このすば カズマが冷静で少し大人な対応ができていたら。   作:如月空

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デストロイヤー破壊作戦①

「さみぃーな!」

 

「最近、冷えてきたからね。もうそろそろ秋も終わりだね。」

 

「冬になったらこれ以上になるのかよ!…てか、お前は余裕そうだな。」

 

「僕は前衛としての鍛錬を欠かせないからね。おかげでかなり筋力が付いて来ているんだよ。」

 

それは見れば分かる。

フルプレート状態でランニングをするような変態は、コイツ以外いないだろう。

 

「グラムの恩恵無しでよくやるわ。何だ?お前は筋肉モリモリのマッチョマンにでもなる気か?」

 

「アハハ、其れも良いかもね!サトウ君も一緒に目指すかい?」

 

「全力でお断りする!!」

 

俺達が冗談めいたやり取りをしていると後ろにいる連中が声を上げた。

 

「ふ、ふたりとも、…よくその、状態…で喋れる…わ、ね!」

 

「私たち…は、付いて行く…だ、けで、きついんだけど!」

 

朝練に初参加したフィオとクレメアは、長距離ランニングですっかりへばっていた。

 

「少しペースを落とした方が良さそうだな。」

 

「そうだね。」

 

ペースを落とすとようやく二人が追いついて来る。

 

「お二人は戦士と盗賊だと言うのに情けないですねぇ。」

 

「「カズマに背負われてる、アンタには言われたくない!!」」

 

めぐみんに煽られた二人は堪らず食って掛かる。

二人が怒るのも無理は無い。めぐみんは開始早々でリタイアして、

今は俺の背中で暖を取っているんだから。

 

「毛布に包まっているめぐみんさんは暖かそうで良いですね。」

 

「そうでもないですよ、カズマ。この状態では足元が寒いです。」

 

こいつは…嫌味が通じないのか、分かってて言ってるのか。

…後者だな。

 

「めぐみんは相変わらず、キミにべったりなんだね。」

 

「何を言っているんです?後ろの二人も、貴方と何時も一緒に居るではないですか。」

 

めぐみんがミツルギにそう指摘すると、後ろの二人はモジモジとしだした。

 

「うん、本当にいい子達なんだよ。何時も気遣ってくれて…

僕にとっては、本当にとても大切で素敵な仲間だよ!」

 

ミツルギの天然が発動してしまい、堪らずめぐみんは二人に哀れみの視線を送る。

 

「ちょ!めぐみん!そんな目で見ないでよ!!」

 

「私達だって、キョウヤを大切な仲間だって思っているんだから!!」

 

ミツルギの仲間がこいつらじゃなきゃ、コイツはとっくに刺し殺されてんじゃねえかな?

正直、俺はそう思っている。

 

「所で、ミツルギがまっちょまんとやらを目指すそうなのですが、貴方達は良いのですか?」

 

「ひ、貧弱な男よりは良いじゃない!」

 

「そ、そうよ!キョウヤなら筋肉モリモリでもきっと似合うわよ!!」

 

筋骨隆々のさわやかイケメンか。

そんなミツルギを想像するだけで、笑いがこみ上げてくる。

まったく…軽くとは言え、走っている最中に笑わせるなよな!

 

「そうですか?私は遠慮したいですね、触れた時にゴツゴツとしそうですし。

 私としてはカズマの様に、うっすらと筋肉がのっている方が好みです。

 触り心地がとても良いですし、程よい柔らかさもあります。

 そして、夜はその心地よい体に身を預け、程よく逞しい腕に抱かれながら眠る。

 これこそが!至高にして最高の幸せを感じる事が出来ると思うんです!!」

 

途中から完全に惚気になって、俺は恥ずかしさのあまり走るペースを上げる。

てか、こいつゆんゆん相手もそうだったけど、関係を知っている相手にはとことん惚気るな。

 

「め、めぐみん?いきなり惚気話をされても困るんだけど…。」

 

「べ、別にアンタの事が羨ましいとか思ってないんだからね!!」

 

そんな会話を女子達は続けているが、当のミツルギは自分の事を蚊帳の外だと思っているらしい。

 

フィオ達もはっきりと伝えりゃ良いのに…

 

「つか、体力戻ったんなら、そろそろ帰ろうぜ。こっちは寒いんだよ!」

 

早朝から騒がしく、俺たちの一日が始まった。

 

 

――――――――――……

 

 

 

 

 

 

 

 

「昨日のうどんは美味しかったわよねー!カズマー、また今度お願いね!」

 

「はいはい。」

 

「カズマカズマ!今日はギルドに行くんですよね!久々に大量の敵に爆裂魔法を打ち込みたいです!」

 

朝食後、今日の予定をまったり話していると、突然屋敷の扉が叩かれた。

 

「サトウさん!いらっしゃいますか!?」

 

「おや?この声は…」

 

突然の来訪者を迎えるために、ダクネスが玄関に向かう。

暫くすると、ダクネスは来訪者を連れて戻ってきた。

 

「皆さん!突然申し訳ありません!!今からギルドに来て頂けますか!?」

 

来訪者はルナさんだった。

彼女は焦った表情で用件を伝えてくる。

 

「そろそろ向かおうと思っていたので良いですけど、何かあったんです?」

 

「サトウさん達に直接依頼したいと言う方が来られていまして…。」

 

「俺達に直接ですか?」

 

「はい、そうです。」

 

何だ?ものすごい厄介事な気がするぞ!?

 

「そういう事であれば、行かないわけにはいかないだろう。カズマ、すぐに準備をしてくれ。」

 

「わ、分かったよ。」

 

ダクネスの勢いに気圧されて、部屋に戻る。

 

「一体何があったんでしょうね?」

 

「わからん。けど名指しの依頼って聞く限り、厄介事に思えるけどな。」

 

「なら、準備はしっかりしていかないとダメですね。」

 

「そうだな。」

 

俺はちゅんちゅん丸を腰に差し、手製のウェポンホルダーを着けて弓と矢筒を背負う。

めぐみんとお揃いのウエストポーチに道具を入れ、腰に巻きつける。

最後に杖を持って準備完了だ!

 

「…カズマのフル装備は、相変わらずゴテゴテしていますね。」

 

「仕方ないだろ。クエストによって使い分けるスタイルなんだから。」

 

準備を整え、戸締りのチェックをして玄関前に集まる。

 

「よし、向かうか。」

 

ギルドに向かって移動を始める。

 

「それで態々私達に依頼とは、一体どのような内容なのでしょうか?」

 

「すみません!私もまだ詳しい内容を聞いていないので…。」

 

「…信頼出来る相手なんでしょうね?」

 

ある男の事が頭を過ぎり、不安になった俺はルナさんに確認を取る。

 

「その心配はいらないと思います!とても生真面目な御方ですから。」

 

それはそれで、気苦労しそうな相手だな。

 

若干の不安を抱えながら、ギルドに辿り着く。

 

ギルド内に入ると、護衛の騎士と思われる者達と以前見かけた白スーツの女性がいる。

そしてその傍には、ミツルギのパーティーとテイラーのパーティが勢揃いしていた。

 

「シンフォニア卿!サトウさんをお連れしました!」

 

ルナさんが中央に座っていた女性に声を掛ける。

確か、ホーストの時に居た女だよな?卿ってことは貴族だったのか。

 

「済まないルナ殿、手数を掛けた。」

 

「いえ、此れも仕事ですから。」

 

ルナさんは貴族に一礼して下がる。

其れを確認すると、貴族の女が立ち上がった。

 

「知っている方も何人か居られる様だが、先ずは自己紹介をしましょう。」

 

バっと騎士達が一斉に佇まいを直す。

 

「私はシンフォニア家のクレアと申します。ベルゼルグ王国に所属する貴族の一人です。

……あの、どうかされましたか?」

 

自己紹介と聞いて、目を輝かせためぐみんを俺は慌てて取り押さえていた。

 

「あ、いえ。気にせずに続けてください。」

 

「む、そ、そうですか?では、本題をお話します。」

 

クレアはコホンと一つ咳払いをして話を再開させる。

 

「我等の国にかのデストロイヤーが侵攻して来たと言うのは、お集まりの方々もご存知かと思います。」

 

あの時の大型機動要塞か。

 

「そして、何度も調査を繰り返した結果、高確率で王都そして此処アクセルに侵攻して来る事が解かったのです!」

 

『なっ!?』

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ!俺達が調査した時はそんなルートにならなかったぞ?」

 

あの調査から1週間も経っていない。其れなのにそんなにルートが変わるのか!?

 

「確かに、アクセルから届いた調査報告のままであればそうでした。

ですが、状況は変わるものです。アレの調査が小まめに行われるのはその為ですよ。」

 

デストロイヤーがアクセルに侵攻してくる!?冗談じゃねえぞ!!

 

「それで?俺達を集めた理由は?」

 

「お、おい!カズマ!少しは口を慎め!」

 

「良いのですよ、ダスティネス卿。」

 

…?ダスティネス卿?え?誰が??

 

「し、シンフォニア卿!わ、私は冒険者のダクネスと言う!だ、ダスティネスでは…。」

 

「こんな時に何を言っているのです?ダスティネス・フォード・ララティーナ卿。」

 

クレアの言葉にダクネスは耳まで真っ赤になる。

 

「え?ララティーナ?」

 

「ダクネスさんが、あのダスティネス卿!?」

 

「あら、ダクネス。貴方は貴族だったのね?」

 

「ぷあ、カズマいきなり口を塞ぐなんて酷いです!それでダクネスが貴族だと言うのは本当ですか?」

 

仲間から一斉に声を掛けられると、ダクネスは顔を両手で覆い隠して蹲った。

 

「だ、だから、隠していたと言うのに。うう、この責めは私の好みの責めではなーい!」

 

「何で?私は良い名前だと思うわよ!ララティーナ!!」

 

「そうですよ!ララティーナさん!!可愛いお名前じゃないですか!!」

 

アクアとゆんゆんが励ますように名前を連呼すると、益々ダクネスは蹲った。

 

「二人の言う通り良い名前じゃないか!なあ、ララティーナ!!」

 

「うわああん!!」

 

ニヤニヤしながら便乗してからかったら、ダクネスはその場で突っ伏した。

 

「カズマまでからかうと収拾がつきませんよ。」

 

「いてっ!?」

 

めぐみんに杖で小突かれてしまったので、今は此れぐらいにしておいてやろう。

 

「み、ミツルギ殿、彼らは何時もあんな感じなのですか?」

 

「あ、はい、クレア様。彼らは概ねあんな感じです。」

 

クレアは俺達の事を呆れたような目で見ていた。

 

「それで、さっきの話は本当なのか?」

 

「ん?其方の方は確かにダスティネス卿ですよ。」

 

「いや!そっちじゃなく!!」

 

「…デストロイヤーの侵攻は間違いありません。このままでは、

運が良くても町の一部は確実に破壊されてしまうでしょう。」

 

「それで?さっきも聞いたとは思うが俺達を集めたのは?」

 

「かのベルディアを倒したという貴方方にデストロイヤーの破壊を頼みたいのです!

聞けば、爆裂魔法を扱える者が二人もいると聞いています。

デストロイヤーを止められるのは貴方方しか居ないのです!!」

 

クレアは興奮してきたのか、先程までの口調とは変わり力強い口調になる。

 

デストロイヤーの破壊、以前確かに考えた事だが、今の俺達には力が足りない。

 

「高額の報酬だって用意してあります!だから!どうか私達の国を救って欲しい!!」

 

その言葉に、先程まで事の成り行きを見ていたダストが急に口を開いた。

 

「高額の報酬ねぇ、そんなの本当に払われるのかよ!?」

 

「お、おい!ダスト!!」

 

「ベルディアの報酬だってまだ貰ってないんだぜ!?今回だってアテになるのかよ!!」

 

「なっ!?ベルディアの報酬が払われていない!?王国からはしっかりと送ったのだぞ!?」

 

驚愕の表情を浮かべているクレアに対して、今度はミツルギが口を開く。

 

「…クレア様、残念ながら彼が言っている事は事実です。僕らはまだ報奨金所か報酬すら貰っていません。」

 

「なっ!?ミツルギ殿まで!?」

 

クリスの情報は正確だったようだ。やはりこの街の領主が横領しているのだろう。

 

「まさか、”また”アルダープの奴が何かしているのか?これは王国の信用問題だぞ…!」

 

クレアはぶつぶつと小声で呟いていた。

”また”と言ったか、やっぱり王国からも目を付けられているんだな。

 

「ダスト!ベルディアの件は俺も思うところがあるけど、今はやめとけって!」

 

「ちっ!」

 

ここでクレアを責めるのは流石にお門違いだ。

それよりも今はデストロイヤーをどうするかだ。

 

「今回の報酬は、この私が直々に持って来る!それで信用してほしい。」

 

貴族であるクレアが頭を下げた事で、ダストも仕方なしと大人しくなる。

あれ?すっかり忘れてたけど、ダストって警察に捕まってなかったっけ?

 

「報酬も大事だけど、今はデストロイヤーを如何破壊するかを考えようぜ!」

 

「何だよ、カズマ。お前は良い案がないのかよ?」

 

「サトウ君、頼ってばかりで悪いが僕らでは打つ手が思いつかない!」

 

「カズマが来るまでに何度も相談したんだが、俺達は具体的な案が思いつかなかったんだ。」

 

キースに続くように、ミツルギとテイラーも打つ手無しと言って来る。

 

「あら?確かカズマはあの時、破壊出来るかも?っていう話をしてなかったかしら?」

 

「そ、その話は本当なのですか!?サトウ殿!?」

 

アクアの言葉にクレアは思い切り食らいつく。

その勢いと圧で俺はたじろいでしまった。

 

「た、確かに言いましたけど、結局現状では火力不足という事になったんですよ。」

 

「火力不足なのですか?爆裂魔法を扱えるのが二人も居ると言うのに…あ!結界が…。」

 

「ああ、いえ。結界の方は問題ないと思います。それに関しては優秀な奴がいるので。」

 

俺がそう言うとアクアはドヤ顔をしていた。

 

「ふふん!私に任せなさいって!あの程度の結界くらい破壊してみせるわ!!」

 

「お、おお!…そうなると火力不足だと言うのは如何いう事です?」

 

「単純に俺とこいつの爆裂魔法には10倍近い威力差があるってことですよ。

なので、俺は火力としてアテに出来ません。」

 

「そ、そうですか。一応こちらもデストロイヤーを破壊するために色々用意していたのですが…。」

 

そこに突然、ギルドに来訪者がやって来る。

 

「遅くなってすみません!ご依頼されていた爆発ポーションの納品に来ました!!」

 

「え!?ウィズ!?」

 

「あ、皆さんお久しぶりです。お家の方は如何ですか?」

 

「あ、ああ。特に問題はないよ。…そうか、爆発ポーションか。」

 

そういや、ウィズの店に置いてあったな、だけどアレにどれ程の効果があるんだろうか。

 

「おお!ウィズ魔法具店と言う名前を聞いて、もしやと思っていましたが、かの有名な氷の魔女だったとは。」

 

「氷の魔女?」

 

「あ、その!…昔少しヤンチャしてまして…その時に付いた渾名なので、あまり言わないでください。」

 

そういや、リッチーになる前は凄腕の冒険者だったんだっけ。

…ウィズは爆裂魔法…せめて爆発魔法を修得していないだろうか?

 

「なあ、ウィズは爆裂魔法とか覚えてないよな?」

 

「え?爆裂魔法ですか?使えますけど…?」

 

「そうか、やっぱ覚えて…ん?」

 

「ウィズ、貴方も爆裂魔法を操れたのですか!?」

 

「あ、はい。めぐみんさん程練度が高いわけではありませんが、扱う事は出来ますよ。」

 

マジで!?あ、でもウィズは協力してくれるのか?

 

「ウィズ殿!!是非貴方も、このデストロイヤー破壊作戦に、参加して頂けないでしょうか!?」

 

「え、ええ!?デストロイヤーの破壊ですか!?」

 

「ええ!結界は此方のアークプリーストが破壊出来ると言っているので、後は火力だけなんです!」

 

「あ、アクア様がですか?」

 

「このままでは王都そして、此処アクセルにもデストロイヤーが侵攻して来ます!

そして、その道中には他にも村や町が在るのです!このままでは多くの犠牲が出てしまいます!!」

 

「ええ!?此処に来るんですか!?」

 

「そうです!ウィズ殿、如何か協力して頂けませんか?報酬も弾みますよ!!」

 

「…解かりました!アクセルを護るためなら、お手伝い致します!!」

 

よかった、ウィズの協力が得られたんなら目はあるかもしれない。

つうか、ウィズの奴、絶対報酬で釣られたよな?

だって、目の色変わっているし。

 

「ウィズ殿!ありがとうございます!!サトウ殿!今ならどうですか!?」

 

「…やってみない事には解かりませんよ?全ては机上の空論ですから。」

 

「今までは奴に対して何の対抗手段もありませんでした!

それに比べれば、十分に命を張る価値はあります!!」

 

こうしてデストロイヤー破壊作戦は始まった。

作戦の指揮官は俺という事になって驚いたが、

ベルディアを討伐した実績と言われてしまえば従うしかない。

 

めぐみんの誕生日を控えているって言うのに、何でこんな状況になってるんだよ…。

 

 

 

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