このすば カズマが冷静で少し大人な対応ができていたら。   作:如月空

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閑話、取り巻きコンビ

<フィオ目線>

 

 

「「新しいメンバー!?」」

 

夕食の後、キョウヤに呼び出された私達は、突然の新メンバー加入という情報に驚きを隠せなかった。

 

「えっと…、サトウ君の仲介でね?駆け出しのアークウィザードなんだけど…。」

 

私達の反応が気になったのか、キョウヤの口調がどんどん弱くなっていく。

 

「その、二人に相談もなく勝手に決めてしまったのは、済まないと思っているよ…。だからもし、二人が嫌だと言うのなら!?」

 

「ち、違うから!?別に反対はしていないから!?」

 

「キョウヤが決めた事だもん、私達は従うわよ!」

 

キョウヤがこれ以上思いつめた事を言う前に、私達は慌てて弁明を始める。

 

「そ、そうかい?む…りとかしてないよね?」

 

「うん!大丈夫よ、キョウヤ!」

 

「そうそう!さっきのはちょっと驚いただけなのよ!?」、

 

「そ、そうか、良かったよ…。」

 

そう言って安堵の表情を見せるキョウヤ。

 

あ、危なかったわ…、キョウヤって本当に思い詰め易いのね…。

カズマの忠告通り、私達で支えてあげないとね。

 

私は、クレメアと顔を見合わせて、お互いに頷き合う。私達の思いは同じだった。

 

話が終わり自分達の部屋に戻った後、私達は二人で相談していた。

 

「如何思う?クレメア。」

 

「うーん、カズマの仲介って、すっごい嫌な予感するわよね。」

 

「分かる!先ず間違いなく、めぐみんかゆんゆん、あるいは両方の知り合いっていう可能性が高いわよね。」

 

私のその主張にクレメアが力強く頷いて。

 

「そうなると、間違いなく女の子よね!それも紅魔族の!」

 

非常事態だった。紅魔族は男女問わず圧倒的に美形が多い。

そこにキョウヤ待望のアークウィザード…、キョウヤの事だからあれこれと世話を焼く筈だ。

そうなったら、その子もライバルに成りかねない…。

 

そう考えた私は、クレメアと相談して新人の子は私達でお世話しようという話で落ち着いた。

 

其の中でちょっといい男…、テイラー辺りを紹介して惚れるように誘導すれば…。

 

私達は邪悪な笑みを浮かべて、頷き合っていた。

 

 

 

―――――……

 

 

 

 

 

 

 

<ふにふら視点>

 

次の日、私達はねりまきのお店に向かっていた。

 

今日はミララギ…じゃなかった!ミツルギさんのパーティーメンバーと顔合わせの日だ。

 

「確か、盗賊の女性と戦士の女性だったよね?ふにふら覚えてる?」

 

「う、うーん…?居たような気がするんだけど…。」

 

正直あまり覚えてない…。怖い人とかじゃなきゃいいんだけど…。

 

そんな事を考えながら、私達はお店に入った。

 

「あ、いらっしゃいませー。」

 

ねりまきのお母さんに出迎えられた私達は、その場で立ち尽くした。

 

「……何これ?」

 

午前中のまだ早い時間だと言うのに店内は滅茶苦茶賑わっていた。

其の中で一際、人が集まっている席があった。

 

「カタナ!カタナをくれ!」「こっちはコダチだ!」「私はナギナター!」「俺にはナガマキを売ってくれ!」

 

「はいはい、順番ですよー。少しは落ち着いてください!」

 

酒場の一角でカズマさんとめぐみんが武器を売っていた。

何故か、あるえとねりまきもその手伝いをしていたのだけど…。

 

「む、来た様だな。」

 

「あ、ダクネスさん。」

 

「とりあえず、こっちに来なさい。」

 

ちょいちょいと私達に手招きをしているアクアさん。

 

「おはようございます!ふにふらさん!どどんこさん!」

 

「う、うん!おはよ…。」

 

「おはよう!えっと、これは?」

 

どどんこが率直な疑問をぶつけると、ダクネスさんが事情を話してくれた。

 

「……と言う訳で、カズマの作った武器が紅魔族達に好評でな。」

 

「朝からずっとこんな感じなのよ、お陰で大変だったわ。」

 

「用意した分があっと言う間に売れちゃって、結局屋敷の在庫を全部持って来ちゃいましたからね…。」

 

疲れた様な表情で愚痴を零すアクアさんとゆんゆん。

 

「でもま、此処はカズマの奢りになったから良いけどね!あ、高級地酒のおかわりー!」

 

「はーい!」

 

そう言って滅茶苦茶高いお酒を頼むアクアさん。

 

「ね、ねえ、確かあれって一本5万エリスぐらいだよね…。」

 

「ぼ、冒険者って、こんなに儲かるものなの…!?」

 

躊躇い無く散財しているアクアさんに、私達は最高の未来を夢想していた。

 

アクアさん(カズマさん)の奢りで私達が朝食を食べていると、ミツルギさん達がやって来た。

 

「うわぁ、滅茶苦茶込んでるね…、あたし達の席あるのかなぁ?」

 

長いポニーテールのえっと、リーンさんが店内を見回していた。

 

「えっと…、あ。」

 

同じく店内を見回していたミツルギさんが此方に気づいた。

 

「おはよう御座います!アクア様、ダクネスさん、ゆんゆん。」

 

「ああ、おはよう。」「おはよう御座います!」「はよー。」

 

そして、アクアさん達に挨拶をした後、ミツルギさんは私達と向き合った。

 

「おはよう、ふにふら、どどんこ。ちょっと、待たせてしまったかな?」

 

「い、いえ!大丈夫です!」

 

「お気になさらず!」

 

私達がそう言うと、ミツルギさんは一度微笑んでから。

 

「そうかい?じゃあ、早速だけど、僕の仲間を紹介するよ。フィオとクレメアだよ。」

 

ミツルギさんに紹介された二人は、一度頭を下げてから一歩踏み出した。

 

「私がフィオよ!見ての通り、職業は盗賊!敵感知と投剣が得意よ!よろしく頼むわね!」

 

赤いお下げと胸を揺らしながら、すこし高圧的な態度で自己紹介をしていた。

 

「「は、はい!よろしく御願いします!」」

 

「フィオってば…、私はクレメアよ。職業は戦士よ。よろしく。」

 

打って変わって、普通の自己紹介をしてくれたクレメアさん。こちらは薄緑の髪を後ろで束ねていた。

 

「「よろしく御願いします。」」

 

 

<フィオ目線>

 

少し、親睦を深めた方が良いだろうと、キョウヤが席を空けて

私達4人は酒場の隅っこにあるテーブルに移動していた。

 

「…それで、何でウチの入る気になったの?まさか、キョウヤ狙い?」

 

「ちょ、ちょっと、フィオったら!?」

 

「あ…。」

 

新メンバーが二人いた上に、想像以上に可愛い子達だったから私は内心焦っていた。

 

この二人が成長したら、絶対負ける!?

 

直感的にそう思った私は、昨日のクレメアと相談した作戦なんてすっかり頭から抜けていた。

クレメアに窘められて、しまった!?と感じた時には既に遅く、目の前の二人は固まってしまっていた。

 

「ご、ごめんね!?フィオも悪気があるんじゃないからね!?」

 

私の行動を慌ててフォローするクレメア。

 

すると、固まっていた二人は意外な事を口にした。

 

「えっと、私達別にミツルギさん狙いとかじゃないですよ?」

 

短めのポニーテールの子がそんな事を言い出す。そして

 

「誰狙いかって聞かれたら…、私達はカズマさんですし…。」

 

「「はぁ!?」」

 

ツインテールの子が放った予想外過ぎる回答に私達は顔を見合わせた。

 

「えっと、改めて自己紹介しますね。私はカズマさんに憧れて一行に加えさせてもらった、ふにふらです。」

 

「同じく、どどんこです。私達はどちらも上級魔法を修得しています。」

 

そして、先程の事なんて気にしてないような様子で自己紹介をする二人。

 

やらかしたーーー!?

 

先輩としての威厳とかそういう物を保てなくなった私は、その場でガックリと項垂れていた。

 

 

 

―――――――…

 

 

 

 

 

 

 

<カズマ視点>

 

 

そろそろ、お昼が近づいてくる時間、全てを捌き終わった俺達は、ようやく一息つける事が出来た。

 

「やっと、終わったな。」

 

「ある程度予想はしていましたが、こんなに人数が増えるとは思いませんでした。」

 

俺の横で在庫管理と帳簿をつけていためぐみんが疲れた顔でそう零していた。

 

「あるえとねりまきもお疲れさん!約束通り、そこそこのカスタムタイプを作ってやるよ。」

 

「ありがとう御座います!」

 

「楽しみにしているよ。…それで取材の件は…。」

 

「さて!皆も集まってるみたいだし、今後の予定でも相談するかね!?」

 

「え?ちょ、まだ、帳簿が!?」

 

とんでもない事を聞こうとしているあるえを無視して、俺はめぐみんを連れて席を立った。

 

めぐみんを残していくのも問題だ、こいつは絶対余計な事まで喋る!

 

そう思った俺は、めぐみんの手を引いてアクア達の席に移動した。

 

「あら?終わったの?」

 

「…どんだけ、飲んでるんだよ……。」

 

アクア達のテーブルの上には、空になった酒瓶が10本以上置いてあった。

そして、珍しく顔を赤らめて酔っている感じのダクネスと、付き合わされただろうミツルギは青い顔で突っ伏していた。

 

「これ…、予定とか決められる状態じゃないと思うのですが…。」

 

「そうだよなぁ…。じゃあ、今日は一旦解散して…。」

 

「あ!今後の予定を決めるつもりだったの!?じゃあ、帰りはアルカンレティアに寄りたい!!」

 

俺の言葉を遮るように、アクアは自分の希望を答えていた。

 

「あー、来る時通った水と温泉の都だっけか。移動は如何するんだ?歩いていくのは嫌だぞ?」

 

あのオーク達にまた遭遇する可能性もある。正直もう見たくもない。

 

「大丈夫よー。そけっとが登録しているらしいから!」

 

「あん?お前何時の間に知り合ったんだよ…。」

 

「じゃあ!帰りはアルカンレティアに寄るって事で、決定~!!」

 

赤らめた顔で高らかにそう宣言するアクア。

 

「はいはい、分かったよ。」

 

俺がそう答えると、アクアはにへらと笑顔を見せていた。

 

其の様子にめぐみんが何かを言おうとしていたが、大事な事なら後で教えてくれるだろうと思ってその場はスルーした。

 

そして、この判断があの惨劇に繋がるとは…、この時の俺は思ってもいなかった。

 

 


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