このすば カズマが冷静で少し大人な対応ができていたら。 作:如月空
「『ハイネス・ヒール!!』」
「…大丈夫?」
「じゃ、ねぇよ。クソッ!なんとか痛みは引いてきたが、腕はくっつかねえか!?」
それに出血も、まだ完全には止まってない。
軽い貧血を引き起こした俺は、ふらついて膝を付く。
「カズマ君!?」
大分、体力も低下しているな…。
クリスが支えてくれているから、何とか立っていられるが、このままじゃ不味いな。
ドゴオォン!!
ふいに爆発音が聞こえてくる。
そして、屋敷内から怒号と悲鳴が聞こえてきた。
「く、どうやら、俺達を探しているらしいな。」
「もう、なりふり構わずという感じだね…。」
探す様に仕向けたのは俺だけど、もっと考えて行動すると思っていたよ…。
俺の見通しが甘過ぎたな。まさか、此処まで無茶をするなんて…。
「クリス、悪い。少し分けて貰っても良いか?」
魔力は大して減っていないが、この状態ではまともに行動も出来ない。
「分けるって?」
「知ってるだろ?俺がドレインタッチ使えるって。」
「あ、そうだったね…。いいよ、あ!でも吸い過ぎないでね。」
「気をつけるよ…。『ドレインタッチ』」
左手をクリスの首筋に伸ばし、ドレインタッチを発動させる。
するとクリスから強い力が流れて来た。
…これなら何とかなりそうだ。
「女神の使徒だなんて言うだけの事はあるな。アクアから吸っているみたいだったぞ?」
かなり出血している所為で体は重いが、体力はある程度回復が出来た。
「…私にはエリス様の加護があるからね。」
「そうだったな。…クリス、頼みがある。」
「…何?出来る範囲でなら聞くよ?」
「…『フリーズ!』…悪いけど、これを持ってアクアの所まで行ってくれるか?」
クリスは黙って、それを受け取る。
「うん、アクアさんなら治せるだろうからね。…でもそれなら、カズマ君も一緒に行かないと!」
屋敷内から未だに悲鳴や怒号が轟いている。
今なら正面からでも入れるだろう。
最早、遅いかも知れないが、出来るだけ犠牲は出したくない。
なら、俺がやるべき事は一つだ。
「…俺には俺の役目ってのがあるんだよ。めぐみん(あいぼう)と組んだ時からずっと…」
そう、俺にはあいつがいる。だから今回も絶対に上手く行く筈だ!
「カズマ君は…、どうするつもりなの?」
「お前達が戻って来るまで時間を稼ぐよ。…そうだ、これをめぐみんに渡してくれないか?」
「良いけど…これって、盗まれたって言う指輪だよね?」
「ああ、アルダープが持ってたんだ。…それと、めぐみんに全てが終わったら結婚しようって伝えてくれるか?」
こんな事言うのは不味いだろうけど、どうしても声に出して言いたかった。
「…指輪は渡すけど、その言葉はカズマ君が自分で伝えなきゃ!」
!?…そうだよな、どうかしてたわ。
「急いで戻ってくるから!!カズマ君!絶対無茶しちゃダメだよ!!」
そう言い捨てて、クリスが闇夜に消えていく。
其れを見届けてから、俺も移動を始めた。
「俺だって、無茶なんかしたくはねーよ…。」
だけど、俺の所為で人が死ぬというのも、耐えられる気がしない。
今だって、ずっと悲鳴が聞こえている…。
ここで逃げちまったら、俺は一生この声に悩まされる事になる。
身体強化魔法に各種支援魔法…。
武器を持っていないのは心許無いが、どうせ片腕じゃ使えない。
どの道、逃げに徹するだけだ…。
正面門まで移動すると、傷だらけの男達が必死の形相で逃げてくる。
その中の一人が、正面門へと向かう俺に声を掛ける。
「おい!アンタ何処行こうってんだ!?そっちは化け物がいるぞ!!」
「分かっているよ!アンタらはさっさと逃げてくれ!」
あの豚に雇われたこいつらが悪い!って言い切れれば、どんなに楽だろう!?
…如何数えても、護衛の人数が全然足りない。
少なくても、半数以上はまだ中にいるわけか…。クソッ!
全員無事に…とは行かなくても、大半は逃げられると思ってたのに!!
「…『ライト・オブ・リフレクション!』」
あの悪魔に通用するかは分からないが、出来ればいきなり見つかるというのは避けたい。
俺は敵感知スキルを頼りに、タイミングを計る。
そして、敵が離れた隙に敷地内へ進入した。
敷地内に入った俺は、言葉を失う。
体と心が恐怖に縛られ、身動きが出来なくなっていた。
そこは地獄だった。
傷つき、這いずりながらも逃げ惑う者。
涙を流しながら、放心状態で震えている者。
既に動かなくなって、地面に転がっている者
……多分半数はもう…。
金縛り状態の体を、無理やり奮い立たせる。
『人がいないのはどっちだ?』
俺が出て行けば、まだ生きている奴は助かるかも知れない。
だけど、俺も死ぬわけにはいかない。
屋敷の二階はどうだ?最悪テラスから跳べば、中庭に降りられる。
ここまで来たら、覚悟を決めるしかない。
『アルダープを殺して、悪魔が止まる事を期待するしか…。』
人殺し…。
現代日本で生きてきた俺にとって、其れは忌避される事だ。
勿論、この国でも同様…だから、俺はこれから罪を犯すんだ。
殺らなきゃ、殺られるとか、緊急避難とか!正当防衛だとか!!
そんな綺麗事で誤魔化さずに、覚悟を決めて掛かろう。
―――――――――――……
≪めぐみん視点≫
何か胸騒ぎがする!カズマ達は無事なんでしょうか?
突如、轟いた爆音で、戦闘が始まったと判断した私達は、屋敷に向かって駆け出す。
「シンフォニア卿!私の背に乗れ!!」
「し、しかし!?」
「もう戦闘は始まっているかも知れん!私達は一刻も早く合流をしないといけないんだ!」
ダクネスの気迫に押され、クレアはダクネスの背に乗る。
屋敷へと向かう道中で、先の方から人が走ってくるのが見えた。
「おーい!」
「クリスだ!合流するぞ!」
クリスと合流すると、先を走っていたメンバーが、無言のまま固まっていた。
その様子が気になって、私もクリスの元へ向かう。
「え!?」
クリスが持っていたモノ…それは人の腕だった。
だけど私は、何故かそれに見覚えがあった。
「…カズマ?」
「…はあっはあっ!ごめんっ!」
クリスは息を切らしながら、私に何度も謝ってきた。
「か、カズマは!?クリス!!カズマは如何したんですかっ!?」
恐怖で心を覆われてしまった私は、クリスの両肩を掴んで、クリスを問い詰める。
「ま、待って!めぐみん!!あ、アクアさん!!カズマ君の腕をお願い!!」
「え、ええ!分かったわ!」
アクアはクリスからカズマの腕を受け取って、何か魔法を掛けていた。
「カズマは!?かずま…。」
私は堪えられなくなって、泣いてしまった。
泣きじゃくる私に、クリスが声を掛けてくる。
「カズマ君はまだ生きているよ!だけど、早く行かないと!!」
カズマが生きてる!?
「めぐみん、行こう…。早くカズマさんを助けないと!」
まだ泣いていた私に、ゆんゆんが優しく声を掛けてきた。
「…ゆんゆんに言われなくても、分かっていますよ…。行きましょう!!」
私が力強くそう言うと、ゆんゆんが私に微笑んだ。
まさか、ゆんゆんに心配されてしまうとは…
でも、カズマを失ったら、私は…。
私達は、再び屋敷に向けて、走り出す。
屋敷の傍まで行くと、傷だらけになっている柄の悪い男達が、怯えながら走ってきた。
「あいつらは!?」
「アルダープの護衛か!?」
ミツルギ達が剣を抜いて、男達に構える。
「ま、待ってくれ!助けてくれ!!」
「どういう事だ?」
「多分、あの屋敷から逃げてきたんだよ。」
事情を知っているクリスがそう答えると、ミツルギ達は剣を納める。
「あのクソ領主が、バケモノを使って俺達に襲い掛かってきたんだ!」
「あ、アンタら、冒険者だろ!?早くあのバケモノを何とかしてくれよ!!」
「分かっている!だから今向かっている所だ!早く道を空けろ!」
ダクネスに一喝された男達は、慌てて道を空ける。
再び、走り出そうとした私達に一人の男が声を掛けた。
「そ、そういや、冒険者といえば、隻腕の男が屋敷に入っていったぞ。俺は止めたんだけどよ…。」
絶対にカズマだ!
あの男は一体何をしているのでしょうかっ!?
「あ!ごめん、めぐみん!忘れてた!」
「急に如何したんですか?クリス。」
クリスは私の傍に寄ると、私の掌の上にペアの指輪を置いた。
「カズマ君からの預かり物。本当は伝言も頼まれたんだけど、それは断っちゃった。」
クリスの言葉に、私はそっと掌を閉じる。
「断って正解ですよ、クリス。そういう事はカズマの口から直接聞きたいですからね!」
「ふーん?そういう事なのね?」
アクアはドヤ顔をしながら、皆の方に顔を向けた。
「皆!早いトコ、カズマさんを助けて、こんな事件早く終わらせましょう!?
そして、皆で思いっきり!!!二人を茶化してあげましょうよ!!」
…このアホ面女神は、なんて事を言うんでしょうかっ!
いっその事、ゆんゆんとの関係を皆に暴露してしまいましょうかね!?
…ですが、カズマを助けるというのは賛成です。
「早く向かいましょう!!」
三度、私達は屋敷に向かって、駆け出した。
―――――――――…
≪カズマ視点≫
屋敷の二階へ移動した俺は、目標の隙を窺う。
左腕一本では、取れる攻撃手段が極端に少ない。
多少制御が難しくはなるが、魔法全般は問題ない。
ただ、上級魔法に関しては、やっぱり杖が欲しいところだ。
『カースド・ライトニングを使えれば…』
黒稲妻は弾速が早く、余計な光を帯びてない。
その威力も凄まじく、スキルレベルはまだ低いが、
幾重にも防御スキルを纏っている俺の腕を簡単に切り飛ばす程だ。
だからこそ、暗殺にはうってつけの魔法と言える。
『無い物をねだっても仕方ない…、あいつを殺すだけなら此れで十分な筈だ。』
俺は、此処に来る道中で、落ちていた小剣を、数本回収していた。
多分、護衛の持ち物だろう。勝手に使っちまうけど、許してくれよ?
俺は目標を見据える。
今ならどちらもこっちを注視していない…。殺るなら今だ!
『…!』
小剣を二本、投擲スキルを使ってアルダープに放つ。
突然、アルダープが転び、二本の内一本が外れる。
残った一本も、偶然倒れた銅像に弾かれる。
『ちぃっ!』
再び俺は投擲スキルでアルダープに小剣を放つ。
転んでいるアルダープには避けられる筈が無い!
そう思っていたのだが、くしゃみをしたアルダープに一本を躱され、
もう一本は、何故かあらぬ方向に飛んでいった。
『どうなってやがる!?』
アルダープは急に飛んで来た小剣に驚き、周囲をキョロキョロ見回している。
『最後の一本か…。』
こうなったら、もっと近くに寄るしかない。
テラスを飛び降り、背後に回る。
この距離なら外さない…。、
俺は渾身の力で、アルダープに小剣を放った。
小剣はまっすぐアルダープの背中に向かって行く。
『此れで終わる。』
小剣がアルダープの背中に刺さり、断末魔の悲鳴を上げる―――
筈だった。
アルダープの背中に届く直前、ふいに強風が吹いて小剣を叩き落す。
カランッ!と音が鳴り、悪魔が此方を向いた。
「ヒュー、ヒュー、見つけたよ、アルダープ。」
「ど、何処じゃ!何処に居る!?」
不味い!見つかった!?
悪魔が詠唱をしながら、右手を前に出す。
この距離じゃ、避けられない!?
「『カースド・ライトニング!』」
「り、『リフレクト!!』」
黒稲妻の威力を殺し、何とか受け流す。
「ぐっ!『ライトニング!!』」
アルダープを巻き込む為に、広範囲に広がる様に雷撃を放つ。
偶然か奇跡なのか、アルダープの居る場所だけが範囲から外れる。
「さっきから、何なんだよ!!『ファイアボール!!』」
俺はやけくそ気味に、火球を放つ。
だが、それは突然振ってきた瓦礫に阻まれた。
ここまで来れば、流石に異常に気づく。
「これが、上級悪魔の力なのかよ…!?」
「『カースド・ライトニング!』」
「くっ!『リフレクト!!』」
クソッ!なんとか離れねえと!!
「良いぞ!マクス!!そのまま嬲り殺しにしろ!」
「ヒュー、ヒュー。」
如何する!?テレポートで退避するべきか!?
いや、めぐみん達がこっちに向かってきている筈だ!
俺は周囲を見回す。
動くモノは何もない…。もう、時間稼ぎは無意味だ…。
「ぐ!」
「む!追え!マクス!!」
「ヒュー、ヒュー。」
俺は逃走スキルを使って、その場から全力で離れる。
そして屋敷の門を越えた時、悪寒が走った。
「何度も…!?」
カースド・ライトニングだと思って、回避をしようとすると、突如俺の後ろで爆発が起きる。
「ぐあああっ!!」
これは、爆発魔法!?
そういえば、最初に爆発が起こっていた!
直撃はしなかったが、爆散した飛来物が俺の体を抉る。
そして俺の体は、爆風で地面を何度も転がり、深手を負った。
「はあっ…ぐほっ!…は、『ハイネス・ヒール!』」
クソ…、出血が止まらねえ…。クラクラしやがる。
「か、カズマ!!?」
…幻聴か?だけど、最後に声を聞けて良かったよ…
「しっかりしなさい!カズマ!!『ハイネス・ヒール!!』」
暖かい光が俺を包む。
「カズマ!私に伝えたい言葉があるんですよね!?なら、早く起きてください!!」
めぐみん?
目を開けると、めぐみんの顔があった。
「カズマ!無茶をしすぎだ!!」
ダクネス…
「アンタに死なれたら、私も困るんだからね!!」
アクア…
「そうですよ!カズマさん!私達を置いていかないで下さい!」
ゆんゆん…
「酷い状態だ…、でも僕達が来たからには、もう無茶はさせないよ!」
「カズマ、お前はそこで休んでいろ!」
「そうだよ!後はあたし達に任せておいて!!」
「へっ!だけど、これは貸しだからな!!」
「お前、こういう時ぐらいは言葉を選べよ!」
ミツルギ…皆…
「ゴホッ!悪魔は変な力で攻撃を避ける!それに爆発魔法も使いやがる!皆気をつけろ!」
何とか、声を絞り出し、皆に伝える。
「カズマは、休んでいてください。」
「…ああ。頼んだぜ?相棒!」
「サトウ殿は、私が!」
俺はクレアに肩を貸して貰い、なんとか立ち上がる。
めぐみん達は破壊された門を見据えていた。
「クックッ、あの爆発に巻き込まれれば、流石に死んだじゃろう。」
ニヤニヤとしたアルダープが門から出てくる。
そして現状に気が付いたアルダープが、驚きの声を上げた。
「なっ!?増援じゃと!?しかも、貴様らは!?」
貴様らはと、問われれば俺の相棒は、黙っていられる筈がない。
「我が名は、めぐみん!!紅魔族随一の天才アークウィザードにして、爆裂コンビが一人!
最強の爆裂魔法で悪魔を撃ち滅ぼす者!!」
「我が名は、アクア!!女神にして最強のアークプリースト!悪魔と悪徳領主をシバく者!」
「我が名はゆんゆん!紅魔族随一のアークウィザードにして、次期族長になる者!友達を助ける者!!」
「我が名はダクネス!最硬のクルセイダーにして、ダスティネス家を継ぐ者!貴族として貴様を裁く者!!」
「なっ!ララティーナ!?」
「わ、我が名は、リーン!!期待の新生アークウィザードよ!!」
ドサクサに紛れて、リーンまで名乗りを上げていた。
あーやっちゃった。すまん、テイラー。
「くっ!幹部や、デストロイヤーを破壊した連中が勢揃いじゃと!?はっ!?まさか!?あの賊は!?」
「やっと気づいたのかよ。豚領主。」
「ぐっ!?」
「アルダープ!!悪魔を行使し、多くの犠牲を出した貴様には国家転覆罪の容疑が掛かっている!大人しく投降しろ!!」
「なっ!?……クレア様、何かの間違いでは?」
この状況下で、言い逃れするつもりなのか!?
「無駄だよ、アルダープ。やっと思い出したんだけどね?そこの悪魔の力は辻褄を合わせる力。
だから、既に悪魔を目撃している私達には、通用しないんだよ。」
「辻褄を合わせる!?まさか!?今までの事件は!?」
クレアが驚愕の声を上げ、悪魔を見る。
「うん、そこの悪魔の力だろうね。」
…そういう事は、もっと早く思い出してくれよ、クリス。
「成程ね、聞いた事があるわ。確か、地獄の公爵の一人で辻褄合わせのマクスウェルだったかしら?」
「お、大物じゃないですか!か、勝てますよね?アクアさん!?」
「安心して、ゆんゆん!私は悪魔なんかに絶対負けないから!!」
何処からか、アクアの杖が飛んできて、アクアの手に収まる。
皆の気迫に押されたのか、アルダープは脂汗を流しながら、マクスウェルに叫んだ。
「こ、殺せ!ララティーナ以外は全員殺して構わん!!マクス!早くやれ!!」
だが、当のマクスウェルは薄く笑うだけで、攻撃をしてこない。
「なっ!貴様!!わしの命令が聞けぬのか!!」
そう言って、アルダープはマクスウェルを足蹴にする。
「ヒューヒュー。無理だよアルダープ。
”仮初めの一人”だけなら兎も角、”二人同時”は相手に出来ないよ。」
「わしに逆らうな!マクス!!貴様の飼い主はわしじゃぞ!!
貴様がどうなろうとワシには関係ない!さっさと戦え!!」
「ヒューヒュー。分かったよ、アルダープ。」
「来ます!総攻撃を開始してください!!」
めぐみん主導で戦闘が展開される。
「『ライト・オブ・セイバー!!』」
「『ブレード・オブ・ウインド!!』」
「『カースド・クリスタルプリズン!』」
「『狙撃!』」
「「盗賊の本気!見せてあげるわよ!」」
後衛組の攻撃をマクスウェルは次々に避けていく。
だが、激しい攻撃の前に、マクスウェルの行動範囲が狭まって行った。
「アクア!今です!!」
「『セイクリッド・エクソシズム!!』」
マクスウェルの足元が光る。
魔法が発動するまでの刹那の時間で、マクスウェルが空に飛び上がった。
「前衛!お願いします!!」
「応!任せろ!!うわっと!?」
ダストが追撃しようとして、つんのめって転ぶ。
「くっ!この!!」
マクスウェルは空中で体勢を変え、空に放たれた追撃を避ける。
「ミツルギ!」「テイラー!」
空中で体勢を崩したマクスウェルに、着地時の隙を狙ったミツルギとテイラーが同時に襲い掛かる。
マクスウェルは、寸でのところで、ミツルギの攻撃を躱すが、
テイラーの攻撃までは躱す事が出来ずにマクスウェルは叩き飛ばされる。
「アクア!追撃をお願いします!!」
「セイクリッド…!?」
アクアの目の前で、突然爆発が起きる。
「「「アクア!?」」」
爆発に巻き込まれたアクアは、何度も地面に叩き付けられながら、吹き飛ばされていた。
「ぐっ!やってくれるじゃない!?」
アクアは自分に回復魔法を掛けながら立ち上がった。
皆は今の出来事に気を取られ、攻撃の手を緩めてしまう。
「『カースド・ライトニング!!』」
マクスウェルは後衛組に狙いを定め、黒雷を放つ。
其れをダクネスが身を挺して護るが、状況は芳しくは無い。
「マクス!ララティーナは傷をつけるな!!さっさと他の連中を始末しろ!!」
「ヒューヒュー。」
戦闘に巻き込まれないようにする為か、アルダープはマクスウェルから離れた場所で喚き散らしていた。
「…クレア、少し移動してくれ。」
「え?ええ…。しかし、どちらへ?」
「あの豚に攻撃が届く位置だ。」
「し、しかし、それは!?」
「死んだ時は俺が責任を取ってやる!このままじゃ、皆もヤバイんだ!」
「!?わ、分かりました!」
俺の必死な説得で、クレアが何とか従ってくれる。
そして俺達は、潜伏状態でアルダープの背後に回り込んだ。
「『ライトニング!!』」
俺は無防備なアルダープの背に向けて、渾身の雷撃を放つ。
だが、先程と同様に、当たる寸前で雷撃が逸れてアルダープの足元で爆ぜた。
「なっ!?ままままマクスー!!?」
豚が転がるように、アルダープは無様な姿で逃げ出す。
「『クリエイトウォーター!』『フリーズ!!』」
逃がしはしない!
アルダープの足元を凍結させ、身動きを封じる。
それでもアルダープは必死に逃げようとして、凍結した地面に足元を取られ、盛大に転んだ。
それに追い討ちを掛ける様に、俺は雷撃を連発する。
「まままマクス!!た、助けてくれ!!」
アルダープは脂汗を垂らしながら、必死にマクスウェルの名前を呼び、氷の上でもがく。
「カズマ!?何を!?」
さっきから、ずっと気になっていた事があった。
そして、この状況になってようやく確信が持てた。
「『ライトニング!』マクスウェルが力を使う時、無防備になっている!!『ライトニング!』其処を狙え!!」
どういう契約なのかは知らないが、多分契約者を優先的に護るんだろう。
それなら、辻褄合わせの力をこっちで使わせちまえばいい!!
俺の予想通り、アルダープを狙った攻撃が逸れるとマクスウェルの動きが鈍くなっていく。
「アクア!カズマの攻撃に合わせますよ!!」
「う、…分かったわ!!」
戦線に復帰したアクアは、まだ痛みが引いてないのか苦しそうな表情をしていたが、
めぐみんの指揮に従って、マクスウェルに攻撃を仕掛ける。
「さっきのお返しよ!!『セイクリッド・エクソシズム!!!』」
アルダープを護る為に、辻褄合わせの力を使い、
皆の猛攻をギリギリで避け続けていたマクスウェルは、
足元に現れた巨大な魔方陣から、逃れる事はできなかった。
「皆退避しろ!!めぐみん!!」
アクアの一撃で終わるとは限らない、ここで切り札を切っておくべきだ。
皆が退避したのを確認して、めぐみんが爆裂魔法を放つ。
「『エクスプロージョン!!』」
マクスウェルはアクアの退魔魔法に飲まれながら、爆裂魔法の直撃を受ける。
「や、やったか!?」
「流石にこんなの食らえば、一溜まりもないだろ!?」
「さーて、後は豚領主を縛り上げるだけだな!あー!酒が飲みてええ!!」
…何でお前らは、毎回フラグを立てるんだよ…。
爆炎が晴れていくと、マクスウェルが不敵に笑っていた。
「嘘だろ!?」
「おいおい、勘弁してくれよ!?」
「ま、ままマクス!!わ、ワシを早くこの場から逃がせ!!」
アルダープが命令を飛ばす、だが…
「あ!」
マクスウェルの体が徐々に崩れ始めていた。
「ひ、ひぃ!ま、マクス!役立たずもいい加減にしろ!!
貴様がどうなろうと構わん!契約も終わりだ!最後ぐらい役に立って見せろ!!」
マクスウェルはアルダープを見て静かに嗤う。
それを最後に、マクスウェルの体は崩れ去った。
「フラグにならなくて良かった…。」
安堵したら、一気に緊張の糸が切れて、全身が痛み出した。
「サトウ殿、此方で休んでいてください。」
「あ、ああ。」
クレアは俺を地面に座らせ、アルダープに近寄っていく。
「…はあ、はあ…クソ!また出血してやがる…。」
ライトニング連発で力を使いすぎたか…。
クソ…、目が霞んで来やがった…
≪めぐみん視点≫
マクスウェルの体が完全に崩れ去ったのを見届けて、私は冒険者カードを確認した。
「大悪魔マクスウェル討伐!やりましたよ!!カズマ!!」
私は喜びを分かち合おうと、カズマが居る場所へ振り向く。
「か、カズマ!?」
先程まで其処に座っていたカズマが、倒れていた。
「あ、アクア!!早くカズマを!!」
「…出血が酷いわね…。『セイクリッド・ハイネス・ヒール!!』」
アクアの回復魔法で出血は止まった様だけど、カズマは目を覚ましてくれなかった。
「か、カズマが起きてくれませんよ!?アクアどうなっているんですか!?」
「不味いわね、血を失い過ぎているわ…。今は昏睡状態ね…。」
「そ、そんな!?」
「ゆんゆん!!カズマとめぐみんを連れて先に戻ってなさい!!今は安静にさせないとダメよ!!」
「わ、分かりました!めぐみん!!」
「ゆんゆん…。お願いします。」
私はゆんゆんの肩を借りて立ち上がり、カズマの傍まで行く。
「俺も行こう、めぐみんがその状態では、カズマを運べないだろう?」
「テイラー!ありがとう御座います!!」
テイラーにカズマを背負ってもらい、私達はゆんゆんの魔法で町まで移動した。
状況的に仕方ないとはいえ、アルダープ関連が前倒しになってしまいました。
次回で二章が終了します。(多分)