このすば カズマが冷静で少し大人な対応ができていたら。   作:如月空

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今回のお話は短めです。


宴の夜

≪めぐみん視点≫

 

 

アクセル冒険者ギルド

 

「ベルディアを倒して来ましたよ!さあ、アクア!カードを提示してください!」

 

「ふふん!さあ、此れを見なさい!!」

 

アクアは得意げな表情で、ルナお姉さんにカードを見せつけた。

お姉さんはアクアのカードを確認すると、驚愕の表情に変わり震えていた。

 

「ほ、本当に倒してきたのですね!?」

 

お姉さんは興奮した表情のまま、アクアの両手を掴んでいた。

 

「ああ、本当だ。この場にいる者たちで力を合わせ、討伐したのだ。」

 

ダクネスは未だ眠り続けているカズマを背負ったまま、ルナさんの問いに笑顔で答えた。

 

「直ぐに、王都とギルドの上層部へ報告致します!!皆さん…本当にお疲れ様でした!!」

 

お姉さんは私達に一礼すると、カウンターの奥へ駆け出して行った。

そしてギルド全体から歓声が沸き起こった。

 

「本当に魔王軍の幹部を倒しちまったのかよ!?」

 

「ふ…、お前らなら、やれると思っていたよ。」

 

「まさか、ダストまで参加してたなんてな!」

 

「ホント、あのダストがねー。」

 

「ンだと!テメエら!!俺がいちゃ、おかしいってか!?」

 

煽られていたダストが、バカにしている冒険者達に食って掛かる。

ああいう姿を見ていると、やっぱりただのチンピラにしか見えない。

 

「さあ!宴会よー!!」

 

アクアが高らかに宣言をすると、ギルド中が盛り上がりお祭りムードとなった。

 

「ダクネス、代わりますよ。私がカズマを見ているので貴方も楽しんで来て下さい。」

 

「む、そうか…ではテーブルまでは連れて行こう。」

 

カズマをゆっくりと休ませる為に、ギルドの隅にあるテーブル席に座る。

 

「では、めぐみん。カズマの事は任せたぞ。」

 

私がカズマを引き取ると、ダクネスはアクア達の元へ向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宴会が始まってから、数時間が経過した。

私がカズマを膝の上に寝かせて食事を取っていると、

ゆんゆんがクスクスと笑いながら近寄ってくる。

 

「そうしていると、本当に恋人同士みたいだね。」

 

みたいではなく、私達は本当に恋仲なのですが。ゆんゆんは私達の事を何だと思っているのでしょうか?

 

「…ゆんゆんにもいい人が見つかるといいですね。…何時までも子供のままではいけませんよ?」

 

「ム!何よ!?めぐみんの方が子供っぽい癖に!また、体の成長勝負をしてみる!?」

 

ゆんゆんが駄肉を揺らしながら、私を挑発して来た。

勿論私は、そんな不毛な勝負を受けるつもりは無い。

 

「私が言っているのは見掛けの話ではありませんよ?」

 

「それこそ、めぐみんに言われたくないわ!カズマさんと仲が良いようだけど、全然進展している気配が無いじゃない!」

 

それは、カズマが皆の前では、なるべく抑えようと言っているからですよ。

私としては、皆が居ようと関係なく甘えたりしたいので、やはり皆に伝えてしまいたいです。

カズマが恥ずかしがると言うのも分からなくは無いのですが、この様な勘違いをされるのはとても心外です。

 

……カズマには悪いですけど、この際ゆんゆんには伝えてしまいましょう。

 

「仕方の無い子ですね。これはカズマに口止めされていたのですが…」

 

ゆんゆんを手招きして、近くに呼び出す。

 

「…何よ?アクアさんも、カズマさんはヘタレだから絶対めぐみんに手を出しているはずないって言ってたし、一緒に寝ているっていう話くらいじゃ、私も見た事あるし驚かないからね!」

 

カズマがヘタレなのは間違い無い。だからこそまだ、皆にも伝えられていないわけですし。

 

「はあ…ゆんゆん?まだ誰にも言わないでくださいね?貴方を親友と見込んで先に伝えるのですから…」

 

親友と言う言葉に身を震わせるゆんゆん…相変わらず、ちょろい子ですね。

 

「分かったわ!誰にも言わない…それで何があったの?」

 

さて、如何言おう…

下手に爆弾を落としてしまうと、ゆんゆんがパニックを起こすのは目に見えている。

私とカズマは繋がった経験がある…なんて言おうものなら、間違いなく卒倒してしまう事でしょう。ここは一つ、ゆんゆんが騒がない程度にソフトな事だけを伝えましょう!

 

「私とカズマの一日はキスで始まって、キスで終わります。」

 

う…こうして口に出すと結構恥かしいものですね。

あれ?ゆんゆんが何故か、固まっていますね。

 

「………え?…ごめん、めぐみん。何か変な事が聞こえちゃって、ちゃんと聞けなかった。」

 

話を聞いていないとは…まったく、仕方の無い子ですね。

話をしている此方は、これでも恥ずかしいのですからね!

次はしっかり伝えるために、私は深呼吸をしてゆっくりと話し始める。

 

「では、駄目なゆんゆんの為にもう一度、最初から説明をするとしましょう。

私達は朝起きると、先ずキスをします。そしてそのままハグして、お互いの温もりを感じ合います。

寝る前はベッドの中で抱き合って、たっぷりと濃厚なキスをした後、私はカズマの腕の中で眠るのです。」

 

ここまで言えば、如何にゆんゆんでも理解出来るでしょう!

あー!恥ずかしかったです!!

 

「え?…ええ!!?」

 

「ちょ!?ゆんゆん!!声が大きいですよ!!」

 

ゆんゆんは慌てて、自分の口を両手で塞ぐ。

周りを確認して見ると、誰も此方を気にしている人は居なかった。

 

「ご、ごめん!めぐみん!…あの、さっきの話は何時もの冗談だよね?

何時もカズマさんを冗談で煙に巻いているし、今の話もそうだよね!?」

 

おや?ゆんゆんは本当に私達が付き合っていないとでも思っていたのでしょうか?

 

「本当ですよ。この様な話を何故、冗談として言わないといけないのですか?」

 

「…本当の事なの?」

 

ゆんゆんは青ざめた表情で私の顔を見ている。

どうして、私がそんな顔をされないといけないのでしょうか?

 

「そうだと言っているでしょう?どうして、そんな顔をしているのですか?」

 

「あ、ごめん。でも……ほ、本当にめぐみんに負けたと言うの?」

 

成程、先を越されたのがそれ程ショックだったという事ですか。

 

「ゆんゆん。………フッ!」

 

私はゆんゆんに優しく声をかけて、勝ち誇った顔をゆんゆんに向けた。

 

「うわああ!めぐみんに負けるなんてー!?」

 

ゆんゆんは泣きながら、テーブルに突っ伏した。

仕方ないですね、少しはフォロー?も入れて置いてあげましょう。

 

「負けたも何も、ゆんゆんにはアクアがいるから良いじゃないですか。私たちは祝福しますよ?」

 

「ふええ!?あ、アクアさんはお友達だから、そういうのと違うわよー!?」

 

ゆんゆんは顔を紅潮させ、瞳を真っ赤に輝かせながら必死に弁明していた。

 

必死に隠しているようですが、私達は知っているのですよ?

自分の部屋があるというのに毎晩のように一緒に寝ている事を。

 

「そうでしたか?二人は深い関係だと、思っていたのですが。」

 

「何よ!深い関係って!?めぐみん達みたいに…ききき、キスとかしているわけじゃないんだから!」

 

「ちょ!ゆんゆん!また声が大きくなってますよ!」

 

周りに気づかれてないから良いものの、これ以上ゆんゆんをからかうのは危険な気がします。

これはゆんゆんに伝えたのは失敗だったでしょうか?

 

「あ、ごめん。でも、めぐみん…」

 

「何です?」

 

「しつこいと思うんだけど、本当に毎日二人はそんな事をしているの?…その、恥ずかしかったりしない?」

 

「本当にしつこいですね。確かに多少の恥ずかしさは今でもありますが、それ以上に幸せを感じるのですよ。」

 

如何話しても、ゆんゆんは中々納得してくれない。うーん、どうすればゆんゆんに信じて貰えるのでしょうか?

いっその事、カズマを起こして二人で説明してみましょうか?…その前にカズマを説得する必要がありますね。

 

「カズマーカズマー…そろそろ、起きてください。」

 

ツンツンとカズマの頬を突いていると、反応があった。

これはそろそろ起きてくれるかもしれません!

 

「ねえ、めぐみん。カズマさんは魔力切れで眠っているんだから、無理に起こさない方がいいんじゃない?」

 

確かに無理に起こさない方が良いとは思っているけど、カズマが眠ってからもう6時間以上は経っている。

それに、そろそろ起きて貰わないと今夜は私が眠れなくなってしまいます!

 

「一理ありますが、もう十分に回復している筈です。それに一番の功労者なのに、宴会に参加出来ないのは可哀想でしょう?」

 

「……そうよね。そんなの寂しいわよね!」

 

ゆんゆんは里での事を思い出したのか一瞬表情が暗くなったと思ったら、力強く言い切った。

さて、カズマを起こしてしまいましょう!

 

私はカズマに顔を近づけて、朝しているように優しく起こす。

 

「カズマー、もう起きる時間ですよー。早く起きてくださーい。」

 

耳元でそう囁くと、カズマがゆっくりと目を覚ました。

 

「あ、おはよう…めぐみん…ん」

 

カズマは寝ぼけたまま、私に何時もの様に顔を近づけさせて

 

…唇を重ねてきた!

 

「ふ…ぅん!…ちゅ…れろ…」

 

「「!?」」

 

何してくれているんですか!?この男は!!?慌てて、私は口を離す。

私が焦って離れた所為で、お互いの口元から唾液が零れ落ちた。

 

「…あれ?何でもうやめるんだ?」

 

「…カズマ、此処が何処だか解かっていますか?」

 

私は口元を拭いながら、カズマにジト目を送った。

 

「え?……!!!!?」

 

カズマはゆっくりと回りを確認し終わると、一気に青ざめた表情になった。

幸い、今の出来事を目撃したのはゆんゆん一人だけだった様なので、然程問題はないのですが。

 

「か、カズマさん!めぐみん!…い、今のって…もしかして舌まで…?」

 

ゆんゆんに見られたことがショックだったのか。カズマはそのまま固まっていた。

 

「何時もの事…いえ、今のは何時もよりは軽いヤツですね。」

 

何時もなら、お互いに舌を絡ませ合わせているので、これくらいなら軽い方だ。

それにしても、カズマが寝ぼけるだなんて…

 

「ん?どうかしましたか?ゆんゆん?」

 

「…どうかしましたか?じゃないわよ!何で平然としていられるのよ!?」

 

「だから声が大きいですって!…さっきのは私も焦りましたよ。まさか、カズマが寝ぼけているとは…。 はあ…カズマもそろそろ正気に戻ってください。」

 

私の言葉で我に返ったカズマは、申し訳無さそうに此方を見た。

 

「あ、ああ…。その、悪かった…。」

 

そう言ってカズマは体を起こした。

 

「いいですよカズマ、先程の事はゆんゆんにしか見られてなかったですし、それよりもゆんゆんに説明してしまいましょう。」

 

結果として、カズマを説得する手間が省けたのは良かったかもしれない。

 

「仕方ないな…その、ゆんゆん?俺達はこういう関係なんだよ。…黙っていて悪かったな。」

 

カズマは照れた顔で、頭をカリカリと掻いていた。

本当にこういう時のカズマは可愛い…のに、最近はあまり見られなくなったのが残念です。

 

「ふふ、これでゆんゆんも信じられましたか?」

 

「う、うん。さっきみたいな事を毎日しているんだよね…。」

 

やっと、分かってくれましたか!

…おや?カズマの様子が…?

 

「…ちょっと待ってくれ、ゆんゆん。さっきみたいな事を毎日って、如何言う意味だ?」

 

「えっと、お二人は毎朝毎晩、寝起きと寝る前にき…キスをしているんですよね?」

 

ゆんゆんは恥ずかしそうに頬を染めてカズマに問いかける。

…これはマズイ流れかもしれません。

ゆんゆんの話を聞いて、カズマが此方に視線を送ってきたので私は顔を逸らした。

 

「…めぐみん、ゆんゆんになんて言ったんだ?」

 

私に問い掛けたカズマの声は優しかったが、少し怒りが混じっていた。

 

「…キスの事しか話してませんよ?」

 

「本当だな?それだけだよな?」

 

私達がそんなやり取りをしていると、ゆんゆんは何かが気になったのかそわそわしだした。

 

「あ、あの二人とも?それだけってどういう意味なの?」

 

紅魔族はとても頭がいい。しかもゆんゆんは私に次ぐ成績の良さで学校を卒業している。

つまり、ゆんゆんが先程の会話から何かを感づいてしまっても仕方のないわけで…

 

これはマズイです!カズマ何とかしてくださいよ!

 

「えっと、其れはだな…」

 

「お!カズマが起きてるじゃねーか!!カズマー!起きたんだったら宴会に参加しろよー!」

 

カズマが言い淀んでいると、カズマが起きている事に気が付いたダストが声を掛けてきた。

ダスト、ナイスです!!先程はただのチンピラだと思いましたがそれは訂正しましょう!!

 

「お、おう!今行くよ!」

 

カズマは此れ幸いと、ダスト達の元に向かった。

其れを見ていた、ゆんゆんは不服そうな表情をしていた。

 

「ゆんゆん、私達も行きますよ!」

 

「う、うん。」

 

都合良く、話を終わらせられた私はカズマ達と合流した。

 

「カズマったら、やっと起きたのね!ほら!こっちに来て一緒に飲みましょうよ!」

 

「そうだな!今日くらいは付き合うか!」

 

カズマが合流した事により、宴会が更に盛りをみせる。

 

「カズマカズマ、私も飲んでもいいですか?」

 

「駄目に決まってるだろ?」

 

そう言ってカズマは私の耳元に顔を近づける。

 

「…お前、酒が入るとかなりヤバイ発言するから今日は我慢してくれ。部屋に帰った後なら飲んでもいいから。」

 

う、それを言われると先程の手前、逆らうわけにはいかないです。

でも、部屋で二人っきりで飲むと言うのは悪い気はしません!ここはカズマに従いましょう。

 

「分かりました、でも後で付き合ってくださいね?」

 

「ああ、わかったよ。」

 

カズマと一緒に飲む約束が出来て、とても楽しみにしていたのですが…

結局、私達はそのまま明け方まで騒ぐ事になってしまいました。

この埋め合わせは絶対にしてもらいますからね!!

 




これにてベルディア編は終了です。

色々と無知な私ですが、これからもよろしければお付き合いください。

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