このすば カズマが冷静で少し大人な対応ができていたら。   作:如月空

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真実を求めて

<めぐみん視点>

 

 

「此処を通りたいって…、そんな事許可出来る筈がないだろう!?」

 

「此処は関係者以外立ち入り禁止なんだよ。それに今は管理人の爺さんが中に居るから、通したりしたら何を言われるか分からねぇしよ。」

 

私達は源泉の調査に来ていた。

 

あまり話を広げるのは不味いと判断したカズマは、詳しい事情を説明せずに入れて貰おうとしていたけど、当然の様に断られた。

 

まぁ、当然ですよね。この人達も仕事でやっているのですから。

 

「そっかー。じゃ、諦めるしかないか!めぐみん、戻るぞ!」

 

「え?あ、はい。」

 

あれ?簡単に諦めてしまって良いのですか?此処は特に調べるべき場所だと思うのですが…。

 

踵を返したカズマに慌てて付いていく私。

カズマは如何するつもりなんだろうと思って顔を見ると、カズマは笑っていた。

 

「…と、此処らで良いかな?」

 

そう言って、私に手を差し出すカズマ。

よく分からずに、手を取るとそのまま抱き寄せられた。

 

「ちょ、カズマ!?」

 

「黙ってろって…『ライト・オブ・リフレクション!!』」

 

あ、此れは…。

 

「んで、『パワード!!』『スピードアゲイン!!』」

 

「…成程、正攻法で駄目ならこっそり行こうと言う訳ですね。」

 

「そゆこと。めぐみん、抱き抱えるぞ。」

 

「え?…ふぁああ!?」

 

私の反応を待たず、そのままお姫様抱っこをするカズマ。

 

って、不意討ちは卑怯ですよ!?うぅ…今更此れぐらいの事で…。

 

「しっかり捕まってろよ?一気に飛び越えるからな!」

 

カズマの腕の中で私が頷くと、カズマは一気に駆け出した。

 

「ふっ!」

 

そして、そのまま壁を飛び越えるカズマ。

久々に見た格好良いカズマに、私は見惚れてしまった。

 

顔を真っ赤にしてしまった私は、慌てて俯く。

 

うぅ…、この男は偶に格好良くなるのが本当に卑怯ですよ!

私達はもう、子供が出来ていても可笑しくない程、深い仲だと言うのに…。

 

「ん?如何した?」

 

俯いている私に気が付いたカズマが、私に声を掛けてくる。

横目でチラっとカズマの顔を覗き見ると、私の状態に気が付いたのか、カズマがニヤニヤしだした。

 

「んー?如何したー?めぐみん。腹でも痛いのかー?」

 

うぐぅ…、後で覚えていてくださいね…!!

 

そんな感じで多少のトラブル?はあったものの、私達は予定通り源泉に到着した。

 

「さて、早速調べ…、ん?」

 

「如何したんで、むぐぅっ!?」

 

『…男が居る。』

 

私の耳元で、カズマが小声で話す。

 

く、くすぐったいのですが…!?…で、男とは?

 

カズマの目線の先を見ると、ガタイの良い男が源泉の前に立っていた。

 

『あれは…、一体何をしているのでしょうか?』

 

『分からん、だが…。』

 

カズマは其処で一呼吸をおいて

 

『恐らく、犯人だ。』

 

『え…?』

 

ど、如何いう事ですか!?何故そう言い切れるのです!?

 

私が困惑していると、カズマは言葉を続ける。

 

『さっき、門番が言っていただろ?管理人の爺さんが中に入ったって。』

 

『あ、そういえば…、そんな事を言っていましたね。…では、あの男は?』

 

『爺さんの連れと言う可能性はあるが、見たところ爺さんの姿は無い。…となると。』

 

まさか!?

 

『入れ替わり…ですか?』

 

『ああ、其の可能性が高い。…めぐみん、心当たりは在るか?』

 

『…本人にそっくり化けるとなると、真っ先に浮かぶのはドッベルゲンガーですが。』

 

『ドッベルゲンガーか…、強いのか?』

 

『ええ、固体によっては下手な魔王軍幹部より手強いと聞きますよ。』

 

それでも、爆裂魔法なら一撃で葬れるとは思いますが…。

 

『…そうか。兎に角、今は様子を見よう…。』

 

カズマの提案に頷いて、私達は息を潜む。

カズマの潜伏スキルに加えて、光の屈折魔法…。この状態で見つかるとは思えない。

 

「順調だ。この調子で行けばアクシズ教徒の連中を潰す事が出来る…。苦労したぜ…あの連中の相手をしながらの活動はよ…、くそっ、涙が出て来やがった。」

 

『『……。』』

 

あの男が犯人だと言う事は分かった。ただ、私達はあの男の言葉に居た堪れなくなっていた。

 

『…多分、魔王軍だと思うけど…、あいつもアクシズ教徒には苦労していたんだな…。』

 

『そうみたいですね…。』

 

「っと、そろそろ行くか。あいつを待たせると煩いからな。」

 

そう言って、何処かへ消えていく男。

 

あいつというのは、あの時一緒に居た女でしょうか?

 

『……魔法を掛け直す。さっきの奴が戻ってくる可能性もあるからな。』

 

カズマは支援魔法と屈折魔法を宣言通り掛け直す。

此れに加えて敵感知スキルもあるから奇襲を受ける可能性はほぼ無いだろう。

 

暫く様子を窺ってから、私達は源泉の元へ向かった。勿論あの男が立っていた場所へ。

 

「やっぱり、毒物だ。それに…。」

 

カズマはしゃがんで源泉の毒物を覗き込む。

 

「かなり毒性が強いな…。」

 

「か、カズマ、触らないで下さいよ!?」

 

「分かってるよ、これは俺の手に負えるような物じゃない。」

 

そう言って立ち上がると、カズマは何やら考え込む。

暫く考えていたカズマは、顎に指を当て、天を仰ぐ。

そして、最後に私の方を見た。

 

「なぁ、めぐみん。この世界のドッベルゲンガーって毒物を扱うのか?」

 

「は?いきなり何を…、あ…、ドッペルゲンガーにそんな能力はありません。

となると、それ以外の存在と言う事になりますね。」

 

私の言葉にカズマは頷く。

 

「で、めぐみん。そういうモンスターに心当たりはあるか?」

 

「そうですねぇ…。」

 

正直心当たりが無い、変化の能力があって、強力な毒を持つモンスターなんて…。

 

「ん?」

 

いや、聞いた事がありますね。確か、ずっと昔に倒された魔王軍の幹部が…。

 

「デッドリーポイズンスライムの変異種…大昔にいた、魔王軍の幹部です。」

 

「えっ…?」

 

「ですが、既に倒されている筈です。それに変異種でない者は知性がありません。」

 

私の言葉に、再び考え込むカズマ。

 

「……バニルの例もあるし、何らかの力で復活した可能性は?」

 

「えっ!?…ない、とは断言出来ませんね…。」

 

「……条件が合うのはそいつだけなんだろ?なら、最悪を想定して動いた方が良い。」

 

確かにカズマの言う通りだ、それに、私達はこの手の厄介事に巻き込まれ過ぎている。

既に魔王軍の幹部を三人倒しているし、今回もそうだと思っておいた方が良いのかも知れない。

 

「分かりました、ただ、決め付けてしまうのも早計だと思います。あくまで可能性という事で動きましょう。」

 

「ああ、分かっている。まったく別の能力を持っていたら其れが致命傷になり兼ねないからな。」

 

私達はお互いに頷く。

 

「今日は此処までだ、帰ろう。」

 

 

 

――――――――――…

 

 

 

 

 

<アクア視点>

 

 

湖の浄化は順調。あと30分もあれば終わるわね。

 

湖の中で、浄化を進めていた私は、そんな事を考えていた。

 

それにしても、大事な水源に毒を撒くなんて…、犯人を見つけたらゴッドブローでボコボコにしてやるんだから!

 

拳を握って、そう息巻いていた私にふと悪寒が走った。

 

「!?」

 

げ!?何でこんな所にこいつらが沸くのよ!?

 

ブルータルアリゲーター、以前の水の浄化クエストで私がトラウマになりそうになったモンスターだ。

私は急いで水面へ向かった。幾らなんでも、水の女神である私が水中で追いつかれる訳がない。

 

「ゆんゆん!ミツルギ!助けて!!モンスターが!!!」

 

「「直ぐ行きます!」」

 

そう言って二人は湖の傍まで駆け寄ってくる。

 

後は、逃げ切るだけ…って、ちょ!?何で回り込まれ…って囲まれたーー!?

 

「ミツルギさん、アクアさんを受け止めてください!」

 

「ああ、任せてくれ!クレメア!ゆんゆんの援護を!!」

 

「分かったわ!!」

 

「ごめんなさい、アクアさん!!巻き込みます!!」

 

「って、ええ!?」

 

ゆんゆんにそう叫ばれて、あたふたしていると。

 

「暴虐の風よ!裂刃と成り彼の者達を悠久の眠りへ誘え!『トルネード!』」

 

私を中心に吹き荒れる風。そして、湖の水ごと私達は天高く飛ばされて…落下した!

 

「ひゃあああああああ!!!??」

 

「アクア様!!」

 

間一髪のところでミツルギに受け止められた私は、目を回していた。

 

「ご、ごめんなさい!アクアさん。水面だと手を出しにくくて!」

 

「あああ、い、いや、へ、平気よ?そ、其れよりもモンスターを早く倒さないと!?」

 

このままじゃ、町に被害が出てしまう。

 

私はまだ、ふらふらの状態だけど、ミツルギにも戦ってもらわないと!

 

「『パワード!!』『スピードアゲイン!!』『プロテクション!!』」

 

手早く全員に支援魔法を掛ける。

 

ゆんゆん達なら、こんなモンスターに後れを取る筈がないわよね!

 

……うん、早かった。と言うか、巻き上げられたモンスターは殆ど地面と激突しちゃってたからね。

残党なんて、このメンバーに掛かれば1分も持たないわよねぇ…。

 

「みんな、お疲れ!怪我とかしてない?」

 

「ええ、大丈夫です。」

 

「問題ありません!それよりアクア様は、って!あ、すみませんアク様!」

 

「え、ああ、いいわよ。誰も居ないみたいだし。クレメアは平気?」

 

「私も平気よ。アクの支援もあったし、あんなの相手に怪我なんてする訳ないじゃない。」

 

そっか、皆強いもんね。っと、さっさと浄化を終わらせないと。

 

「じゃあ、浄化に戻るわね。もう面倒だから、一気にやるわ!」

 

大分浄化が終っているから、後はこの魔法だけで終る筈。

 

「『セイクリッド・ピュリフィケーション!』」

 

湖が光って、光が収束していく。そして、浄化が終わった。

 

「よし、今日は帰るわよ!皆、ありがとね!!」

 


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