このすば カズマが冷静で少し大人な対応ができていたら。   作:如月空

23 / 74
そろそろ、タグをR-15からR-17.9に変えるべきですかね?


サキュバス

俺がこの世界に転生してから、数ヶ月が経過した。

季節が変わり、秋が深まってそろそろ冬に向けた準備が必要だ。

そして、冬になれば勿論、俺の相棒にして恋人であるめぐみんの誕生日もある!

クエストに出ない日はプレゼント探しをする為に、一人で町を散策することも多くなった。

 

「考えてみれば、こっちに来てからすぐにめぐみんに出会っているんだよな。

それから、ずっと一緒に行動していたわけで…もう、あいつは俺の生活の一部だよな…」

 

めぐみんと出会ったのは、この世界に来た翌朝だ。屁理屈を捏ねるなら、

こちらに来てから24時間以内にはめぐみんと出会っていることになる。

俺とめぐみんは、それだけ長く濃厚な付き合いだということだ。

 

「ん?あそこに居るのは…」

 

如何にも挙動不審な雰囲気で路地裏をチラチラと覗き込む二人を見つけた。

 

「何やっているんだ?二人とも。」

 

「「どわああ!!」」

 

声をかけると、二人は予想以上に驚いた。

 

「カ、カズマか…脅かすなよ。」

 

「こんな所でどうしたんだよ。お前ら傍から見てめちゃくちゃ怪しかったぞ。

何か悪いことでもしてるんじゃねーよな?」

 

そう言って、俺は金髪の男の方を見る。

 

「おい、カズマ!何で俺の方見ながら言うんだよ!」

 

金髪の男…ダストは俺に食って掛かる。

 

「いや、お前はこの前まで警察に捕まっていただろうが。カズマに怪しむなって言う方が無理だぜ?」

 

「キース!てめえ!仲間に対してそれはないだろ!」

 

ダスト…テイラー達の4人目のパーティーメンバーで職業は戦士らしい。

酒と女好きでトラブルメイカーでよく警察のお世話になるらしい。

テイラーから、お前は面倒見が良いなとよく言われているが、

あいつも人の事言えないくらい、面倒見が良いと俺は思う。

あれから、手が空いている時はしょっちゅう俺やミツルギの練習を見てくれているし。

 

「で?結局こんなところで、何やってんだよ。」

 

「いや、彼女持ちのカズマには関係ない話だ。」

 

彼女がいると関係ない話?

 

「いや、待てキース!ここでコイツを帰す方がマズイ気がするぞ!」

 

「…確かにカズマの交友関係の広さを考えれば、教えておく方がいいかもしれないな。」

 

「?何の話だ?」

 

俺が疑問に思っていると、ダストが俺の肩に手を回して小声で話しかけてくる。

 

「なあカズマ、お前口は堅いか?」

 

「え?まあ。」

 

何だ?改まって…

 

「……カズマ。お前はサキュバス達が良い夢を見せてくれるという店がある事を知っているか?」

 

「詳しく。」

 

食い気味に俺は答えた。

 

 

 

この町にはサキュバス達が隠れ住んでいるらしい、サキュバスとは男の精気を吸って生きる悪魔だ。

当然彼女達は男の精気を吸う訳だが、町の男性冒険者達とは一種の共存関係を築いているらしい。

駆け出し冒険者達は馬小屋生活をしている者が当然多い。そうなると溜まってくるのは当然だ。

だからと言って、女性冒険者に手を出せば、良くて袋叩き…最悪アレを切り落とされる事になる。

恐ろしい…

 

「…で、そこでサキュバス達だ。彼女達は俺達が寝てる間に望みの夢を見せてくれるらしいんだ。」

 

ダストの言葉にキースが続く。

 

「男達はすっきり出来て、彼女達も生きていける。それに冒険に支障が出ない程度に加減してくれるらしい。」

 

成程、誰も困らない…それどころか、性犯罪の抑制にもつながるだろう。

事実、この街は凄く治安がいい。暴力事件だって以前の俺とミツルギの件以外あまり聞かない。

性犯罪に関してはまったくという程、聞くことはない。彼女達のお陰だろう。

 

「素晴らしいな!」

 

俺は口に出して感動していた。この件に関して俺は閉口を貫くべきだろう。

相手が悪魔とはいえ、彼女達は善良な市民も当然だ。ことを荒げるべきではない!

 

「それで…カズマはどうする?」

 

店に行くかとダストに誘われるが…ここは考えどころだ。

俺に彼女がいなければ、間違いなく飛びつくような案件だったが…

初めて経験したあの日から早二ヶ月…俺達はまだ二度目をしていない。

一緒に寝ているから処理も中々出来ない…寝ている間に勝手に出ることがあるくらいだ…

しかし、これは浮気にならないのだろうか?

 

「どうしたんだ?カズマ…ああ、めぐみんの事を考えているのか?

大丈夫だ!ただ夢を見せてもらうだけだぜ?浮気にはならねえよ。

どうしても、お前が気になるのなら、夢にめぐみんを出せばいいだろ?」

 

成程、その手があったか。うん、夢の中で自分の彼女とするのなら浮気じゃないよな?

 

「よし!俺も行くぞ!!」

 

 

 

 

――――――――……

 

 

 

 

 

 

 

「いらっしゃいませー!」

 

多くの男の理想とも言える魅惑的な肉体を持った、綺麗なお姉さんが俺達を迎え入れた。

店内には同じように半裸に近い衣装に身を包んだサキュバスの店員が接客していた。

そして、この店に居る客は、全てが男だった。

仮にも飲食店だというのに男達のテーブルには飲み物もなく、男達は一心不乱に何かを書いているようだった。

 

俺達はお姉さんの案内で空いているテーブル席に着いた。

 

「お客様は、此方のお店は初めてですか?」

 

お姉さんの言葉に俺達はコクリと頷く。

 

「…では、此処がどういったお店で、私達が何者かもご存知でしょうか?」

 

俺達はその言葉に、もう一度無言で頷く。

その様子に満足したかのように、お姉さんはテーブルにメニューを置いた。

 

「ご注文はお好きにどうぞ。勿論、何も注文されなくても結構です。

…そして、こちらのアンケートに必要事項を記入して会計の際に提出してくださいね。」

 

アンケート?望みの夢を見られるという話だから、その関係だろうか?

 

「…え?…あの、夢の中での自分の状態、性別と外見ってのは?」

 

何だこれ?意味が分からないんだけど…状態はともかく、性別や外見って…

 

「状態とは、夢の中では王様とか英雄とかになってみたい等ですね。性別や外見は、

女性になりたいと言う方や年端の行かない少年になりたいと言うお客様もいらっしゃいますので。」

 

…大丈夫なのか?この町の男共は…でも、そんなことまで自由に出来るのか。

流石は、望みの夢を見させられると謳うだけのことの事はあるという事か。

 

俺達はアンケートに記入を済ませて会計に向かった。

 

「では、皆様三時間コースをご希望ですので、お会計はそれぞれ五千エリスをお願いいたします。」

 

それは安いな!

俺は行った事はないが、日本のその手のお店に比べたら破格だろう。

 

「では最後に、本日の就寝予定時刻をお願いします。

当店のスタッフが就寝中のお客様の傍へ行き、希望の夢をお見せします。

出来れば、お酒は控えてくださいね?泥酔されて、熟睡されてしまうと、

夢を見せることが出来なくなってしまいますから。」

 

お姉さんの忠告を受けて俺達は店を出る。

俺達はそのまま解散となった。

空を見上げればすっかり暗くなっている。

ちなみに今日は宿に泊まるつもりだ。

何故かと問われれば、屋敷にはアクアがいるからだ。

あいつの嗅覚が鋭いのは理解している。なので、

仮にも悪魔である彼女達を屋敷には招き入れることはできない。

 

俺も移動しようとした所で後ろから声を掛けられた。

 

「カズマ、こんな所で何をしているんですか?」

 

 

 

―――――――……

 

 

 

 

 

 

 

 

≪めぐみん視点≫

 

 

先程のカズマは様子がおかしかった。

今夜はキース達に付き合って飲むから帰りは朝になると、カズマから聞かされた。

…怪しい…

カズマに、浮気なんて出来る甲斐性があるとはとても思えないけど、調べるべきだ。

 

カズマは感知スキルを持っている…だからカズマを尾行するのには骨が折れる。

一度見失ってしまったけど、偶然宿に入っていく姿を見つけられた。

 

…そのまま数時間待っていたけど、カズマは中々宿から出てこない。

痺れを切らした私は宿のご主人にカズマのことを聞いてみた。

 

「ああ、カズマ君なら今日は泊まっていくと言って部屋を借りたよ。」

 

以前、私達が暮らしていた宿だったので、ご主人とも面識があって詳しく話を聞くことが出来た。

 

「無事に部屋を借りることが出来たのですね…私に教えに来ないなんて、まったくカズマは。」

 

「ん?めぐみんさんも泊まるつもりだったのかい?でもカズマ君が借りたのは一人部屋だよ?」

 

「問題ないですよ。いつも同じベッドで寝ているんですから!」

 

…流石に言ってて恥かしくなってきた。

ご主人は私に好奇の目線を送ってくる。

 

「そ、そうなのかい?ああ、これがカズマ君が泊まっている部屋の合鍵だ。

帰る時に一緒に返してくれればいいからね。」

 

「ありがとうございます。」

 

ご主人から合鍵を受け取ってカズマの部屋に向かった。

 

「この部屋ですね…。」

 

合鍵を使って、部屋に入るとカズマは驚いたような顔をした。

 

「めぐみん!?…あれ?俺もう寝てたのか?…でもシチュエーションが違うような…?」

 

何やらワケのわからないことをカズマは口にしている。

カズマの姿を見る限り、もう寝ようとしていたみたいだ。

浮気でなかったので、私は安堵の溜息が出た。

 

「カズマー、酷いですよ。私を置いていくなんて…」

 

「悪い、そんなつもりは無かったんだ。」

 

でも、カズマは何で私に嘘を付いたのだろう?

私はカズマの座っているベッドまで移動して横に座る。

 

「カズマはもう寝るつもりだったんですよね?」

 

「え?ああ。じゃ寝るか。」

 

私がベッドに横になると、カズマは部屋の明かりを消してベッドに入り込んでくる。

そして、私に覆いかぶさって何度もキスをしてくれた。

 

「…ふう…ん…れろ…ちゅ…」

 

今日は久しぶりに二人きりということもあって、

私も夢中になってカズマとの口付けを交わし続けた。

 

「んーん…ぺろ…じゅる…ん!」

 

カズマのが大きくなって私に当たっている。

…これくらいは何時ものことなので、構わずに口付けを続けていると、

私が着ているワンピースのスカートの中にカズマの手が入り込んできた。

 

「!!?」

 

え?何をしているんですか?この男は!?

カズマはそのまま、私の下着を下げてきて…

 

「いってーな!なんだよ!?話が違うじゃねーか!!」

 

等と文句を言ってきた。カズマが痛がっている理由は私が頭を思いっきり叩いたからだ。

 

「話が違うって何の話ですか!?まったくカズマはすぐに調子に乗りますね。」

 

「!?何でだ!?めぐみんとイチャイチャ出来ると思っていたのに!」

 

う…それはまぁ私もしたいですが…アクア達と暮らすようになってから

二人きりになれる時間も減ってきていますし…

 

「その、カズマ?私も嫌と言うわけではないのですよ?」

 

「クソ…こんな所まで本人通りかよ…夢なんだからそれぐらい都合よく…」

 

カズマはぶつぶつと何かを呟いている…今夢がどうのって聞こえたような?

そういえば、私が入ってきた時にカズマは、俺もう寝てたのか?と言っていた気がする。

どういう事なんだろうと思って考えていたら、部屋の中に誰かが居る気配を感じた。

 

「あ、あのー…」

 

声がした方を見ると、愛らしい感じの美少女がいた!?

 

「カ、カズマ!この女は誰ですか!!?浮気ですか!?そうですね!!」

 

「ちょ、待ってめぐみん!え?このめぐみん…本人!?」

 

カズマはワケの分からないことを言い続けている。

 

「浮気でないと言うのなら、ちゃんと説明してください!!!」

 

 

最初は言い淀んでいたカズマだったが、やがて観念したように話し始めた。

この子はこの街で暮らすサキュバスの一人で、男に望みの夢を見させるというお店があって、そこに所属しているらしい。

そしてカズマはそのお店のサービスを受けようとしていたらしい。

 

「それで、カズマはどんなサービスを求めたんですか?」

 

私がそう聞くと、サキュバスの子は怯えるように私に紙を渡してきた。

 

「その、本当ならお客様の情報は渡してはいけないんですけど…

この内容なのでお客様を怒らないでくださいね?」

 

『名前サトウカズマ 年齢16歳 自分の状態そのまま 相手めぐみん

夢の内容 めぐみんと濃厚なイチャラブエッチ!』

 

…軽く頭痛がしてきた…とりあえず浮気ではなかったことを安心するべきでしょうか。

そして、怒るべきか褒めるべきなのか…相手を好きに選べる状況で私を選んでいるのですから。

でも、私は気になることが他にあったので、サキュバスの子に聞いてみることにした。

 

「夢の内容は好きに設定出来るんですか?それこそ、こういう事と関係ないことでも。」

 

「あ、はい。出来ますよ。」

 

成程、それならやってみたいことが私にもある。私がサキュバスの子に耳打ちをすると

 

「あ、はい。大丈夫です…ですが夢をつなげるなら相手と密着していないといけませんよ?」

 

「そこは問題なしです!さあ、カズマ寝ますよ!」

 

「え?ええ?えっとめぐみん…許してくれるのか?」

 

「そうですね、サキュバスの子は許してあげます。」

 

私がそう言うとサキュバスの子はほっと胸をなでおろしていた。

 

「えっと、…俺は?」

 

「それは、この後次第ですね。」

 

「あ、あの…」

 

サキュバスの子が私に耳打ちしてくる。

 

「…それはカズマ次第ですね。」

 

サキュバスの子は出来るだけカズマの要望を叶えたいらしい。

 

「では、寝ましょうか。」

 

私は未だに困惑していたカズマにキスをして、何時も通りカズマの胸元に顔を埋めた。

 

 

 

 

――――――――…

 

 

 

 

 

 

 

「ここは?」

 

私達は何時もの湖畔にきていた。

 

「え?何で此処、めぐみんあの子に何言ったんだよ。」

 

後ろでカズマが文句を言っていたので振り返ると…カズマの顔が眩しく見えた…!?

 

「え?めぐみん!?」

 

カズマも私を見て同じような反応をしていた。

もしかして相手が魅力的に見える効果でもあるんでしょうか?

 

「と、とにかく!今は何時もの行きますよ!!」

 

私がそう言うと周りの景色が変わった。

 

「ええ!?…何でもありだな…。」

 

「カズマカズマ!すごく大きい岩がありますよ!!」

 

「はいはい…あれ?俺何時の間に杖なんか…?」

 

「カズマ!やりますよ!!」

 

「ああ、わかったよ。」

 

「「『エクスプロージョン!!』」」

 

私達が放った爆裂魔法は大岩を消滅させていた。

 

「ふへ…気持ちいいです…」

 

「あれ?めぐみん倒れないんだな?」

 

「ふふふ、当然です!それにここからが本領発揮なのです!」

 

私がそう言うと、再び景色が変わって

 

「でっけえ!え?アレを破壊するのか?」

 

私はマントを翻し、巨大な岩石に杖を向けた。

 

「見ていてくださいカズマ!!これが私の夢です!!」

 

「『エクスプロージョン!!』」「『エクスプロージョン!!』」

「『エクスプロージョン!!』」「『エクスプロージョン!!』」

「『エクスプロージョン!!』」「『エクスプロージョン!!』」

「『エクスプロージョン!!』」「『エクスプロージョン!!』」

「『エクスプロージョン!!』」「『エクスプロージョン!!』」

 

爆裂魔法の連打…思った以上に爽快で快感でした…

 

「…おお!今のはすげーな!…ん?」

 

「流石に撃ちすぎたようです。…体に力が入らないです…」

 

あれ?夢の中だから、際限なく撃てるのでは?

…これはまさか、カズマの欲望を叶える為?

 

「めぐみん、大丈夫か?」

 

カズマが覗き込んできた。それに釣られてカズマを見ると、私は体の中が熱くなっていくのを感じた。

私の状態に気が付いたのか、カズマは顔を赤くしながら興奮しているみたいだ。

 

「な、なあ、めぐみん?夢の中なんだしさ…」

 

う…確かに今の状態のまましないで起きてしまったら、

現実で相手をしないといけなくなる可能性が高いです。

それに、私の体もすっかりその気になっているみたいで…

…これは夢の所為ですからね!

 

 




はい、カズマさんの浮気?は速攻ばれてしまいました。

そしてダスト初登場です。カズマの悪友ですね。早速悪い道に誘いました。

やっと、時間が進みましたね、次回からはベルディア編になると思います。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。