このすば カズマが冷静で少し大人な対応ができていたら。   作:如月空

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移動要塞発見。

「カズマ、起きてください。そろそろ時間ですよ。」

 

肌寒くなってきたこの季節に、暖かいベッドというのはかなりの強敵だ。

更に言えば隣にいる奴の体温が高いので、惰眠を貪るのに最高の環境という事もあり、

俺はささやかな抵抗を示していた。

 

「後5分……あーめぐみんあったけえ。」

 

「さっきもそう言いましたよね!?というかそろそろ放して下さい!私も起きられないじゃないですか!!」

 

「めぐみんはこういう風にしているのが幸せだって言ってたろ?

俺も今、その幸せを噛み締めているんだから、邪魔するなよな。」

 

俺はぬくぬく状態の幸せを手放さないように、めぐみんを更に抱き寄せる。

 

「…カズマ、いい加減にしないと怒りますよ。」

 

めぐみんの声がマジトーンになった。

朝から説教を食らいたくないので、仕方なしに起きるとする。

 

「悪かったって、そう怒るなよ。ん…」

 

「ん…、ふう、昨日カズマが自分で言った事じゃないですかー。

明日は忙しくなるから早めに起きようって、それなのに中々起きてくれませんし…」

 

確かにそう言ったけどさ、寒いんだし 少しくらいまったりしてても良いじゃないか。

 

「あー其れぐらいで勘弁してくれよ。ほら、飯の準備しちまおうぜ。」

 

「調子良いですよね、カズマって。」

 

ぶつくさ文句を言っているめぐみんを宥めつつ、二人で朝食の準備をする。

そろそろ、テンションの高いあいつも来る頃だろうし、手早く終わらせないとな。

 

 

―――――――…

 

 

 

 

 

 

 

「本当にこのクエストを受けるんですか?」

 

朝食と日課を済ませ、ギルドで目的のクエストを受けようとすると、ルナさんが念押し気味に聞いてきた。

 

「何か問題がありましたか?カズマが千里眼を用いて遠くから観測して、私が経路を予測する予定なのですが。」

 

「あ、いえ、問題があるわけではありませんよ。ただ危険を伴うクエストですので、念の為にお聞きしただけです。」

 

「カズマ、デストロイヤーが居る領域まではどうやって移動するんだ?」

 

「えっと、ギルドから指示を仰げって書いてあったんだけど…ルナさん?」

 

「はい、書類を用意してきますので、少々お待ちください。」

 

そう言ってルナさんはカウンターの奥へ引っ込む。

 

「簡単に考えていたけど、もしかしてこのクエストって時間掛かるんじゃ…?」

 

「えー!?ちょっと!話が違うじゃないカズマ!?」

 

「ちょっと待てって!とりあえず、ルナさんから詳細を聞こう。文句を言うならその後にしてくれ。」

 

そうこうしている内に、ルナさんが書類を持って戻ってきた。

 

「お待たせしました。こちらの書類をテレポート屋の受付にお渡し下さい。

その後は、転送先の町にいるギルド職員から情報をお聞き下さい。」

 

「分かりました。じゃ、行こうぜ。」

 

ルナさんから書類を受け取り、ギルドを後にする。

 

「今日中に終わるのかしら。」

 

「まあ、そう不貞腐れるな。案外早く終わるかもしれんぞ?」

 

不満を漏らしているアクアをダクネスがフォローしてくれた。

助かる!何時もそうなら、もっと頼れるんだけどな!

 

「あ、カズマさん。多少時間が掛かっても良いように、少し食料も買って行きませんか?」

 

「あー、そうだな。昼飯分ぐらいは買っておくか。」

 

「では、テレポート屋に向かう前に買ってしまいましょうか。」

 

 

 

俺達は昼食を買い、テレポート屋の受付に並ぶ。

 

「次の方どうぞ。本日はどちらへの転送をご希望されますか?」

 

「ギルドからこれを受付の人に見せる様に言われました。」

 

「はい、確認いたします、少々お待ちください。」

 

受付の男性に書類を渡すと、男性は其れを読み込む。

そして、男性は顔を上げると、俺達を案内してくれた。

 

「では、書類はお返しします。良い旅路を!」

 

受付の男性に見送られながら、俺達は目的地に転送された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

国境近くの小さな町

 

「さて、先ずは此処に滞在しているギルド職員から話を聞かないとな。」

 

「あ、カズマ。話を聞きに行くだけでしたら、全員で行く必要はないのでは?」

 

「ああ、確かに。じゃあ、二手に分かれるか?町の人への情報収集もした方がいいだろ。」

 

俺がそう提案をすると、ゆんゆんが何かを言い難そうに此方を見ていた。

 

「ちょっと、カズマ!あまり無茶な事は言わないでくれる!?」

 

ゆんゆんが此方を見ていた理由を考えていたら、アクアが急に食って掛かってきた。

あ、思い出した!ゆんゆんって極度の人見知りだったんだ…

最近は、普通にギルドの奴らと話をしていたから、すっかり忘れてたよ。

 

「仕方ありませんね、カズマはゆんゆんを連れてギルドの職員から話を聞いてください。

私達は町の方を当たりますので、情報収集を終えたら町の入り口で合流しましょう。」

 

「分かった。じゃあ、後でな。」

 

めぐみん達が出発したので、俺達も移動をしようと思いゆんゆんに声をかける。

 

「じゃ、行くか!ゆんゆん!」

 

俺が出発を促すとゆんゆんは何故か、固まっていた。

あれ?何かゆんゆんの顔が赤いような…?

 

「え?あ!しゅ、出発ですね!?」

 

俺がゆんゆんの顔を覗き込むと、慌てたように早口となった。

 

「えっと、ゆんゆん?…どうかしたのか?」

 

ゆんゆんが挙動不審だったので俺は困惑気味にゆんゆんに話しかけた。

すると、ゆんゆんは此方をチラチラと見ながら、口を開いた。

 

「えとえと、カ、カズマさんと二人っきりって初めてですから…その、緊張してしまって…」

 

ええ!?今更!?

 

「…俺達もそこそこ長い付き合いだと思っていたんだが、まだ慣れていなかったのかよ…」

 

「カ、カズマさんは何時もめぐみんと一緒じゃないですか。だから平気だったんです。」

 

何時もめぐみんと一緒って……否定できねえか。

そうなると、ギルドの連中と話が出来ていたのは、めぐみんやアクアと一緒だったからか。

 

「じゃあ、この際慣れてくれよ、俺と話す事自体は出来るだろ?」

 

「え、えっと…エッチなお話で無ければ…」

 

「いや、そんな話するわけないだろ!?ゆんゆんは俺を何だと思っているんだよ!!」

 

『底無しのスケベだと思っていますよ。』

 

以前めぐみんに言われた言葉が脳内で響く。

俺って、そんなにスケベかな?…そりゃ、めぐみんには色々やっちゃっているけどさ。

でも、めぐみんは俺の彼女なんだし、その、多少は求めたって何も問題はない筈だろ?

 

「ご、ごめんなさい、カズマさん!その、私カズマさんを信じていますから!!」

 

俺を怒らせたとでも思ったのか、ゆんゆんは青い顔をして謝ってきた。

 

「わ、分かったから、落ち着いてくれ!」

 

「は、はい…。」

 

「…落ち着いたか?じゃあ、行こうぜ。」

 

俺はそう言って、ゆんゆんに手を差し出す。

あ、ヤベ!?何時もの癖でめぐみんの時と同じようにしちまった。

 

「~~!!」

 

今更手を引っ込めるわけにもいかず、暫く固まっていたら、

ゆんゆんが頬を染めながら、ゆっくり俺の手を取った。

 

「…えっと、ゆんゆん?無理とかしなくても平気だからな?」

 

「だ、大丈夫です!カズマさんは友達なんですから!!」

 

ゆんゆんはキッパリ宣言して、俺の手をガッツリ掴む。

…あの、ゆんゆんさん?近いんですけど!何か良い香りがするんですけどー!!

 

「えっと、こうした方が楽だよね?」

 

ゆんゆんは独り言を言いながら、自分の立ち位置を確認している。

そして、何を思ったのか、ゆんゆんは俺の腕に抱きつく様な位置で落ち着いた。

 

ちょっと待ってくれ!!何か柔らかいものが俺の腕に当たっているんだけど!!?

こ、この子めぐみんと同い年だろ!?何だ此れは!?反則じゃないのか!?

最近はめぐみんサイズも良いと思っていたけれど、この包み込むような抱擁感はっ!!

 

「あ、あの。大丈夫ですか、カズマさん?」

 

俺が未知なる感触と戦っていると、ゆんゆんが心配そうに俺を見上げてきた。

!?ちょ!ヤバイって、上目遣いでその表情は可愛いが過ぎるだろう!?

いやいやいやっ!冷静になるんだっ!佐藤和真!お前にはめぐみんという、とても可愛い彼女がいるのだから!?

 

「…やっぱり、私と一緒では嫌ですよね…。ごめんなさいカズマさん!」

 

俺が一人で悶々としていると、ゆんゆんが落ち込んでいた。

しまった!?っていうか俺!さっきから、ゆんゆんにまったく返事を返して無いじゃん!!

 

「あーごめん、ゆんゆん!ちょっと考え事をしていたんだよ。

だから、ゆんゆんの事が嫌だとか、そんな事は絶対無いから安心してくれよ!」

 

「本当ですか!……良かったです…。」

 

流石に腕に当たっている物は指摘出来なかったが、何とか納得してくれたようだ。

 

俺の言葉で安心したのか、ゆんゆんは安堵のため息を吐いて、俺の腕を抱きしめた。

だからー!ゆんゆんのゆんゆんしている物が当たっているってば!!

 

…これでワザとじゃないとか、めぐみんといい紅魔族の女の子ってみんな魔性を秘めているのか?

…いや、めぐみんは分かっていてやっていたのだから、ゆんゆんの此れ(天然)とは違うよな。

 

「…と、そろそろ向かわないと。」

 

ゆんゆんの手を引いて、目的地に移動する。

…これ、大丈夫かなぁ。めぐみんに見られたら勘違いされそうだけど。

 

ギルドの職員が停留していると言う、小さなギルドの様な建物に入ると、初老の男性が俺達を迎えてくれた。

 

「いらっしゃい、今日はどの様なクエストをお探しかな?」

 

「あ、俺達アクセルのギルドから来ました。此方を確認してください。」

 

職員の人に書類を提出すると、男性は此方を値踏みするような目で見てくる。

 

「まさかアクセルに、デストロイヤーと関わろうとする冒険者がいるとは思いませんでした。」

 

そう言いながらも、男性職員は現在のおおよその位置などの説明をしてくれた。

 

「そうなると、この3箇所の街から探す事になるんですね。」

 

「はい、そうなりますね。」

 

どの街を選ぶかが肝か。

めぐみん達が情報を持ってくるかもしれないし、一度合流をした方がいいな。

 

「分かりました、情報が集まり次第、向かう事にします。」

 

「頑張ってくださいね。」

 

職員の人に見送られて、建物を出る。

 

「先ずは、めぐみん達と合流だな。」

 

「はい!めぐみん達が良い情報を掴んでいるといいですね。」

 

 

 

―――――――――…

 

 

 

 

 

 

 

「お、二人が戻ってきたようだぞ。」

 

俺達に気づいたダクネスが、二人に声を掛ける。

 

「やっと、戻ったのね!二人とも遅かったじゃない。

というか、カズマ。アナタゆんゆんに変な事をしてないでしょうね?」

 

「するわけねーだろ!…で、そっちはどうだったんだ?」

 

俺の問い掛けに、めぐみんがドヤ顔をしながら口を開く。

 

「ふふふ、中々に有意義な情報を得られたと思いますよ。」

 

「へー、それは楽しみだな。じゃあ、情報を纏めるか。」

 

めぐみん達が掴んだ情報は、直接目撃者から話を聞けたようなので信憑性が高かった。

ギルド職員から得られた情報と合わせ、どの町に行くべきか検討した。

.

「カズマさん、もしかしたらもっと内側なのかも知れません。」

 

「そうですね、ゆんゆんの指摘通り、ギルドの予測とは少しずれがありそうです!」

 

「となると、国境から一番遠いこの街か。……おいおい、完全に王国を縦断しちまうじゃねーか。」

 

これは思ったより深刻かもしれない。侵攻ルートに人里が無ければ良いんだけど…

 

「じゃあ、この街に移動しよう!テレポート屋がこの街を登録していれば良いけど。」

 

最悪、支援魔法をフルに使って、全力で追いかけるしかないか?

めぐみんや、ゆんゆんは付いて来れるだろうか…

 

駄目元でテレポート屋を当たると、運良く持っている人がいた。

どうやら、このテレポート屋の実家がある町だったらしい。

 

「じゃあ、お願いします。」

 

料金を支払い転送してもらう。

目的の町に付いた俺達は門番の人に方角を確認して、

デストロイヤーが居ると思われる領域を目指す。

 

「念の為、支援魔法は掛けておこう。アクア頼む。」

 

「はいはい、任せて!」

 

メンバー全員にアクアの支援魔法が掛かっていく。

俺は敵感知スキルを発動させる。

 

「よし、周辺に敵はいなそうだ。軽くでいいから走っていこう。」

 

「う、走るのですか?流石に勘弁願いたいのですが…」

 

「ふーん、そういえばめぐみんは体術の授業をサボっていたよね。

もしかして、私に負けるのが嫌だから避けていたの?」

 

珍しくゆんゆんがめぐみんを煽り始めた。

挑発を受けためぐみんは、見るからに機嫌が悪くなって口を開く。

 

「何を言うのです!私が本気になれば、ゆんゆんなんて相手になりませんよ!!」

 

「其処まで言うなら、勝負よ!!今回は勝たせてもらうわよ!!」

 

「いいでしょう!ゆんゆん如きが私に勝てる筈もありませんから!」

 

この二人は仲がいいんだか悪いんだか…いや、仲良しではあるか。

 

「じゃ、出発するぞ!」

 

荷物を俺とダクネスで持ち、軽いランニングの気持ちで走り出した。

 

 

 

 

 

走り始めて30分程経過した頃

 

「な、中々やるじゃない!正直途中でへばると思っていたわ!」

 

「ふ、ふふ。甘いですよゆんゆん!私はカズマの相棒なのですよ!

普段からカズマの日課に付き合って、一緒に走っているのですよ!」

 

めぐみんの主張通り、俺達の日課に毎日付き合ってランニングをしている。

大体が途中で潰れて、俺が背負うハメになってはいるが…

最近ではそれすらもトレーニングになっているのだが、めぐみんには秘密にしている。

何故かって、そりゃ女の子を重り代わりにしているなんて、めぐみんに聞かれたら何言われるか分からないだろう?

 

二人のやり取りを見ながらそんな事を考えていると、微かに地響きのような音が聞こえた。

 

「ちょっと待った!皆、一度足を止めてくれ。」

 

「どうしたんだ、カズマ?敵感知に何か引っ掛かったのか?

ふふ、この辺りはどれ程のモンスターが現れるのか…。」

 

勝手に強敵を予想して、荒く息を吐きながら頬を染めているダクネス。

 

「地響きが聞こえた、一度確認してみる。」

 

はあはあ言っている変態をスルーして、俺は盗聴スキルを発動させた。

すると、今度ははっきりと地響きが聞こえてきた。

 

「どうですか、カズマ?」

 

「…うん、多分間違いないと思う。方角はあっちだ、行ってみようぜ!」

 

アクアに支援の掛けなおしをしてもらい、再び移動を開始する。

5分程走ると、遠くに砂煙が上がっているのが見えた。

 

「アレか?…見えた!ってか何だよあれは!?」

 

巨大な蜘蛛の様な見た目のそれは、兵器と呼ぶべきか、要塞と呼ぶべきか。

唖然とソレを見ていると、徐々に大きくなって行き、目視でも十分に姿が見えるようになった。

 

「おお!カズマ、デストロイヤーです!デストロイヤーですよ!!」

 

めぐみんが子供のようにはしゃぎだす。

これは、めぐみんがはしゃぐのも無理は無いな、

巨大兵器と言うのは確かに浪漫がある。

だけど、現実に目の当たりにすると、恐怖も沸いて来る。

あんな物が町に現れたら、悲惨な事になる。

 

「めぐみん、今は観測して経路を割り出そう。」

 

「はっ!そうでした!!カズマ地図を貸してください。」

 

めぐみんにペンと地図を渡すと、めぐみんは計測を始める。

 

「やっぱり、ギルドの情報と経路が大分ずれているな。…とりあえず、此方には来ないだろうが…」

 

「そうなの?あ、じゃあカズマ、そろそろお昼にしましょうよ!私お腹ペコペコなんですけど!」

 

自分達の位置は安全だと伝えると、アクアは緊張感の無い事を言い始める。

…良いけどさ、ってか、軽くとはいえアレだけ走った直後なのに、よく食欲が沸くなぁ。

 

観測を続けながら昼食の準備を始める。荷物から買ってきた弁当を取り出し、飲み水を用意した。

 

「どうだ?めぐみん、進路上に町はあるか?」

 

「……周辺には無さそうですね、何処も外れていそうです。

尤も、このまま進路を変えなければの話ですが。」

 

心配そうに覗き込んでいたダクネスがめぐみんに問い掛けていた。

めぐみんの言う通りなんだよな、デストロイヤーは進路を変えないとは聞いたが、本当だろうか?

今は考えていても仕方のない事だが、一抹の不安を覚える。

 

「なあ、めぐみん。」

 

「如何しましたか?カズマ。」

 

「めぐみんの爆裂魔法でアレを破壊出来るか?」

 

「え!?デストロイヤーをですか!?うーん、デストロイヤーには結界がありますので、

たとえ私とカズマが同時に撃ち込んだとしても、弾かれてしまうかもしれません。

ですが!デストロイヤーに爆裂魔法を撃ち込むと言うのは良い案かも知れません!!

カズマ、今日の標的はあれにしても良いですかっ!?」

 

この後はキールのダンジョンを目指すぐらいだし、ここで日課の爆裂を撃たせるのはありだな。

デストロイヤーがどれ程の物かも見てみたいし、結界というのも確認したい。

 

「撃つのは構わないけど、此処から届くのか?」

 

「ふふふ、この私を誰だと思っているのですかっ!この距離なら十分に届きますよ!!」

 

マジかよ…此処からだと数キロは離れていると思うんだが…

フンス!という感じに立ち上がり、ドヤ顔で此方を見るめぐみん。

 

「凄いわね、めぐみん。じゃあ、撃っちゃいなさいよ。」

 

アクアは昼食を食べながら、此方の話に口を挟んでくる。

 

「ふふふ、言われるまでもありませんよ!」

 

「おいカズマ、本当に撃たせても良いのか?」

 

「問題はないだろ、アレを破壊出来ればそれに越した事はないし、

予想通りに弾かれたとしても此方には何のリスクも無い。」

 

「むう、確かにそうだな、万に一つでもデストロイヤーを破壊出来る可能性があるのなら、

それを試すのも悪くは無いか。」

 

何かを心配していたようだが、ダクネスは納得したように頷いていた。

 

「では行きますよ!!『エクスプロージョン!!!』」

 

千里眼で確認していると、爆裂魔法が着弾する寸前に巨大な結界が張られたのが見えた。

結界はめぐみんの爆裂魔法に耐えるように展開されていたが、

もう一押しで結界を破壊出来るのではと思える程、所々に細かくヒビが入っていた。

 

「何よ、デストロイヤーの結界も大したことはないわね。」

 

「え?アクアお前、此処から見えたのかよ!?」

 

こいつも大概規格外だな。まあ、普段は残念な子でも女神だと言うのは事実だもんな。

 

「ねえ、カズマ。アンタ何か失礼な事考えなかった?」

 

「いや、考えてないよ。さあ飯食ったら、ギルドに報告だな。」

 

遠くのデストロイヤーを観察しながら、昼食を取った。

帰り際に、もう一度観測して経路を計り、爆裂魔法で計測に狂いが生じて無いか確認を取る。

 

「問題は無さそうだな。じゃあ、帰ろうぜ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺とゆんゆんのテレポートでアクセルに戻り、ギルドに報告を済ませた。

 

「お疲れ様です、カズマさん。此方の情報はギルドで管理致します。

では、今回の報酬になります。お受け取り下さい。」

 

「ありがとうございます。」

 

ルナさんに計測データを提出して、報酬を受け取る。

 

「では、一度屋敷に戻りましょうか。」

 

俺達はダンジョンに行く準備をまだしていなかったので、戻る必要があった。

 

ギルドを出る前に、ルナさんからキールのダンジョンへ潜る為の許可を貰った。

 

 

 

「一時はどうなるかと思ったけど、何とかなりそうね。」

 

「そうですね、予定よりは遅れましたけど、この時間ならまだ許容範囲内です。」

 

アクアとゆんゆんは屋敷に戻る道中で楽しげに会話を続けていた。

 

「今日の夕飯はどうするか。」

 

「確か、小屋には簡単な調理場があった筈です。」

 

「じゃあ、出る前に食材だけ買えばいいか。」

 

俺達は屋敷に戻り、各々準備に入る。

 

「えっと、用意するのは着替えとタオルと…」

 

「あ、カズマ。松明を買わないとです!」

 

ああ、暗視スキルがあるからすっかり忘れていた。

 

「じゃ、後で買っておこう。…後は忘れ物はねーか?」

 

「ないですね、ちょむすけにもご飯を出しましたし、

明日の分も用意してあるので自分で食べてくれるでしょう。」

 

「…なあ、めぐみん。そいつは本当に猫なのか?」

 

此れまでも、浮かんだり火を噴いたりと色々可笑しなところはあったが、知能まで高いのかよ。

 

「失礼な男ですね、カズマは!アナタはカズマの様になってはいけませんよー」

 

俺の事を貶しながら、ちょむすけに甘い声で話しかけるめぐみん。

……これって、将来俺達に子供が出来たら、同じ事をされそうじゃね?

お父さんはのけ者扱いにされてしまう運命なのか。そんな未来を幻視してしまった。

 

「…行くか。」

 

 

 

町で必要なものを買い揃え、俺達はダンジョンを目指す。

 

「普通に向かうと半日位掛かるんだったか?」

 

「そうだな。だが、先程の様に多少走って行けば、夜には着くだろう。」

 

「まあ、それをするのはめぐみんの体力が戻ってからだな。」

 

元々急ぐ必要がない旅路だ。野宿はしたくないから夜中までには着きたいが、

今からなら歩いて行っても夜半過ぎには付くだろうし何も問題は無い。

 

 

道中、特にモンスターに襲われる事もなく、夜の帳が訪れる頃には目的地に着いていた。

ダンジョンに併設された小屋に入ってみると、定期的に手入れをされているのか綺麗だった。

 

「意外に綺麗なところだな、もっと薄汚れていると思ってたよ。」

 

「ここはギルドが管理しているからな、そこまで汚れているわけがないだろう。」

 

結構遠いのに、ちゃんと掃除とか来ているんだな。

 

「ベッドは4つですか。仕方ありませんね、カズマ一緒に寝ますよ。」

 

「ん?ああ。」

 

「それならゆんゆん、私達はこっちで一緒に寝ましょう!」

 

「はい、アクアさん!」

 

ん?ベッドが余ったぞ。荷物置き場にすればいいか。

 

「お前達の仲の良さには呆れるが、こうして一人残されるというのは寂しいものだな。」

 

ダクネスは寂しそうな表情で呟く。

 

「しかし、この状況も…悪くは、ないな!」

 

一転して何時ものスイッチが入ったようなので、問題はないとしよう。

 

「じゃ、俺達は飯の準備して来るから、部屋の掃除は任せた。」

 

定期的に掃除をされているとは言っても、汚れてないわけではない。

アクア達に掃除を任せて、俺とめぐみんは調理場に立つ。

 

「ちょっと狭いな。」

 

「仕方ないですよ、手早く終わらせましょう。」

 

 

30分程で調理を終えて、皆で食卓を囲んだ。

 

「そういやアクア、デストロイヤーの結界が大した事ないとか言っていたけど、お前破壊出来るのか?」

 

昼間にアクアが言っていた事を思い出したので、問いかけてみた。

 

「そんな事も言ったわね。そうねぇ、セイクリッドブレイクスペルなら解除出来るかもしれないわね。」

 

セイクリッドブレイクスペルか…。

 

「あの魔法は射程がそんなに長く無かったよな?」

 

「そうねぇ、私が使っても精々100メートルそこそこ位かしらね。」

 

デストロイヤー相手に100メートルじゃ、鼻先と変わらないな。

安全に破壊できる算段がつけば、アレの討伐をしようかと思っていたが、そう上手くはいかないもんだな。

 

「カズマさん、もしかしてデストロイヤーを破壊するつもりなんですか?」

 

「いや、射程100メートルじゃアクアが危険だろ?そんな事はさせられないって。

それに、おれとめぐみんの爆裂魔法だけで破壊出来るとも思えないしな。」

 

せめて、めぐみんと同威力の爆裂魔法が使えればいいんだけど、

俺の爆裂魔法じゃ、どう考えても威力不足なんだよな。今のめぐみんの2割程度の威力が限界だし。

そもそも、俺の爆裂魔法の射程は200メートルもないし、そこまで離れると制御が不安になる。

 

「ふむ、アレを破壊出来るのならして貰いたいものだが、これ以上の被害が出る前に何とか出来ないのか?」

 

ダクネスの言うとおり、今後も被害が出ないとは限らないが。

 

「うーん、現状だとどう考えても火力不足だろうな。

アクアが結界を破壊してゆんゆんと一緒にテレポートでその場から離脱。

破壊を確認したら、めぐみん級の爆裂魔法の同時発射で足を破壊して動きを止める。

これなら、討伐とまではいかなくてもアレの無力化にはなると思ったんだが。」

 

めぐみん級の爆裂魔法というのが最大のネックだ。

そもそも爆裂魔法を覚えている奴なんて、魔王軍含めたってそんなにいないだろうし。

 

今後、俺達がデストロイヤーの破壊が出来るとしたら、

俺のレベルがもっと上がるか、ゆんゆんが爆裂魔法を修得した時位だろうな。

 

「私と同程度の爆裂魔法ですか…」

 

めぐみんはそう言って思案に入る。流石に心当たりは無いだろうな。

 

「とりあえず、今は明日の事だ。飯食ったら早めに休もうぜ。」

 

「そうね、よーし!明日は頑張るわよー!」

 

アクアはゆんゆんとハイタッチをしながら気合を入れた。

食事を終えて眠る準備を済ませると、それぞれがベッドに入っていく。

 

「俺達も寝るか。今日は結構疲れたな。」

 

「そうですね、今日はかなり走らされましたので、私も草臥れてしまいましたよ。」

 

ベッドに入り、めぐみんを抱き寄せる。

 

「お休み、めぐみん。…ん。」

 

「ん…ふう、カズマお休みなさいです。」

 

皆から見えないように、こっそりとキスを交わし合い、

俺達は、そのまま眠りについた。

 

 




流石に投稿ペースが落ちてきました。
今後は一週間前後くらいを目処にがんばっていきます。
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