たちの部屋に!」

 

ゆんゆんが私の手を引いてくれる。

 

「みんな!」

 

私の言葉で皆が振り返る。

 

「ありがとね!」

 

 

 

―――――――――……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪ミツルギ視点≫

 

 

調べを終えたフィオとクレメアが部屋に戻り、僕に彼らの話を教えてくれた。

 

「くっ!なんて男なんだ!!」

 

二人から話を聞くと、男はパーティーのリーダーで名前はサトウカズマ…多分、僕と同じ日本人だろう。二人の話を聞くとその男は悪評が目立ち、とてもアクア様を任せられる人間ではない!

 

「この時間ならギルドにいると思うけど…どうするのよ?キョウヤ…?」

 

「彼らはよくクエストに行くらしいから、早く行かないと会えなくなっちゃうわよ?」

 

「わかった!直ぐに向かおう!!」

 

僕らは彼らが待つギルドに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「サトウカズマ!!僕と勝負しろ!!」

 

ギルドに入ると一際目立つ集団の中に彼は居た。

 

「お断りします。」

 

「な!?」

 

彼はこちらに一瞥してから、仲間の方を向いた。

 

「アクア、ギルド内では暴れないでくださいよ?」

 

「解かっているわよ…で?アンタ…何しに来たのよ?」

 

冷たい言葉でアクア様に問いかけられ、自分の中の気持ちが沈んでいくのが解かる…

それでも―――

 

「アクア様、僕はこの男の悪評を聞き及んでいます!年端もいかない少女を連れまわし!

挙句に幼い少女に悪戯をしているそうです!又、女性を粘液まみれにして愉しむという

特殊な性癖を持っていると聞きました!!更にアクセル有数の鬼畜男とも!!」

 

「「「あー…」」」

 

僕の言う事にアクア様達は納得したようで、僕は安堵する…。そして彼は頭を抱えている。

しかし、知っているのなら…何故一緒に行動を?…まさか!!脅されているのでは!?

 

「おい!カツラギとか言ったか?どこでそんな話を聞いてきたんだ?てか広めている奴を教えろ!制裁してくるから!」

 

「僕の名前はミツルギだ!間違えないでくれ!!」

 

「でも、まあ…ミララギの言う事は間違ってはいませんね。幼い少女という点以外は……

所でカズマ、制裁を加えに行くのなら私もお供しますよ!」

 

「いや、お前連れて行ったらそいつに爆裂魔法撃ち込むだろ?そんなことさせるわけにはいかねーよ!」

 

「いえいえ、確かに私が一発イれたいという気持ちはありますが、

カズマの方がえげつないでしょうからね…私はそれを見物しようかなと思いまして。」

 

彼と紅魔族の少女は物騒な会話を続ける…やはり、僕の見立ては間違っていないようだ!

 

「キミはアクア様に相応しくない!どうしてもアクア様と共に行動するというのなら僕と勝負をしろ!!」

 

僕が言い切ると彼は心底面倒そうに

 

「勝負ねぇ?あージャンケンでいいか?それならすぐ済むだろ?」

 

「な!?何を馬鹿なこと言っているんだ!?正々堂々決闘で勝負をするべきだ!」

 

「はっ!正々堂々ねぇ?魔剣持ちの高レベルソードマスター様が

駆け出しの職業冒険者相手に強制的に勝負をしかけておいて正々堂々?何これ笑うとこ?」

 

「うっ!」

 

「…アンタ普通の冒険者じゃないでしょ…」

 

アクア様の声は聞こえなかったが、彼の言葉を聞いて言葉を失う…レベル差、職業差、装備の差を改めてみる。

彼は杖を持っているだけだ、防具は黒いローブに黒マント…とても優れた装備に見えない…いや、しかし…!

 

「ちょっと、アンタ!キョウヤがここまで言っているんだから勝負しなさいよ!」

 

「そうよ!あんた負けるのが怖いからって、そんな事言っているんじゃないの!?」

 

フィオとクレメアが僕に追随してくれる。

それと同時に彼のパーティーメンバーから、物凄い殺気のようなものを感じた!

彼女達を見ると今にも飛び掛ってきそうなほど、怒気を含んでいる…

 

「カズマ、そろそろ爆裂魔法を打ち込んでもいいですか?」

 

「やめろっての!」

 

「親友のアクアさんを傷つけただけでなく、今も私のお友達に酷い事を言うなんて…許せない!」

 

「…あ、ゆんゆーん?落ち着こうね?私もカズマも平気だからね?うん、早く帰ってくれないかしら?」

 

「と言うわけだ、悪いがこのまま帰ってもらえないか?そろそろ私も我慢の限界だぞ?」

 

金髪の騎士が僕達に帰れと促してくる…それでも僕は引く訳にはいかない!

 

「ぼ、僕はアクア様を大切に想っている!!だから僕は引く訳にはいかないんだ!!」

 

いつの間にか、僕達の周りには人だかりが出来ていた。

 

「カズマー!どうするんだ?埒が明かねえぞ?」

 

「カズマ、決闘を受けるのであればギルド内ではやるなよ?」

 

「もちろん、私達はカズマを応援するからね!」

 

代表するように冒険者パーティーと思われる人たちが彼に声をかけた。

 

「いや、やる気ねえんだけど?」

 

しかし、彼は依然として決闘を受けてくれない。こんな軟弱な男にアクア様を守れるはずはない!

 

「いい加減にしろ!サトウカズマ!!そちらにやる気がなくても、こちらは遠慮せずに掛かるぞ!!」

 

「それがお前の言う正々堂々なのか?付き合ってられねぇよ!」

 

そう言って、彼はギルドから出て行こうとする。その姿に僕の怒りが限界を達した。

怒りに我を忘れ、言葉を失ったまま彼に切りかか――

 

「あ、カズマ、私を置いていかないでくださいよ。」

 

「!!?」

 

「っめぐみん!!」

 

――――――僕の剣は既の所で、紅魔族の少女を庇った彼に躱される。

 

「…てめえ!!」

 

彼からあからさまな敵意と怒りを向けられる。

 

「う…す、すまない!巻き込みそうになってしまった…」

 

「俺と勝負したいんだったよな?決闘で…ルールはどうするんだ?」

 

彼は決闘を受け入れてくれたようだが、彼の言葉に悪寒が走る。

 

「ぼ、僕はこの魔剣だけで戦う。君は冒険者なのだからどんなスキルを使おうと自由だ!

決着については、気絶もしくは降参させれば勝ちになる。」

 

これでレベル差は埋まるだろう。

 

「ほう?それで決まりだな?」

 

「ああ…」

 

「おい、カズマ!やるならギルドの前の広場に移動しろ!俺達で人払いしてくるから!」

 

先程、こちらに声をかけた冒険者達がギルドの外に出て行く。

 

「…ミツルギだっけか?外でやるのに異論はねーよな?」

 

「勿論だ。」

 

僕が応えると彼は側にいる少女に声をかける。

 

「…めぐみん、平気か?」

 

「え、ええ。ちょっと吃驚しましたけど…その、カズマ…やり過ぎないでくださいね?」

 

「…善処するよ。」

 

そう言って彼は僕を睨んだ。彼女には悪いことをしてしまった…

 

「準備できたぞ。」

 

 

 

 

 

 

僕とサトウカズマは広場で睨み合っている。

開始の合図はアクア様がしてくれるそうだ。そう思うと気合が入ってくる!

 

「…始めなさい!!」

 

「ふっ!」「『クリエイトアース』」

 

先手必勝で踏み込みの早いスキルを使い、一気に彼との距離を詰める!

 

「ふん!」

 

そして、得意の連撃スキルを発動させる。これで決まる!

 

「……マジかよ…!?」

 

「な!?」

 

彼は僕の連撃を躱し

 

「『ウィンドブレス!』」

 

「ぐあ!!」

 

彼の魔法で目が見えなくなる!

 

「くっ!これぐらいでは!!」

 

僕は、目の痛みを堪えて戦いに集中する。もし魔法を放ってきてもこのグラムで断ち切ってやる!

 

「スティール!」

 

「!?」

 

僕の手から重さが消える…!?ま、まさかグラムが!?

 

「漆黒の雷霆よ、我が手に集いて…」

 

「ちょ、カズマそれはまずいですって!!」

 

ようやく、目が見えてくる。

 

「……『ライトニング』『バインド!!』」

 

気が付いたときには雷撃が目の前に迫っていた。

 

「うわあああああああああ!うぐううう!!」

 

な、何だこれは!雷に縛られている!?

 

「…はあ、降参するか?」

 

呆れたような顔をした彼が僕に降参するかと聞いてくる。冗談じゃない!

 

「ま、まだ負けたわけでは…」

 

「…それ威力は弱めたが、効果時間は長いぞ?降参するなら解いてやるぞ?」

 

ぐっ!魔剣を手にしていない今の僕に耐え切れるのか!?

 

「キョ、キョウヤ!」

 

「あ、アンタ卑怯よ!目潰し攻撃をして魔剣を盗んだ挙句、そんなわけの解からない魔法で縛り付けるなんて!」

 

「何を言っているんだ?こいつがどんなスキルを使っても良いと言ったんだぞ?卑怯などと罵られる謂れはないぞ?」

 

ダメだ、もう何を言っているのかも聞こえない…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『ハイネスヒール!』」

 

「…う、ここは?あ、アクア様!?」

 

僕は気を失っていたようだ…僕はギルド内の医務室に運び込まれたようで、部屋にはアクア様と二人っきりだ。アクア様はこんな僕のために回復魔法を使ってくれたみたいだ。

 

「アンタの負けよ!…えっと、…ミツルギ?」

 

「僕は負けたんですね…」

 

「ええ、そうよ。アンタ、カズマを舐めすぎよ。…私が信頼している人なのよ?」

 

「!!!?あ、アクア様が信頼…している…人?」

 

僕の足元がガラガラと崩れていくような感覚に襲われる…

 

「何で変な顔をしているのよ?あ、もしかして私がカズマを好きだとか勘違いしてないわよね?

アンタね…いくら私を信仰しているからって、そういう勘違いはやめてくれないかしら?

カズマのことは……嫌いじゃないけど、そういうんじゃないからね!それにカズマは彼女いるのよ?」

 

……え?

 

「サトウカズマに彼女が?」

 

「ええ、多分そうよ。ほら、貴方の攻撃に巻き込まれそうになった子がいるじゃない。あの子がそうよ。」

 

ではアクア様は…?

 

「それと、貴方が最初に言っていたカズマの悪評なんだけど、単純にその子とのイチャイチャが原因よ。」

 

「そ、そうでした…か…。」

 

僕はずっと空回っていただけなのか?

 

「おーい、アクアー。ミツラギ起きたか?」

 

サトウカズマが彼女?らしい女の子を連れては医務室に入ってきた。

 

「起きたわよ、後カズマ、ミツラギじゃなくてカツラギよ!」

 

いえ、ミツルギです…サトウカズマはさっきは正しく呼んでいた筈なのに…

 

「んなの、どっちでもいいよ。それよりそいつはお前に謝ったのか?」

 

ああ!そうだ!勝手に居なくなったことを謝らなくては…!!

 

「アクア様、あの時は申し訳ありませんでした!!相談もせず黙って出て行ってしまって…」

 

僕が謝ると紅魔族の少女が前に出てきた。

 

「謝ることはそれだけではないですよ?ミララギ…貴方はアクアにお金を一切渡さず、無一文のアクアを放置したのですから…」

 

「!?…ああ!!!!申し訳ありません!!!!」

 

…何時も通りパーティーメンバーのお金は僕が管理していたんだった!アクア様にもお金を渡した覚えはない!!

 

「本当に…本当に申し訳ありませんでしたー!!!!!!」

 

僕はアクア様に土下座をして謝る…言われてみればこれは許されることではなかった!

それでも僕は謝ることしかできない……こんな僕はアクア様を好きになる資格なんてないんじゃないか!?

 

「…もういいわよ。あーでも、クエストについて行った時のお金は欲しいんですけど…」

 

「あ、はい!とりあえず手持ちの分だけですけど…足りない分は後で銀行にいって取ってきますので!!」

 

僕が手持ちにある有り金の全てをアクア様に渡すと

 

「なあ、俺との勝負なんだけど、あれの対価はどうするんだ?とりあえず魔剣はこちらで預かっているが?」

 

そう言って、サトウはグラムを見せる。

 

「す、すまない…虫のいい話だと思うが…グラムを返してくれないか?代わりに僕に用意できるものなら何でも買うから!」

 

グラムは僕の命も当然だ…これだけは絶対に返してもらわないと…

 

「ふーん?なあ、アクア魔剣の相場っていくらくらいだよ?」

 

「そうね、それこそピンキリよ。でもグラムくらいなら数千万…いや億は堅いでしょうね。」

 

「らしいぞ?」

 

サトウは勝ち誇ったような顔で言ってくる…流石に億は出せるような金額ではない…

 

「う…、銀行に預けてある貯金全てと…手持ちのアイテム類…これを売れば合わせて合計3000万以上にはなる筈だ…」

 

「3000万ねぇ、俺達さ…皆で住む為の拠点が欲しいんだよ。勿論アクアも一緒だ。これの意味はわかるな?」

 

サトウの言葉で顔が青くなっていくのがわかる。

 

「うわぁ、流石ゲスマですね。アクアを引き合いに出すあたり、悪意を感じますよ。」

 

「ゲスマいうな、正直かなり譲歩しているだろう?迷惑料だって欲しい位なんだからさ。」

 

サトウの言うとおりだ、かなり譲歩してもらっている。本来なら魔剣を売られているだろうから。

 

「わかった、僕が用意できる金、全てを払おう。それとグラムを交換してくれないか?」

 

「で?いくら位用意できるんだ?」

 

「5000万以上にはなるはずだ…アクア様が住む拠点なら、それでも全然足りないとは思うが…」

 

「相場の半分くらいか…しょうがねえな。それで俺は勘弁してやるよ。」

 

「俺は?」

 

「さっき、私は殺されそうになりましたからね、なので私のいう事も聞いてもらいますよ?」

 

「え?あ、ああ…その、もうお金は用意できないけど、いいかい?」

 

「いえ、私はお金の事ではありませんよ、ミララギ貴方はアクセルの冒険者全員に迷惑を掛けた件がありますから、謝らないといけませんよ。それと、ギルドの職員の方にもです。貴方が仕出かした事によって職員に多大な迷惑を掛けたんですよ?」

 

「わ、わかった。」

 

こうして、僕はギルドの冒険者と職員に謝罪して、用意できるだけのお金をサトウに渡した。

するとサトウは素直にグラムを返してくれた…彼には借りが出来てしまった。

 

アクア様にはとりあえずは許してもらえた。そして僕は誓う!

…アクア様の事は絶対に諦めない。そして、僕に振り向いてもらうと!

 

 




ミツルギさん事件が終了しました。アクアはとりあえず許してくれたようです。
あれ?うちのアクアって結構女神しているのでは?よく許してくれたね。

ミツルギさんは何処までもアクアにゾッコンなようです。
フィオ、クレメア頑張れ超頑張れ!どっちがどっちか忘れたけど(酷

次回のお話で1章分が終わりです。

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