このすば カズマが冷静で少し大人な対応ができていたら。 作:如月空
いつも以上に誤字脱字やおかしな文章があるかもしれません。
何度か見直してはいるのですが…
「これで、全部だ。」
ミツルギは手持ちの消耗品なども現金に代えて、合計で約5000万エリスを俺に渡してきた。
「…貰っておいてなんだが…本当にいいのか?」
あまりに素直に渡してくるミツルギに、何か悪い気がしてきた俺はそう問いかける。
「いや、君達にも迷惑は掛けてしまったし、本当なら他の冒険者達にも謝罪だけでは済まさずに
何かを渡すべきだと思っているんだ。ただ、今はそれが出来ないから…」
こいつ、根は悪い奴じゃねえんだな。
「まあ、アクセルの冒険者にはそれとなくフォローしておいてやるよ。」
「すまない!また会おう!サトウ君!!」
ミツルギが踵を返し、二人の仲間もそれに続いた。
「また、会おうか…、その時までにその思い込みの激しい性格は直しておいてくれよな…」
俺は遠ざかるミツルギの背中に、そう呟いた。
―――――――――……
「カズマ、ウィズのお店に何か用なのですか?」
「ああ、ウィズいるかー?」
ドアベルを鳴らしながら、中に入ると
「はーい!いらっしゃいませー!」
カウンターの奥からウィズが出てきた。
「よう!ウィズ、相変わらず不健康そうだな。」
「ウィズ、こんにちわです。まだ赤字続きなんですか?」
出会いがしらの俺達の口撃に
「…そうなんですよ…最近、硬いものを食べられていなくて…」
ウィズが落ち込んでしまった。
「悪い、ウィズ…今日は頼みたいことがあってな。」
「頼み…ですか?」
「ああ、ウィズはここで店を構えているだろ?だから不動産屋に知り合いっていうか口聞き出来ないかなと思ってな。」
「不動産屋さんですか?確かに懇意にしている方は居られますが…」
俺達の会話から察しためぐみんが続く
「ウィズ、私達は拠点を手に入れたいと思っています!ですが、アクセルの物件は高くて中々手が出せないのです!」
「それで値引き交渉出来ないかと思ってな…ウィズがそういう人に口聞きを出来ないかなと考えたんだよ。」
なるほど、と言いながら納得している様子のウィズだったが
「あの、今日はそのお店はお休みなんですよ。すみません!力になれずに…」
「い、いやいいよ。急ぎって程でもないからな!だから今度時間がある時にでも紹介してくれれば…」
ウィズが萎縮して謝って来るので、俺が慌ててフォローしていると
カランっとドアベルが鳴り響いた。
「ごめんください、ウィズさんはいらっしゃいますか?」
初老の男性がお店に入ってきた。
「あ、はい!どうされましたか?」
ウィズはそのまま男性と話し始める。
うーん、今日は無理だな…明日にでも出直すか。
「めぐみん、来客みたいだし帰ろうぜ。仕事の邪魔しちゃ悪いしな。」
「そうですね。ではまたです!ウィズ!」
俺達がウィズに別れを告げようとすると
「あ、待ってください!カズマさん!この方が先程話されていた不動産屋さんですよ!」
マジか!
「あーでも…商談中じゃないのか?俺達が居ても平気なのか?」
俺がそう言うとウィズは不動産屋さんを見る。
「えっと、ウィズさん…其方の方々は?」
「お二人は、この町の冒険者です!何でも拠点を探しているとかで、私に相談に来て頂いていたんです。」
「なるほど、冒険者ですか…プリーストの方は居られますか?」
不動産屋さんが俺達に問いかけてくる。
「えっと、一応仲間にアークプリーストが居ますけど?」
「なるほど…ウィズさん、今回の件はこの方々に頼んでもよろしいですか?」
「そうですね…今回の件は私では解決できそうにないですし、カズマさん達にお任せしたいです。」
あれ?もしかして、依頼を横取りした感じになっちゃってないか?
「あ、いや!ウィズに来た依頼だろ?それを横取りするような真似はできないよ。」
ミツルギを散々非難した手前、流石にそういうのは避けたい。
「いえ、大丈夫ですよ。この件はどちらにしても私だけでは解決が出来ませんし。」
「…と言うと?」
俺の質問を投げかけると不動産屋さんが説明してくれる。
”幽霊屋敷”と呼ばれている物件がアクセルの郊外にあるらしい。
元々は貴族の別荘だったそうだが、十年以上も前に売り出されたという話だ。
そこには無害な子供の霊が住み着いているそうだ。その子は冒険譚を聞くのが好きだという。
ただ、その子が他の霊も呼び込んでしまうということで、物件の価値がどんどん下がっているらしい。その子を祓わず、満足させること。また、その子の墓を定期的に掃除してあげること。
これらの条件を呑むならば、格安でその屋敷を売ってもいいと言われた。
ちなみにウィズに頼もうとしたのは、呼び込んでしまった霊の浄化らしい。
「どうですか?それなら6000万でお譲りできますが…」
本来の相場だと3億以上らしい…破格ではある。俺はめぐみんと顔を見合わせる。
「どうする?めぐみん。」
ミツルギから貰った金もある。足が出た分は俺とめぐみんの貯金分だけでも余裕で賄える。
「うーん、そうですね…カズマのことですから、将来子供が多くなりそうですし…大きい屋敷はいいかもしれません!」
何やら問題発言しているめぐみんだが、購入には乗り気なようだ。
「カズマさん、子供が好きなんですか?」
「あ、いやうん。そうなんだよ。」
「そ、そうなんですね…」
何やら、危ない人を見る目で見られているような気がする。
クソ!これも全部俺の悪評を広めた奴のせいだ!
「どうされますか?」
「分かりました買います。あ、でも今は手元に5000万だけなので残りは後日でもいいですか?」
「ええ、構いませんよ。では屋敷の鍵をお渡ししますね。」
俺が鍵を受け取ると不動産屋さんは、アクセルの地図を出して屋敷の場所に目印をつけてくれた。
「では、こちらの地図もお持ちください。…依頼の件はくれぐれもお願いします。」
不動産屋さんはペコリとお辞儀をすると、店を出て行った。
「あーウィズ、なんか悪かったな。とりあえず今日はこれで美味いものでも食ってくれ。」
俺がウィズに1万エリスを手渡すがウィズは萎縮してしまう。
「い、いえ!とんでもないですよ!」
「いや、受け取ってくれ、これは義理通しみたいなもんだから。」
「そ、そうですか?わかりました。あのカズマさん…ありがとうございます!」
ウィズの屈託ない笑顔に見惚れていると、腕を引っ張られてしまった。
「さあ!カズマ!ギルドに戻りますよ!ウィズ!またです!!」
早口で捲くりたてる様にめぐみんはウィズに別れを告げた…
「じゃあ、またな!ウィズ!」
―――――――――……
「……本当にここですか?カズマ。」
「あ、ああ…。」
アクセルの郊外に佇む、一軒の大きな屋敷。
宿を引き払った俺達はここに越してきたのだが、その屋敷の大きさに圧倒されていた。
話では部屋数は屋敷にしてはそれ程多くはないと言っていたが俺達が住むには十分過ぎる程だった。
「…聞いていた話よりも随分立派な屋敷じゃないか。」
「うーん!悪くないわね!私達が住むのに相応しいんじゃないかしら!」
「カ、カズマさん!ほ、本当にここに住んでもいいんですか?」
「全員で住むって言っただろ?あ、それとアクアさっきの話なんだけど…」
「うん、話に出てた子は居るわね。私があの子の話し相手になればいいんでしょ?」
正直アクアは問答無用で浄化しそうだったので心配していたが
「何よ、その顔は…もしかしてアンタ、私が問答無用で浄化するとでも思ったの?」
「前例があるからな、お前は。」
勿論前例とはウィズのことである。
「あ、あれはしょうがないじゃない!!危険だと思ったんだから!!」
「あーわかったわかった!頼りにしてるよ!」
「…分かればいいのよ。で?さっきから後ろを気にしているみたいだけど…どうしたの?」
それとは別に俺が気にしていることはもう一つあった。
「あれだよ…」
「あれ?」
アクアは俺が指した方へ振り向くと
「え?なんでいるのよ?」
「知らねえよ。」
ガリガリと頭を掻きながら、俺はそいつらに近づく。
「どうしたんだよ。お前さっき、爽やかに別れを言ったばかりだろう?」
「…済まない…サトウ君。君に頼るのは筋違いだとは解かってはいるんだが…」
ミツルギが事情を話し始めた。
無一文になったミツルギたちは、心機一転する為にクエストを受けようとしたらしいのだが
ギルドからは依頼を受けさせて貰えなかったらしい。当然といえば当然のペナルティーだったが
文無しなので、飯も食えず寝場所さえ確保できないらしい。そういえば馬小屋も1000エリス取られたな。
「それで?」
「ああ、何かバイトでもして稼ごうという事になったんだ。でも、中々仕事が見つからなくて…」
ふむ、それなら親方のところを紹介してやるか。あそこは年中人手不足らしいからな。
とは言っても3人分の食い扶持と寝床となると足りねえだろうな。
「とりあえず、お前の仕事は紹介してやれるぞ?ただ、それほどもらえる訳じゃない。どうする?」
「紹介してもらえるのなら是非!!」
食い気味にミツルギは答えた。
「顔ちけえから、離れろって!」
「す、済まない…」
ミツルギが離れたことで安堵のため息が出る。
「…それで?態々俺の所に来たのはそれだけじゃないだろ?」
「あ、ああ。本当に済まないとは思うんだが、宿代だけでも貸してもらえないかと相談にきたんだ。」
本当に馬鹿正直に全部吐き出したのかこいつは…普通少し位残すだろうに…
「1万エリスで足りるか?」
そう言いながらミツルギに1万エリスを渡した。
「ああ、済まない!恩に着るよ!じゃあ、また!」
そのままミツルギが立ち去ろうとする。こいつアホなのか?
「お前、仕事紹介してもらうんじゃないのかよ!」
「あ!そ、そうだった…」
俺の言葉で申し訳無さそうに戻ってくるミツルギに
「お前、そういう風に一つのことに突っ走る癖、早く直したほうがいいぞ?」
「う、…そうだね…」
俺はミツルギを呆れた目で見た後、めぐみん達に事情を伝えようと思いめぐみんを呼ぶ。
「めぐみーん!ちょっと来てくれー!」
めぐみんを呼び出して屋敷の鍵を渡した
「ん?カズマはどこかに出かけるんですか?」
「こいつらを連れて親方のところだ、直ぐに戻るよ。」
「わかりました。でも、早めに帰ってきてくださいね?」
「わかってるよ。あ、でもちょっと食材の買出しくらいはしてきてもいいか?」
ここは郊外なので食事に出るのも少し遠い、食材やキッチン用具くらいは買って来るべきだろう。
「わかりました、では部屋の掃除をしておきますね。
その、いってらっしゃいです…カズマ。」
…!?衝撃が走った…!今俺の目にはめぐみんが新妻に見える!
「お、おう!いってくるぞ!めぐみん!」
俺がそう言うとめぐみんは笑顔を見せてくれた。
二人でそんなやり取りをしていると
「…そ、そのサトウ君?やっぱり、この子はキミの彼女なのかい?」
ミツルギが引きながら聞いてきた。
「おい!私がカズマの彼女だと何かまずいというのなら、話を聞こうじゃないか!」
めぐみんがミツルギを怒り出してしまった。仕方ないフォローを入れよう。
「めぐみんはほぼ、2個下だぞ!というかお前には関係ないだろ!ほら行くぞ!」
「あ、ああ。」
ミツルギ達を連れて、親方の元に向かった
―――――――――…
「親方ー!」
「おう!カズマか!今日は手伝ってくれるのか?」
「申し訳ない!今日は新居に引っ越したんで、立て込んでるんすよ!」
「ほう、家を買ったのか!…お?所でそっちの三人は?見かけない顔だが…」
親方は俺の連れが気になったようで、ミツルギ達を見ていた。
そして、それに応える様にミツルギは一歩前に出る。
「御剣響夜です!よろしくお願いします!こちらは僕の仲間でフィオとクレメアと言います。」
ミツルギの紹介を受けて、仲間の二人も親方に挨拶をした。
「ああ、よろしくな!それでカズマこの三人は?」
「はい、諸事情がありまして、この三人を少しの間、雇っていただけませんか?」
「「「お願いします!!」」」
ミツルギ達は親方に頭を下げながら、懇願した。
「ああ、カズマの紹介だからいいけどよ。そっちの兄ちゃんはともかく、女の子にはきつい仕事だぞ?」
「大丈夫です!私達身体能力には自信ありますから!」
「そうです!それにキョウヤだけに働かせるなんて出来ませんから!」
その言葉に、ミツルギは目を輝かせながら
「ありがとう…二人とも…三人で頑張っていこう!」
感動しているようなので現実に戻してやろう
「おい、ミツルギ…仕事中にそういうのは止めて置けよ?作業が遅れることになるからな。
後、俺の紹介なんだから、親方達に迷惑は掛けるなよ?」
「あ、ああ…済まない!勿論迷惑を掛けるつもりはない!君の顔にドロを塗りたくはないからな。」
「頼むぜ?……というわけで、親方。癖のある連中ですけど使ってやってください!」
俺にとっても恩人である親方に頼みごとをするんだ。
親方への敬意を示す為にも、ここは俺も頭を下げるべきだろう。
「よし、わかった。まあ、ここの連中も変わった奴なんてのは多い。雇ってやるぞ!」
「「「「ありがとうございます!」」」」
四人で頭を下げて親方にお礼を言った。
「さて、俺は帰るとするよ。じゃあな!がんばれよ!!」
「本当にありがとう!サトウ君!このお礼は今度するよ!!」
いや、本当に気にしなくていいんだけどな。身包み剥いでしまったことに正直、罪悪感を感じちまって協力しようと思っただけだし。
―――――――――…
ミツルギ達を送った帰り道、一通りの食材と食器、調理器具を買い揃えて、帰路に着いた。
「ふう、結構重いな…強化魔法を使っていたんだが…」
郊外に出て、屋敷に向かっていると人影が走ってくる。
千里眼で確認したら、めぐみんだった。
「お?どうしたんだ、めぐみん?」
「どうしたんだ?じゃないですよー!遅かったじゃないですか!」
「あー悪い、ちょっと買い過ぎちゃってな…」
ちょっと買いすぎたな…腕が張ってきちゃったよ…
「少し買い過ぎではないですか?あ、カズマ私も少し持ちますよ。貸してください。」
「ふう、助かるよ。めぐみん。」
めぐみんは呆れたような目で俺を見た後
「じゃあ!帰りましょうか!私達の家に!」
嬉しそうに笑顔を見せてくれた。
―――――――――…
「うん、悪くはないわね。ただ、夕食としては物足りない感じかしら。」
今夜は俺が夕食を作ってみたのだが、大層な物が作れるわけではないので
比較的簡単な卵炒飯と唐揚げにしてみたわけだが、やはり高評価は得られなかった。
「うーん、やっぱり料理スキルも覚えるべきだなぁ。」
自分の作った料理を食べながら、これからのことを考える。
自炊は出来る方がいいよな、めぐみんに作ってもらうっていう手もあるけど、毎回では申し訳ない。これが結構大変な作業だからな。昼飯は外で食うとしても朝夕は作らないといけないし…
「うーん、私は美味しいと思いますけどね。カズマ料理スキルを覚えるんですか?」
「ああ、制限なくスキルが取れるわけだし、取れるなら取っておくべきだと思うしな。」
どうせ作るのなら皆に美味いと言ってもらいたい!料理が出来る男はポイントが高いらしいしな!
「どうかしたのか?ゆんゆん。」
何やら俯いて震えているゆんゆんを見たダクネスが、ゆんゆんに話しかけていた。
「どうしたの?ゆんゆん…カズマの作ったご飯が合わなかった?」
アクア、そういうこと言うのはやめてくれ…凹むから。
「いえ、違うんです…ただ、嬉しくて…こうやって友達と夕食を囲って一緒の家で暮らせるなんて本当に夢のようで…」
ゆんゆんはうっとりとした表情を浮かべている。それを見ためぐみんがまたゆんゆんを弄り始める。
「まったく、貴方はそんなんだから里ではボッチだったんですよ!」
「ぼ、ぼっちじゃないもん!ふにふらさんとか!どどんこさんとか!私がご飯奢るって言ったら一緒にご飯食べてくれたもん!」
…マジでそこまで酷いのかゆんゆん…。俺は思わず目頭を押さえてしまった。
「大丈夫よ、ゆんゆん!今は私達が友達なんだから!ちょっと、めぐみん?私のゆんゆんを苛めないでくれる?」
私のってお前な…ゆんゆんもそうだけどアクアも依存度高いよな。もしかしてアクアはそっちの趣味なのか?
「う…別に苛めているわけではないですよ!…ところでアクアは…そっちの気あったりしますか?」
聞いちゃったよ!めぐみんの奴…
アクアは最初理解できなかったようだが、だんだんと顔が赤くなっていく。
「え?いや、違うわよ?ゆんゆんは親友で可愛い妹みたいなもんよ?
別に、めぐみんが考えているようなヨコシマな関係ではないからね!
それより!めぐみんとカズマはどうなのよ!アンタたちの方がよっぽど怪しいわよ!」
おっと、こっちにも飛び火してきたぞー。
俺とめぐみんの夜の性活の為にもなんとか話題を逸らさねば!!
「ところでアクア、除霊は何時ごろ始めるんだ?さっきから見られているような気配がすごいんだけどさ。」
「そうだな。…ん!こう、こちらからは見えないのにこれ程強力な視線を受けるというのは…はあはあ…中々に悪くはないな!」
おい、馬鹿ヤメロ。話が進まないだろ!
「それでアクア、どうするんです?私達はこれから爆裂散歩に行ってきますので、その間に終わらせてくれたら嬉しいです。」
「そうねぇ…、霊が活性化してくるのは夜半過ぎくらいからなのよね。」
つまり零時以降か、爆裂散歩中には流石に終わってくれないか。
「それで?幽霊の子供については何かわかったのか?」
依頼の件に含まれていた話なので確認は取るべきだろうな。
アクアは得意そうな顔して話し始めた。
「ふふん、調べなら付いているわ!その女の子の名前はアンナ・フィランテ・エステロイド。
ここの元の持ち主である貴族が遊び半分で手を出したメイドとの間に出来た子供みたいなの。
それでその子は、この屋敷の主である貴族に長い間、幽閉されていたそうよ。」
最低なクソ野郎だな!貴族というのはこういうものなのか!!
「…それで、アクア…その後はどうなったのだ?」
ダクネスが続きを促している。ダクネスの奴、急に表情が曇ったな。…いや、当然か。
「うん…問題のその貴族の男は元々体が弱かったらしくて、その後に病死。
アンナの母親であるメイドも行方知れず。アンナは幽閉されたまま、やがて病に伏してしまって
両親の顔も知らないままで、一人寂しく死んでしまったそうよ。」
…成程、不動産屋さんが祓わないでくれと言っていた意味がわかった気がする。
多分、その子の話を聞いて不憫に思ったんだろうな…
「可哀想です…一人寂しく死んでしまったなんて…」
ゆんゆんが顔を俯かせている。ゆんゆんも励ましてやらないとな!
「その子は冒険譚が好きなんだろ?それなら俺達で聞かせてやろうぜ!な!ゆんゆん!」
ゆんゆんは顔を上げてコクコクと頷いてくれた。そしてアクアもゆんゆんを撫でている。
「…と!そろそろ行くか、めぐみん。」
「そうですね。行きましょうか。」
「ふむ、二人が行っている間に風呂を沸かせて済ませておくか。
二人が戻ったら直ぐに入れるようにしておこう。」
「ああ、頼むよ。」
―――――――――…
爆裂散歩を終えて、屋敷に戻ってきた俺達は家の前に座り込んでいる連中を見つけた。
「…どうしたんだ?まさかクビになったわけじゃないよな!?」
「いや、そっちは上手くやれたと思うんだけどね…済まない!玄関先でいいから泊めてくれないか!?」
「「はあ!?」」
「宿どころか、馬小屋も空いてなかったのか…お前らも運がないな。」
「それで私達を頼ってきたのですか?あれ?私達が使っていた二部屋を引き上げたのは昼過ぎですよ?」
何時だったかのアクア達を思い出す。あいつら幸運値がやたら低かったんだよな…アクアなんて最低値だったし…
「最悪一部屋だけでも宿の部屋を取ろうと思っていたんだけど、空いてなかったんだ。」
「あれ?昨日お前がアクアにぶっ飛ばされたよな?どこかに泊まってたんじゃないのか?」
「…アクア様を連れ戻して直ぐに王都に行くつもりだったから、部屋を更新してなかったんだ。」
今朝のこいつのテンションを考えれば、その行動は理解出来てしまうな。
「流石に玄関先に居座られるのは迷惑ですよ。カズマ、もう面倒ですし一部屋貸してあげましょうよ。」
「しょうがねえな…あーめぐみん、あいつらにはどう言う?」
「うーん、我慢してもらう方向で行きましょう…どの道、今夜はロクに眠れなそうですし。」
ああ、そうだった。夜中にはアクアの除霊が始まるんだったな。
「と言うわけで、今夜は一部屋貸してやるよ。掃除はしてないから自分達でしろよな。」
「あ、ありがとう!サトウ君!!」
―――――――――…
「と、いうわけだ。悪いが今夜だけ我慢してもらえるか?」
「私は別にいいわよ?どうせ今夜は忙しいしね!…あ、ゆんゆんに手を出したら私の必殺技食らわせるからね!!」
「えっと、私はアクアさんとご一緒しますね。私もあの子の事も気になりますし。」
「みんながそう言うなら、私は問題ない!それに私もアクアを手伝おうと思っているからな。」
三人から反対意見が出なかったので、ミツルギ達に一部屋貸すことになった。
「そういや、お前ら飯はどうした?」
「…その、宿を優先にしようと思ってたから、食事はまだ済ませてないんだ。だから、少し出てもいいかい?」
「いや、今から行ったら戻ってくる時間が遅くなっちまうだろ。簡単なのでいいなら、作ってやるよ。」
そのまま、キッチンに入り炒飯を作り始める。
「サトウ君、キミは料理が出来たんだね。」
「日本にいた頃、たまに夜食とか作ってたしな。…っと出来たぞ。」
ミツルギ達に炒飯を振舞ってやると
「初めて食べたけど、結構おいしいわね。」
「んー、悔しいけど…キョウヤに勝ったこの男を認めるしかないようね…」
「…久しぶりに食べたよ。こっちも食事は美味しかったけど、やっぱり自分達の国の食べ物っていうのはいいもんだね。」
思ったより好評だった。だけど炒飯は日本料理じゃないからな。
「食ったら、自分達で洗っておいてくれ。食器棚には戻さなくていいからな。」
あの皿は来客用にするか。
「カズマ、お風呂はどうします?」
…!これは!?一緒に入ってくれるとかか!!?
「とりあえず出ようぜ。」
めぐみんの背中を押して広間を出ると、めぐみんが困惑した表情をしていた。
「あの…カズマ?もしかして一緒に入ろうとしてませんか?私はどちらから入ります?と聞きたかったのですが!」
えー……俺はその場でガクっと膝を落とし、項垂れた。
「ダメですよ!一緒に入っている所なんて見られたら何を言われるかわかりませんし、
その、カズマのことですから…そのまましちゃおうとしそうですし。」
「う…、でもさ…あれから結構経ってるんだぜ?そろそろ…」
「…仕方ないですね。」
「お!じゃ、じゃあ!!」
はあ…やっと二回目にこじつけたぞ!
「では、部屋は別々に用意しますか。…何変な顔しているんです?」
そりゃねーだろ!?
「ちなみに一緒にも入りませんよ。」
「ご、ごめん!めぐみん!その、一緒の部屋で寝てください!」
ぐう…また負けてしまった…クソ!絶対二回目をしてやるからな!!
―――――――――…
「ふぅ…れろ……。」
「んん…う…ん…カ、カズマ!ちょっと待ってください!あう!」
「ふぅ…ふ……ぷはっ…どうかしたのか?めぐみん。」
キスは言えばいつでもします。とめぐみんが言っていたので
俺達はあれから毎晩の様に口付けを交し合っている。
「…どうかしたのか?じゃないですよ!そのキスは許しましたけど…」
と、いう訳だ!何も問題はない!!と言うわけでめぐみんを引き寄せて口を吸う。
「んん!…うん…ぷは!カズマ!話はまだ終わってませんよ!」
めぐみんに怒られてしまった…。凹んでいる場合じゃない。
「…えっと?何か問題があったか?キスも何時も通りだし。」
「…問題がありすぎて、何から指摘するかを迷いますが…カズマは心当たりはないのですか?
自分の胸に手を当てて考えてください。…ん!私の胸触ってどうするんですか!」
前までは巨乳こそ至高と思っていたけど、実際に弄るなら手の中にすっぽり納まるサイズの方が良いということに気が付いた。
「…あれ?俺は何でめぐみんの胸触っていたんだ?」
何時の間に触っていたんだろうか…、マズイ…めぐみんが怒る前に謝らなくては!
「触ってんだ?じゃないですよ。そしてそのまま揉み続けないでください!」
めぐみんがポカポカと頭を叩いてきた…だけど、仕方ないじゃん!左手の制御が利かなかったんだよ!
…無意識の行動とはいえ、ここは謝らないとな…
「ごめん!無意識だったよ。」
これからは、気をつけよう…うん。
「はぁ…それでカズマ、私は何時になったらこの状態から開放されるのでしょうか?
先程から、カズマのが当たり続けて…その、キスしていたのもありますが、どんどん変な気持ちになってしまうのですが…」
それは願ったり叶ったりと言う奴では?
しかし、そんなことを言えばめぐみんは間違いなく怒るだろう。
でも、めぐみんをその気にさせるというのは、今後使えるかもしれない…考えておこう。
「あー悪い、…一応言って置くが、俺だって結構我慢しているんだからな。」
腕の力を抜いて、めぐみんの拘束を解く
「う…その、私もしたくないというワケではないのですが…その、私はカズマとこうして触れ合えているだけで幸せなので…」
めぐみんが俺の胸元に埋まってしまった。耳まで真っ赤にして
「はは、やっぱりめぐみんは可愛いな!」
俺が笑っていると、めぐみんはガバっと顔を上げて
「もう!…可愛いとかそういう事を平気で言わない…で…」
言いかけて、だんだんとめぐみんの顔色が悪くなっていく
「ん?どうした?後ろに何か?」
アクア達でも来てしまったのだろうか?そう思いながら後ろを振り返ると―――
―――西洋人形がテーブルの上に鎮座していた。!?慌てて、めぐみんの方に視線を戻す。
「…なぁ、あんなとこに人形なんてあったか?」
「…な、なかったと思いますよ…」
「あれは…み、見なかったことにしようぜ!」
二人で毛布を被って、俺達は息を潜める。
よし!潜伏スキルだ!これで安心だろう!!
「カ、カズマ…何か重苦しい感じがするのですが…」
ああ、俺も感じているよ…
「…というか、どんどん重くなってきてないか?」
恐る恐る、毛布から顔を出すと……夥しい数の人形が俺達の上に乗っていた!!
「「うわああああ!!!!」」
人形達を跳ね除けて、めぐみんの手を引いたまま俺達は部屋を飛び出す!
「はあ、はあ…こういうホラーはやめてくれよおお!」
「カ、カズマ!追いかけてきてます!!」
後ろを見ると、先程よりも更に数を増やした人形達が俺達の後を追いかけてきている。
「ちょ、アクアの部屋って何処だっけ!?」
「えっと!あっちです!」
めぐみんに先導されてアクアの部屋に逃げ込んだ。
「え?アクアなんでいないんだ?」
「確か、少女の幽霊とお話するって言っていたと思うのですが?」
此処で話をするんじゃなかったのか?
「どうする?アクアを探すか?」
幾分か冷静さを取り戻した俺達は今後の方針を決めるために相談を始める
「…そういえば、カズマはターンアンデッドが使えたのでは?」
「あ!…忘れてた…」
めぐみんは呆れたような視線を送ってくる。
仕方ないだろう!テンパってたんだからさ!
「…あーでも、間違って少女の霊を浄化しちゃったらまずくないか?」
「あ、それがありましたか…どうしましょうか?」
「とりあえず、ここは安全っぽいし、暫くここにいるしかな…いか?」
マズイ…
「ど、どうしたんですか。カズマ!?まさか、人形が来たとかでは…?」
めぐみんがキョロキョロと部屋を見回す。
「いや、そのちょっとトイレに行きたくなっちまって…」
「あ、カズマもそうだったんですか…」
ん?ちょっと待て…カズマもって言わなかったか?
「…もしかして、めぐみんも?」
「…カズマの所為ですからね…刺激され過ぎてしまったんですよ。」
さて、どうしよう。正直膀胱が限界に近い…さっきの光景で漏らさなかっただけ自分を褒めたい気分だが
「…ちょっと失礼して…」
ベランダの方向へ行こうとすると、めぐみんに腕を掴まれた。
「おい、何してんだよ。放してくれ、さもないと俺のズボンとこの部屋の絨毯が大変なことになる。」
「行かせませんよ?カズマの所為で私も大変なことになっているというのに…
それに私達は相棒同士で恋人同士じゃないですか。…イク時は一緒です…」
頬を赤らめながら俯き加減でそんなことを言っているめぐみんに
「ええい放せ!っていうか、その台詞はベッドの上で言ってくれよ!!」
「させませんよ!カズマ!!私はもうカズマのを見ているんですからね!
カズマが用を足している時に思いっきり揺らしてやる…くらい…は…」
徐々に尻すぼみになっていくめぐみん。
まさかと思って振り返ると…ベランダの窓にびっしりと人形が張り付いていた。
「に、逃げるぞ!めぐみん!!」
「またですかー!?」
「うう、…流石にこの状況は恥かしいのですが…」
人形達から逃げ回って、なんとかトイレの中に逃げ込んだ。
先に用を済ませた俺は、めぐみんに背を向けて耳を塞いでいる状態だった。
「…カズマカズマ。」
めぐみんに揺らされたので耳を塞いでいた手を放す
「うん?終わったのか?」
「その、やっぱり恥ずかしいので…外に出ろとは言いませんけど、耳を塞いだまま大きな声で歌でも歌ってくれませんか?」
「どんなプレイだよ!?夜中に彼女と二人でトイレに入って、大声で歌を歌うとか!」
めぐみんの無茶振りに突っ込みを入れつつも、仕方ないと思って言われたとおりに歌を歌ってやった。耳を塞いだまま、アカペラで歌うとか…すっごく歌いづらいぞコレ。
「…ふう。カズマカズマもういいですよ。」
「ん?終わったか?」
「ええ、でもまだこちらは向かないでくださいね。」
「はいはい。」
「所でカズマ、先程の歌はカズマの国の歌ですか?随分変わった歌でしたが…そのカズマって何処の国出身なのですか?」
「…出身地は日本って国だよ。色んな風習があるのに決まった宗教はないという変わった国だ。」
「え?国教もないのですか?随分変わった国なんですね。」
「…まあ、俺の国は…「うわああああ!!」「「きゃあああああ!!」」」
突然下の階から叫び声が聞こえてきた。
「…めぐみん。いけるか?」
「カ、カズマが居てくれれば平気ですよ。」
俺達はトイレから出て周囲を見回す。あれ程居た人形達が一体も居なくなっていた。
「人形達が下に行ったのかもしれない。…というか忘れていたけど、あいつらも居たんだったな。」
おそらく、先程の声はミツルギ達だろう。
「放っておいて寝ますか?」
「いや、ミツルギがグラムを持って暴れたら、屋敷が破壊されちまう…行くしかねえよ!」
たく、アクア達は何処に行ったんだよ!
「サトウ君!」
一階に下りるとミツルギ達と合流が出来た。心配だったのでミツルギに状況を聞くことにする。
「ミツルギ、お前屋敷のものとか壊してないよな?」
「ええ!?開口一番がそれなのかい?」
「いやだって、お前は周りが見えなくなるじゃないか。」
「う…、それはこれから直そうと思っていることだよ。今回負けた相手がサトウ君だったからまだよかったけど、魔王軍相手に同じ状況になったら僕達は命を落としていただろうからね。」
ふうん?その辺りはちゃんと考えているようだな。
「それで?人形達が現れたんだろう?」
「ああ、目が覚めたら僕達の部屋に人形がびっしり居座っていて…
ベッドで寝ていた二人にも大量に人形が乗っていたから、僕は其れを払いのけて
そのまま二人を起こして慌てて逃げ出したんだ。」
「キョウヤに連れられて外に出ても人形に囲まれてて…」
「キョウヤ、部屋にグラムを忘れたらしくて、廊下にあった箒で追い払おうとしてくれたんだけど。」
うん。グラムを忘れたのはいいことだ。あれでそこらを切られてたら大惨事だからな。
「僕の攻撃は人形達にまったく当たらなかったんだ。…自信無くすよ…」
ミツルギはそう言って肩を落としている。
「それでよく此処までこれたな。というか人形が見当たらないが…?」
「ああ、なんとか強行突破しようと思ったんだけど…人形達が一斉に外に出て行ってしまったんだ。」
外か…アクアが何かしているのかもしれないな。
「一回外に出てみようぜ?」
「あれ?カズマ達じゃない!カズマー!」
声のする方へ振り返ると、屋根の上にアクア達がいた。
「あんな所に居たのかよ…」
ゆんゆんの側には金色の髪をした少女が居た。…あの子が幽閉されていたという少女か。
「じゃあ、そろそろ今日はお開きにしましょう?…ゆんゆん、ダクネス、その子をお願いね。」
アクアは屋根の上から飛び降りると羽衣が広がりふわふわと降りてきた。
「さて、あんた達も十分楽しんだでしょ?そろそろ逝きなさい!」
アクアを中心に巨大な魔方陣が現れる。そして周囲にいた人形達から光が上がっていった…幻想的なその光景に俺達は息を呑んだ。
「「綺麗…」」
「流石はアクア様だ…本当に美しい…」
ミツルギの言うとおり、何時もの何処かダメっ子なイメージがあるアクアの姿からは程遠く、綺麗だった。
「…カズマまで、アクアに見惚れないでくださいよ?」
めぐみんが肩を寄せてきたので
「ああ、わかっているよ。」
めぐみんの肩を抱き寄せた。
やっと1章分が終わりですね。
次回これの後日談も少し入りますが、内容は2章に突入予定です。
カズマ達に出会って、ミツルギもまた少しずつ変化してきているようです。
お話の方はどうだったでしょうか?
だんだんと遠慮がなくなっていくカズめぐもいいと思うんですよ。
喧嘩していてもいつのまにかイチャイチャし出すのがこの二人だと思うんです。