このすば カズマが冷静で少し大人な対応ができていたら。   作:如月空

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デストロイヤー破壊作戦④

警告音が響く中、次々とデストロイヤーに乗り込んでいく。

 

予定通りダクネスとミツルギが先陣を切り、前衛職が其れに続く。

魔力切れで動けないめぐみんを背負っている俺は、最後に上がる事になっている。

 

 

 

―――――――――…

 

 

 

<数分前>

 

 

「本当に行く気なのかよ!?カズマ!?」

 

キースが悲痛の叫びを上げた。

 

デストロイヤーに乗り込む為の準備を騎士達に任せ、俺達はその間にミーティングをしている。

 

「おいおい!冗談じゃねえぞ!!何で俺まで行かなきゃならねえんだよ!!」

 

興奮したダストが俺に掴み掛かろうとするが、それはダクネスによって阻まれる。

 

「悪いが口論している時間はねえ。安全第一で考えるから横槍は入れんな!」

 

上にはどれだけの戦力がいるかが解からない。

この状態で戦力を減らすと言うのは有り得ないだろう。

 

「それでサトウ君。作戦の方はどうするんだい?」

 

「ああ、先ずは当初の計画通りお前とダクネスに先行して貰う。

ダクネスは後から上る仲間を護るために動いてくれ。」

 

「ん、わかった。」

 

「僕は?」

 

「お前は上がったら、手当たり次第に敵を倒してくれ。

人的被害が出ないのなら、どんなスキルを使ってくれても構わない。

成るべくなら、後衛組が上がる前に制圧してて貰えると助かるが。」

 

「また無茶を言うね…。」

 

「これでもお前を信頼してるんだぞ。そもそもお前が居なきゃ制圧しようだなんて考えもしねえよ。」

 

「はぁ、君に其処まで言われたら、僕も引き下がれないじゃないか。」

 

「マジで頼むぞ、ミツルギ。制圧が終わった時点で次の指示を出すからさ。」

 

「カズマ、それより時間は大丈夫でしょうか?」

 

「あ?確証があるわけじゃねーけど、多分まだ大丈夫だと思うぞ?

アナウンスでも言っているだろ?速やかに退避しろって。」

 

それに点灯しているランプもまだ黄色だ。

余裕があるわけじゃないが、もう暫く時間はあるだろう。

 

「ねえ、カズマ。もしかしてランプが黄色だから、まだ平気だとか思ってない?

言っておくけど、ここはカズマが居た国とは違うのよ?」

 

「んなことは解かっているよ。大体それを言うなら”コレ”自体がこっちにそぐわないんじゃないか?」

 

「あ!そ、そうかもしれないけどー。」

 

俺が何を言いたいのかを、アクアは察してくれたらしい。

 

「成程ね、確かに僕らと同じ日本人なら……ん、あれ?でも確か、デストロイヤーって…。」

 

「準備が整いました!!」

 

ミツルギが何かを言い掛けた所で、騎士から報告が来る。

 

「では、其方は撤退してください。此方も無理だと判断したらテレポートで退避しますので。」

 

「分かりました!皆さん、ご無事で!!」

 

騎士達が撤退していく中、クレアがウィズともう一人の女性を連れて此方に向かってくるのが見えた。

 

「じゃあ、サトウ君。僕達は先に向かうよ!」

 

「ん?ああ!頼んだ!!」

 

先ずはダクネスとミツルギが、続いてテイラーやダスト、フィオ、クレメアと続いていく。

 

「ウィズも手伝いに来てくれたのか?」

 

「ええ、かなり魔力を消費してしまったので、手伝える事は少ないかもしれませんが、ご一緒させて頂きますよ。」

 

そう言ってウィズも、デストロイヤーを登っていく。

 

「それで何故、貴方がまだ此処にいるのです?」

 

背中に居るめぐみんが、クレアに問い掛ける。

 

「まだ戦っている者がいると言うのに、私が撤退してしまっては姫様に合わせる顔がありません!

それに此方にはダスティネス卿もいらっしゃるのですから!!」

 

「ええ!?ちょ、ちょっと待ってください!?クレア様、私聞いていませんよ!!?

私は町の人を避難させる為に呼ばれたんですよね!?」

 

クレアの言葉に連れの女性が見るからに狼狽しはじめる。

 

「そ、それにダスティネス卿!?王家を支える両家が、こんな所で何をしているんですか!!?」

 

王家を支える両家って…ダクネスとクレアの事だよな?

もしかして、二人は相当高い身分なのか?

 

「レイン!デストロイヤーの襲来は王都の危機だぞ!私達が先陣を切るのは当然だろう!?」

 

「い、いえ、しかしですね!こうしてデストロイヤーは、足を止めているではないですか!!」

 

「いい加減にしろ!レイン!!デストロイヤーを完全に止めなければあの町は消し飛ぶんだぞ!!

それなのに、このまま逃げ帰ってしまったら、私が姫様に嫌われてしまうではないか!?」

 

お姫様という気になるワードはあったが、これでは埒が明かないので口を挟む。

 

「口論してる時間はないですよ。止めても無駄そうなので止めませんが、

付いて来るのでしたら、自己責任でお願いします。」

 

レインと言う女性とのやり取りから、クレアを止めるのは無理だと判断して、俺はそう言い放つ。

まぁ、流石に見殺しにする訳にもいかないから、いざとなったら無理やりにでもアクセルに飛ばしてしまおう。

 

「大丈夫ですよ、サトウ殿。レインはこう見えてもテレポートが使えますから!」

 

ふむ、そこのレインさんはテレポートを使えるのか。

それなら、退避のタイミングを誤らなければ大事はないな。

 

「ちょ、ちょっとまって下さい!クレア様!まさか私にも付いて来いと言うのですか!?」

 

泣きそうな表情でクレアに抗議をしているレインさん。

 

「先に行きますよ!来ないのでしたら早めに退避してくださいね!」

 

デストロイヤーを上りながら地上を見ると、二人は既に上り始めていた。

クレアは満足そうな顔をしていたが、レインさんは泣きそうな顔をしていた。

二人の表情から察するに、どうやらレインさんが折れたようだ。

 

「カズマ!早く来い!!もう片が付くぞ!!」

 

上からダクネスに声を掛けられ、急かされる。

 

「流石ですね。カズマ、急いでください!!」

 

「ああ、分かってる!」

 

俺達が上がり切ると、二体の巨大ゴーレムが同時に崩れるところだった。

 

「丁度良い、タイミングだったみたいだな。」

 

「それで、次はどうするんだ?」

 

ダクネスの質問に、俺は皆にも聞こえるように大きな声で説明をしはじめる。

 

「先ずは、中には入れそうな入り口を探してくれ!!

内部に突入したら、手分けして動力室を探すんだ!!

チーム分けは先刻の説明通りテレポートが使える、俺、ゆんゆん、リーンで分かれる!」

 

チーム分けを終え、それぞれが行動に移った。

 

「カズマさん!すみません!!私は先程の爆裂魔法で魔力を消費してしまったので、

テレポートを使える魔力が残っていないのですが!!」

 

ウィズが魔力切れか、どうする!?

すると、下から声が掛かった。

 

「それなら、ウィズ殿には私達に同行して貰いましょう!サトウ殿、それでよろしいですか?」

 

「分かりました!!ウィズそう言う訳だ、二人と一緒に行動してくれ。」

 

「え?あ!クレア様も来られたんですか!?わ、分かりました!!」

 

ウィズの行動を決めていると、先行しているメンバーから声が上がった。

 

「あ!こっちに扉があったよー!!」

 

その声に皆が集まる。

 

「何だよ、これ!?どうやって開けんだ!?」

 

扉を見ると、ドアノブも取っ手も付いていなかった。

 

「…これは電子…いや、ここだと魔力制御か?」

 

「多分そうだろうね。どうする?」

 

「時間が惜しい、ぶち破ろう!!」

 

「分かった!」

 

ミツルギが放った一撃は、ドゴォ!!という轟音と共に扉を吹き飛ばした。

 

「急いで動力部を探そう!」

 

俺の言葉に、皆が駆け出していく。

其れを追う様に、俺も走り始める。

 

「ところでカズマ、動力を抜くと言っていましたが、一体如何するつもりですか?」

 

「スティールだよ!!俺の幸運値なら取れる筈だろ!!」

 

たとえ、1発で取れなかったとしても、何度も撃てばいいだけの話だ。

それが駄目だったとしても、此方にはミツルギのグラムがある。

あいつの力なら、最悪でもエンジンの停止ぐらいは出来るだろう。

 

「成程、確かにカズマのスティールなら成功する可能性が高いですね。」

 

そこに先行していたアクア達が戻ってきた。

 

「駄目よ、カズマ。こっちの道は塞がれていたわ!」

 

クソ!道が塞がれていたか!?

こりゃ、他のメンバーに期待するしかないな。

 

「分かった、一旦さっきの道に戻るぞ!!」

 

誰かが見つけていれば良いのだけど…

 

 

――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

「カズマ!此処に居たのね!」

 

息を切らしながら、クレメアが走ってきた。

 

「動力室を見つけたのか!?」

 

「ううん、それはまだだけど、テイラー達が乗組員を見つけたの!!」

 

「本当か!!直ぐに向かうぞ!!…ダクネス、クレメアを背負ってやれ!」

 

「ああ、分かった。」

 

クレメアは肩で息をしていて、とてもすぐに走れる状態には見えない。

 

「え?い、いいわよ!!」

 

「時間が無いんだ、背負われるのが嫌なら担いでいくぞ?」

 

「ちょ!それはやめて!!」

 

クレメアは渋々ダクネスの背中に乗り、その間にアクアが支援を掛け直した。

 

「クレメア!案内頼むぞ!!」

 

クレメアの案内でデストロイヤーの内部を駆け巡る。

 

道中で真っ二つになっているゴーレムを何体も発見したが、

恐らくゆんゆんかミツルギに破壊されたのだろう。

 

程なくして合流が出来たのだが、何故か皆は部屋の入り口で立ち止まり、遠巻きに何かを見つめていた。

 

中を覗くと大部屋の様になっており、中央には玉座の様な椅子とテーブルが置いてあった。

 

「来たか、カズマ。…アレが乗組員だ。」

 

テイラーが玉座を指し示す。

そこには白骨化した遺体が座っていた。

 

「アクア。」

 

俺はアクアを呼んで、遺体を指差す。

するとアクアは遺体に近づき、静かに首を振った。

 

「既に成仏しているわね。アンデッド化どころか、未練の欠片も無いぐらいにスッキリと。」

 

『は?』

 

その場に居た全員の声がハモる。

 

「え?アクアさん、其れ本当なんですか!?私には一人寂しく死んでしまった様に見えるのですが…。」

 

元ボッチのゆんゆんが、孤独死したであろう遺体を見つめる。

 

「本当よ。…あら?」

 

ゆんゆんに返事をしたアクアは何かを見つけたようだ。

それは、机の上に乱雑に積まれた書類に埋もれていた。

 

「手帳?」

 

アクアが手帳を開くと、何時の間にやらアクアの横に来て居たミツルギも其れを覗き込んだ。

 

「…日本語だ。どうやらサトウ君の感は当たってた様だよ。」

 

「…そうか。」

 

やっぱり、こいつを作ったのは日本からの転生者か。

 

「アクア、何て書いてあるんだ?」

 

「……えっとね。

『○月×日。国のお偉いさんが無茶を言い出した。こんな低予算で機動兵器を作れと言う。

 無茶にも程が在ると、抗議をしてみたが聞く耳すら持ってくれない!

 泣いて謝ったり、拝み倒してみたりもしたが、やはり駄目だった。

 辞めさせて下さいと言っても、辞職願いは受理されなかった。

 バカになった振りをして、パンツ一丁で走り回ってみたが、

 同僚の女性研究者に早く其れも脱げよと言われた。この国はもう駄目かも知れない。』」

 

…思わず皆の視線が遺体に集まる。

そこには同情の念が在ったのかもしれない。

 

「『○月×日。設計図の期限が今日までだ。どうしよう、まだ白紙ですとか言えるわけが無い。

 だってヤケクソになって、貰った報酬の前金を全部使って飲んじゃったんだもん。

 どうしようと白紙の設計図を前に悩んでいると、突然紙の上に俺の嫌いな蜘蛛が出た。

 悲鳴を上げながら、手近にあった物で叩き潰した。叩き潰してしまった。用紙の上に。

 ……このご時勢、こんなに上質な紙は大変高価なのに、弁償しろとか言われても金が無い。

 ……もう知るか!このまま出しちまえ!!』」

 

あれ?…えっと。

アクアの横で手記を読んでいるらしいミツルギも、顔が引きつりだした。

 

微妙な空気になってきた中で、アクアが尚も手記を読み続ける。

 

「『○月×日。あの設計図が予想外の好評だ。それ蜘蛛を叩いた時に出た汁なんですけど、

 そんな物よく触れますねー、なんて絶対言えない。て言うか、ドンドン計画が進んでる。

 どうしよう、俺がやった事って、蜘蛛を一匹退治しただけなんだけど。

 ……でも、こんな俺が所長です。ひゃっほう!』」

 

…アクアの適当な作り話なんじゃないかと疑いたくもなるが、

一緒に読んでるミツルギの表情が、全てを物語っていた。

 

「『○月×日。俺何もしてないのにどんどん勝手に出来ていく。これ俺いらなかったじゃん。

 ホント何なの? もういいや、勝手にしてくれ。俺は俺らしく好きに生きる。

 …なんか動力源をどうこう言われたけど知るか。俺最初から無理って言ったじゃん。

 だから永遠に燃え続けるという、超レア鉱石のコロナタイトでも持って来いと言ってやった。

 そう!言ってやった言ってやった! 持って来れるもんなら持って来いっての!!」

 

……皆の表情が強張っていく…。

 

「『○月×日。持って来ちゃった。どうしよう、本当に持って来ちゃったよ。

 なんか勝手に動力炉に設置を始めてるし…、どうしよう、マジでどうしよう!?

 持って来れる訳無いと思って適当に言ったのに、本当に持って来るなよ。

 これで動かなかったらどうすんだ。俺どうなるんだ。え!?死刑!? 

 動かなかったら死刑じゃないの? 動いてください、お願いします!』」

 

俺達の視線が気になってきたのか…。

 

「『○月×日。明日が機動実験と言われたが、正直俺何にもしてねえ。やったのは蜘蛛叩いただけ。

 この椅子にふんぞり返っていられるのも今日までか……。そう思うと、無性に腹が立ってきた。

 もういい、飲もう。今日は最後の晩餐だ。思いっきり飲もう!

 幸いこの機動兵器の中には、今日は誰も残っていない。

 どんだけ飲んでバカ騒ぎしても、咎められる事は無いだろう。

 とりあえず、一番高い酒から飲んでいこう!』」

 

手記を読み上げているアクアが、俺達の視線に怯えだした。

 

「『○月×日。目が覚めたら、なんか酷い揺れだった。何だろう。何だろうこれ。

 俺どれだけ飲んだっけ。覚えてない。いや、昨日の記憶が無い。あるのは動力源のある中枢部に行って、コロナタイトに向かって説教してた所までは覚えてる。

 

 いや待てよ。確かお前に根性焼きしてやるとか言って、コロナタイトに煙草の火を…。」

 

アクアは、俺達の視線から逃れるように顔を逸らした。

 

「『○月×日。現状を把握。そして、終わった。現在只今暴走中。

 どうしよう、これ間違いなく俺がやったと思われてる。俺、絶対指名手配されてるよ。

 今更泣いて謝ったって許してもらえないだろうな……。

 やだな……。このまま機動兵器ぶっ壊されて、引きずりおろされて死刑だろうか。

 畜生、お偉いさんも国王も、俺のパンツ脱がして鼻で笑った女も、皆皆クソッタレだ!

 こんな国滅んじゃえばいいのに。もういい、酒飲んで寝よう!

 幸い食料と酒には困らない。これからの事は寝て起きてから考えよう。』」

 

……やがて、誰ともなく拳を握り。

 

「『○月×日。国滅んだ。やべえ、滅んだよ、滅んじゃったよ!

 国民とかお偉いさんとか、人は皆逃げたみたいだけど。でも俺、国滅ぼしちゃった!!

 ヤッバイ!何かスカッとした!!満足だ。俺、もう満足。よし、決めた!

 もうこの機動兵器から降りずに、ここで余生を暮らすとしよう。

 だって降りれないしな。止められないしな。これ作った奴、絶対バカだろ!?

 おっと、これ作った責任者、俺でした!!』」

 

…………。

多分、最後まで読み上げたのだろう。

困った顔で、アクアが口を開く。

 

「終わり…。」

 

『なめんな!!』

 

アクアとウィズ以外の、その場に居た全員の声が見事にハモった。

 

 

――――――…

 

 

 

 

 

「コロナタイトがあったぞ!」 

 

「カズマ、どうやって取るんだ?」

 

「任せろ!!『スティール!!』」

 

「あ!カズマ!駄目です!!」

 

俺がスティールを発動させると、めぐみんがが慌てて止めに掛かる。

え?如何いう事……!!?

 

「どわっっちぃぃ!!??」

 

コロナタイトが俺の手の中に納まると同時に、激痛にも似た大火傷を負った。

 

「「「『フリーズ!!』」」」

 

ゆんゆん、リーン、そしてウィズが氷結魔法を使って、俺の手とコロナタイトを直ぐに冷やしてくれた。

 

涙目になっている俺の所にアクアがやってきた。

 

「『ヒール!』…カズマって、頭良いのかバカなのか、本当にわからないわね。」

 

「うるせえよ…。」

 

「カズマすみません、先に言っておくべきでしたね。

でもカズマなら、先程の手記の内容から気づいていると思ってました。」

 

手記の内容…?…あ!永遠に燃える超レア鉱石だったっけ!?

 

気をつけていれば、防げた事故だったという事に気づいて俺は項垂れる。

 

「ま、まあ、サトウ殿のお陰でこうやって取り外せたのですから!」

 

いつの間にか警告音とアナウンスが止み、静寂が訪れていた。

 

「終わったか…。」

 

「はー!一時はどうなるかと思ったぜ!カズマこれは貸しだぞ!!」

 

「何でだよ!つうかお前にも均等に報酬が入るんだから良いだろ!?」

 

チンピラがダストみたいな物言いをしてくるが、報酬の話を出して切り抜ける。

 

「でも、終わってみれば大したことなかったわね!さあ、皆!今日は宴会よー!」

 

「よーし!皆帰ろ……!」

 

「か、カズマ!なんかアレやばくないですか!?」

 

いや、どう見てもやばいぞ!?

 

床に転がったコロナタイトは、氷結魔法で一時は沈静化していたが、今は煌々と輝いていた。

 

「これ、不味いですよ!!臨界を突破しそうです!!」

 

「り、臨界?ど、どどどうなるんだ!?」

 

「多分このままではボンって、なりますね。カズマどうしましょう!?」

 

ここで爆発させたら、態々乗り込んでまで機能を停止させた意味がない。

しかし、どうする!?

 

「か、カズマ!テレポートはどう!?」

 

「そ、それだ!早く何処かに!!おい!リーン!!」

 

ダストが狼狽しながらリーンを呼ぶ。

 

「ダメだよ!あたしのテレポートの登録先は此処とアクセルだけだよ!」

 

「ごめんなさい!私の登録先も、アクセルと此処と紅魔の里だけなんです!」

 

二人のテレポートは町の傍、ウィズは魔力切れ…

残るは俺だけだ…。

 

「……めぐみん、ごめんな…。」

 

「え?どういう…。」

 

俺は煌々と燃え続けるコロナタイトに手をかざし、叫んだ。

 

「『テレポート!!』」

 

……人が居ない所なんて、あそこしかない。

 

それは………

 

 

 

「…脱出しよう。」

 

 

―――――――――…

 

 

 

 

俺達は通路を抜けて、外に出る。

 

「今度こそ、やっと終わったぜ!あー!酒が飲みてええ!!」

 

「もう少し我慢しなよ、ダスト。きっとクレア様が大宴会を開いてくれるって!」

 

「ええ、直ぐにでも手配しましょう。皆さんのお陰で危機が去りました。」

 

「私は寿命が縮むかと思いましたよ。クレア様も少しは自重してください。」

 

「何を言う、レイン。お前も中へ入った時は目を輝かせていたではないか。」

 

「う、その、珍しさと言いますか…。」

 

安堵からか、皆は緊張感のない会話をしていた。

 

「しかし、本当にデストロイヤーを止める事が出来るとはな!

カズマ、貴族の一人として礼を言うぞ!」

 

「…ああ。」

 

「なんか、カズマ元気ないわねー。」

 

「めぐみんもですよ。先程から一言も喋っていませんし。」

 

めぐみんは察しているんだろうな。

 

俺とめぐみんは殆どの情報を共有してある。

俺の出身に関しては、まだ話せていないがそれも何れは話すつもりだ。

 

「…カズマ、後で良いですか?」

 

「…分かった。」

 

デストロイヤーから降りようとロープを掴んだ瞬間、異変が起こった。

 

「何だ?この地響きは!?」

 

「おいおい!またかよ!!?」

 

地響きの原因は間違いなくデストロイヤーだ。

 

「おい!早く降りろ!!」

 

「か、カズマ。デストロイヤーの内部に魔力が溜まっているのを感じます!!」

 

「なっ!?」

 

突如、デストロイヤーの隙間から蒸気の様な物が次々に噴出す。

 

「早く離れろ!!」

 

クソ!どうなってやがる!?

 

内部から蒸気が溢れ出したって事は熱暴走か?

 

「あっ!」

 

そうだよ!排熱が出来なくなっているってアナウンスがあったじゃねえか!

となると、爆発まではしなくても、熱が溜まったら自然発火するだろうから…。

 

「不味いぞ!このままだと、ここら一帯火の海になるぞ!」

 

この質量が自然発火なんてしたら、自爆するのと変わらない…いやそれ以上の被害が出てしまうかも!?その為の、自爆装置か!クソったれ!!

 

「なっ!此処まで来て!!」

 

「クレア様!ここは危険です!!退避してください!!」

 

この期に及んでもクレアは引く気が無さそうだ。

 

「カズマ、何か手はないのか?」

 

めぐみんとウィズが魔力切れを起こしている今、残る手段は俺の爆裂魔法ぐらいだ。

だけど、俺の爆裂魔法なんかじゃ、精々一部を吹き飛ばす程度で撃つ意味はない。

 

俺達が立ち尽くしていると、ウィズが駆け寄ってきた。

 

「カズマさん、めぐみんさんに魔力を与えてあげてください。

めぐみんさんの爆裂魔法なら、可能性はある筈です。」

 

ウィズは小声で話しながらも、離れた所にいるクレア達を気にしていた。

つか、魔力を与えるって言っても…そんなスキルはねえぞ?

 

「一体どうやって…。」

 

「カズマさんはドレインタッチが使えるじゃないですか。それを使って流し込むんです。」

 

「え?俺のドレインタッチはそんな事出来ないぞ?」

 

そう言って、俺はアクアを見る。

 

「カズマが修得しているスキルは不完全な物だもの。

幾らなんでも、天界でリッチーの完全なスキルなんて覚えられるわけ無いでしょ?」

 

言われてみれば当然の事かもしれないが、先に説明しろよな!

 

「では、カズマさん。私が教えますので修得してください。

ここにいる魔力の高い方はアクア様だけなので、私では役に立てません。」

 

ああ、そうか。ウィズがアクアの魔力を吸うわけにはいかないよな。

だけど、その前に…。

 

「ウィズ。ちょっと待ってろ。」

 

俺はウィズを制止して、ミツルギ達に叫ぶ。

 

「ミツルギ!!テイラー!!皆を連れて退避しろ!!こっちで一つだけ試してみる!!」

 

「う、あ、分かった!!サトウ君!無事で!!」

 

「無理をするなよ!!カズマ!!」

 

「み、ミツルギ殿!!待って下さい!!」

 

「いえ!!僕達はサトウ君達の邪魔になります!!ここは退避しますよ!!」

 

ミツルギがクレアを無理やり担いで、皆と一緒にその場から離れる。

それを見届けてから、ウィズに顔を向けた。

 

「人払いは済んだぞ、頼むウィズ。」

 

「…!ありがとう御座います!」

 

ウィズからドレインタッチを習い、スキルを上書きする。

 

「よし、やるぞ!めぐみん!アクア!!」

 

「任せてください!」「分かったわ!」

 

めぐみんを後ろから抱き寄せる様に抱きなおす。

 

「ドレインタッチは心臓に近い方が効果的です。」

 

「そうなのか?…めぐみん?」

 

「…揉まないで下さいよ?こんな時にセクハラしたら絶交ですからね。」

 

絶交は死んでも嫌だぞ!

俺はめぐみんの胸元に手を滑り込ませ、ドレインタッチの準備をする。

 

其れを見た皆は驚きの声を上げるが、そんなものを気にしている暇はない。

 

「アクア…。」

 

「ちょ、前はやめてよ!?せめて背中にして頂戴!」

 

いや、流石に前はいかねえよ。それこそめぐみんに絶交されるわ!

 

「分かってる、手…入れるぞ。」

 

アクアの背中に手を入れると、アクアが小さく震える。

…小さな嬌声が聞こえたが、聞こえなかった振りをしておこう。

 

「『ドレインタッチ!!』」

 

「ヤバイです!流石はアクアの魔力ですね!これなら過去最大級の爆裂魔法が放てそうです!!」

 

「アクアさんの魔力を貰えるんだから、めぐみん!絶対失敗しないでよ!?」

 

「誰にものを言っているのですか?ゆんゆん。私がこの状況で失敗するわけ無いじゃないですか。」

 

「さっきはヘタレてたんでしょ?カズマさんから聞いてるよ!」

 

ゆんゆんの言葉を聞いて、めぐみんはギギギと首だけ此方に向けようとする。

 

「カズマ…後で覚えて置いてくださいね。」

 

「…はい。」

 

「おい、ふざけてないで真面目にやってくれ!本当に頼むぞ三人とも!!」

 

いつもの様なやり取りをしていたら、ダクネスに怒られてしまった。

 

「ちょっと、ダクネスー!私は関係ないじゃない!?二人が何時もの痴話喧嘩しているだけでしょう!?」

 

こうしている間も、デストロイヤーの崩壊は着実に進んでいく。

 

「ねえ、めぐみんまだなの?かなり魔力を吸われちゃってるんだけど?」

 

「まだです!もう少しいけます!あっ!くっ!…いえ、いけます!!」

 

おいおい、キャパ超えでボンっとかは無しにしてくれよ!?

 

「お待たせしましたっ!!」

 

めぐみんがこれまでに見たことのない様な魔力の奔流に包まれる。

空気が震え、気を抜けば飲み込まれてしまう様な感覚に陥る。

 

「行きます!!我が最大の究極魔法!!『エクスプロージョン!!!』」

 

今までの数倍いや、それ以上の規模だろう。

それこそ、夢世界で見た連続爆裂魔法と同等と思えるような、

超広範囲の爆裂魔法がデストロイヤーに刺さった。

 

聴覚をも破壊される様な大爆音と共に、デストロイヤーが上から真っ二つに破壊されていく。

 

「これ程までとは思いませんでした…」

 

それはウィズの声だったのだろうか?誰かがそんな事を口にしていた。

 

デストロイヤーが崩れていく中、後方から歓声が上がっていた。

 

「おお!デストロイヤーが崩壊していく!!やったのですね?サトウ殿!?」

 

「済まない、サトウ君!クレア様にセクハラで訴えますよ!と言われてしまって思わず手を…。」

 

クレアを筆頭に皆が戻ってきていた。

 

「それで、サトウ殿!一体どのような手段で!?」

 

…正直に話すわけにはいかないよな、なら嘘と真実を織り交ぜて上手く誤魔化そう。

 

「…俺には天界で修得した、とあるスキルがあるんです。」

 

「て、天界!?そ、それは一体どのような!?」

 

「リッチーが使うと言われている、ドレインタッチですよ。

其れを使ってもう一度めぐみんに爆裂魔法を撃ってもらったんです。」

 

「とても信じられない話ですが、使ったのは事実なんですよね?しかし、天界とは…。」

 

「…クレア様、僕のグラムも同じですよ。サトウ君は数多のスキルを女神様から授かりました。

そして、僕が女神様から授かったのは、このグラムなんです。」

 

「み、ミツルギ殿!?」

 

「更に言えば、僕達に力を授けてくれた女神様は同じ方ですよ。」

 

そう言ってミツルギは、アクアを慈しむような目で見る。

 

「…分かりました。お二人が其処まで言うのなら、信じましょう!!」

 

ふう、ミツルギのアシストがあったお陰で助かったぜ。

今度、あいつの食いたい物でも作ってやるか。

 

「終わったな…。」

 

「…そうだな。」

 

デストロイヤーは瓦礫の山と化している。

流石にこれ以上は、何かが起こる事はないだろう。

空気読まずに、魔物でも現れたら俺の爆裂魔法を放ってやる!!

 

「…はぁ、めぐみん…平気か?」

 

「…き、きついです。カズマ、魔力を分けてください…。」

 

「あいよ。」

 

どうやら、何時も以上に魔力を込めていたらしい。

めぐみんは俺にしがみつく事も出来ない状態だった。

 

「ふう、助かりました。」

 

「…めぐみん、落ち着いたら行くぞ…。」

 

俺がそう言うと、めぐみんの表情が曇る。

 

「…分かりました。」

 

デストロイヤーは止められた。

俺達の大切なモノと引き換えに…

 

 




人的被害も無く、町も護ったカズマ達ですが…

次回は成るべく早く書き上げようと思います。
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