このすば カズマが冷静で少し大人な対応ができていたら。   作:如月空

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今回は(も?)視点がコロコロ変わります。


デストロイヤー破壊作戦③

≪アクア視点≫

 

翌朝。

 

王都から魔術師隊が派遣された。

カズマから聞いた話によると、あのクレアとか言う貴族が、

町の住民を王都に退避させる為に呼び寄せたという事らしい。

 

そんな訳で、私達が泊まっていた宿前の広場は、すごく混雑していた。

 

「あ!おねえちゃん!!」

 

「あら、昨日の…。」

 

「わたしたちねー!いまから、おうとへりょこうにいくんだよ!!」

 

旅行?

ふと顔を上げると、この子の両親だと思われる一組の男女が、苦笑いを浮かべていた。

 

そっか…。旅行と言って連れ出したのね。

 

「へー、良いわね!お姉ちゃんも今度行きたいな!」

 

「えへへー!いいでしょ!!もうすぐ、しゅっぱつなんだよ!!」

 

「そっか。じゃあ、いっぱい楽しまないとね!!」

 

「うん!!おねえちゃんはいかないの?」

 

「お姉ちゃんはね、これからデストロイヤーと戦うから一緒には行けないのよ。」

 

「え!?…おねえちゃんもたたかうの…?」

 

女の子は心配そうな表情で私を見つめる。

 

「そんな心配しなくても大丈夫よ!お姉ちゃん実は女神様なんだから!!」

 

「ええー!?めがみさまなのー!?」

 

「そうよ、だから何も心配はいらないわよ。」

 

女の子は最初、驚いた顔をしていたけど、徐々にその表情を曇らせる。

 

「めがみのおねえちゃん…。」

 

「ん?どうかしたの?」

 

私はしゃがんで女の子と目線を合わせる。

 

「…わたしのおともだちがね、ですとろいやーがきたら、おうちもぜんぶなくなっちゃうっていってたの。」

 

あ…

 

「そんなことないよね!?めがみのおねえちゃんがいれば、ぜったいだいじょうぶだよね!?」

 

女の子は、今にも泣き出しそうな表情で私に訴えかける。

 

「大丈夫よ、私のお友達には最強の指揮官と最強の魔術師がいるんだから!!

それに、女神である私まで戦うのよ!絶対にデストロイヤーを破壊してあげるわ!!」

 

「ほんとう?」

 

「本当よ!だから、貴方は旅行を精一杯楽しみなさい!」

 

「うん、…わかった。」

 

そこに両親と思われる男女が近づいてくる。

 

「ほら、もう行くぞ。」

 

「…うん。」

 

女の子の両親は私にペコりと、頭を下げて魔術師隊の列に並ぶ。

そして、順番が来ると女の子は私を見た。

 

「おねえちゃん!!がんばってねー!!ぜったいまけないでねー!!」

 

女の子は精一杯の大声を上げて、私にエールを送ってくれた。

 

私がそれに精一杯手を振って返していると、背後に立つ気配を感じた。

 

「良い子だな。…にしてもアクア、お前中々良い事を言うじゃねーか。」

 

「あの子を励ますアクアの姿は、とても格好良かったですよ。」

 

二人は私を冷やかすように、ニヤニヤとした表情で声を掛けてきた。

 

「何よ、見ていたんならもっと早く声を掛けてくれても良かったのに。」

 

「邪魔しちゃ悪いと思ったからな。…アクア、あの子の為にも頑張らないとな!」

 

「当然じゃない!二人とも、ミスなんてしないでよ!?」

 

私たちはお互いに軽口を叩き合う。

 

さあ、いよいよ決戦ね!私達の力を見せてあげましょう!!

 

 

 

―――――――…

 

 

 

 

 

≪カズマ視点≫

 

 

 

もうすぐ昼と言う時間帯、辺りは静寂に包まれていた。

 

冬前とはいえ、正午に近いこの時間に近隣の森からは、動物や魔物の気配すら消えていた。

横槍が入る可能性が減った事は喜ばしい事だけど、正直これは異様だ。

 

「まるで嵐の前の静けさって奴だな。」

 

俺はボソりとそう呟く。

我ながら言い得て妙だと思う、これまでデストロイヤーは、天災の様な扱いを受けて来たからな。

 

そんな事を考えていると、盗聴スキルを使っていた俺の耳にデストロイヤーの駆動音が聞こえてきた。

 

「そろそろ来るぞ!皆、切り替えろ!!」

 

俺が皆に喝を飛ばすと、一斉に緊張感が高まっていく。

 

櫓の中間地点で中繋ぎをしてくれたクレアが、前方で待機しているダクネスともう一つの櫓に合図を送る。

 

「そろそろ前に出て、指揮を執らないとな。…めぐみん平気か?」

 

「正直不安です。デストロイヤーは魔王軍すら手を出せないと言われています。…私達の力で、破壊なんて出来るのでしょうか…。」

 

この期に及んでめぐみんがヘタレだした。

さっきまでは虚勢だったのかよ。

 

「おいこら。肝心なところでヘタレてんじゃねーよ!

何時もは俺に散々ヘタレだと言っているんだ、出来ねえとか言うなよな。」

 

「で、出来ないなんて言ってませんよ!それにカズマがヘタレだと言うのは事実じゃないですか!!」

 

結婚指輪の準備すら終わっている俺が、ヘタレだと言うのか!

いやまあ、まだめぐみんには言ってねえけどさ。

それはサプライズする為だし、決して俺がヘタレだという事ではない!

 

「ヘタレじゃねーとこ、見せてやるよ!」

 

「カズマ、何をする気…うぷ…。」

 

俺は無理やりめぐみんの口を塞ぐ。

傍に居る護衛の騎士達が、何事かと驚愕の声をあげた。

 

「ぷはっ!人前でいきなり何をするんですかっ!」

 

「俺がヘタレじゃないって事を見せたかっただけだ。めぐみん、もう大丈夫だよな。」

 

「他にもやりようはあるでしょうに、カズマは本当にずるいですよ。」

 

めぐみんは思いっきり深い溜息をついて、俺の事を睨む。

 

「分かりましたよ!出来る限りの事はしますよ!カズマ、後で覚えて置いてくださいね!!」

 

「ああ、事が済んだら、殴るなり抱きつくなり好きにしてくれ!」

 

俺はめぐみんにそう言い捨てて、急いでアクアの元に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

≪アクア視点≫

 

 

ダクネスから合図が来た、そろそろデストロイヤーの登場ね!

 

「アクア様、そろそろ来ます!準備はよろしいですか?」

 

「誰に言っているのよ!私は何時でもいけるわ!それよりもモンスターの反応はないわよね!?」

 

「うん、今のところ反応はないわよ!」

 

「あ!アクアさん!カズマさんがこっちに来ます。」

 

カズマが?

 

「何しに来たのよ!指揮官は後ろにいなさいよ!!」

 

「めぐみんが途中でヘタレたんでな、心配になって見に来たんだが…問題無さそうだな。」

 

「大丈夫ですよ、カズマさん!アクアさんには私達が付いているのですから、カズマさんは指揮執りに集中していてください!」

 

そうこうしているうちに地響きが大きくなってくる。

 

「分かった、頼むぞアクア、皆!」

 

カズマの言葉に、私達は大きく頷き前を見据える。

其れを確認したカズマは戻っていった。

 

「さあ!勝負よ!!」

 

私は体内で、思いっきり魔力を練りこむ。

この前、めぐみんに教わったやり方だけど、私でも効果があるというのは驚いた。

 

これなら確実に破壊出来る筈!…いいえ!してみせるわ!!

 

「!アクアさん!来ました!!」

 

まだよ!焦ったら駄目!!確実に捉えてからよ!

 

「アクア!モンスターの気配はないわ!横槍の心配はいらないわよ!!」

 

「アクア様!全身が見えました!!」

 

此処ね!全身全霊掛けていくわよ!!

 

「『セイクリッド・ブレイクスペル!!!!』」

 

私の前方に幾重もの魔方陣が展開されていく。

そこから、魔力が収束されてゆき、デストロイヤーに放たれる。

 

「ぐううう!!」

 

何これ!?思ったより固いじゃないの!?

これにヒビを入れるめぐみんの爆裂魔法って、どれだけの威力があるのよ!!

 

「アクアさん!!」「アクア様!!」「アクア!!」

 

三人が心配そうな顔で私を見ている。

 

諦める訳無いじゃない!私はあの子と約束したもの!!

 

解呪魔法を押し込みながら、私は体内で無理やり魔力を練り込む。

 

「うぐううう!!」

 

「あ!?更に魔方陣が!?」

 

これで決めるわ!!

 

更に展開された魔方陣から解呪魔法に魔力が流れ込む。

 

「結界が!!」

 

ガラスが割れるような耳障りな音と共に、デストロイヤーの結界が消滅した。

 

「アクアさん!成功です!!退避しましょう!!」

 

「分かったわ!」

 

ゆんゆんのテレポートで私達は後方へ退避した。

 

 

 

 

 

 

≪めぐみん視点≫

 

 

カズマの唐突な行動で、緊張していた自分がバカらしくなる。

もっと、気楽に考えるべきでした。

 

「私は以前にもデストロイヤーに向けて、爆裂魔法を放った事があるんでしたね。」

 

その時は結界に阻まれたものの、その結界にヒビを入れる事が出来たんです。

直撃さえさせれば、脚部ぐらい簡単に壊せる筈です。

 

考えれば考えるほど、何故自分が緊張していたのか分からなくなる。

…多分、アクアに懐いていたあの子の事が気になっていたんでしょうね。

絶対に失敗出来ないなどと思って、変に力が入り過ぎていたようです。

 

カズマには感謝しないといけませんね。もちろんお仕置きも必要ですが…

 

「デストロイヤーが見えてきました!!」

 

護衛の騎士さんの声で、私の意識は現実に戻る。

 

「カズマからの来る合図を見逃さないで下さい!私は詠唱の準備に入ります!!」

 

「分かりました!めぐみん殿、お願い致します!」

 

私は杖を構えて、時間ギリギリまで魔力を練り込み続ける。

 

ここにいる皆が驚くような爆裂魔法を見せてあげますよ!!

 

アクアが居る方を見ると、幾重にも連なった巨大な魔方陣が展開されていた。

正体が女神というだけあって、アクアの魔力は私でも足元に及ばない。

そんな彼女が放つ魔法に、抗える存在はきっといないだろう。

 

アクアは更に魔方陣を増やして、トドメとばかりに巨大な魔力をデストロイヤーに放った。

 

「サトウ殿から、合図が来ました!!」

 

流石はアクアです!!今度は私の番ですね!!

 

「光に覆われし漆黒よ。夜を纏いし爆炎よ。紅魔の名のもとに原初の崩壊を顕現す。

終焉の王国の地に、力の根源を隠匿せし者。我が前に統べよ!」

 

大気が振るえ、私の体に幾重もの魔力の奔流が纏わり付く。

 

横目でウィズを確認して、彼女とタイミングを合わせる。

他は兎も角、爆裂魔法の事に関して、私は誰にも負けたくは無いのです!

 

行きます!これが今の私の全力全開!!我が究極の破壊魔法!!

 

「『エクスプロージョン!!』」

 

デストロイヤーに二発の爆裂魔法が刺さる。

魔力切れで倒れそうになった私は、護衛の女性騎士に支えられて崩壊の様子を見ていた。

 

暫く崩壊の様子を見守っていると、デストロイヤーは完全に停止した様に見えた。

 

そして、そこら中から歓声が沸き起こる。

そこでようやく、作戦が成功した事を実感出来た。

 

よし!ウィズの方は確認出来ませんが、私が担当した方は脚部が全て消し飛んだようです!

 

私はカズマと合流するために、騎士の人に手を借りて櫓から降りた。

後はカズマ達が突入して、機能を完全に止めるだけですね!

 

 

―――――――――…

 

 

 

 

≪カズマ視点≫

 

 

めぐみんとウィズの爆裂魔法を受けて、突如脚部を失った起動要塞は、轟音を響かせ墜落し、慣性で大地を滑ってゆく。

 

その滑る巨体は町の方までは到底届かず、一人最前線で立ち塞がっていたダクネスの鼻先で動きを止めた。

 

二人が破壊した脚部は、ウィズが担当した方には瓦礫の山が積み上げられ、めぐみんが担当した方はほぼ消し飛んでいた。

 

「流石は俺の相棒、見事なもんだ。」

 

俺は独り言の様に感心していると、女騎士に支えられためぐみんが立っていた。

 

「ふ、ふふ…。我が爆裂魔法は日々進化しているのです。欠片も残さず、消し飛びましたよ。」

 

「ああ、よくやったよ。」

 

俺は女騎士からめぐみんを引き取って、抱き寄せる。

 

「後はカズマ達が制圧するだけですね。…あの、少し恥ずかしいのですが…。」

 

俺はめぐみんを抱き寄せた状態で頭を撫でていた。

 

「何でだよ?別にやましい事はしてないだろ?」

 

そう言うとめぐみんは、恥ずかしさからか黙ってされるがままになる。

 

「ねえ、カズマさん。私も褒めて欲しいんですけどー!」

 

「あ、アクアさん!邪魔しちゃ悪いですよー!」

 

皆が集まって来てしまい、流石に恥かしくなった俺はめぐみんをそのまま背負う。

 

「じゃ、そろそろ制圧に行こうぜ。頼んだぞ、皆!」

 

改めてデストロイヤーの巨体を見上げると、脚部を失った巨大要塞は沈黙を保っていた。

後はこのまま内部を制圧するだけ…と思っているが、そんな簡単に事が運ぶだろうか?

 

そんな事を考えていると、突如大地が震えだす。

 

「なっ!?地震か!?」

 

「いや、違う!大地が震えるようなこの振動は、デストロイヤーが原因だ!」

 

俺の言葉に皆がその巨体を見上げる中、唐突に警告音が鳴り響く。

 

『この機体は、機動を停止致しました。この機体は、機動を停止致しました。

排熱、及び機動エネルギーの消費が出来なくなっています。搭乗員は速やかに、

この機体から離れ、避難して下さい。この機体は……まもなく自爆します。』

 

『はあ!?』

 

その場にいた全員の声がハモる。

警告音が鳴り響き、繰り返しアナウンスが流れる中、俺達は決断を迫られる。

 

 

「おいおい!自爆って何だよ!!」

 

「そんな!?こんな所で爆発が起きればこの町は……!」

 

排熱及びエネルギー消費が出来なくなっているのか。

 

「皆!慌てるな!多分動力を抜けば解決する筈だ!急いで制圧するぞ!!」

 

やっぱり、一筋縄では行かなかったか!

皆に指示を飛ばし、俺達はデストロイヤーに乗り込んだ。

 

 

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