このすば カズマが冷静で少し大人な対応ができていたら。   作:如月空

3 / 74
紅魔族の美少女

街を出て、ふと思い出す。

 

「そういえば、テレポートスキルは登録が必要だったな。」

 

街から出たところでカードを操作して登録を完了させる

そして、潜伏や千里眼スキルなどを試用しながら討伐地域まで向かう

 

――――――――――

 

「うへぇ…マジかよ……」

 

俺は潜伏状態のまま小高い場所から魔物を見ている。

ジャイアントトード、ただのでかい蛙だと思っていたら

とんでもないくらいでかい蛙だった。

全長はゆうに3メートルは超えているだろう

そんな姿を見てビビらないはずもなく、俺は様子を伺っている。

 

「…この潜伏スキルはかなり、有用だな。アンデッドなんかには通じないらしいが…」

 

近くの蛙も、まったくこちらに気づく様子はない。

それに安心を覚え、どう倒すか考えている。

 

蛙といえばゲームだと水棲モンスターだが周辺には水辺はない。

ゲーム知識を信じるなら雷属性が効きそうなんだが…

悩んでいてもしかたない。最悪テレポートもある。

そう思い、俺は自分に逃走用の支援魔法と身体強化魔法を掛けると

孤立している蛙に近づく。

 

「『ライトニング!』」

 

強めに魔力を込めた雷撃で呆気なく、蛙が沈黙する。

 

「中級魔法でいけそうだな…」

 

上級魔法の詠唱や型も頭に入ってはいるが、練習もなしにいきなり実戦で使う気にはなれない。

中級魔法は決められた型だけで放てるので、今日はこれをメインで使うべきだな。

 

「次はあいつだな・・・」

 

闇夜に紛れ潜伏スキルで目標に近づいていく。

 

「『ライトニング』」

 

先程より弱めに撃って見る。

蛙がグラっと倒れるが、まだ倒せてないようだ。

 

「そういえば、あのスキルを試してなかったな…」

 

俺は蛙に手を伸ばし――…

 

「ドレイン…うわっちぃ!!!!?」

 

バチっとした、雷魔法の効果が残っていたのだろう

俺は涙目になりながら大騒ぎをする。

そんなことをすれば当然まわりの蛙たちが俺に気づき――

 

「うわわあああああああ!!!」

 

俺は脱兎のごとく逃げ出した。

 

―――――……

 

10分ほど逃げ回り、再び潜伏することに成功した俺は

先程の場所に戻ってきていた。

 

「こ、今度こそ……」

 

内心もう帰りたいと思いながらも、

ここで逃げたら以前の俺のままだと自分に言い聞かせ

 

「ラ、『ライトニング!』」

 

今度は最初と同じく一撃で仕留める。

そのまま、先程仕留め損ねた蛙に向かうと

既に死んでいることに気づいた。

 

「…ということは2回目より強くか?魔力足りるかな…?」

 

昼間に支援魔法を使い、結構魔力を消費している。

時間が経っているから多少は回復してはいるが

まだ、自分の限界がわからないし、無理はしたくない。

 

「あの蛙を無力化できれば回復ができそうなんだが…」

 

そんな都合のいいことができるだろうか?

俺は暫く考えていると―――

 

「……出来るじゃないか…」

 

近くに寄ってきた蛙がいたのでこっそり回り込む

 

「『パラライズ!』」

 

俺の魔法を受けた蛙はひっくり返り、ピクピクと痙攣している。

先程の失敗を踏まえ、魔法の効果が残っていないことを確認する。

そして、内心ビクビクしながら、蛙に触れた―――

 

ヌルリ

 

蛙の粘膜の感触に俺は顔を強張らせる。

 

「『ドレインタッチ』」

 

俺の手が紫色に怪しく光る。

すると、生命力と魔力が流れ込んでくる。

蛙が事切れるまで吸いきると、先程までの疲労感が消えていた。

 

「やっぱりコレは、強力なスキルだな……」

 

「…敵感知に引っかかっているのは、後あそこの2匹だけか…

2匹共無力化させて、上級魔法の練習台にするのもアリだな…」

 

俺は支援を掛けなおし、素早く2匹の元へ向かう。

 

「『パラライズ!』」

 

2匹が近くに寄ったタイミングでまとめて麻痺させ、ドレインタッチで魔力を回復させる。

そして俺は、2匹が直線状になる場所に移動し、上級魔法の準備をする。

 

「漆黒の雷霆よ、我が手に集いて敵を打ち貫け!」

 

「『カースド・ライトニング!!』」

 

右手に纏わった黒稲妻が、蛙に向かって放たれる

蛙達の体に穴が空き、2匹ともすぐに事切れた。

 

「…上級魔法やべーな。扱いには気をつけないと…」

 

その威力に我ながら震えてしまう

上級魔法は制御が難しいとあった。

やはり練習は必須のようだ。

 

「…そろそろ、帰るか…」

 

計6対の蛙を討伐した俺はテレポートで町まで戻った。

 

――――……

 

 

俺は今、ギルドのカウンターに向かっている。

勿論討伐報告をするためだ。

午前中に会った、受付のお姉さんがまだいる。

え?あの人、何時間働いてるの!?

 

「あの、戻りました…」

 

お姉さんは疲れた表情をしていたが、

俺に気づくとキリっとした表情を見せた。

 

「こんばんわ、サトウさん、どうされましたか?」

 

「…あの、俺がいうのもアレなんですけど、楽にしていいですよ?」

 

「なんのことでしょう?」

 

「いえ、やっぱりいいです、討伐の報告に来ました。」

 

「はい、ではカードを提示してください。」

 

俺は言われた通りにカードをお姉さんに渡した。

 

「はい、ありがとうございます。確認が終わるまでお待ちくださいね。」

 

お姉さんがカードをチェックしていると――

 

「えっと、………!!!!?え?なんです??このスキルの数は…」

 

驚愕の声をあげていた。それに俺も慌てて

 

「あ、その、あまり大声で言わないでください…持っているだけで全然使いこなせていないので…」

 

「あ、すみません!…ですが、成程それで冒険者を選んだんですね……・・・あ、すみませんすぐに討伐確認しますね!」

 

「あ、ハイ。お願いします。」

 

「…えっと、討伐数が6匹……え?この数時間で終わらせたんですか?すごいですね、サトウさん。」

 

お姉さんが俺を褒めてくる、それ自体は嬉しいけどちょっと複雑な気分にもなる。

 

「あ、ありがとうございます。」

 

「討伐した蛙の買取ですが、ギルド回収の1匹5千エリスと納品の1匹1万エリスはどちらにしますか?」

 

「え?ああ、ギルド回収でお願いします。」

 

納品すれば報酬が増えたのか。とはいえ、アレを持ってくる気にはなれないが…

 

「お待たせしました、サトウさん。報酬の10万エリスと買い取り分の3万エリスになります。お確かめください」

 

俺はお姉さんからお金を受け取り問題がないことを伝える

 

カードを確認すると、俺のレベルは3に上がっていた。

 

「では、今日は帰りますね。さようなら。」

 

「お疲れさまです、サトウさん。またお願いしますね」

 

 

 

 

――――――――――――……

 

 

 

 

俺はギルドを出てから宿に向かったのだが

 

「え?部屋いっぱいなんですか?」

 

「ええ、何時もなら空いているんだけどねぇ」

 

宿屋のおば、お姉さんが困ったように言う。

 

「せっかく来てもらったんだけどねぇ、あとは馬小屋くらいしか空いてないわねぇ」

 

馬小屋か…野宿よりはマシかな…

金はあるのに…うう……

 

「じゃあ、馬小屋で…」

 

「はい、じゃあ、1000エリスね」

 

うう、馬小屋で1000エリスか・・・5000エリスで小部屋借りたかった…

おばちゃんに1000エリスを渡して馬小屋へ向かう

 

「くせえ…」

 

俺は暗視を頼りに宛がわれた場所に向かう。

そしてフンの付いてない藁を選んで床に付いた。

俺は今日一日を振り返る。感覚的には今日の朝はまだ日本にいたはずだ。

もしかしたら、今見ているのは夢で、実は家でゲームしながら寝落ちしているだけかもしれない…

そういえば三日くらい寝ていなかった。次、目覚めたら自分の部屋で目を覚ますかもしれない。

今日は学校に行ってみようかな。アルバイトを始めるのもいいかもな。

そんな風に思いながら俺の意識は落ちていった。

 

 

 

 

――――――――――――……

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝、目を覚ますと知らない天井が見えた。

体がチクチクと痛い。俺はゆっくりと体を起こした。

 

「…………」

 

どうみても馬小屋だ。夢じゃなくてやっぱり現実だったか…

とりあえず、起きて飯でも食いに行くか。

 

「『クリエイトウォーター』…つめてええ」

 

馬小屋を出て、自分自身に頭から水をぶっ掛ける

そういえば、風呂に入れてなかったなと思ってやってみたんだが

けっこうきついなコレ

 

「…タオルとかないじゃん…何やってんだ俺」

 

自分のやった行動に突っ込みいれつつ

風呂とかないのかなーと考える。着替えとかタオルとかもほしいよなぁ

とりあえず、乾かさないと…

 

「『ウィンドブレス』」

 

自分に風魔法を使い水気を飛ばす

 

「結構初級魔法も使い勝手いいな。」

 

などと暢気なことを口走る。

さて、飯を食いにいくか。

 

時間帯が早いのか、あまり人がいない大通りを歩く。

ふと、気づくと人が倒れていることに気づいた。

俺は慌てて、倒れている人に近づく。

…どうやら、子供が倒れているようだ。

手に杖をもっていることから冒険者なのかもしれない。

その子に近づくと息があるのがわかった。

 

「おい!どうした!?何があったんだ!?」

 

俺の問いかけにその子は一言

 

「……お腹…空きました…」

 

どうやら空腹でぶっ倒れたらしい

俺はどこか安堵して、その子を改めて見る

一言でいうと絶世の美少女だった。

艶やかな黒髪と整った顔立ちは、

断じてロリコンではない!!

俺でも見惚れてしまうほどだった…

 

「…あ、動けるか?飯くらいなら奢るぞ?」

 

「!!奢り!!?」

 

奢るって言った言葉が届いたらしく

いきなり目をカっと開いた。

 

「あ、ああ、ギルドでいいなら奢ってやるぞ?」

 

「ああああ、ありがとうざいます、一昨日の夜から何も食べてなくて…」

 

赤い目を輝かせながらそんなことを言った。

あれ?この子、カタログに載ってた紅魔族かな?

独特の感性と変な名前を持っている、魔法使いの集団だとかいう。

俺は紅魔族っぽい美少女を連れて、ギルドに向かった。

 

―――――……

 

俺は今圧倒されている。

それは目の前にいる美少女の食欲にだ

既に、蛙のから揚げを3皿も平らげている。

それでもまだ肉を食らい、一心不乱に食べている。

今朝は、俺も蛙のから揚げを食べてみた。

食感は鶏肉と比べたら硬いが、味は悪くない。

むしろ、美味いと感じる。

例えるなら、コンビニとかのジャンクフードのような味だった。

そんなことを考えていると目の前の子の食事が終わったようだ。

 

「…すみません、見ず知らずの人に、こんなに頂いてしまって」

 

美少女はそんなことをいう。

というか、そんなの気にしている様子もなかったように見えたんだが…

 

「ああ、いいよ。これくらい。それより聞きたいんだけど…」

 

なんだろう?と小首を傾けている…その可愛さと先程までの食いっぷりでギャップが…

 

「えーっと君って、紅魔族?の冒険者なのかな?」

 

俺の問いかけにコクンと頷き、立ち上がる。

そして、紅い目を爛々と輝かせマントをばさりと翻しポーズを決めながら

 

「我が名はめぐみん!紅魔族随一のアークウィザードにして最強の攻撃魔法爆裂魔法を操りし者!!」

 

あー、なるほど。独特の感性って、こういう方向性か…

それならと俺も立ち上がり―――ー

 

「我が名はカズマ!最弱の冒険者にして、あらゆるスキルを操りし者!」

 

と、俺はその名乗りに応えるようにポーズを決めた。

 

「ふ、ふわあああああ、か、かっこいいです、今のもう一度やってくれませんか!?」

 

そんなめぐみんに内心照れながらも

 

「決め台詞は何度も繰り返したら…カッコつかないだろ?」

 

と言ってみる。

 

「ふわあああ、あ、よくわかってますね。…というかカズマは普通の人なのになんで合わせられるんですか?」

 

そりゃまぁ俺も、そういう時期は多少なりあったし…

 

「俺が元いた国でもそういうノリはあったからな。…それはそうとして、めぐみんはアークウィザードなんだよな?」

 

「はい、そうです、最強の爆裂魔法を使うことができますよ!!」

 

おお、天界でのシミュレートが役に立ちそうだ。

使える人間はかなりレアだと書いてあったのでこれは嬉しいな。

でも一応確認しないと…

 

「爆裂魔法は相当に制御が難しく莫大な魔力を消費する魔法だというが、間違いなく使えるんだな?」

 

「はい、使えますよ。ただ、使った後に体力もごっそり持っていかれるので倒れてしまいますが…」

 

「え…っと命に別状はないんだよな?」

 

流石にこれは聞いておきたい

 

「はい、問題ありませんよ。我が爆裂道は爆裂魔法に関してだけはぬかりありません!!」

 

そんなこといいながらドヤ顔で決めるめぐみん…

 

「それなら、俺とパーティー組まないか?爆裂魔法を組み込んだいい作戦があるんだよ。」

 

そんな俺の言葉にめぐみんはぷるぷると震えている

 

「えっと、パーティーに入れてもらえるんですか?」

 

「ああ。パーティーといっても、まだ俺とめぐみんだけだけど。

一応俺は蛙5匹討伐を一人でクリアできるくらいの実力はあるから安心してほしい。」

 

職業冒険者の俺は、舐められる可能性があるので先に伝えておく。

 

「そ、そんな実力があるならなぜ?私なんかを?」

 

ん、どういう?……あ、そうか……普通の感覚なら爆裂魔法はネタ魔法か

 

「運命を感じたんだよ!めぐみんはやがて俺と共に魔王すら倒せる、掛け替えのない仲間になると!!」

 

とそれっぽい台詞を混ぜながら説得してみる。

実際に爆裂魔法の火力は有用だと思う。神や上位悪魔すら滅ぼしうるとされる、その威力は…

雑魚相手じゃオーバーキルにも程があるが、強敵が相手ならそうとは限らない。

うまくやれば高額の依頼もこなせそうだ。

 

「わかりました、貴方に付いていきます。我が爆裂魔法でいずれ魔王を打ち滅ぼし!魔王めぐみんを名乗りましょう!!」

 

いや…魔王を名乗る必要はないんだが…

やる気になっているめぐみんに水を差さないように心の中で突っ込みをいれた。

 

「んじゃ、クエストを受けるのは昼過ぎでいいか?午前中は用事があってな。」

 

「わかりました。待ってますね」

 

「なんか、飲み食いしたかったらしててもいいから。あ、酒は飲むなよ?」

 

俺は会計を済ませ、めぐみんの飲食代は俺にツケにしておいてほしいと店員さんに頼む。

そして、今日も土木作業に向かった

 

 




カースド・ライトニングが詠唱は見つからなかったので、それっぽくなるように適当に決めました。

蛙6体倒しましたが、才能開花されているため、原作より成長し難くなっています。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。