このすば カズマが冷静で少し大人な対応ができていたら。   作:如月空

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相棒と友人達と過ごす休日

「…ふう、最高だ…」

 

今日は起きてすぐに、めぐみんを連れ立って大浴場にやってきた。

昨晩、めぐみんが酔い潰れてしまった為、風呂に入れなかった。

酔っためぐみんは可愛らしくて、思わず和んじゃったけども…

やっぱり、子供に酒は飲ませてはならない。

…酔っためぐみんに、首とかを吸われちゃったりして良い思いをしたのは事実だけど。

 

「…そろそろ上がるか。」

 

手早く着替えた俺は、ロビーで待つめぐみんと合流した。

 

「カズマ、今日は早かったですね。」

 

「朝風呂だから、こんなもんだよ。めぐみんは何飲む?」

 

コーヒー牛乳を片手にめぐみんに聞く。

 

「カズマと同じものでお願いします。」

 

「わかった。」

 

代金の400エリスを払って、コーヒー牛乳を飲みながらギルドに向かう。

 

「今日のクエストは何がありますかね?私は爆裂魔法が撃てれば、なんでもいいですけど。」

 

「お前、そればっかだよなぁ…。まぁ有用なのはわかるけどさ。」

 

「何を言うんですか!良いですか?カズマ!爆裂魔法より最高な魔法なんてないんです!

威力、範囲そして彩り!それを撃った後のあの爽快感!!はぁ~~。」

 

めぐみんってしっかりしているようで残念なところあるよな…

体をくねらせながら語るめぐみんは控えめに言って変態っぽかった。

 

「とりあえず、飯にしようぜ?」

 

変態化している、めぐみんの手を引いてギルドに向かった。

 

 

――――――――……

 

 

昨日のクエストで懐が暖まっていた俺達は朝から肉三昧だった。

ハンバーグや唐揚げ、蛙肉のステーキ等…

ちょっと頼みすぎたかなと思っていたら、めぐみんが余裕で平らげていた。

 

「はぁ~最高です。朝風呂入って、お腹一杯ご飯を食べて…これが幸せなんですね。」

 

そういえば、実家が貧乏だとか言ってたな…居たたまれなくなるので、この話題は避けよう。

お茶を飲んで一息つけていると、リーンがやってきた。

 

「おはよーめぐみん、カズマー」

 

「おう、おはよ。」

 

「おはようございます、リーン。どうかしましたか?」

 

リーンが複雑な表情を浮かべていた。

 

「なんかね?クエストが全然ないらしいのよ。」

 

「どういうことだ?」

 

昨日はたくさんの依頼票が出ていたはずだが…

 

「なんか昨日ね、あたし達がクエストに行っている間に高レベルのソードマスターが来たらしくてね。」

 

「なんで駆け出しの町に高レベルがいるんだ?」

 

「ん、それはわからないけど、なんかその人ね。駆け出し冒険者にこんな依頼は危険すぎるとか言ってたらしくてね。」

 

「それで、どうしたんですか?」

 

「その人が報酬はいらないから、危険なものは全部引き受けようとか一人で盛り上がっていたらしくて…ギルドの人が何度か止めたらしいんだけど…取り合ってもらえなかったって。」

 

なんだ?そいつは?勝手過ぎないか!?

 

俺達が話をしていると、受付のお姉さん―――ルナさんがやってきた。

 

「申し訳ありません、昨日の内に話しておきたかったんですが…」

 

「ええ、聞いておきたかったです…」

 

朝から散財しすぎたな…俺が項垂れているとめぐみんが

 

「それで…その人一人で、全部やってしまったのですか?」

 

「いえ、盗賊の女の子と槍使いの女の子も一緒でした。

後、もう一人何処かのお嬢様のような方がいらっしゃいましたね。」

 

貴族のお嬢様の我侭か?なんて迷惑な…

 

「あのう、そんな勝手をしていて、その人の仲間は誰も止めなかったんですか?」

 

めぐみんが質問を続ける。

 

「いえ、盗賊の子と槍使いの子は追随していたのですが、

もう一人の方が「迷惑そうだからやめましょう」と、必死に止めていましたね。」

 

貴族の我侭お嬢様とか思ってごめんなさい!

 

「それで、クエスト終わらせてお金を受け取らずに帰ったんですか?」

 

「いえ、クエストを成功させているのに、ギルドとしては報酬を支払わないというワケにはいきませんので…」

 

結局受け取ったらしい。なんだそりゃ!?めぐみんも質問を続けている内に目が輝いていく。

 

「なんて迷惑なことをしてくれたんでしょう!!」

 

とうとうめぐみんが怒り出した。

 

「今日はどこに爆裂魔法を打ち込めばいいのでしょうかっ!!

…そのソードマスターにしましょう!そいつはどこですかっ!?」

 

めぐみんの剣幕にルナさんはたじろぎながら

 

「えっと、王都に向かうといっていたのでこの街にはもういないかと思われます…」

 

それを聞くとめぐみんはガクっと項垂れて

 

「カズマ…この私の怒り(爆裂魔法)はどこにぶつけたら良いのでしょう!?」

 

このままでは街中でぶっぱなしかねない…

 

「あの、ルナさん?どこか爆裂魔法を撃っても平気な場所ってありませんか?

このままではうちの相方が暴走しそうなので…」

 

俺の言葉に顔を青くしたルナさんは急いで地図を持ってきた。

 

「こちらの平原やこちらの山岳地帯でしたら…町の周辺は緊急時以外はやめてくださいね。」

 

涙目のルナさんから地図を受け取り、確認すると湖畔があった。

 

「なぁーめぐみん。弁当でも持って散歩がてら、ここらへんで撃たないか?」

 

俺は湖畔を指差した。するとめぐみんは

 

「悪くはないですね。爆裂散歩といったところでしょうか。」

 

そんな物騒な散歩をするのはめぐみんくらいだけどな。

俺達が相談しているとリーンが

 

「あーじゃあ、あたしも付いていっていい?暇なんだよねー あ、二人はどうする?」

 

いつの間にか来ていたらしいテイラーとキースにリーンは聞く。

二人に気づいた俺は手を上げるだけの挨拶を送る。

 

「ふむ、どの道やることもないしな。」

 

というテイラーと

 

「昨日のすげー魔法見ながら昼食っていうのも悪くねえよな。」

 

キースも乗り気のようだ。

 

「じゃあ、各自準備して10時位に門に集合ってことでいいか?」

 

今日の予定を決めた俺達は一旦別れて、

矢の補充と報告のために武器屋に寄った後、

弁当を買うために商店街を二人で歩いていた。

 

「5人分だし、こんなもんか?」

 

「全然足りませんよ!爆裂魔法を撃った後はすごくお腹が減るんです!

それくらいじゃ私一人分にもなりませんよ!!」

 

いや、あからさまに食いすぎだろ。それでよくその体型を維持できるものだ。

ごねるめぐみんに結局折れた、俺は追加の串焼きやコロッケなどを購入する。

ついでに俺はマグカップのようなものも購入して珈琲の粉も買う。

しめて5千エリス…散歩から戻ったら今日は親方の所に行こう。

 

 

――――――――……

 

 

 

門で3人と合流した俺達はのんびりと目的の場所に向かう。

癖で敵感知スキルを発動させてしまったが、切らないほうが良いだろう。

俺達は、件のソードマスターに対する愚痴を言いながら、談笑する。

 

「そういえば、カズマは近接スキルは持っているのか?」

 

突然テイラーが聞いてくる。

 

「あるにあるけど、まったく使ってないな。大体魔法か弓で終わるだろうし。」

 

ふむ、と考え込むテイラー

 

「なぁ、カズマ。それなら近接戦闘もこなせる様にした方が良いと思うんだが…お前らは普段二人だけだろう?」

 

言いたい事がなんとなくわかった。

感知スキルはあるが、不意打ちがないとも限らない。

そうなれば、めぐみんを守るために近接戦をしないといけない可能性もある。

 

「でも、スキルあるからなんとかなると思う…ぞ?」

 

俺はなんとなく自信がなくなり語尾が弱くなる。

 

「近接スキルなんて所詮、型が決まった基本形だ。

慣れてくるとみなそれぞれに自分なりのアレンジを入れるんだ。」

 

「型が決まった基本形…成程、つまり読まれやすいってことか。」

 

格闘ゲームでも、技の予備動作を見て対処するなんてのは基本だ。

ましてや実戦じゃそれが直接命に関わってくる。

 

「そうだ、だからこなせるようになっておいた方が良いと思うんだが。

こうして、外に出たんだ。模擬戦相手くらいにならなるぞ?」

 

「…そうだな、めぐみんが爆裂魔法撃って飯食った後でも頼むかな?」

 

「わかった。」

 

俺達がそんな話をしていると

 

「カズマカズマ、それでしたら魔法の練習をするのも良いですよ。

魔力のコントロールなども教えますよ。」

 

「え?えっと?俺の魔法どこかダメだった?」

 

魔法に関しては大分慣れてきたと思ったんだけど。

走り回りながら撃ったり、詠唱できるようになったんだけどな。

 

「ええ、カズマの魔法は結構無駄がありますね。

杖を使っていないので制御が難しいのだとは思いますけど、無駄になっている魔力が結構あります。」

 

「えー…」

 

「アハハ、カズマーやっぱり杖持たないとダメだって!」

 

「リーンもですよ?昨日見ていましたけど、あの魔力量を消費しているならもっと威力が高まるはずです。」

 

「えぇ~!?」

 

飛び火したリーンが涙目になる。

 

「てか、めぐみん。爆裂魔法しか習得してないのになんでそんなことわかるんだ?」

 

「前に言いましたよね?カズマ。私は紅魔族随一のアークウィザードだと。

まぁ、二人に指摘した程度の話でしたら、紅魔の里では基本ですが。

なので!私がお二人に特別教授をしてあげましょう!!」

 

ロリっ子教授の爆誕である。

 

 

――――――――……

 

 

「『エクスプロージョン!』」

 

穏やかな湖畔を背に…大岩に破壊の魔法が刺さる!

 

「おお、すっげーな!昨日見たときは驚きすぎてよくわからなかったけど。いや今もよくわからないけど。」

 

キースは何が言いたいのか自分でもわからないらしい。

テイラーとリーンもその威力に感嘆の声を上げていた。

昼食が終わり、めぐみんは寄りかかっていた俺から離れて

 

「では、まず魔力のコントロールから説明しましょう。」

 

めぐみんの話によると魔力はただ集めるのではなく、体の中を流すようにして一点に集中させるほうがいいらしい。

 

「ライトニングなどの放出系の魔法は、腕を伸ばすような感覚でやってみてください。」

 

めぐみんの説明通りに俺とリーンがやってみると…

 

「『ライトニング!』」「『ライトニング!』」

 

轟音と共に俺達の手から太い稲妻が放たれた。

 

「「…!!」」

 

俺達の様子を見て満足げにめぐみんは頷いている。

 

「どうですか?変わるものでしょう?」

 

ロリっ子教授は天才だった。

一通りの魔法訓練を終えた後テイラーが話しかけてきた。

 

「じゃあ、カズマそろそろ始めるか?」

 

「ああ、そうだな。」

 

テイラーは木刀のようなものを渡してくる。魔法訓練をしている間に用意してくれたらしい。

 

「じゃあ、先ずは一度模擬戦をしてみよう。経験の差を埋めるための条件だが。

カズマは中級以上の魔法…弓。支援魔法身体強化魔法の使用は禁止。それ以外は自由だ。」

 

つまり俺が使えるのは近接系スキル全般と盗賊スキルそれと初級魔法だけか。

 

「キース、開始の合図を頼む。」

 

「はいよ!……はじめ!!」

 

開始の合図と共にテイラーが突っ込んでくる。俺の反応は間に合わなかったが

 

「!…自動回避スキルか…つくづく規格外だなカズマ!…だが!」

 

俺はギリギリで避けるも連撃に反応し切れずに自動回避スキルが発動する――

 

「ガッ!」

 

それに合わせたテイラーの攻撃で胸部を殴打される。

テイラー、こんなに強かったのか…

 

「自動回避が発動すると、どうしても無理な体勢になってしまう。そこを攻撃されることもあるんだ。」

 

うずくまっている俺にテイラーが説明する。

 

「続けるぞカズマ!」

 

俺も構えなおす――

びびっていたら、一方的にやられてしまう。もっとちゃんと見ないと…

テイラーが再び連撃を繰り出す。”コレ”は解かる…剣士系の基本連撃…

自動回避が発動しないように、今度はギリギリで回避する。

 

「…そうだ、やるじゃないかカズマ。この連撃は型が決まっている。そろそろ反撃して来い。」

 

テイラーが三度連撃を繰り出す。技の隙を突き、反撃を試みる。

 

「っと。あぶない…だが流石に飲み込み早い。これなら前衛でもやっていけるんじゃないか?」

 

「いや、俺は臆病なんだよ。普段からこんな戦いなんかしたくはないね!」

 

俺は反撃に出る。

 

「『クリエイトアース』」

 

片手にさらさらの土を持つ

 

「こい!」

 

「『ウインドブレス!』」

 

模擬戦でこれは酷いとは思うが、負けるのも悔しいので手段を選ばない。

 

「!目潰しか!おいおい、模擬戦だぞーコレは…」

 

テイラーは呆れながらもしっかり盾で防いでいた…

 

「余裕で防ぎやがって!」

 

「カズマの実力は未知数だからな、用心するに越したことはないさ。」

 

そういって、また連撃を繰り出すテイラー。

さっきから、連撃の種類を変えているようだけどなんとか避けられるようになってきた。

それでも、こちらの攻撃は当たらない。

先程めぐみんから教えてもらった魔力コントロールに集中する。

 

「『クリエイトウォーター!』」「『フリーズ!』」

 

「っく、タイムラグなしで魔法連発とか!カズマどれだけ器用なんだよ!!」

 

流石に避け切れなかったテイラーが愚痴を言いつつ、距離をとる。

 

「はは!めぐみんのおかげだよ!やっぱり俺の相棒は最高だぜ!!」

 

「『クリエイトウォーター!』」「『フリーズ!』」

 

俺の連続魔法をテイラーは盾で防ぎながら突っ込んでくる!

 

「『スティール!』」

 

「っな!」

 

俺はテイラーの持っていた盾を奪い取る――

 

「やるな!流石だ!」

 

テイラーは両手で木刀を握りなおし――

連撃を繰り出してくる。さっきより断然早い…

 

「へぶ!」

 

頭をぶったたかれた。

 

「ははは、勝負アリだなカズマ。いきなりここまでやるとは予想外だったぞ。

これは早い内に実力を抜かされそうだな。」

 

といいながら手を差し出してくる。俺も手を差し出して――

 

「『ティンダー!』」

 

「どわっちぃ!!ちょ、カ、カズマ今のは酷いぞ!」

 

「やかましい!!思いっきり頭ぶったたたきやがって!!」

 

そして俺達はどちらからともなく笑いあい

 

「ハハハ!カズマ!お前いい性格してるぞ!!」

 

「そりゃどーも!ハハハ」

 

こうして、俺たち5人は依頼のない間、修行まがいなことをしながら過ごす。

午前中は湖畔のほとりで釣りをしながらのんびりとして、昼飯食いながら爆裂魔法見物。

午後からはめぐみんによる魔法訓練とテイラー、キースを師事しての訓練。と模擬戦。

近接攻撃に苦手意識をもっていた俺はすっかり克服できていた。

夕方からは親方の所に行き、終業まで仕事をしていた。

俺いつからこんなにも、勤勉になったんだろう?

夜はめぐみんと二人っきりでスティールの練習。

毎回怒られるけど、めぐみんも嬉しそうにしている。

まぁ一度連続スティールして、めぐみんのパンツとブラを取った時はめちゃくちゃ怒られたけど。

 

「この状態でスティールされたら上下どっちか裸になっちゃうじゃないですか!!」

 

うん。怒られて当然だった…

…明日は依頼があるといいなぁ。




テイラーがめちゃくちゃ強いように描写されてますが
単純にカズマさんが弱すぎるだけです。
主にびびって動けないことが原因だったんですが。

うちのテイラー達のレベルは15~20程度です。

追記、めぐみんの指導で魔法の威力が上がっているように描写していますが、
単純に燃費が良くなっているだけです。
それ以上の魔力を込めているから威力が上がっているだけということです。

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