このすば カズマが冷静で少し大人な対応ができていたら。   作:如月空

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やっと、里に着きました。


紅魔の里へ。後編

「参ったなぁ…。」

 

目の前には広大な平原が広がっていた。

地図を予め確認していたから、平原であることは分かっていたんだが…

 

まさか、此処まで何も無いとは…。

 

「めぐみん、ゆんゆん。紅魔の里へは此処を通らないといけないんだよな?」

 

「そうですね、此処からだと迂回する道もありませんし。」

 

「ごめんなさい!カズマさん!テレポートが使えれば良かったんですが…!」

 

「気にするなって、魔王軍の幹部が攻めて来ているんだから、対策するのは当たり前だろ?」

 

世界最高峰の魔術師軍団と言っても、奇襲からの近接戦闘になれば苦戦は必至の筈だ。

だから里周辺のテレポート禁止措置は、当然の事だろう。

 

「でも此処まで開けていると、集団で動くのは却って危険かも知れないね。」

 

「どうするのよ、カズマ?」

 

そうだなぁ…、此処は役割に応じて配置…が良いかな?

 

「先ずは、俺が斥候として…ここなら大体100メートルぐらいか、本隊から離れて先行する。

もちろん後ろも警戒が必要だから、フィオとキースに後衛の目となって貰う。」

 

「うん、その三人は動かしようが無いね。」

 

「次に後衛の守護としてダクネスとテイラー、これも動かせない配置だ。」

 

「ああ、任せろ!」「ふふ、この辺りのモンスターは如何程なのか!?」

 

ダクネスの反応に軽い頭痛を覚えるが、一々突っ込んでいたら話が進まないので無視をしておく。

 

「そして、後衛組の直ぐ前に立つのが遊撃組だ。メンバーはゆんゆん、ダスト、クレメア。

最後に純後衛としてめぐみん、アクア、リーンだ。」

 

「ん?僕の名前が呼ばれてないけど?」

 

ミツルギは、自分を指差しながら聞いてくる。

 

「ああ、お前の配置は迷ったんだけど…。」

 

最初は後衛の護りをと思っていたんだが、後ろの戦力は十分なんだよな。

 

「よし、決めた。ミツルギお前は俺と一緒に前だ。」

 

ミツルギが前に居れば、立ち塞がるモンスターを排除しながら進む事が出来る。

勿論、倒せそうな相手しか戦うつもりは無いが…。

 

「了解、引き受けるよ。」

 

隊列を整え、俺とミツルギが先行して歩く。

暫く進むと、俺の視界に見覚えのあるモンスターが映った。

 

「……早速おでましだ。ミツルギ、初心者殺しは余裕か?」

 

「そんなの、聞くまでもないよ。」

 

まあ、当然か。

今の俺でも立ち回りに気をつければ、一人でも多分やれるしな。

リスクがあるからやりたくはないけど…。

 

ウェポンホルダーから弓を取り外し、矢を番えて構える。

 

「ミツルギ、前を頼む。」

 

「了解!」

 

…こっちに気づいたか。

 

初心者殺しが物凄い速さで迫ってくる!

 

俺は狙いを外さないように、奴の動きに合わせる。

 

「…ン!『狙撃!』」

 

危険を察知した初心者殺しは、ギリギリで回避を試みる。

頭部に当たるという事は避けられた様だが、避け切れずに後ろ足に直撃して失速していた。

 

「ッ『狙撃!』」

 

間髪入れずに追撃を放つ。

機動力を欠いた初心者殺しは、追撃の矢を避ける事が出来ず、今度は眉間に直撃する。

眉間に矢を受け、のた打ち回った初心者殺しは、やがて動かなくなる。

 

「ナイスだよ、サトウ君。」

 

「…運が良かっただけだって。開けていた事、先に発見出来た事がでかいよ。」

 

後、初撃が足に当たってスピードを殺せたことも。

 

「じゃあ、進もうか。」

 

「ああ。」

 

その後も、一撃熊の亜種みたいなモンスターや、グリフォン、マンティコア等、

次々に凶悪なモンスター達が俺達の前に立ち塞がる。

 

「地図に書いてあった通り、本当に強敵ばかりだな…。」

 

というか、エンカウント率が可笑しい。

被害らしい被害は特に受けてないが、この調子で戦っていたら皆も疲弊しそうだ。

 

 

 

 

「この辺りまで来れば、紅魔の里はもうすぐですよ。」

 

「そうか!やっとだな…。」

 

警戒をフィオ達に任せて、俺とめぐみんは休憩がてらのんびりと会話をしていた。

 

「それにしても、さっきのグリフォンは勿体無かったな…。」

 

「ですね、それにあれだけの量があれば、実家の台所事情にも貢献出来たと思います。」

 

「いや、そっちは元々援助する予定だから、なくても問題はないだろ。」

 

俺が勿体無いと思ったのは、食肉として使える部位があるというのにそれを回収出来なかった事だ。

 

「グリフォンの串焼き食べたかったですね…。」

 

「そうだな…、可食部を回収出来れば良かったんだが。」

 

「グリフォンの串焼きって…?如何いう事なんだい!?」

 

会話が聞こえていたのか、近くに居たミツルギは困惑しながら俺達に突っ込みを入れてくる。

 

「何だよミツルギ、恋人同士の会話に野暮入れんじゃねえよ。」

 

「あ、ごめん…。でもそれ、本当に恋人同士の会話なのかい?僕には蛮族の会話に聞こえたんだけど!?」

 

失礼な!

料理を作ることも食べる事も好きな俺達にとって、あの肉は希少なんだよ!

 

「あれの美味さを知らない奴はこれだから…。」

 

「ミツルギは料理も出来ませんしね。」

 

「え!?今の流れ、僕が悪いのかい!?…それよりも二人は食べた事があるんだ?」

 

「ああ、あるぞ。俺達が大金を得た後、アクセルに色んな行商人が来ていただろ?」

 

「あ、ああ、確かにかなりの人数が来ていたね。」

 

「その時に露店で食べたのですよ。」

 

串焼き1本一万エリス。

最初見た時は何の冗談かと思ったが、話を聞くとグリフォンの手羽先部位の食肉だという。

その話を半信半疑だった俺達に、露店のおっちゃんは味見と称し、一欠けらずつ俺達に寄越した。

 

「それが滅茶苦茶美味くてな!その時は結局20本ぐらい買っちまったんだよ!!」

 

「あれは、本当に良い物でした!値段は高かったのですが、また食べたいですね!!」

 

俺達が興奮気味で話していると、興味を惹かれたのかアクアが、とてとてと近づいて来た。

 

「ねえ、何の話ー!?」

 

「前に食ったグリフォンの串焼きだよ。」

 

「ああ、アレね!」

 

「え!?もしかしてアクア様も食べられたんですか!?モンスターですよ!?」

 

そんなミツルギの言葉に、アクアは小首を傾げていた。

 

「ミツルギ、アンタ何言ってるのよ?蛙肉だって同じでしょ?」

 

「あ…!?」

 

そう、アクアの言う通り蛙肉は牧場で育った肉畜ではなく、紛れもないモンスター肉だ。

だけどその肉は、食肉としてアクセルに広く浸透している。

更に、聞くところに寄れば、ドラゴンステーキなんて物まであるらしい。

 

「そ、そうだったね…、僕はジャイアントトードとは戦った事なかったから…。」

 

ああ、頭に無かったのか。

 

「カズマ、休憩はもう十分だろう?そろそろ出発しないか?」

 

俺達が会話を続けていると、ダクネスが出発の催促をしてきた。

 

「そうだな、じゃ、そろそろ行くか!」

 

 

 

 

小休止を終えた俺達は、再び紅魔の里に向かって歩き出す。

 

「それにしても…、サトウ君の料理好きはなんというか凄いね?」

 

「そりゃ、あいつらが美味いって言ってくれるからな。」

 

料理スキルのお陰ではあるけど、自分の作った物が認められて嬉しくない訳がない。

だから俺は、あいつらが少しでも喜んでくれるように、色んな料理に挑戦しているんだ。

 

長い平原を歩き続け、そろそろお昼という時間になった頃。進む先に森が見えてくる。

 

「あれが紅魔の里に続く森だね。」

 

「…待て、ミツルギ。」

 

俺の言葉に、ミツルギは険しい顔をしながら立ち止まる。

 

「また、モンスターかい?」

 

後方に止まる様、指示を出して敵を注視する。

 

「…数はニ匹…、だけどアレはオークだな。」

 

「例の特殊進化したオークか。如何する?サトウ君?」

 

強さが読めないからあまり戦いたくはないんだが…。

 

俺は周辺を確認する、他に敵影は無い。

 

「戦いたくはねえけど、アレを放置するわけにもいかないだろ?」

 

「そうだね。僕も同意見だ。」

 

オーク達と交戦する事を伝えようと振り向くと、急に女性陣達が慌てただした。

 

「あれ?どうしたんだろ?」

 

「あっちにもフィオとキースがいるから、オークを確認したんじゃないか?」

 

「成程、…女性陣が怖がっているんだね。サトウ君、此処でオーク達を排除するよ!」

 

「ああ!…ん?」

 

今度はテイラー達男性陣も慌てだした。

 

如何いう事だ?

 

めぐみんが何か言っているようなので唇を読む。

 

『ニゲテクダサイ』

 

「は?」

 

「ちょっと、そこのお兄さん達!」

 

突然後ろから声を掛けられ反射的に振り向くと、目の前にオーク達がいた。

 

「「!?」」

 

突然の事に驚いて、俺達が武器を構えるとオーク達は不気味に笑う。

 

「あら、いやだ。二人とも男前のお兄さんじゃないの!?」

 

「ねえ、あたし達と良い事しない?」

 

全身に、怖気が立つ…。

 

「「お断りします!」」

 

メスかよぉぉぉーーーー!!??

 

「そんな事言わないでぇ、ねえ!あたし達と良い事しましょうよ!この世の天国を見させてあげるわよ?」

 

「まあ、あたし達が相手にした男は、本当に天国に逝っちゃうんだけどねぇ。」

 

「けけけ、結構です!お構いなく!」

 

「ぼ、ぼぼ僕もそういう経験はいらないですから!」

 

俺達は引きつりながら、後ずさっていく。

 

「あら、つれないわねぇ。貴方達から強い生存本能を感じるのに…。」

 

「貴方達と交わる事が出来れば、強い子供が生まれそうね。」

 

「どうしてもいやっていうなら、無理やりしちゃうしかないわね!」

 

そう言ってオーク達は俺達に襲い掛かる。

 

冗談じゃない!?

 

「ミツルギ!前を頼む!『パワード!』『スピードアゲイン!』」

 

「マンティコアもだけど…、こういう時、前衛職っていうのを本当に後悔するよ!!」

 

ミツルギは半泣き状態で、オーク達の攻撃を受け止める。

 

「あら、貴方もの凄い力を感じるわ!私の相手は貴方に決めるわね!」

 

「じゃあ、あたしはあっちの子ね。あの子ももの凄い高い生存本能を感じるわよ!」

 

「いえ!ぼ!僕には心に決めた相手が居ますので!!」

 

そんな事をミツルギは叫んでいた。

 

少し離れる事で幾分か冷静になれた俺は、有効な攻撃手段を考える。

 

「やっぱり此れしかない!『ライトニング!!!!』『バインド!!』」

 

すっかり慣れ親しんだライトニングの魔法は、近接しているミツルギを掻い潜る事ぐらい余裕だ。

 

「な、何よ!此れ!!ああああああ!!!!」

 

「ちょっと!なんなの!?」

 

「もう一丁!『ライトニング!!!!』『バインド!!』」

 

「きゃあ!!いやあああ!!!??」

 

オーク達の絶叫が木霊する。

 

「た、助かったよ…サトウ君。」

 

ミツルギは汗でびっしょりとなり、小刻みに震えていた。

 

「マンティコアもやべえけど、こいつらの方が上だったな…。」

 

「う、うん……。」

 

オーク達の頭に刀を突き刺し、息の根を止める。

 

メスで此れか…、オスはもっとやべえんだろうな…。

 

そんな事を考えていたら、めぐみん達が駆け寄ってきた。

 

「不味いですよ、カズマ!オークを殺してしまうのは…。」

 

「は?何でだ?」

 

「特殊進化を遂げたオークを男性が倒してしまうとですね…。」

 

瞬間、怖気が走る!

 

恐る恐る敵感知が反応した方向を見やると、夥しい数のオーク達が立っていた。

 

「や、ヤバイです!男性陣は早く此処から退避しないと!?」

 

「そ、そうだね!此処は私達が対処しないと!!」

 

「な!?何言ってんだよ!めぐみん!ゆんゆん!お前達だって危険だろうが!?」

 

遠目だから断言は出来ないが、オスが混ざってないなんて事はありえる筈が無い!

 

「いえ、此処のオークに限れば私達は安全です!」

 

はあ!?

 

「その、この辺りのオーク達はメスしかいないんです…。」

 

へ?はあああ!?

 

「逃がさないわよぉ!あたし達の仲間を殺せる男なんて…」

 

「そんな優秀なオスをあたし達が逃がすわけないじゃない!?」

 

「絶対逃がさないわよ!!」

 

そう叫んだかと思うと、オーク達が突撃してきた!

 

「く、来るなあ!そ『狙撃ぃ!!』」

 

「お、おい!カズマ!何とかしろよ!?」

 

そのおぞましい光景に、俺達男性陣は恐慌状態に陥っていた。

 

 

 

 

 

 

≪めぐみん視点≫

 

「!?不味いです!カズマとミツルギが放心しちゃってます!?

ゆんゆん!アクア!ダクネス!リーン!此処は私達でやりますよ!」

 

「分かった!任せろ!」

 

「まったく!仕方ないわね!!」

 

「あたし達がやらないと男連中が不味いもんね!」

 

「分かったわ!フィオさん!クレメアさん!男性陣を護ってください!!」

 

「ええ!分かってるわ!」

 

「キョウヤの貞操は私達が護るんだからー!」

 

いえ、ミツルギ以外もしっかり護って下さい!!

 

私達の元に…、正確にはカズマ達の元にオーク達が迫ってくる。

 

「決まって!『ボトムレス・スワンプ!!』」

 

ゆんゆんの特大沼魔法で、多くのオーク達が足を取られたものの、

難を逃れたオーク達が、沼を回りこんで此方に攻め上げて来る。

 

「数が多すぎですよ!何処からこんなに集まって来たのですか!?」

 

まだ半数程いますよ!…!?

 

「リーン!カズマ直伝のアレを!」

 

「!?分かった!やって見る!」

 

リーンは魔力を練り込み、特大の一撃を放つ準備をする。

 

「行くよー!!『クリエイトウォーター!!!!』『フリーズ!!!!』」

 

沼を回避したオーク達が、今度は凍った地面に足を取られる。

 

「な、なんだい!?此れは!?」

 

「す、滑る!!?」

 

オーク達が無理やり立ち上がろうとしても、すぐにバランスを崩して、凍った地面に何を度も体を叩きつけられていた。

 

「ゆんゆん、リーン、ご苦労様です。此方の準備が整いましたよ。」

 

魔力を練り込み終えた私は、何時でも爆裂魔法が放てる状態になっていた。

それを確認したゆんゆんが、オーク達に向かって叫ぶ。

 

「紅魔の里の近くに巣くうオーク達!この人達の事は諦めなさい!

でないと、この子の爆裂魔法で皆消し飛ぶ事になるわよ!?」

 

ゆんゆんが降伏勧告を出す。

すると、オーク達は見るからに焦った様子で慌て始めた。

 

「紅魔族のお仲間だったのね…。」

 

「くやしいけど、貴方達に殲滅されるよりはマシね…。」

 

オーク達はそう口にして、ゆんゆんの降伏勧告を受け入れた。

 

 

 

――――――……

 

 

 

 

 

 

≪カズマ視点≫

 

 

「すまん…、マジで助かった……。」

 

女性陣の活躍でオーク達が撤退した後、俺達はめぐみん達に感謝の言葉を述べていた。

 

「アレは男性にとっては衝撃でしょうからね、仕方の無い事かと…。」

 

「でも、皆さんを護れてよかったです!」

 

「本当に助かったよ…、まさか恐怖で体が動かなくなるなんて思ってなかったから…。」

 

未だに青い顔をしていたミツルギは、フィオ達に支えられながら力なく言葉を紡ぐ。

 

直接戦わずに済んだテイラー達も口数が少なくなっていた。

 

「そろそろ紅魔の里に向かいましょうよ!私お腹が減ってきたんですけどー!!」

 

「ん、ああ…そうだな…。」

 

精神的にはかなり疲弊しているが、こんな所にいつまでも居たくは無い。

他の男共もその気持ちは一緒のようで、反対する奴は誰も居なかった。

 

俺は、気合を入れる為に自分の頬を両手で叩く!

 

…痛い…

 

「よし!切り替えるぞ!ここからは魔王軍の襲撃があるかもしれない!注意して行こう!!」

 

ひりひりする頬を痛みを堪え、俺は皆に号令を飛ばす!

 

森に入るため、隊列を組み直した俺達は、紅魔の里に向けて行軍を開始する。

 

「…それにしても良かったのか?」

 

「何がですか?」

 

「オーク連中を見逃して…。」

 

「ああ、その事ですか。」

 

「オーク達は魔王軍相手でも平気で仕掛けますから、悪い事ばかりじゃないんですよ。」

 

成程…。

 

「あ、後気になっていたんだけど、さっきの連中は何でメスしかいなかったんだ?」

 

「ああそれは、あそこのオーク達は元々メスしかいませんので。」

 

「マジか…。」

 

「マジです。」

 

俺達がそんな会話を続けていると、後ろに居たダクネスが急に騒ぎ出した。

 

「なあ!?聞き違いだと思っていたんだが、本当にオスのオークがいないのか!?」

 

「は、はい!オークのオスが生まれても、成人する前にメス達に玩具にされて命を落としてしまうそうなので。」

 

「な、何てことだ!?」

 

………ダクネスの考えている事を予想出来てしまった俺は、余計な突っ込みは入れまいと口を噤む。

皆も分かっているのか、騒ぎ続けるダクネスに誰も触れなかった。

 

「ん、敵感知に反応が!?」

 

「おい!こっちだ!こっちから声がしたぞ!!」

 

やべ!ダクネスを咎めるべきだった!?

 

「へへへ、居たぜ。紅魔族の子供二人と冒険者風の人間……10人!?」

 

「不味いぞ!直ぐに応援を呼べ!!」

 

「やっと見つけたと思ったら、何て人数で行動してやがる!?」

 

「おーい!こっちだ!早く来い!!」

 

突如現れた、悪魔っぽい連中は慌てながら応援を呼んでいる。

 

「こいつら…、紅魔の里を攻撃しているっていう魔王軍か!?」

 

「その様だね!」

 

俺達は臨戦態勢を取る。

 

「数が少ないうちに叩くぞ!布陣は三番!各自攻撃を!!」

 

後衛の守りをダクネス、ダスト、クレメアに任せ、

アクアの支援を受けたミツルギとテイラーが敵に突撃する。

 

「な、何だこいつら!?」

 

「くそ!応援はまだか!?」

 

こいつらは尖兵か?なら本隊が来る前に決着を付けねえと!

 

「!?新たな反応!!」

 

「上から来るわよ!皆、気をつけて!!」

 

フィオがそう叫ぶと、上空から魔王軍が襲撃して来た。

 

「ちっ!『ライトニング・ストライク!!』」

 

数が多い、ざっと30体ぐらいか…!?

 

「不味い!更に来るぞ!めぐみん!」

 

「何時でもいけます!!」

 

本隊と思われる反応がどんどん近づいてくる。

 

「カズマ、来るわよ!」

 

「ああ!…今だ!めぐみん!」

 

「待ちわびましたよ!『エクスプロージョン!!』」

 

本隊と思われる反応に合わせて、めぐみんに爆裂魔法を撃たせる。

 

「集団に爆裂魔法を撃ち込むというのは、やはり気持ちが良いです…。」

 

そんな事を言いながら倒れるめぐみんを、俺は抱きかかえる。

 

「よくやったよ!」

 

めぐみんに労いの言葉を掛け、そのまま背負う。

 

「こんな時までいちゃついてんじゃねーよ!カズマ!!」

 

交戦中のダストから野次が飛んでくる。

 

「いちゃついてねえっつの!此れはいつもの事だろ!!」

 

戦場で倒れた仲間をフォローするのは基本だろうが!

 

「何時もの事だから、いちゃいちゃに見えちゃうんだよ!『ブレード・オブ・ウィンド!!』」

 

リーンにまで非難を受ける。

 

何なんだよ!…あ。

 

そうだった、先日こいつらに迷惑を掛けたばかりだった。

 

その事を思い出した俺は、大人しく指揮に戻る。

 

「いくら倒しても切りが無いな…。」

 

流石に疲れてきたのか、テイラーも愚痴を零す。

 

「魔王軍の部隊だからね!めぐみんのお陰で大分減っているとは思うけど!」

 

そこに更なる反応が現れる!?

 

「不味いぞ!?更に増援が来る!?」

 

どうする?持ち堪えられるか!?

 

「紅魔族が混じっているとはいえ、人間風情がここまでやるとはな!」

 

増援部隊のリーダー格の様な奴がそう呟く。

 

「クソッ!まだこんなに居るのかよ!?」

 

「カズマ、何か手は無いのか!?」

 

俺も爆裂魔法を使うか!?

いや…この数相手じゃ半数も削れないか…!

 

空を覆うほどの魔王軍が、俺達に向けて飛来してくる!

 

クソ!此処まで来て…!

 

「ぐわーーー!!」

 

覚悟を決めた瞬間、飛来してきた魔王軍達が真っ二つになった。

 

「な!何だ!?」

 

魔王軍にもどよめきが起こる。

 

気づくと4人の紅魔族が立っていた。

 

「魔王軍よ、肉片も残らずに消え去るがいい。我が心の深淵より生まれる闇の炎によって!」

 

「もうダメだ、我慢が出来ない!この俺の破壊衝動を鎮めるための糧となれ…!」

 

「さあ、永久(とこしえ)に眠るがいい…。我が氷の腕(かいな)に抱かれて…!」

 

「お逝きなさい、貴方達の事は忘れはしないわ。そう、永遠に刻まれるの…、この私の魂の記憶の中に…!」

 

それぞれの台詞を言い終えると、紅魔族達は攻撃に転じた。

 

「『ライト・オブ・セイバー!!』」「『ライト・オブ・セイバー!!』」

 

「『ライト・オブ・セイバー!!』」「『ライト・オブ・セイバー!!』」

 

「『セイバー!!』」「『セイバーッ!!』」「『セイバーッッ!!』」

 

『セイバーッッッ!!』」」『セイバーッッッ!!』」」『セイバーッッッ!!』」」

 

四人の紅魔族達は次々に魔王軍達を殲滅していく……

 

所で闇の炎だとか氷の腕だとかはどうしたんだ?

あれか?ただカッコイイからってだけで言ってたのか?

 

めぐみんの顔をチラっと見る。

 

「何ですか?カズマ?」

 

間違いない!あいつらは格好良さ重視であんな事を言ったんだ。

 

「カズマ、紅魔族に喧嘩を売る気なら私が買いますよ?」

 

背中にいるめぐみんが体を締め上げてきた。

 

「や、やめろ!そんなんじゃねえから!?」

 

 

―……

 

 

「遠く轟く爆音が聞こえたので来て見れば…。」

 

「めぐみんじゃないか、久しぶりだな!?」

 

「それにゆんゆんも…、何か忘れ物でもしたの?」

 

……あれ?

 

「ぶっころりーじゃないですか!お久しぶりです!皆、疲弊していたので助かりましたよ!」

 

めぐみんの知り合いか。

…なんかもやっとするな…。

 

「いや、大事が無くて良かったよ。所で…何でこんな所に居るんだい?」

 

「いえ、ゆんゆんから里のピンチと聞いて来たのですが…。」

 

「ピンチ?」

 

めぐみんの言葉に紅魔族達は首を傾げる。

 

「まあいいや。で…そちらの人たちは?かなり人数が居るけど。」

 

「はい、私の冒険者仲間と友人パーティでして…。」

 

その言葉を受けて、リーダー格の男がポーズを決めた。

 

「そうか!ならば聞け!我が名はぶっころりー!紅魔族随一の靴屋のせがれ!

対魔王軍遊撃部隊筆頭!アークウィザードにして上級魔法を操る者!!」

 

ぶっころりーの名乗りが決まると、めぐみんは俺を期待の眼差しで見つめてきた。

 

はあ…、

 

背負っていためぐみんをゆんゆんに預け、俺はポーズを決める。

 

「我が名はカズマ!アクセル最強の冒険者にして爆裂コンビが一人!数多のスキルを極めし者!」

 

「「「「おおっ!?」」」」

 

四人の紅魔族が感嘆を声をもらす。

 

「素晴らしいっ!実に素晴らしいよっ!!普通の人は俺達の名乗りに微妙な反応をするのに!」

 

「本当!嬉しくなるわね!」

 

「そうでしょう!そうでしょう!!」

 

「いや!いい仲間を持ったようだね!めぐみん!里まで送ろうか?」

 

「はい、御願いします。皆も疲れているでしょうから。」

 

「じゃあ、テレポートでひとっ飛びするよー!皆集まってー!」

 

「ん?今は結界があってテレポートが使えないんじゃないのか?」

 

「結界?何のことだ?」

 

「え?魔道具で里周辺はテレポートが禁止されているんじゃ…?」

 

「ん?ああ、確かにそういう魔道具はあるけど、使われてなんかいないぞ?」

 

「はあ!?」

 

ちょっと待て!じゃあアレか!こんなに苦労しなくても良かったのか!?

 

「で、でも!さっきみたいな襲撃はあるんだろ?里は大丈夫なのかい!?」

 

「あーそれは勘違いというか…、まあ里に着いたら族長にでも聞いてみるといいさ。」

 

「じゃあ、行くよ『テレポート!』」

 

 

 

――――――……

 

 

 

 

 

 

 

里に着いた俺達は、ぶっころりー達と別れ、ゆんゆんの実家である族長の家に向かっていた。

 

「しかし…、長閑な所だな…。魔王軍に攻められている里になんてとても見えないぞ?」

 

「そ、そうだね…。」

 

その穏やかな光景に俺やミツルギは困惑していた。

 

「それにしても本当に美人ばっかだな!」

 

「ああ!来て良かったぜ!!」

 

緊張感がなくなったからか、ダスト達はそんな会話をしていた。

 

「此処です!皆さんどうぞ!」

 

ゆんゆんに促され、族長の家にお邪魔する。

 

暫く客間で待っていると、髭の似合う中年のおっさんが俺達の前に現れた。

 

「あの、お父さん?話が色々と違うのですが…?」

 

ゆんゆんの指摘は尤もだ。

テレポートが禁止になっていなかった上に、ぶっころりー達の反応からして苦戦している様でもない。

 

「俺達は幹部が攻めて来ているから、里周辺がテレポート禁止になっていると聞いていたんですが?」

 

「ああ、あの冗談を真に受けていたのか。ハハハ!まったく仕方の無い娘だ!」

 

「ええ!?冗談って何!?如何いう事なの、お父さん!?」

 

「如何と言われても、何、会議が何時も通り過ぎて盛り上がりに欠けていたからな。

危機的状況という演出を交えたかっただけだよ。」

 

「……。」

 

親父さんは豪快に笑いながらそう言い、ゆんゆんは絶句していた。

 

「なあ、ゆんゆん…。お前の親父さん殴っても良いか?」

 

「良いですよ。」

 

娘の許可が下りたので立ち上がろうとすると、俺より先にミツルギが親父さんの前に出る。

 

「では、魔法が通じ難い魔王軍幹部が侵攻して来ているという話は!?」

 

「ああ、それは本当の事だとも。面倒な相手ではあるが、里の者は皆優秀だからな。」

 

突如、警報が鳴り響く。

 

『魔王軍警報!魔王軍警報!手の空いている者は里の入り口グリフォン像前に集合!

敵の数は千匹程度と見られます!』

 

「せっ!?千匹!?そんな大群相手で大丈夫なのか!?」

 

「お、おいおい!大丈夫なのかよ!?」

 

「直ぐに僕達も応援に向かおう!!」

 

「心配しなくても大丈夫ですよ。」

 

え?

 

「此処は紅魔の里ですよ。前にも言いましたよね?此処には数百の高レベルアークウィザードがいると。」

 

あ…。そうか。ぶっころりーみたいな連中が数百か!

 

「めぐみんの言う通り!君達も見ていくかね?

最強の魔法使い達が奏でる葬送曲で魔王軍が灰燼に帰していく様を…!」

 

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

 

「いやー、いい物が見れたわ。流石紅魔族、戦いが派手だな!」

 

紅魔族による魔王軍蹂躙の様は爽快だった。

 

一気に緊張感がなくなった俺達は、里の観光に目的を切り替えた。

 

「そういえば、ゆんゆんはどうしたんだよ?アクア。」

 

「何か、お父さんと大事な話があるからって別行動になっちゃったのよ…。」

 

それで俺達に付いて来たのか。

 

「いや、友人の実家に訪ねる機会なんて今まで無かったから、少し緊張してしまうな!」

 

「ダクネス?頼むから、めぐみんの家族の前では何時もの調子になるなよ?」

 

「カズマは何を言っているんだ?私が失礼な事をするとでも思っているのか!?」

 

失礼っていうか…いや違わないか……。

 

「着きましたよ!」

 

「……これめぐみんの実家?」

 

「そうですけど…、何か言いたい事があるのなら聞こうじゃないか。」

 

「いや別に…。」

 

想像以上だった…。

 

「さて、帰ると連絡をしていなかったのですが、誰か居るでしょうか?」

 

めぐみんが戸を叩く。

 

「はーい!」

 

中から元気な女の子の声が聞こえてきた。

 

戸を開けると、めぐみんをそのまま小さくした様な愛らしい少女が大きな瞳をパチりとさせていた。

 

「あ!」

 

「こめっこ、ただいまです。貴方の姉が今帰りましたよ。」

 

こめっこと呼ばれた少女が俺に気づいたので自己紹介をしようとすると…。

 

「おとうさーーん!!姉ちゃんが男をひっかけて帰ってきたーーーっ!!!」

 

こめっこはそう叫びながら、家の奥に走っていく。

 

「ちょお!お嬢ちゃん!お兄さんと話をしよう!!?」

 

 

 

 




次回はめぐみんの両親との面談からです。
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