このすば カズマが冷静で少し大人な対応ができていたら。   作:如月空

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異変

 

<フィオ視点>

 

私達は、アクシズ教の総本山である神殿に訪れた。

そしてアクアは、着いて早々に神官に詰め寄った。

 

「責任者は何処よ!?」

 

「ゼスタ様なら、今は布教活動中だと思いますが…?」

 

「はぁ!?何処に行ってるのよ!?」

 

「さあ?自由な方ですから、何処にと申されましても…。」

 

アクアに胸ぐらを掴まれた神官は困ったような顔をしていた。

 

「…で?何時戻るの?」

 

「そんな事、私に聞かれましても…。」

 

神官がそう答えると、アクアは苛立ちながらも其の手を放した。

ようやく開放されてホッと一息という感じの神官は、その場からそそくさと離れて行った。

 

「待つわよ!」

 

アクアの宣言にキョウヤやゆんゆんが頷いていた。

 

「ねぇ、フィオ。」

 

「うん?」

 

「アレ…、放っておいても良いの?」

 

「……良いんじゃない?嬉しそうだし…。」

 

神殿の中庭にダクネスが立っていた。それも満面の笑顔で

 

「エリスきょうとめー!」

 

「やっつけろー!」

 

子供達に笑顔を向けて微笑むダクネスは、正直言って気持ち悪かった。

 

だって、子供達に石を投げ付けられているのよ!?それで微笑んでいるってどういう神経してるのよ!?

 

ちなみにダクネスは最初から私達に同行していた。

街で揉みくちゃにされた時も居たんだけど…。

 

まあ、ダクネスだしね…。誰からも心配されてなかったわよ。

 

今はそんな事よりも…

 

「ねぇ、アク。どれぐらい待つつもりなの?」

 

「うーん、そうねぇ…。とりあえず夕方までは待とうかしら?」

 

うぇ…、そんなに?キョウヤは絶対離れないだろうし、どうしようかしら…。

 

「どうする?フィオ。アクから離れるとまた絡まれるかも知れないし…。」

 

私はクレメアを顔を見合わせて…、そして同時に溜息を漏らした。

温泉巡りに行くという手はあった。キョウヤと別行動するのならそれ以外の理由がないし…。

 

「仕方ないわよ、付き合ってあげましょう。」

 

「「はぁ…。」」

 

私達は思いっきり溜息をついていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数時間が経った。

大広間でずっと待機していると、途中で私達の所っていうか、アクアの所に年配の神官がやって来た。

 

『アークプリースト様、懺悔室で信徒達の悩みを聞いて頂けませんか?』

 

『仕方ないわね…、でも、良い機会かしら?』

 

そう言って、アクアが懺悔室に入ってから数時間、中に入る人はちらほらいるけども、

出てきた信徒達は何か納得いかない様な顔をしている人もいた。

 

そして暇だった私達は、ゆんゆんが持ってたボードゲームで遊んでいる。

 

「ゆんゆん、此れで如何!?」

 

「はい、えーっと…。じゃあ、こうです!」

 

「うぇ!?…あー、冒険者を逃がすと負けちゃうし、もう此れ詰みじゃない!?」

 

「まだ、手はありますよ?」

 

「えぇ!?…えっと……あ!この位置なら!?」

 

私は、切り札を使える事に気が付いた、そして…

 

「エクスプロージョン!!これで私の勝ちよね!?」

 

「はい、私の負けですね。」

 

「ちょっと、フィオ!今度は私にやらせてよ!」

 

ゆんゆんを交えて三人でワイワイ遊んでいると、アクアが出て来た。

 

「ちょっとー!何で私も誘ってくれないのよ!?」

 

「え?だって、アクは信者の導きで忙しいんでしょ?」

 

「もう一時間ぐらい誰も来てないわよ!私も入れてよー!」

 

「じゃあ、アク…さん。私と交代しましょうか。」

 

半べそ状態のアクアをゆんゆんが慰めてた。…これ、女神なのよね?

 

「ふふふ!クレメア、覚悟しなさい!」

 

「アクになんて負けないわよ!」

 

………

 

「エクスプロージョン!よし!私の勝ちー!!」

 

「なんでよおおおお!!」

 

うん、アクアはやっぱり弱かったわね。

 

そんな風に皆で遊んでいると、神官が一人私達の元へやって来た。

 

「ゼスタ様の所在が分かりました。どうやら警察に捕まった様で今日中には帰って来れないと思います。」

 

「「「「「はあ!?」」」」」

 

何で、教団代表の最高責任者が警察に捕まっているのよ!?

 

アクアを見ると、青い顔して固まっていた。

 

「アク…様、今日は宿に戻りましょう。」

 

固まっていたアクアにキョウヤがそう促して、私達は神殿を後にした。

 

「最高責任者が捕まるとか、何をやったのかしら…。」

 

「少し、調べてみるわよ!」

 

私の呟きに反応したアクアは、また面倒な事を言い出した。

 

「調べるって言っても如何するのよ?正直、アクシズ教徒はまともに答えてくれないかもよ?」

 

最高責任者の不祥事なんて、信者からしたら目を覆いたくなる様な話でしょ。

 

「それならアク。警察と、エリス教会で話を聞くというのは如何だ?」

 

「えー、警察はいいけど…、エリス教会…?うーん…。」

 

ダクネスの提案に、アクアは唸って考え込んだ。

 

「…そうねぇ、不本意だけど話だけは聞いておきましょうか。」

 

不本意って…、あーそういえば、女神エリスはアクアの後輩だっけ?それは、渋るのも仕方無いわね。

 

 

 

―――――――…

 

 

 

 

 

<アクア視点>

 

警察とエリス教会からの聞き込みが終わって、私達は宿に戻って来ていた。

 

「エリス教会への嫌がらせ…、悪戯程度ならまだしも、硝子を割ったり、炊き出しを奪ったりって犯罪じゃない!?」

 

国教になっているエリス教会に、少しぐらいちょっかいを掛けるのは良いけど、少しは手段を選んでよ!?

 

「アクアさんに教会から陳情がありましたしね…、如何します?アクアさん…。」

 

「先ずは責任者と話をして、しっかり教義を叩き直さないと…!」

 

ゆんゆんの言葉に、私はそう言って力強く頷く。

 

「でもそれなら、暫く滞在しないといけないから、皆を説得する必要があるわよ?」

 

「というか、私達も早く帰りたいんだけどね。」

 

「うっ!?そ、それがあったわね…。まったく!痴漢行為所か婦女暴行で捕まるって……。」

 

最高責任者の前に聖職者失格でしょ!?そんな奴!!

 

「しかも、反省の色も示してないらしいからな、拘留期間は延びるだろうな。」

 

どうしよう…、最悪私だけ此処に残ろうかしら?いや、ゆんゆんやミツルギは残ってくれるだろうけど…。

二人にあまり迷惑を掛けるのも嫌なのよね…。ミツルギが残ればフィオ達にも迷惑が掛かるし…。

 

「とりあえず、カズマと相談かしらね…。」

 

「そうだな、まぁ、今は温泉を楽しむとしよう。」

 

「私は入れないから楽しめないんですけどー…。」

 

私が入ると温泉の成分を浄化しちゃうのよね…。どうにかコントロール出来る様にならないかしら…。

 

脱衣所で服を脱いだ私達は、そのまま浴場に向かう。

 

「せめて掛け湯だけでも!」

 

浴場内をタタッと走って、桶でお湯をすくって…。

 

「あら?」

 

「?如何しました?アクアさん。」

 

ゆんゆんが覗き込んでくるけど、私は黙ってお湯を見つめていた。

 

「何してんのよ、アクア。とりあえず桶を取ってくれない?」

 

あ!これは!?

 

「駄目よ!!皆!!お湯に触らないで!!」

 

「「「「えっ!?」」」」

 

私の言葉に皆が固まった。

 

「このお湯…微量だけど、毒を含んでいるわ…。」

 

「なっ!?ど、如何いう事だ?アクア!?」

 

「分からないわよ!?兎に角、ダクネス!この事を宿の人に伝えて来て!!」

 

「あ、ああ、分かった!」

 

そう言うとダクネスは、慌てて脱衣室に戻って行った。

 

「とりあえず、私達も服を着ておきましょう。このままじゃ風邪引いちゃうわ。」

 

私は引かないけど。…それは置いておいて、此れは如何いう事なの?悪戯?じゃ済まないわよ、こんな事!

 

脱衣所に戻って服を着た私達は、そのままダクネスが戻るのを待っていた。

 

「あ、ダクネスさんが戻って来ましたよ。」

 

「ダクネス!宿の人は!?」

 

「直ぐに来る筈だ!」

 

ダクネスの言う通り、一分もしないうちに宿の人がやって来た。

 

「お客さん!温泉に毒が混ざっているというのは本当ですかっ!?」

 

「ええ、少しぐらいなら害は無い程度の毒だけど…、元凶を見つけなきゃ、悪化する可能性もあるわよ。」

 

「そ、そんなっ!?」

 

私の言葉で崩れ落ちた宿の人を見ていると、ふと、気になった。

 

「ねぇ、貴方はアクシズ教徒?」

 

「い、いえ!私はエリス教徒です!」

 

「なら、この宿ってエリス教徒が経営しているの?」

 

「そ、そうですけど…。」

 

「そう…。」

 

私はそのまま思案に耽る…。

 

これが悪戯だった場合…、……!?犯人はアクシズ教徒っていうのが濃厚じゃない!?

え!?嘘!?此処までやるの!!??確かに微量であれば害は少ないけど、まったく無いって訳じゃないのよ!?

 

「フィオ!クレメア!皆を呼んで来て!この時間なら流石に戻ってるでしょ!?」

 

本当にアクシズ教徒の仕業だったら、私が責任取らない訳にはいかないわよね?

 

「ええ!」

 

「わかったわ!…でも何をする気なの?」

 

それは思いつかないけど…、でも、これは許される事じゃないから!

 

「…カズマ達なら、いい手を考えてくれるかも知れないから!それと、あまり派手に騒がないでね!」

 

此処は高級宿だし、宿の人にこれ以上の迷惑は掛けられない…。

カズマが、何か良い手を思いついてくれる事に期待しよう。

 

この毒物混入事件!何としてでも解決しないと!!

 




アクシズ教徒の株が下がりまくった状態で、毒物混入の事件発生。
犯人はアクシズ教徒なのか!?別に真犯人がいるのか!?と言うところで今回は終了です。

いや~、原作とかけ離れ過ぎてるわ。

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