このすば カズマが冷静で少し大人な対応ができていたら。   作:如月空

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昨日は涼しかったのに…
何でまた暑くなるんだよ…


デストロイヤー破壊作戦②

俺、ミツルギ、テイラーの3パーティーとウィズはクレア達に連れられて、

デストロイヤーの侵攻上にある、山間に囲まれた小さな町を訪れていた。

 

「此処も駄目だな。ミツルギ、次のポイントは?」

 

「うーん、そうだね。此処が駄目となると、こっちも駄目だろうから…。」

 

俺とミツルギは、迎撃ポイントを選出する為に、目星をつけた場所を探っていた。

 

山間に出来た町だけに、周辺は深い森と山に囲まれ、とてもじゃないが見通しが悪い。

『もっと手前で迎撃すれば!』という意見も出たが、魔物が多くて危険過ぎるという事。

それで結局、町の傍になってしまったワケだが…。

 

「やっぱり、ある程度開けた場所となると、どうしても町の近くになってしまうね。」

 

俺達が開けた場所を探している理由は、いくつかある。

 

先ず、ある程度の距離が無ければ、爆裂魔法が撃てない。

いかに爆裂魔法でも、アレだけの質量を持つ相手に対して、本体を破壊するなんて事は出来ない。

つまり、止める為には爆裂魔法の狙いを、デストロイヤーの脚部に絞る必要がある。

脚部は当然、要塞の下側についているので、見通しの悪い所では直撃させる事が難しい。

 

結界破壊を担当するアクアも、見通しの悪い所では危険が伴う。

それは連絡が遅れるという事もあるが、魔物に襲われる可能性もあるからだ。

結界破壊の最中に横槍が入れば、全てが水泡に帰する可能性もある。

 

そして、全体指揮を担っている俺は、瞬時に判断を下さないとならない。

少しでも判断を迷えば、作戦の失敗に繋がり、仲間や友人を危険に晒してしまう事になる。

 

「クソ!空を飛べるスキルが欲しいぜ!」

 

「ない物ネダリしても仕方ないよ。一回戻るしかないね。」

 

 

 

――――――――――…

 

 

 

 

 

 

「サトウ殿とミツルギ殿が戻られました!」

 

俺達が町に戻ると、待機していた騎士にクレアの元へ案内された。

 

「戻られましたか!それで首尾の方は?」

 

「予想通り、見通しが悪すぎて、迎撃に使えそうな場所はなかったですよ。」

 

「クレア様、ご期待に沿えず申し訳ありません!」

 

そう報告すると、クレアは表情を曇らせる。

 

「不本意ではありますが、やはり最初の案で行くしか無さそうですね。」

 

「準備の方は?」

 

「念の為に進めてあります。町の住人が協力的なので、今日のうちに完成出来そうです。」

 

準備と言うのは、物見櫓(ものみやぐら)の事だ。

 

この町の周辺地図を確認した時に、期待薄と思っていたので予め建設を頼んでおいた。

デストロイヤーの脚部は、左右両方破壊する必要があるので作ってもらう櫓は二つだ。

 

「それで他の皆は、何処です?」

 

「めぐみん殿とウィズ殿、そしてダスティネス卿以外の皆様は、櫓の建設を手伝っています。」

 

「うん?三人は何処に行ったんです?」

 

「ウィズ殿が一度、狙いの確認をしたいと仰ったので、

進路の測定が出来るめぐみん殿と、護衛役を買って出たダスティネス卿と共に、

騎士団所属の魔術師を連れてデストロイヤーの観測へ向かいました。」

 

めぐみんもダクネスも無茶をするな…。

まぁ、ウィズが付いているんなら心配はいらないか。

 

「サトウ君、めぐみんが心配かい?」

 

「まあな、けど大丈夫だろ。そこらの魔物に後れを取るような面子じゃねえよ。

さてと…おい、ミツルギ。俺達も櫓の建設を手伝いに行こうぜ。」

 

「ん、そうだね!土木工事のアルバイトで培った経験の見せ所だね!!」

 

「おう!存分に発揮してやろうじゃねえか!」

 

「では、クレア様。僕達は此れで失礼させて頂きます!」

 

クレアは何故か、困惑の表情を浮かべていた。

 

「お、お二人は土木工事の経験があるのですか?」

 

「?ええ、ありますよ。クレア様何故その様な事をお聞きに?」

 

「あ、いえ!気にしないでください!櫓の方、よろしくお願いします!」

 

クレアが何かを言い掛けたのが気にはなったが、今は櫓作りを急がないといけない。

 

「よし、『スピードアゲイン!』それぞれの櫓に分かれて作業手伝うぞ!」

 

「わかった!じゃあ僕は此方に向かうよ!」

 

俺達は其々の櫓に走っていった。

 

 

 

――――――――――――…

 

 

 

 

 

≪アクア視点≫

 

 

町の人が総出で手伝ってるんじゃないかと思うほど、協力してくれる住人は多かった。

見れば女性は勿論、お年寄りから小さな子供までいる。

 

私は手先が器用で物作りも得意だったので、こっちの櫓作りは私を中心に進められている。

 

うん!魔剣を作るより、こっちの方がよっぽど楽ね!!

 

「おねえちゃん、おつかれしゃまです!これ、おみずです!」

 

私の所に小さな可愛らしい女の子が、水を持って来てくれた。

 

「ありがとね!お姉ちゃん頑張るからね!!」

 

私がそう言うと、女の子は満面の笑みを浮かべてくれた。

 

「がんばってねー!」

 

女の子は私に大きく手を振って、補給所の方に走っていった。

 

あんな小さな子まで、頑張っているんだもん!私も頑張らないと!!

それにしても、あの子可愛かったわね。本当、癒されると言うか…

将来あの二人(カズマめぐみん)に子供が出来たら、私がお世話しようかしら!?

 

「アクアさん、こっちも見て貰えますか!?」

 

「ええ、ゆんゆん。今行くわ!」

 

ゆんゆんが担当しているのは土台となる基礎工事の部分。

ここを疎かにすると、高い櫓を建てた時に倒壊してしまうわ!

 

「うん、これで合っているわよ!流石はゆんゆんね!!」

 

「えへへ…、ありがとう御座います!アクアさん!!」

 

私が褒めると、ゆんゆんは満面の笑顔を返してくる。

親友って、本当にいいわねぇ。

 

「おーい!こっちも見てくれよ!お前の説明通りに作ってみたぞ!」

 

今度はチンピラこと、ダストに呼ばれる。

ダスト達には、木材を繋ぎ合わせた分厚い板を作ってもらった。

 

「これだと後で使いづらいわよ。上下の長さは揃えて頂戴!」

 

「何だよ!こまけーなー!」

 

「此れを壁代わりに貼り付けていくんだから、長さが疎らだと付け辛いでしょ!!」

 

「ああん!分かったよ!なおしゃいいんだろ!?」

 

チンピラはやっぱりチンピラね!

せっかく、この私が天界で読んでいた漫画…

信奈ちゃんの野望から知識を引っ張ってきてあげたというのに!

 

「おー!一夜城か!考えたな、アクア!!」

 

いつの間にか戻ってきたカズマが、私の事を褒めてくれる。

 

「ふふん!どう?カズマー。私だってやる時はやるのよ!!」

 

「そうみたいだな!で?俺は何を手伝えばいい?」

 

「そうねぇ、カズマは趣旨が分かっているのだから、私と一緒に作業した方が良いわね。」

 

「あいよ!じゃ、一夜城ならぬ一夜櫓を完成させちまおうぜ!!」

 

皆の頑張りに加えて、カズマも手伝ってくれたこともあって、此方の櫓は夕方前に完成した。

櫓の見張りを騎士の人に任せて、私達はもう一つの櫓へ向かった。

 

 

 

 

―――――――――…

 

 

 

 

 

 

 

 

≪めぐみん視点≫

 

夕方、私たちが調査から戻ると、皆はまだ作業中だとクレアから聞いた。

 

「では、私達は皆の食事を作りましょうか。ダクネス、手伝ってください。」

 

「分かった。この私も料理ぐらい出来るという事をカズマ達に分からせよう!」

 

我が家の料理当番は基本的に、カズマと私だけで担当している。

たまにゆんゆんやアクアが作る事もあるが、ダクネスは作らせて貰ってない。

 

カズマ曰く、『そんなに不器用なのに料理なんて出来るのかよ?』

中々に酷い話だと思う、ダクネスだって女性なんだから料理ぐらい出来るでしょうに。

 

私達は厨房を借りて、料理に取り掛かった。

ダクネスを見ると、手際良く料理をしている。

実は私も少し心配だったので、その光景を見て安堵のため息が出た。

 

「ふむ、めぐみん。味見をしてもらえないか?」

 

「良いですよ………。」

 

…何でしょう?不味くはないのですが、なんと言うか…普通。

普段から、カズマの美味しい手料理を食べ慣れてしまった所為なのか、

普通という感想以外が出なかった。

でも、そのまま伝えると、ダクネスを傷つけてしまいそうです。

 

「その、もう少し、濃い味付けにした方が良いと思います!」

 

「む?そうか?これでは駄目か?」

 

「あ、いえ。皆作業で疲れているでしょうし、そういう時は濃い味付けの方が喜ばれるのですよ。」

 

我ながら上手い返しが出来たと思う。

ダクネスは、成程と言って調味料を足していた。

 

「今度はどうだ?」

 

…塩辛い…私がなんとか修正しなくては…

 

「そ、そうですねぇ。あ!煮込むなら、もう少しお水を足した方が良いですよ!」

 

「お、そ、そうか。それで味付けの方なんだが…」

 

「あ!すみません!ダクネス。揚げ物があがったのでちょっと待ってください!

一度、そのまま煮込んでいてください。その後でもう一度味見をして見ます!」

 

「わ、分かった。」

 

あの水で、丁度良い塩加減になってくれれば良いのですが…

 

 

 

――――――――…

 

 

 

 

 

「うーん…普通ね!」

 

ダクネスの料理を食べたアクアが開口一番にそう答えた。

 

「ふ、普通!?」

 

「ああ、勘違いしないでね!別に不味いってわけじゃないの!

ただ、カズマやめぐみんの料理と比べちゃうとねー。」

 

アクアの言葉に悪意はないが、ダクネスは酷く落ち込んでしまった。

 

「まぁ、思った…ん?」

 

カズマがダクネスにトドメをさす前に、カズマのわき腹をひじで突く。

 

「…悪くは無いと思うぞ?この前はごめんな、ダクネス。料理出来ないなんて決め付けちまって。」

 

「そ、そうか?それなら、私も当番に加えてもらって良いか?」

 

ダクネスの言葉に、カズマは私をチラっと見てくる。

 

(上手く切り抜けてください。)

 

カズマは唇を読む事が出来るので、口パクでカズマに伝えた。

カズマは一瞬、嫌そうな表情をしたけど、上手くやってくれる筈。

 

「あー、実はな。最近料理の開発をしててな。」

 

「む、そういえば最近は変わった料理が多かったな。」

 

「そう!俺の国にあった料理を皆にも味わって欲しくてな!だから、俺が作りたいんだよ!」

 

「む…そうか。確かにあの料理は魅力的だな…。」

 

「だろ?基本的にめぐみんに手伝って貰おうと思っているけど、

うどんの時みたいにダクネスにも手伝ってもらう事があるからさ、

なるべく、俺達に任せて貰えねーか?」

 

流石はカズマです!これならダクネスも納得してくれる筈!

 

「む、う…。分かった。ただ、偶にで良いから私にも作らせてもらえないか?」

 

「ああ、うん。その時は頼むわ。」

 

最後はしまらなかったけど、これでダクネスがキッチンに立つ事はあまり無さそうです。

…ダクネスには個人的に料理を教えておきましょうか。

作った料理はアクアのおつまみにすればいいですし。

 

 

 

―――――――…

 

 

 

 

 

≪カズマ視点≫

 

 

夕食が終わり、作戦会議が始まった。

 

「では、それぞれの櫓でめぐみん殿とウィズ殿が待機して、アクア殿は櫓が交差する前方100メートル程の場所で奴の結界を破壊する。 アクア殿には護衛として、ミツルギ殿、ゆんゆん殿、フィオ殿が付くという事ですね。」

アクア殿は櫓が交差する前方100メートル程の場所で奴の結界を破壊する。

アクア殿には護衛として、ミツルギ殿、ゆんゆん殿、フィオ殿が付くという事ですね。」

 

クレアの言葉に俺は頷き、話を続ける。

 

「残りのメンバーは、デストロイヤーを無力化させる為にとりあえずは待機だ。」

 

「おいおい、無力化ってまさか、乗り込めってんじゃねえよな?」

 

作戦が気に入らないのか、ダストが不機嫌そうに言い放つ。

 

「何当たり前の事を聞いてるんだよ。乗り込まないと無力化出来ねえだろ?」

 

首尾良くデストロイヤーの足を止めたとしても、各種兵器が生き残っていたら危険しかない。

デストロイヤーは対空砲があるが、対地に関してはゴーレムぐらいしか戦力が無いので、

直接乗り込んで制圧しちまう方が、後々面倒が起こらなくて良いだろう。

 

「カズマ、乗り込む時は私が先陣を切るぞ!」

 

「…ああ、そうしてくれ。だが、先ずは止める事が重要だ。」

 

「アクア、そして私とウィズの責任が大きいですね…。」

 

めぐみんが不安そうに呟いた。

…そうだよな、めぐみんはまだ13歳だもんな。平気な筈がないよな。

 

「大丈夫だ、お前なら絶対出来るさ!頼りにしてるぜ、相棒!!」

 

俺がそう言うと、めぐみんは一度目を閉じて、俺に笑顔を向けた。

 

「カズマの方こそ、しっかり指揮を執って下さいね!信頼してますよ、相棒!!」

 

俺達は笑い合いながら、拳を合わせる。

 

「ねえ、いい雰囲気のところ悪いんだけど…私には何も無いの?」

 

「それを言うなら、私にも一言欲しいです。」

 

アクアとウィズが不満そうに此方を見ていた。

 

「お、お前らは言うまでもないだろ?絶対出来るって信じているよ!」

 

「そうよねぇ!カズマ分かっているじゃない!」

 

ちょろい女神様は簡単に口車に乗ってくれた。

其れを見たウィズは複雑そうな顔をしていたけど。

 

「じゃあ、皆!明日は頑張るわよー!!」

 

アクアの宣言にミツルギをはじめ、次々に鬨の声を上げた。

 

明日の昼には、デストロイヤーが此処に来る。

何としても、此処で止めないとな…

 

 




次回はいよいよ決戦開始です。

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