このすば カズマが冷静で少し大人な対応ができていたら。 作:如月空
「めぐみん、それ取ってくれ。」
「はい、カズマ。」
「えーっと、此処はアレが必要か。」
「これで良いですか?」
「お!ありがとな!」
護身用に最適だと言う理由から、小太刀の売れ行きが良かった。
そんな理由で武器屋の親父さんから、次の催促が掛かったので新作に挑戦しているのだが…。
「うーん、これじゃ止め具部分の強度が弱いか…、片方は上手く行ったのになぁ。」
これが上手く行ってくれれば、根回し用のカスタムタイプも作れるんだが…。
「それにしても変わった槍?ですね。」
「ああ、これは薙刀っていうんだよ。槍は突く事に特化しているけど、
此れは薙ぎ払う事で真価を発揮するんだ。」
「さっきの柄の部分が長いカタナもそうですか?」
「其処のは、長巻って言って、大太刀の一種だな。…まぁデカイ刀みたいなもんだ。」
「?単純にカタナを大きくするだけじゃ、駄目だったのですか?」
めぐみんは小首を傾けながら聞いてくる。
「そういうのもあるにはあるけど、其れだと滅茶苦茶重くて取り回し辛いんだよ。」
野太刀と呼ばれる様な物を、自在に振り回せる奴なんてそうはいない。
それこそ、漫画やアニメの世界とか、某ゲームのハンター達くらいだろう。
「それで改良を重ねて、扱い易くしたのが、其処にある長巻という訳だよ。」
「やっぱり、カズマの国の武器は変わった物が多いですね。」
めぐみんはそう言いながら、興味深そうに長巻を観察していた。
コンコン
「カズマ、めぐみん、いるー?」
「いるぞー!昼飯なら、もうちょっと待っててくれー!」
そう答えると、扉を開けてアクアが入ってきた。
「って、何食ってんだよ…。」
「ツナマヨおにぎり。」
「…俺たちへの差し入れは?」
「あるわけないじゃない!?」
くそぉ!やっぱそうだよな!?
あーもう!見てたら無性に食いたくなっちまったじゃねえか!!
「やっぱり、此処は暖かいわね。」
「そりゃな…。」
鍛冶場なんだし、溶鉱炉があるからな。
「リビングにも暖炉があるじゃないですか。」
「そうなんだけど、此れを作っている間に、ゆんゆんがソファーの上で寝ちゃってたのよ。
起こすのも可哀想だし、如何しようかなと思っていたんだけど、此処の事を思い出したのよ!!」
それで此処に暖を取りに来たのか…、ならせめて、俺たちの分のおにぎりも作って来いよ。
「それなら、ゆんゆんに膝枕でもしてあげれば良いじゃないですか。
そうすれば、アクアもソファーに座れますよね?」
「成程!流石はめぐみんね!伊達にカズマとイチャコラしてる訳ではないわね!?」
イチャコラってなんだよ…、最近は皆の前では控えるようにしてんだぞ?
そんな俺の考えは余所に、アクアは上機嫌でリビングに戻っていった。
「なあ、あの手で触られたら、ゆんゆんが可哀想じゃないか?」
「いえ、流石のアクアでも、それぐらいは気づくでしょう?」
如何だろうな?アクアだしなぁ…。
「其れは其れとして…腹減ってきたな…。」
「…ですね。」
アクアめ…、これ見よがしに目の前で食いやがって…。
作業の途中ではあったが、結局はとりあえず飯と言う事になった。
「よし、溶鉱炉も止めたし、厨房に行くか。」
「カズマカズマ、私もアクアが食べていた物を食べてみたいです。」
「じゃ、今日はツナマヨご飯だな。」
味噌汁もつけたい所だけど、肝心の味噌がな…
…アレ?そういえば醤油はあるよな?なら大豆があるんじゃないのか!?
今度仕入れに行った時にでも探してみるか。
アクアの影響から、ツナマヨご飯という選択になって、調理時間が大幅に短縮した。
「と言うか、此れを料理とは呼べないだろう。」
「でも、美味しいですよ?偶には良いのではないですか?」
「まぁ、そうだけども…。」
最近、料理も趣味になってきている俺としては、やはり物足りなさがある。
うーん、ツナマヨを使ったメニューを考えるべきか?
ぱっと思いつくのは、ツナサラダだけど、メインには出来ないな。
食事を終えて、新メニューを考えていると、ダクネスが王都から戻って来た。
「ただいま、皆。客が来てたぞ。」
「ん?客?」
ダクネスの影から、知った顔が現れた。
「ああ、セナさんか。アレから爆裂散歩の場所は変えたから、問題は起きてないと思うんですが?」
「あ、いえ!今回はそちらの件ではなくですね…。」
またもや、セナさんは伝え辛そうに言い淀む。
「あの、皆さんはキールのダンジョンに行かれましたよね?」
「ん?えっと、三ヶ月ほど前ですが、確かに行きましたね。」
行ったのは大分前なんだが、今更、何か問題が起きたって言うのか?
ダンジョンに向かう道中だって、敵にも遭遇しなかったから、ずっと走っていただけだし。
小屋前での戦闘だって、爆裂魔法は使ってないし、残っていたアンデッドの亡骸も弔ったぞ?
「その、ですね。ダンジョンの周辺で奇怪なモンスターが出現しているんです。
最後にダンジョンに行ったのがサトウさん達と報告を受けたので、こうしてやって来た訳なんですが…。」
セナさんは困惑したような表情で、話を続ける。
「最後と言っても三ヶ月も前なんですか…。」
「ええ、ギルドにも記録が残っている筈ですよ。」
「申し訳ありません!やはりあの方達からの情報は、先に調べておくべきでした!!」
ああ、この前みたいに、またどこぞの貴族が騒いだ訳か。
「まったく、困ったものだな!大方、アウリープを中心にアンダインやアクドーが騒いでいたのだろう?」
ダクネスの言葉に、セナさんは無言のまま頷いた。
「おい、ダクネス。そいつらはどんな奴らだ?」
「ん、三人とも、あまり良い噂は聞かないな。領民からは悪徳領主呼ばわりされているぐらいだ。」
「ふーん?」
「しかもアウリープは、あのアルダープの従兄弟だ。嫌味な奴でゾクゾクする程、下衆い男だったよ。」
ゾクゾクって、お前な…。
つまりは、ダクネスのM心がくすぐられるぐらい相当な下衆だという事だよな。
まぁ、其れは其れとして…
「大体理解した、アルダープが捕まった事で、そいつらも身の危険を感じたって所だろ?」
保身の為に動いたって言うのなら、俺達を狙う理由も分からなくも無い。
此方としては迷惑極まりないけど…。
ただ、そうなるとそいつらは、完全に悪徳貴族だという事になるが。
「カズマ、仕掛ける訳じゃないな?」
「そんなつもりはないさ。」
今の所は。
直接仕掛けてくる前にカタを付けたい所だが、下手をすれば更に敵を増やす事になるかも知れない。それに、クリスから誘われている件もある。
あの話は乗った方が良いかも知れないな。
まぁ、先ずは、今回の事件か。
「この話は此処までにして、セナさん!」
「あ、はい!?」
「その奇怪なモンスターとやらの詳細な情報はありますか?」
そう聞くと、セナさんは懐から手帳を取り出して、説明を始めてくれた。
「そのモンスターは小型で、近づくと自爆するそうなんです。
爆発の規模は小さいのですが、屈強な戦士が一撃でのびてしまう程で…。」
セナさんの説明を聞いていると、突然、ガタッと言う音を立てて、ダクネスが立ち上がった。
「自爆をするのか!?しかも屈強な戦士が一撃だと!??」
嬉しそうに目を輝かせたダクネスは、鼻息を荒くしてすごく興奮していた。
「行こう!カズマ!!私は貴族として、この未知の敵を放っては置けない!!」
「おお!!流石はダスティネス卿です!!御願い出来ますか!?」
「勿論だ!さあ、カズマ!!早く支度をして行くぞ!!」
いや…まぁ、いいけどよ。遠距離で倒しちゃえば良いだけだし。
疑いの目がある以上は、どちらにしても解決の為に動くしかないだろう。
それに、こういう行動の一つ一つが、他の貴族達の信用に繋がる可能性もある。
そうすれば、騒いでいる連中は次第に、相手にされなくなっていくだろう。
―――――――――――…
「また、この道を通る事になるとはなぁ。」
「それは良いのですが、この調子ですとあちらに着くのは深夜を回りそうですよ?」
「参ったなぁ。」
前回来た時は全員で走って高速移動が出来ていたのだが、今回はセナさんが居る為其れが使えない。
「セナさん、やっぱりダクネスの背中に乗ってくれませんか?」
「さ、先程から申し上げている通り、その様な恐れ多い事は出来ませんよ!!」
こうだ。
結局は、アクアの支援を受けたセナさんに、ペースを合わせる事に。
しかも、セナさんの速度は時間が経つにつれ、徐々に落ちていっている。
そろそろ夕方になる頃だというのに、行程の半分も来れていないという状況だ。
「なあ、セナ。お前の言い分も分からぬ訳ではないが、このままでは私達も困るのだ。」
ダクネスはセナさんを諭すように説得を続ける。
「此処まま、深夜過ぎに着いたとしても、私達は満足に戦える状態ではないかも知れないぞ?」
「そ、それは…。」
「そうよ!ダクネスの言う通りだわ!!この寒さよ!それにそろそろお腹も減って来ているの!!」
「それと、時間的に眠気も心配ですよね。」
寒さと空腹と眠気が同時に襲っている様な状態では戦えるわけがないと、
アクアとゆんゆんも追随して、セナさんに訴えている。
「し、しかしですね!?今から走っても…!」
「今から走れば、大体三時間…いや二時間ぐらいで着きますよ?」
途中でバテそうなのは、めぐみんとゆんゆんだが、そうなったら俺とアクアで背負えばいい。
問題は敵が現れた時ぐらいだが、不意を衝かれる事だけに気を付けていれば、問題はないと思う。
「は?はあ!?ほ、本当にそんなに早く行けるのですか!?」
以前来た時は、大体6時間弱。しかもあの時は道を確認しながらだから、其処まで早くは走っていない。
あの頃から比べたら、俺達も大分レベルアップもしているし、2時間ぐらいの行程なら、多分縮められるだろう。
「セナさんどうですか?」
これで駄目なら、今日はここで登録して撤退だな。
野営をしないとか冒険者として問題はあるが、まだまだ寒いこの時期に、外で寝泊りとかはしたくない。
そんな事を考えていたら、セナさんが観念した様に口を開いた。
「…分かりました。御願い致します…。」
「ああ、わかった。」
やっと折れてくれたセナさんを、ダクネスが背負う準備をする。
「し、失礼します!ダスティネス卿!!」
そう言って、ダクネスの背中に乗るセナさんは、緊張からか顔を紅潮させていた。
ダクネスに憧れを抱いていると言うのは本当らしいな。あいつ自身は色々残念な奴だけど、
王家を支える大貴族の一人娘で、クルセイダーとして魔王軍幹部や大物賞金首と渡り合った!
とか思えば、成程、十分に憧れる要素にはなる。
実際、あいつは街の警察官やアクセルを護る騎士達からの信頼が厚いからな。
セナさんが萎縮したのは、大貴族だからという理由だけではなかったのかもな。
「アクア!全員に支援を!さっさと仕事を終わらせるぞ!!」
「ええ!早く終わらせましょ!!」
手早くアクアの支援を受けた俺達は、ダンジョンに向かって駆けていく。
途中で、予想通りめぐみんとゆんゆんがダウンしたが、俺とアクアで背負って再び駆け出す。
その甲斐もあって、二時間半程で何とかダンジョンの近くに到達する事が出来た。
「流石にしんどいわね…。ダクネス(体力バカ)は兎も角、カズマがへばって無いのは不思議だわ。」
「そりゃ、めぐみんを背負うのは慣れているし、訓練も続けているからな。」
早朝のランニングは最早日課だしなぁ、夜は爆裂散歩もあるし。
「でも、今はミツルギも来てないじゃない。それでよく続けているわね。」
ミツルギは、クレアの要請を受けて王都の防衛をしているらしい。
何でも冬場は、魔王軍の侵攻が激しくなるらしく、人手が欲しいようだ。
三月には戻って来れるらしいから、アイツが帰って来たら宴会でも開いてやるか。
そんな事を考えていると、敵感知に反応が出る。
「ん、感知に引っ掛かったな。ダンジョンの方からか。」
「何!?自爆するとかいうモンスターか!?行こう!!カズマ!!」
「ま、待てって!?お前は壁役だろう!?いきなり突っ込もうとするな!!」
逸るように捲くし立てるダクネスを、何とか押さえつけ、俺達は様子を窺う。
すると、ダンジョン内部から、仮面を付けた人型のモンスターが出て来た。
「あれがそうか。…確かに奇妙な奴だな。」
「で、でも、何か可愛くないですか?」
「確かに、こうそそられる物がありますね。カッコ可愛いという奴ですか。」
ぬいぐるみみたいな見た目だけど、可愛いかと聞かれると如何だろう?
めぐみん達はアレの可愛さとやらを、話し続けている。
そんな二人の感性についていけなかった俺は、何となくアクアを見た。
「ん?如何したんだよ?」
アクアは、ぬいぐるみモンスターを睨みつける様に見ていた。
「何故かしら?私、あの人形を見てるとムカムカしてくるんですけど!!」
ん?ああ、状況から察するにあれか?
「ゆんゆん、それ位にしておけって、アクアが拗ねているぞ。」
大方、ゆんゆんが取られるみたいな感じになっているんだろう。
こいつらの仲の良さは異常だからな、マジでデキてるんじゃないかと最近は思っている。
「ち、違うわよ!?そういう事じゃなくて!!」
「はいはい、じゃあ、戦闘を開始するぞ。」
弓を取り出し、狙いを付けていると、不意にダクネスが突っ込んだ。
「お、おいバカ!?まだ突っ込むな!!」
突っ込んでいくダクネスに気づいた人形達は、とてとてと歩いてダクネスに近づいていく。
「さあ!来い!!お前達の力を私が試してやる!!」
ダクネスの周りに居る人形たちが、一斉に飛び掛った。
ドン!!っという派手は音と共に人形達が自爆していく。
「…ふむ、この程度か。」
……あいつ何であの爆発を受けて無傷なわけ?
流石の皆も、呆れる様な目でダクネスを見ていた。
「よし!露払いは私がやろう!行くぞ!!カズマ!!」
そう言ってダクネスはダンジョン内に入っていく。
「はあ、…登録完了っと、皆は此処で待っていてくれるか?」
「…そうですね、あの爆発に万一でも巻き込まれると危険ですし。」
「カズマさんとダクネスさんだけで大丈夫なんですか?」
「無理と感じたら直ぐに引くさ、アクア皆を頼むぞ。」
「任せなさい!」
後衛組だけを残すのは心配ではあるけど、アクアとゆんゆんがいれば大抵の敵は何とかなるだろう。
ダクネスの後を追おうとすると、セナさんに呼び止められた。
「あ、待ってください!」
「ん?あのバカが突っ込んじゃったんで、早く行きたいんですが?」
「此れを持って行って下さい。」
セナさんから札の様な物を渡される。
「此れは?」
「強力な封印の魔法が込められた札です。其れを貼り付ければどんなに強力な魔法陣でも、
効力を失うはずです。其れを使ってください。」
成程、ダンジョン内から溢れて出てくるって事は、中に召還者もしくは召還陣が在るって考えるのが普通だよな。
「分かりました。」
皆と別れて、急いでダクネスの所に向かうと、ご満悦になっているダクネスが出迎えてくれた。
「おお!遅かったじゃないかカズマ!!ここらに居た敵は全て倒したぞ!!」
「”自爆された”の間違いだろう?」
支援を受けずに突っ込んだダクネスが、あんな小さな的に当てられる訳がない。
「何を言うか!見て居ろよカズマ!!」
そう言って、再びダクネスは突っ込んでいく。
いや、支援ぐらい掛けさせろよ…。
心の中でそんな愚痴を零して、ダクネスの後を追う。
すると、信じられない様な光景を目の当たりにしてしまった。
「ふははは!当たる当たるぞー!!」
いつぞやのゾンビ騒ぎの様に、ダクネスが無双していた。
…ああ、衝撃でも爆発するから、適当に飛び込んでいるのか。
うん、適当にヒールでも飛ばしておこう。もうあいつ一人で十分だわ。
「それにしてもアイツ…珍しくマトモに攻撃があたるからって、調子に乗りすぎじゃないか?」
しかし、人形以外のモンスターが全然いないな。
アレから三ヶ月も経っているんだし、何かしらが住み着いていても可笑しくはないんだが。
調子よくそのままダンジョンを踏破して行き、キールの部屋の傍までやって来る。
「む?誰か居るぞ?」
召還主が居たのか!?
「ん?」
「貴様!こんな所で何をしている!?…その人形は!?」
仮面を付けた男は、土で人形を創り出していた。
「ほう?これはこれは。」
男は立ち上がり、紳士的なお辞儀をする。
「我がダンジョンにようこそ!勇敢な冒険者達よっ!!」
「…お前があの人形達の主って訳か。」
こいつを見ていると右腕が疼く。…中二的な意味じゃないからな!?
兎に角、こいつは相当ヤバイ!直感的なモノだけどそう感じてしまう。
「いかにも!我輩は魔王軍の幹部にして、悪魔たちを率いる地獄の公爵!
この世の全てを見通す大悪魔バニルである!!」
「「なっ!?」」
魔王軍の幹部にして、地獄の公爵!?
「下がっていろ、カズマ!!」
俺を護る様にバニルに剣を向け、ダクネスは相手を見据える。
「おっと、落ち着け娘。我輩はお前たちと争うつもりはない。」
「信用出来るか!貴様は魔王軍の幹部なのだろう!?」
「確かに幹部ではあるが、我輩は城の結界を維持しているだけの、言わばなんちゃって幹部なのだ。」
何処かで聞いた様な話だな。
「それなら貴様は、こんな所で何をしている!?」
「うむ、我輩は魔王の奴に頼まれて、この地へある調査と
町に住んでいる働けば働くほど貧乏になるポンコツ店主に会いに来ただけなのだよ。」
この地の調査?、つうか、ポンコツ店主ってのに覚えがあるんだが…
横目でダクネスを見ると、胡散臭そうにバニルを見ていた。
この悪魔に確認を取りたい所だけど、皆にウィズの事を説明してなかったんだよな…。
とりあえずはもう一つの確認を取るか。
「バニルとか言ったっけ?あんたが今話した内容だけでは、その人形達の説明つかないんだが?」
「ん?」
「その人形達が、ダンジョンから溢れ出てきて、こっちは迷惑してんだぞ?」
「ふむ、我輩はこやつらでダンジョン内のモンスターを駆除していたのだが。」
バニルがその場で手を叩くと、人形達が崩れていく。
「外に溢れたのなら、もうモンスターは居らぬな。」
ダンジョン内のモンスターを駆除?
こいつの真意が見えないな。
「…あんた一体何を企んでいるんだ?」
「まぁ、落ち着け。婚約者がいながら、仲間達に情欲の目を向ける男よ。」
「ちょっ!?」
「なっ!?カズマ!お前!?」
「ち、違う違う!!お前らが、風呂上りに薄着のままうろつくからだって!?」
あんな姿でうろつかれたら、男なら誰でも目で追っちまうよ!?
だから、俺は悪くない!男目を気にしない、こいつらが悪いんだから!?
「我輩は悪魔として、大きな夢があるのだ!」
夢?こっちはそれどころじゃねえってのに!
「まあ、聞け。我輩は人間のイヤだなと思う、悪感情を糧とする悪魔。
とびきりの悪感情を食した後に、華々しく滅び去りたいという願望があるのだ!!」
…破滅願望って奴か。はた迷惑な…。
「我輩は考えた!!先ずはダンジョンを手に入れる!!そして、各部屋には部下の悪魔達や
苛烈な罠を仕掛ける!!其処に挑むは歴戦の冒険者達!!」
まあ、王道だな。
「何時か、最奥に到達する者が現れよう!待ち受けるのは勿論我輩!!」
…それで?
「激闘の末、打倒された我輩のあとに現れる宝箱!!苦難を乗り越えた冒険者は其れを開け…。」
な、何が出てくるんだ!?
「『スカ』と書かれた紙を見て、呆然とする冒険者達を見ながら、我輩は滅びたい!」
そういうオチかよ!?そうだよな、こいつは悪魔だもんな!!
「カズマ、コイツはここで仕留めて置くべきだと思う。」
「そう言うな。そこの男に見られている事を知って、割れた腹筋を見られていないかと心配する娘よ。」
「なっ!?」
…割れてきているのか…。
「わわ私の腹筋はそんなに割れてない!それよりも、調査だの店主に会うだのはどうしたのだ!?」
あ、今の一連の流れで忘れてた。
「その店主は最近大金を手に入れたと聞いていたのでな、
そこで働き、貯めた金で巨大なダンジョンを作るつもりだったのだが、
丁度、この主の居ないダンジョンを見つけたのでな…。」
「ああ、だから余計なモンスターを排除していたのか。
だけど、此処じゃ巨大ダンジョンとは呼べないんじゃないか?」
「は?」
「いや、だって初心者の町でダンジョン訓練に使われている様な所だぞ?
雰囲気はあるけど、規模は大きくないし、最奥までの距離もない。
拡張するんだとしたら金も掛かるし、何よりお手軽感がすごい。」
アクセルの町から徒歩で片道12時間掛かるとはいえ、駆け出しでも簡単に来れる様な場所だしなぁ。
「ふむ…、そう言われてしまえば、確かに物足りなさが…。」
「だろ?それこそ魔王城の傍とかに作ったほうが特別感が出るんじゃないか?
いや、いっその事、魔王城の先に作って裏ボスの様な存在に!」
魔王倒したと思ったら、真ボスがいるとか言う展開は王道だしな!
「成程!魔王をも退ける冒険者達が我輩に挑んで来ると!!」
「それで、お前を倒して『スカ』を食らう訳だ。」
ゲームだったらコントローラーを投げそうだ。俺なら投げる。
だけど、そんな勇者が引っ掛かるんだったら、ちょっと見てみたいぞ。
「な、なあ、カズマ。先程からその悪魔と仲良さげに話しているが、如何したと言うんだ?」
いや、ちょっと楽しかったのは認めるけど、こう言えば此処から引いてくれるだろ?
「ふむ、小僧の考え等見抜いておったが、アドバイスとしては的確だったぞ。」
「……どうして、こっちの考えが読めたんだ?それにさっきもまるで見てきたかの様に言ったよな?」
まさか、大悪魔特有の特殊能力って奴か!?
「成程、実はベルディアを倒した者を調べる事が調査の目的だったのだが…貴様らだったか。」
不味い、こんな所で敵対されたら勝ち目なんてねえぞ!?
「ほう?しかも我が友まで退けたのか。どうやら貴様の仲間に厄介な奴がいる様だな。」
こ、こいつ何処まで見えて…!?
「全てを見通す大悪魔って、そういう事かよ!?」
マクスウェルといい、こいつといい!何でこんなトンデモ能力を持ってるんだよ!?
「ダクネス!引くぞ!!こんな所じゃ戦えねえ!!」
「まあ、待て、小僧。何か勘違いをしている様だが、我輩は人間には危害を与えたりせぬぞ?」
「…”人間”にはだろ?」
こいつは間違いなく、あいつの事を気づいている。
「そういう事か、分かった、引こう!」
「仕方ない、危害を与えるのは不本意であるのだが…。」
そう言ってバニルは構える。
素直に逃げさせてはくれないか…。なら!
「お前が当てにしていた店主は、三億をガラクタに変えていたぞ?」
「なっ!?」
隙が出来た!
バニルから逃れようと、その場から駆け出すと切羽詰った様にダクネスが叫んだ。
「危ない!カズマ!!」
咄嗟にダクネスは俺を庇って、膝を付く。
「だ、大丈夫かダクネス!?」
ダクネスに声を掛けるが反応はない。
「お、おい、如何したんだよ!?ダクネ…ス!?」
ゆらりとダクネスが立ち上がる、そしてこちらを振り返った。
「お、おいおい。嘘だろ!?まさか、このパターンって…!?」
ダクネスは俺の前に立ち塞がり、その顔には、先程までバニルが身に着けていた仮面が着いていた。
皆大好きバニル様です。違和感があったら御免なさい!
笑って許してくれるとうれしいです。
後編は明日から書き始めます。
長くなりそうだから切っただけなので、多分そんなには掛からないかと思われます。