このすば カズマが冷静で少し大人な対応ができていたら。 作:如月空
厳しい冬を終え、ようやく暖かくなってきた3月中旬。
俺は調理に勤しんでいた。
「カズマ!エビフライはまだ!?」
「あと少しで揚がるよ。」
「めぐみん!スープおかわり!」
「はいはい、スープではなくてミソシルですよ。」
「めぐみん、僕のも良いかい?」
「では、其処に置いてください。」
ようやくミツルギが戻って来たので、せっかくだから凱旋祝いをする事にした。
「それにしても、よく味噌なんて作れたね。」
「ん、ああ。あっちに居た頃に、簡単に作れる夜食は無いかって調べてた時期があったんだよ。」
短期熟成の白味噌の作り方!なんて物があったから、なんとなく見てたんだよな。
「で?味はどうだよ?」
「此れ、白味噌だよね?その割には味が濃い気がするけど…。」
「ああ、長期間保存出来るように、塩分多めにしてあるんだよ。」
塩を多めに入れると、カビ難いって書いてあったと思うから結構入れちゃったんだけど。
「それで、結局どうなんだよ?」
「ああ、ごめん。美味しいよ。あ、もう一杯良いかな?」
「はいよ、めぐみん、頼む。」
「あ、カズマ。ミソシルが残り少ないですよ。」
「良いよ、全部出しちゃっても。」
「え?良いのかい?」
「別に問題はねえよ。それよりも後で料理の感想をくれよな。」
「ああ、分かった!」
ミツルギ達の祝いで、俺が料理を振舞っているのには他にも理由がある。
最近ギルドに行くと、色んな奴に料理をせがまれるからだ。
何でも、あまり顔を出さなかった冬の間に、俺の料理の噂が広まっていたらしい。
そんな状況になっている事を知らなかった俺は、ウィズの店で売る商品を開発していた。
バニルとの提携のお陰で、俺は試作品の用意とそれの用途説明をするだけで済むのが楽だった。
その中でもライターが特に売れていて、一つ2000エリスもするのに、
バニルが用意した生産ラインが追いつかない程、大人気らしい。
そんな事もあって、機嫌を良くしたバニルが大豆を格安で仕入れて来てくれた訳だ。
流石は畑の肉と言われている大豆だよなぁ、今度は豆腐作りに挑戦してみるか!
とまあ、ここで話が終われば良かったんだが…
この間ギルドに顔を出したら、いきなり厨房に通されて、料理を作ってくれと頼まれてしまった。
結局その日は一日中厨房で働き詰めになってしまったので、此れは不味いと思った。
途中でめぐみんが手伝いに来てくれなかったら、俺はそのまま逃げ出してたんじゃねえかな?
今後も手の空いている時間に頼むなんて言われちまったので、何か打開策は無いかと考えた。
それは、レシピの貸し出しと言う物。
この世界は、作り出した道具に版権の様な物が適用される。
俺が作った小太刀や長巻、薙刀といった武器も俺が許可を出さないと、他では作れないという事だ。
料理のオリジナルレシピに関しても同様で、それをギルドに貸し出す訳だ。
それはそれとして、俺の料理を広めたのは、絶対あいつら(リーン達)だよな。
最近、せわしなく働いている気がするぞ…。
「っと、これで揚げ物は全部揚がったな。……何してんだ?お前?」
揚げ物をトレイに移そうと振り向くと、アクアが摘み食いをしていた。
「アクア、行儀が悪いですよ。食べるなら、皿に移して持って行って下さい。」
「んく、もきゅもきゅ。ごくん。…何かめぐみんって、お母さんみたいな物言いよね。」
ゆんゆんがいないから、今居るメンバーの中では最年少だけどな。
「お前が子供みたいな行動を取るからだろ?ほら、皿に移してやるから席で食えって。」
盛り付けた揚げ物の皿を手渡すと、アクアはにへらと笑った。
「ありがとね!お父さんお母さん!」
「誰がお父さんだ!」「誰がお母さんですか!」
悪びれる様子も無く、アクアはニコニコしながら席に戻っていく。
「まったく、アクアの奴。」
「ゆんゆんがいないから、私達にも構って欲しいんですかね?」
「あー…。」
思い当たる節がいくつもある。ったく、アイツは何処まで子供なんだよ?
「そういや、ゆんゆんって、何時帰って来るんだ?」
「確か、明日か明後日ぐらいだったかと。」
「そっか、早く帰ってきてアクアの面倒見てくれないかな。
そういや、今回は何で帰ったんだ?」
「何でも、魔王軍の襲撃が頻繁にあるらしいので、その件で戻った筈ですよ。」
魔王軍の襲撃って…しかも、頻繁にあるのかよ…。
「えっと、めぐみん?紅魔の里の人達は大丈夫なのかい?」
俺達の会話を聞いていたらしいミツルギが口を挟んできたので、そのまま揚げ物の皿を渡す。
「心配は要りませんよ?」
「え?でも、頻繁に襲撃があるんだろ?確かお前、小さい妹が居るって言ってたよな?
その子は大丈夫なのか?」
「里には高レベルのアークウィザードが数百人はいるんですよ。
……確かに妹の事は心配ではありますが…。」
「サトウ君!僕達も紅魔の人達に助太刀するべきじゃないか?」
確かに行くべきだとは思うんだけど…。
「俺達が出て行った後、何事も無くゆんゆんが戻ったら如何するんだよ?」
「置手紙で、紅魔の里に向かった事を伝えれば、そのまま戻るんじゃないか?」
「ギルドから料理のレシピを貸してくれと頼まれてんだけど、それがまだ出来てないんだよ。」
「ああ、それで感想が聞きたかったんだね。でも、それはすぐに出来るよね?」
……。
「…えっと、や、やっぱりゆんゆんが戻ってからの方が良くないか?
帰って来て誰も居なかったら可哀想だし、そもそもアクアが了承しないと思うぞ?」
「そ、うだね…、確かにアクア様に了承して貰えないかもね。」
紅魔の里に行きたくないと言う訳じゃないんだ…。
めぐみんやゆんゆんの故郷なんだし、力になってやりたい。
ただ…、故郷って事はめぐみんの両親が居るわけで……、
めぐみんの親父さん…ひょいざぶろーさんだったっけか、
話によると、ものすごい娘バカで娘達を溺愛しているらしい。
俺大丈夫かな?いきなり殺されたりとかしないよな!?
親父さんの気持ちになって考えると…うん、俺なら殺っちまうかも…。
14になったばかりの自分の娘とやっている男なんて……。
考えたら余計憂鬱に…
「カズマ、さっきから如何したんですか?何か考え事をしている様ですけど。」
「ん、ああ、ちょっと心配になってきてな…。」
どの道、このままずるずる行くという訳にはいかないよな…。
「た、ただいま戻りましたー!」
その声に反応して、アクアが玄関にすっ飛んでいく。
「おかえりー!!」
「おや、ゆんゆんが戻ったようですね。」
「予定より早かったな……。」
アクアに手を引かれて、ゆんゆんもリビングに入ってくる。
「皆さん、ただいまです。」
「ああ、お帰り。」
「おかえり、ゆんゆん。お邪魔してるよ。」
帰ってきたゆんゆんを、ダクネスやミツルギが出迎えていた。
「ご苦労様です、ゆんゆん。里は如何でしたか?」
「あ、うん。その事なんだけど…。」
めぐみんの質問に、ゆんゆんは何故か言い淀む。
「うん?何かあったのか?」
「あの、カズマさん!一度、紅魔の里に来て頂けませんか!?」
「えっと…、いきなり如何いう事だ?」
「実は、今回の襲撃に幹部が混ざっていたらしいんです。
里の大人達がなんとか撃退した様なんですが、魔法が通じ難い相手だったらしくて…。」
「魔王軍の幹部だって!?…しかも、魔法が通り難いとなると紅魔の人にとっては…!」
「如何考えても、相性が悪いな。」
「はい…。」
それでも撃退出来るんだから、紅魔族って凄えな。
「如何するのよ?カズマ。ゆんゆんが困っているから私は行きたいんだけど…。」
「サトウ君!!ゆんゆんも戻って来た事だし、直ぐに向かうべきだよ!」
「わ、わかったから、落ち着けって!明日の朝一で向かう!!それで良いな!?」
幹部が撃退されたばかりなら、テレポートがあるんだし、其処まで急ぐ必要はないだろう。
「それで、里には被害が出たのですか?」
「ううん、それは大丈夫だったんだけど…、相手が相手だから油断出来ないって、お父さんが…。」
そりゃ幹部が相手だしな…、俺達がベルディアに勝てたのだって奇跡に近いし、
バニルなんか、ワザと負けてくれたようなもんだ。
正直、俺たちが行ってなんとかなるんだろうか?
「兎に角、準備を進めよう!!サトウ君!ギルドの仕事は直ぐに片付けてしまおう!」
「お、おう…?」
「それと、魔法が通り辛いのなら、テイラー達にも声を掛けた方が良いかも知れないね!」
「じゃあ、私達が声を掛けてくるわね!!」
「うん、御願いするよ。」
「わかったわ!じゃあ、キョウヤ、また後で!!」
食事を終えたフィオ達が、テイラー達を探しに走っていく。
あんなに揚げ物食ってたのに、いきなり走って大丈夫なんだろうか?
……というか、なんでいきなり仕切り始めてんだコイツは…。
ミツルギをジト目で見ていると、めぐみんに袖を引っ張られた。
「良いのですか?カズマはまだ里に行きたくないのではないですか?」
「ああいや…、その、お前の両親に会うのが怖くてな…。」
俺が正直にそう言うと、めぐみんは呆れたような顔をしていた。
「そんな所だと思ってましたよ。まあ、カズマなら大丈夫だと思いますよ。…多分。」
今、多分っつったよな!?
……あっちに着いたら、スキル全開で警戒しておこう!
―――――――――…
翌日
早朝から俺達は、馬車の乗り合い広場に集まっていた。
「参ったよな…、まさかテレポートで行けないなんて。」
「御免なさい!カズマさん!!」
「あ、いや、ゆんゆんを責めているわけじゃないんだ。…だから俺を睨むなよ、アクア。」
そう言うと、アクアはぷいっと顔を逸らせた。
「…はぁ……。」
テレポートが使えない理由、それは里にある魔道具の影響らしい。
ゆんゆんの話によると、急な襲撃を警戒して里周辺をテレポート禁止にしたらしい。
そして、その魔道具のスイッチはゆんゆんが戻った後に押される手筈になっていたんだそうだ。
「それにしても、お前がよく来る気になったよな?」
間違いなく来ないと思っていた奴が来ていたので、俺は吃驚していた。
「紅魔の女って美人ばかりなんだろ?なら、ここで活躍すれば俺にもモテ期が来るだろ!?」
ああ、そういう事か…。大丈夫かな?コイツ…。
「こいつはお前が羨ましいんだよ。婚約者が居る上にアレだけ美人に囲まれて生活してんだから。」
「おい、キース!お前だって、そうだろうが!!」
いや、お前らは知ってんだろ…、あいつらの残念な所も。
代われとか言って来ないのが、分かっている証拠だよな…。
「サトウ君!そろそろ馬車が出るよ!」
「ああ!!わかった!!…行くぞ、お前ら!」
これから向かうのは、温泉の町ドリス。
町に着くのは今夜遅く、ドリスで一泊してからアルカンレティアに転送。
そして、徒歩で紅魔の里に向かうというルートだ。
三日は掛かる道程だ…。
初めての長旅に期待半分と言った所だが、とりあえずドリスまでは安全にいけるだろう。
道中で危険なモンスターは、俺たちが過去に倒したグリフォンとマンティコアだけだったらしいからな。
それらが討伐済みなので、今は距離の短い山岳ルートが通れるらしい。
「なあ、カズマ。何故護衛ではなく、普通に客として乗ったんだ?」
馬車が動き始めて、直ぐにダクネスが聞いてきた。
「いや、そんなの面倒だろ?それにアルカンレティアより先は危険なモンスターが多い。
だから、余計な体力は使わずに温存しておきたいんだよ。」
「最初の面倒発言で、後半が全部台無しね。でも、私はカズマと同意見だわ。だって、面倒だもの。」
「お前たちな……。」
「こればかりは言っても仕方ないですよ、ダクネス。」
「はあ…、そうだな。」
そう言って、ダクネスは呆れたような表情で俺達を見る。
常に気を張ってなんかいられるかよ。
こういうのは切り替えが大事なんだよ!
馬車に揺られて、街道を進んでいく。
春の暖かい日差しが差し込み、まどろんで来る。
「ん…。」
横に座っていためぐみんが、俺の肩に倒れこんで来た。
「…仕方ないな。」
起さないように気をつけながら体勢を変えて、めぐみんの頭を俺の膝上に乗せる。
こういうのはするより、される方が良いんだけど…、まぁこれはこれでアリか。
めぐみんの髪を撫でていると、気持ち良さそうに表情を綻ばせる。
「…なんか良いな、こういうのも…。」
見れば、他の連中も舟を漕いでいる。
カタカタと馬車の車輪の音だけが鳴り響く。
俺は心地良さに、目を……
ん?何だ、あれ?
窓の外を見ると、地平の彼方で砂煙が上がっている様に見えた。
…いや、確実に土煙が上がっているな、というか近づいて来ているぞ!?
めぐみん達を起さないようにそっと御者に近づく。
「ちょっと良いですか?」
「うん?お客さん、如何かしましたか?」
「なんか、あっちの方から土煙が近づいてきているんですけど、何か分かりますか?」
「へ?土煙って…、此処らでそんな物が上がるとしたら、リザードランナーの群れか、走り鷹鳶ぐらいですよ。」
はっ?走り高跳び??
「おっと!そんな顔はしないで下さいよ!自分がつけた訳じゃないんですからっ!」
「……で、それは一体?」
「ええ、タカとトンビのハイブリッドで鳥類界の王者でして…。
飛べない代わりにとんでもない脚力を持つ大変危険なモンスターなんです。」
「…何でそんなのが近づいてきているんです?」
「さあ?偶々では?…今は繁殖期ですから、オスがチキンレースでもしているんじゃないですかね?」
「はぁ!?何で繁殖期にチキンレースなんてしてんだ!?」
「本能的に硬い獲物を探し出して、かっ飛んで行きギリギリで回避するという変わった求愛行動なんですよ。」
意味が分からん!
リザードランナーの走る速さ比べっていうのは、まだギリギリ理解は出来る。
ちょっと変則ではあるが、身体能力に優れる者が王者になる、こう考えれば良い。
だけど、走り鷹鳶に関してはまったく意味が分からない!?
あれか?何者も恐れぬ勇気とギリギリで回避するという判断力が求められるのか!?鳥なのに!?
「って!おいおい!!なんか真っ直ぐこっちに来てないですか!?」
「お、可笑しいですね?もしかして、この商隊の中にアダマンタイトみたいな硬い物が積まれているんでしょうか?」
硬い物……
俺はそれに心当たりがあった。
急いで客室に戻り、ダクネスを揺り起こす。
「おい!起きろダクネス!!」
「うん、…何だ、カズマ?…夜這いとは感心せぬぞ…。」
「ちげえよ!!」
「…もう…何よ、煩いわねえ。」
「…如何したんですか?」
「敵襲だ!!」
俺がそう叫ぶと、皆が一瞬で目を覚ます。
「御者のおっちゃん!!他の馬車に止まる様に伝えてくれ!!」
「わ、分かりました!!」
「敵襲だと!?相手は!?」
「走り鷹鳶らしい!!そんでもって奴らの狙いはお前だ!ダクネス!!」
「成程、走り鷹鳶ですか。それならダクネスは早く馬車から離れた方が良いですね。」
「ああ、そういう事だ!アクア!皆に支援を!!」
ドリスまでは平和だと思ってたのに…。
でも、今回はダクネスが呼び込んだ様なモノだ!面倒だがやらないと!
「お、おおお客さん!お客さんは安全な所に隠れていてくださいよ!!
冒険者の先生方!!よろしく御願いします!!」
御者のおっちゃんの声に応える様に、雇われている冒険者達が飛び出した。
「俺たちに!任せておけ!!」
いや、余計なモノを呼び寄せたのは俺達なんです!
「ダクネス!!」
「うむ!任せておけ!!」
そう言ってダクネスは敵の方へ走っていく。
「お、おい!そこのクルセイダーの姉ちゃん!あんたは護衛じゃないんだから下がって居ろよ!」
「って、おい!?危ないぞ!?下がれって!!」
「いや、待て!あのクルセイダーに誘導されるようにモンスターが進路を変えているぞ!?」
「あ、あれはデコイだ!あのクルセイダーは囮スキルを使って敵を全て引き付けているんだ!!」
いや、使わなくても勝手に集まって来るんで…。
「あれだけの敵を前にして一歩も引かないなんて、…なんて勇敢な女性なの!?」
いえ、嬉々として突っ込んでいます。
「さあ!来い!!お前達の滾る情欲!全て私が受け切ってやろう!!」
ダクネスが楽しそうで何よりですね。
「くっ!護衛でもない奴ばかり、危険な目に遭わせられるかっ!」
そう言って、盗賊風の冒険者が前に出た。
「援護は任せろ!!『バインド!!』」
あ…。
「何っ!?」
当然の如く、ダクネスはバインドに飛び込んだ。
「くっ!しまったー!」
おい、棒読みじゃねーか!
「走り鷹鳶か、ダクネスに釣られたんだね。」
他の馬車に乗っていたミツルギ達が駆けつけて来る。
「ああ、悪いけど処理を手伝ってくれ。あの群れを呼んじまったのはこっちだからな。」
「元より僕はそのつもりだよ。」
「カズマ、ドリスに着いたら奢れよな!?」
「あいよ。」
「ねえ、カズマ。ダクネスさんはあのままでいいの?」
リーンは捕縛状態のダクネスを指差す。
「放っておけ。緊縛プレイを楽しんでいるみたいだから。」
「あ、そう……。」
「お、おい!あんたらまで戦う必要はないんだぞ!?」
護衛の冒険者が俺達を止めようとするが…。
「いえ、今回は俺達も参加しますよ。…うちの変態が迷惑掛けて、本当にすみません。」
「は?」
「ミツルギ!テイラー!前衛を頼む!ダスト、クレメアは俺と一緒に遊撃!
後衛は味方を巻き込まないよう、敵を撃破して行ってくれ!アクアは負傷者の治療を!!」
流石に此処でめぐみんに撃たせるわけにも行かない。
ドリスに着いたら、爆裂散歩に行かないとな。
俺の号令で皆が散開して敵を倒していく。
「『ライト・オブ・セイバー!!』」
「いくよー!特大の!!『ファイア・ボール!!』」
「へへっ『狙撃っ!』」
「す、凄い!何者だ!この人達!?」
よし、この分なら商隊にたいした被害は出ないだろう。
だけど、護衛の人達には悪い事しちゃったな…。後で謝らないと。
ん!?
「カズマ!他にも敵の反応があるわよ!!こっちに来ているわ!!」
「ああ、分かっている!!」
フィオが指差す方向を千里眼で確認すると、走り鷹鳶の群れが見えた。
「この距離なら!めぐみん!!」
俺の声に応える様に、めぐみんはマントを翻して小太刀を抜いた。
「真打登場!」
魔力の奔流が小太刀に纏わり、めぐみんは敵を見据える。
「行きますよ!!『エクスプロージョン!!』」
夕刻、ドリスまで後、数時間と言う所で小休止となった。
「いやー助かりましたよ!まさか、走り鷹鳶の群れが二つも襲ってくるなんて思いもしませんでしたからな!」
いえ、二つも呼び込んだのは俺達の所為なんです!
「ささ、美味い所が焼けましたぞ!遠慮なく召し上がってください!」
「あ、いえ。お構いなく…。」
物凄く居心地が悪いんですけど!
何か凄い感謝されちゃってるし!?
「それにしても、皆さん凄いですな。クルセイダーが2名にソードマスター、
爆裂魔法まで扱えるアークウィザード様に加えて更に二人のアークウィザード。
負傷者達を一瞬で癒されたアークプリースト様。
そして、その方々を指揮されていた貴方の手腕!感服致しました!!」
「あ、いえ…。」
「少ないですが此れは、商隊からのお礼です。お受け取り下さい。」
「い、いえ!冒険者として当然の事をしたまでです!!お金は受け取れません!!」
「な、なんと!?この世知辛い世の中に、あなた方の様な本物の冒険者がいるとはっ!?」
こんなマッチポンプみたいな状況で、金なんて受け取れねえよ!?
何か凄い疲れたぞ…。早く温泉に入ってゆっくりしてえな…。
はい、何時も通りの大所帯で紅魔の里に向かいます。
シルビア対策とか言ってはいけない!