このすば カズマが冷静で少し大人な対応ができていたら。   作:如月空

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本編でお見苦しいものを見せてしまったので…という訳ではないですが、
また、何時ものギリギリの奴です。


閑話、アクアの本心

<アクア視点>

 

 

空が白み始めた頃、紅魔の里にある族長の家で二つの息遣いが重なっていた。

 

「ん、ゆんゆん、…ふう。」

 

「アクアさん…、ん…。」

 

夜明け前に目を覚ました私達は、ベッドの中でお互いの温もりを感じあっていた。

まだ春先なので朝は寒く、お互いがくっ付いて暖を取るというのは当然の行為だった。

 

私とゆんゆんは、お互いの足を絡ませ合って暖を取るために擦りあった。

上半身も同じ様に擦っていたら、布地が擦れて少し痛い上に息苦しくなったので、お互い上ははだけていた。

勿論、邪魔な下着も取っている、その方がお互いの体温を感じられるし、暖かくなるから…。

 

「んぅ!…ゆんゆんのはハリがあって柔らかいわね。…ふぅ。」

 

「アクアさんのも…、柔らかくて…安心感がありますよ。…あ。」

 

あ、今の表情可愛かったな…。もっと見てみたいかも。

 

そう思った私は、ゆんゆんの背中に手を回して抱き寄せた。

 

「ん、ふぁ…アクアさん…。」

 

ゆんゆんは潤んだ瞳で私を見つめている。

赤く輝く神秘的なその瞳に、私は吸い込まれる様に顔を近づけていた。

 

「ちゅ…うん…、ふ…ぅ。」

 

私の行為に目を丸く見開いたゆんゆんは、やがて体の力を抜いて目を閉じていった。

 

「ん…ふぅ!ん…。」

 

別に此れが初めてじゃない、それに地球じゃ挨拶代わりに此れをする国だってある。

だから私は至ってノーマルな筈。

 

それに男が嫌いな訳じゃないし、めぐみんが居なかったら私はカズマを好きになっていたかも知れない。

其れぐらい私はカズマに感謝している。……勿論本人に伝える気は無いけど。

 

「はれ…?どうかしましたか?アクアさん…。」

 

心配そうに私の顔を覗き込むゆんゆんに、私は笑顔を見せて

 

「何でもないわよ。…ゆんゆん、如何?体は暖まった?」

 

「はえ!?え、えっと…もう少ししていたいです…。」

 

そう言ってゆんゆんは恥かしそうに俯く。

 

「いいわよ、で…どこら辺がまだ寒いの?」

 

「ふえ!?そ、その…こ、腰の辺りとか…太股…」

 

う…。そ、其処かー…。この前変な声出しちゃって、気まずくなっちゃったのよね…。

でも、ゆんゆんの為なら何とかしてあげたいな…。

それに、変な声が出ちゃっても、ゆんゆんは軽蔑するような子じゃないし、

逆にゆんゆんにも声上げてもらえば、お互い様って事になるわよねぇ…。

 

そう考えた私は、背中に回していた腕をゆんゆんのお尻の辺りに移動して、私の体にくっ付けた。

 

「この状態で動けば、少しは暖まるかしら?」

 

「ふぇ!?あ、アクアさん。」

 

ゆんゆんは何故か驚いていて、顔を真っ赤にさせて狼狽している。

まあ、それぐらいは何時もの反応でもあるので、私は特に気にせず体を動かした。

 

「!?んっはっ!んん!?」

 

「ふぁあ!?あ、うんん!?」

 

二人とも変な声が出た…思いっきり…。

 

お互いの顔が赤くなっていく。

そして、ゆんゆんが何かを言おうとしたので、恥ずかしい事を言われると思った私は彼女の口を塞いだ。

 

「ふ、う…ん。…。」

 

あ、あら?さっきまでとはちょっと違うような…。

とても心地がよくて…、頭がふわふわして……。何だかずっとこうしていたい…。

 

「ふう…ん、…んぅ。」

 

無意識にゆんゆんの唇を吸っていると、ゆんゆんの舌が私の歯に当たった。

其れを受けて私は口を少し開いて、ゆんゆんを中に誘い入れた。

 

「ふう、れろ…じゅる…。んぅ…れろ…」

 

ゆんゆんの舌が私の口内で暴れまわってから帰っていく。

勿論、今度は私の反撃…。

 

「じゅる…れろ、じゅ、れろ、…ぅん。」

 

いつの間にか私は、ゆんゆんに押し掛かる様な体勢になっていて夢中になって、唇を吸いながら舌を入れていた。

 

お互いにモゾモゾと動きながら時々変な声を出して…。

 

そして、途中で疲れてしまったのか、私達はそのまま二度寝をしてしまった。

心地よい感覚に包まれながら……

 

 

 

―――――――…

 

 

 

 

 

すっかり日が昇った頃、私は寒さで目を覚ました。

 

いつの間にか衣服を脱いでいて…私達は下着すら穿いてなかった。

 

「あ、あらー?」

 

寝汗なのか分からないけど、何故だかベッドがぐっしょりしている。お漏らしとかじゃないわよ!

 

あまり詳しくは無かったけど、あの夫婦の…特に嫁の所為で要らぬ知識が増えた私は考え込んだ。

 

こ、此れって、あれよね…?その、女の子同士でしちゃったって事よね…。

 

冷や汗を垂らしながら、ゆんゆんを見る。

 

「あ…。」

 

ゆんゆんは幸せそうな表情ですやすやと眠っていた。

 

そういえば、今朝のアレはゆんゆんから御願いされた訳で、もしかしてゆんゆんってば私の事をそういう目で?

 

思い当たる節はいくつもある。大体何時もゆんゆんから御願いされている。

 

「だ、駄目よ、ゆんゆん…私達は親友であって…。」

 

そこまで言って言葉に詰まる。

 

私だってゆんゆんの思いに負けないぐらい彼女の事が大好きなんだと。

それに、昨日キスをした時に感じたあの感覚は、めぐみんから聞いていた通りの感覚だった。

つまり、私は……

 

私はゆんゆんとそういう関係になる事を望んでいた?

 

私はふるふると頭を振る。

 

違う違う!ゆんゆんは私の大切な親友で妹みたいなものなのよ!

…確かに気持ちが良かったけど、其れに溺れちゃ駄目!なんたって私は女神なんだから!!?

 

だけど、ゆんゆんがそれを望むのなら、想いには応えてあげたい…。

 

別に私が望んで気持ちよくなりたいって訳じゃないの!そう!女神としての慈愛の行動なのよ!?

 

「ん…、くしゅん。」

 

あ、ゆんゆんが起きたみたい…って!?この状況を如何説明するのよ!?

絶対混乱するに違いない!ゆんゆんはそういう子だ!

 

私は慌ててゆんゆんに近づいて…そのまま唇を合わせた。

 

「ぷ、ふう…おはよう、ゆんゆん。」

 

「ふぇ!?アクアさん!?」

 

寝起きでまだ頭が回っていないのか、真っ赤な顔で固まるゆんゆん。

私はそんなゆんゆんを抱き寄せて、胸元に押し付けた。

 

「~~~!!?」

 

ゆんゆんは恥かしそうにジタバタと手を動かしていたけど、次第に大人しくなっていった。

 

「…お、おはようございます、アクアさん…。あの、その…今朝の事は…。」

 

「うん、大丈夫よ。私もゆんゆんの事が大好きだから…。」

 

言い淀んだゆんゆんに、私の思いを真っ直ぐ返すと、ゆんゆんは恥かしそうに微笑んでいた。

 

お互いに暫く見つめあった後…

 

「じゃ、そろそろ出掛けましょうか!あ、シーツは洗濯しておかないといけないわね…。」

 

「あ!?せ、洗濯して来ます!」

 

シーツを抱えて慌てて部屋を出ようとするゆんゆんを私は必死に止めて

 

「待って!ゆんゆん!服着てないから!?」

 

「!?」

 

この後、居た堪れなくなったのは言うまでも無いわよね?

 

 

 

 

 

 

 

少し前…

 

 

ダクネスが慌てた表情で族長を止めていた。

 

「幾ら娘と言っても、勝手に入ったら駄目だろう!大体今はアクアだっているのだぞ!」

 

ダクネスの必死な説得によって惨事が免れていた…。

 

そして、族長が出掛けた後、心底疲れた様子のダクネスが呟いた。

 

「カズマ達に続いて、アクア達まで…。」

 

アクセルに戻ったら、クリスともっと交流しよう。

 

そんな事を考えているダクネスの表情は少し寂しそうだった。

 

 

 

――――――――…

 

 

 

 

 

 

 

居間で一人本を読んでいたダクネスは、何故か機嫌が悪そうだった。

 

「どしたのよ、ダクネス?」

 

「…なんでもない。…いや、すまん、少し考え事をしていただけだ。」

 

「そう?ならいいけど、具合が悪いならちゃんと言いなさいよ?」

 

「ああ、わかった。」

 

それだけの会話で、ダクネスは元通りになっていた。

 

 

 

洗濯物を片付けているゆんゆんを待って、私達は遅めの朝食に向かっていた。

 

「とりあえず定食屋さんねー!あそこの料理を制覇してみせるわ!」

 

謎の使命感に駆られた私は、そんな事を宣言していた。

 

「王都でも見かけない料理が多いからな、カズマも得るものがあると言っていたな。」

 

「カズマさんって、料理人になるつもりなんでしょうか?」

 

「んーどうなんだろ?」

 

カズマ…とミツルギ達には魔王を倒して貰いたいのよね。

まあ、今は天界にいた時より楽しいし、直ぐじゃなくても困らないけど。

というか、今天界に戻されても逆に困るのよね…、私の親友は此処にいるゆんゆんだし、

カズマ達との友達関係も崩したくないし……。

 

「まあ、とりあえずは…。」

 

「とりあえずは?」

 

「カズマの料理が美味しくなるのは歓迎だわ!」

 

「うむ、そうだな!」

 

「そうですよね!」

 

そう言って、私達は笑い合った。

 

定食屋さんに入ると、先客の女の子達がいて其の子達は此方に気が付いた。

 

「あ、ゆんゆん!」

 

「おはよーゆんゆん!」

 

ツインテールの子とポニーテールの子がゆんゆんに話し掛けて来た。

 

「おはよう御座います!ふにふらさん、どどんこさん!」

 

ゆんゆん、里ではボッチだって言ってたのに、めぐみんってば結構適当ね。

 

「あ!アクアさん、紹介します!私のお友達のふにふらさんとどどんこさんです!」

 

ゆんゆんが嬉しそうな顔でそう言っていたので、私は少しもやっとしていた。

 

「うん、じゃあ私達も紹介するわね!こっちのムスっとしてるのがダクネスで…。」

 

「おい、アクア…。」

 

ダクネスが何か抗議の目を向けて来ているけど、私は構わず自己紹介に移った。

 

「そして、私がアクア!そう!水の女神アクアよ!そしてゆんゆんの大親友なの!!」

 

「「え、ええっ!?」」

 

ふふん、流石に驚いたようね!?まあ、そうよね!女神なんて言われたら驚くわよね!

 

「「ゆんゆんの大親友!?」」

 

全然違うところで驚かれていた。

 

 

 

ふにふら達と相席した私達は、食事をしながら楽しくおしゃべりをしていた。

 

「それにしても驚いたよねー!まさか、ゆんゆんがあんなに格好いい名乗りを上げるなんてね!?」

 

「それだけじゃないよ!アクアさんやダクネスさんも含めた7人の名乗り上げが凄くカッコ良くて!私感動しちゃったもん!」

 

ちなみに7人目はミツルギで、締めの言葉を彼に言われてしまい、めぐみんが滅茶苦茶悔しがっていた。

 

なら、開幕でやらなきゃいいのに…。

 

「み、みんなのお陰だよー…。」

 

そう言って赤い顔で謙遜するゆんゆん。

可愛いんだから、もっと自信持てばいいのにね。

 

「ねえねえ、ゆんゆん!あの剣を持っていた男の人を紹介してくれない?」

 

ふにふらが突然そんな事を言い出した。

 

あら?フィオ達にライバル登場かしら?

 

「えっと、ミツルギさんの事かな?もしかしてテイラーさん?」

 

「あ、えっと名前は知らないんだけど…。」

 

どどんこがそう言うと、すかさずダクネスがフォローに入った。

 

「お前たちが言っているのはソードマスターの事か?それともクルセイダーか?」

 

「あ、違う違う!」

 

「黒い衣装で身を包んだルーンナイトの事よ!」

 

「「「ルーンナイト?」」」

 

そんな職業は私達の中にはいない。

 

「え?そんな人いないけど…?」

 

「あれ!?でも剣で戦いながら魔法を使ってて…!」

 

「何か格好いい剣をもってたよね!?」

 

「「「あー…」」」

 

二人から特徴を聞いた私達は、ようやく理解した。

 

「ふむ…、カズマか…。」

 

「やめておいた方が…。」

 

「え?なんで。」

 

「…もしかして、性格が悪いとか?」

 

「え!?そんな事ないと思うけど…。」

 

「まあ、ちょっとスケベなだけよね。」

 

「うむ、面倒見も良いし料理の腕も良い。」

 

うん、面倒見はいい方よね、何だかんだ言って仲間思いだし…。

私達の事も受け入れてくれたしね。そして、料理の方は言うまでも無いわね。

 

「やっぱり良さそう!ねえ、ゆんゆん!紹介してよ!!」

 

「うん、面倒見が良いっていうのもポイント高いよね!」

 

「え、ええ…。」

 

二人がぐいぐい押し込んでくるので困惑の表情を浮かべるゆんゆん。

 

「私の友達ですっていう紹介だけで良いから!」

 

「御願いよ、ゆんゆん!」

 

「え、えっと…、ほ、本当にやめておいた方が…。」

 

「…ちぇー、こんなに頼んでも駄目かー。」

 

「でも、珍しいよね。ゆんゆんが意見を通すなんて。」

 

「あー、確かに…。」

 

そりゃそうよ!人見知りが直った訳じゃないけど、ゆんゆんだってちゃんと成長してるんだから!

 

「仕方ないね、あ!ゆんゆん。後どれぐらい滞在するのかっていうのは分かる?」

 

「え…?うーん、多分もう暫くは居ると思うんだけど、帰りの日程とかまだ何も決めてないから…。」

 

「そういえばまだ決まってなかったわね。」

 

折角だし、帰りはアルカンレティアに寄ってほしいな、カズマに会ったら頼んでみようかしら。

 

「じゃあ、行こうよ、ふにふら。」

 

「ゆんゆんが駄目なら自分で行くしかないかー。」

 

そう言いながら、お会計を済ませる二人。

 

「またねー、ゆんゆん!」

 

「皆さんも、またです!」

 

「うん、またね!ふにふらさん!どどんこさん!」

 

私たちに見送られて、二人はバタバタと出て行った。

 

二人が帰った後、改めてさっきの話題を持ち出した。

 

「それにしても、カズマねぇ…。」

 

見た目はぱっとしない冴えない顔してんのに、結構モテるのね…。

 

「ふにふらさん達大丈夫かな…。めぐみんが怒りそうですよね…。」

 

「まあ、カズマが止めるだろうさ。さ、私達はこの後どうする?」

 

「んー、そうねぇ…。」

 

二人と相談した結果、この後は、皆でお弁当作って丘の上でピクニックをする事になった。

 

折角だし、皆で楽しまないとね!という事でリーンやフィオ達も誘ってみよう!

何か普通の友達付き合いをしているみたいで、本当に楽しみね!

 

あ、お酒は忘れないようにしないと!

 

結局この後、こめっこちゃんも誘って私達は女子7人で夜まで騒いでいた。

 

 




もう少し閑話が続きます。紅魔族メンバーの何人かがレギュラー化する予定です。

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