このすば カズマが冷静で少し大人な対応ができていたら。   作:如月空

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遅くなりました。


ハンスとの戦い其の一

 

 <リーン視点>

 

「大丈夫かな?カズマ。」

 

 あたし達はカズマの作戦通り、源泉から少し離れた林の中で待機していた。

 

 辺りには、毒避けのバリケードや大量にゴーレムの元となる土も運んである。派遣されてきた冒険者にゴーレム使いが混ざっていたので、其れを最大限利用出来れば余計な被害は少なくなる。

 

「ゴーレムを壁代わりかぁ…、いや、ある意味正しい使い方なのかも知れないけど。」

 

 ゴーレムの材料って、何かと高いんだよねぇ…。ゴーレム使いの彼、めちゃくちゃ喜んでたし。やっぱ、普段はあんなに使えないよねぇ。

 

 そして、皆の様子はっと、…うん、何時もの面子は平常運転かな?ダストの悪態も含めて。

 

 そけっとさん達紅魔族組は木の上にいる、何か登場タイミングが重要らしい。あの人達の登場タイミングに合わせて名乗り上げで被せてみようかな?めぐみんもノッてくれるだろうし、それはそれで面白い事になるかも?……って、真面目にやらないとね。

 

 それで、ギルドから派遣された人達はというと結構緊張している感じ。あ、そういえばバニルは何処だろう?

 

「そろそろ、カズマが戻って来ます!!」

 

 バニルを探そうと周辺を見回していたら、突然めぐみんが号令を発した。切り替えないと!!

 

「あーあ、来ちまったかぁ。野郎共!気合入れろよな!」

 

 ちょっと、ダスト…、其の人達先輩冒険者なんだからね?あまり調子に乗らないほうが良いんじゃない?

 

 とはいえ、私達のパーティーもみんなレベル30は超えてるから、あの人達とあまり変わらないかもだけど。

 

「見えた!カズマだ!」

 

 高台に位置取ったキースが叫ぶ。いよいよ戦闘開始ね!

 

………

 

…………

 

 流石に数の暴力が酷い。最初人間形態だったハンスは、配置されている戦力を確認すると直ぐに正体を現した。

特に紅魔族組まで居たのが予想外だったらしい。…ちなみに私の名乗り上げは出来なかった。っていうか、あんな激しい戦闘中に出来るあの人達が可笑しいのよ!

 

 そんなこんなであたし達は終始安定したまま、ハンスを追い詰めた。今のハンスは人間形態ぐらいまで小さくなり、その半身をウィズの氷牢獄で凍らされていた。

 

 そして、めぐみんが詠唱に入り、爆裂魔法が放たれる。………誰もがコレで終ると思っていた。

 

「な、何だ!?」

 

 四散したハンスの破片が突如不規則に飛び回った。

 

「不味い!『『ウインドカーテン!』からの、『ウインドブレス!!』」

 

 魔法使い組が必死に、ハンスの破片を風魔法で打ち落とす。

 

 そこから、更に異常事態が起きた。

 

「な、何だよあれ?」

 

「嘘だろ!?削りきった筈だろう!?」

 

 ギルドの冒険者達が驚くのも無理はない、てか、あたし達も滅茶苦茶焦ってる。

 

 戸惑うあたし達の前でハンスだったものが変態していく。…そして

 

「う、うそ…!?」

 

 私達の目の前で信じられない光景が広がっていた。

 

「…アンデッドよ。間違いなく最上位の。」

 

 ギリっと唇をかみ締めるように、アクアさんが呟く。

 

 ただのアンデッドだと言うのなら、アクアさんはあんな顔はしない。そう、此れは間違いなくあたしたちの危機だ。

 

「はっ!?そういえば、ダスト!」

 

「……。」

 

 ダストは放心状態で固まっていた。

 

「ちょっと!しっかりしてよ!ダストー!!」

 

 

 

―――――――――…

 

 

 

 

 <ダクネス視点>

 

 今回もカズマの作戦通りになると思っていた。事実、ハンス戦は終始有利に進められ、安定していた。

 

 だが、此れはどういうことなのだ!?何故此処に奴がいる!?

 

「ベルディア!!」

 

 私がそう叫ぶと、ベルディアはゆっくりと立ち上がった。

 

「…誰かと思えば、あの時の女騎士か。ほう?見違えたな。」

 

「何故お前が此処に居る!?」

 

 私の問い掛けに、ベルディアは周囲…そして己の肉体を見た。

 

「…成程、どうやら無念が強かったようだ。それでハンスに引っ張られたのだろう。」

 

 ベルディアからしても意外な事だったらしい。だが、戦う気があるというのであれば!

 

「貴様に敵意はあるのか?」

 

 私がそう問い掛けると、ベルディアは暫し腕を組み。

 

「その様だ。」

 

 なんとも曖昧な答えを返してくる。だが、分かった事がある。奴はハンスに利用されているという事だろう。

 

「…下がっていろ。」

 

 ベルディアはただでさえ強敵だ。しかも奴の体は…。

 

 ガキィ!!

 

 私、テイラー、そしてミツルギが目の前に現れた”それぞれ”を相手取る。私達で無ければまともに打ち合えないからだ。

 

 カズマはめぐみんを背負っている。全体指揮と魔法の援護ぐらいしか期待出来ないだろう。

 

 他のメンバーは補助にしか回れない、だが、其の中でもベルディアだけは相手にしない方がいい。それだけ危険なんだ!

 

 以前戦った時は、私、カズマ、ミツルギ、テイラーの4人掛かりでも歯が立たなかった。

勿論私達も成長はしている。だが、余計な手出しはやはり危険を伴う。ならば、私が押さえ込むしかない!

 

「どうした、ベルディア!其の程度か!?」

 

「ふん!流石にこの体では、本来の力なんて出せんわ!だが、貴様との再戦は嬉しく思うぞ!」

 

 以前はどうやっても追いつけないような力を持っていたベルディアだが、如何せん今の体は作りが悪すぎる。

 

「私としては、本来の力を持った貴様と戦いたかったがな!この程度では気持ちよくない!」

 

「お前相変わらずだな!!」

 

 ベルディアの体はハンスの体の一部で作られている。当然スライムの体だ、動きは遅い。

厄介なのは当初よりは弱体化している様だが毒を持っているということか。だが、この程度の毒ならば問題はない!

むしろピリピリして気持ち良いぐらいだ!

 

 

 

 

 <ベルディア視点>

 

 嘗ての俺はテレポートを利用した奇襲によって、鎧を叩き壊され其の上で馬鹿みたいな威力の魔法を連発された。

 

 いや、マジで洒落にならんかったぞ!?ぶっちゃけ、神聖魔法を食らわなくてもあのまま力尽きていただろうし。

 

 あの戦いは確かに楽しめたが、やはり俺も騎士の端くれ、どうせ散るのなら剣での戦いで決めたかった。

 

 あいつらマジで容赦なく魔法を叩き込みやがって…。

 

 そんな無念の気持ちが、俺をこの世に留まらせたのだろう。いや、多分俺の本体は完全に浄化されている。あの状態で最上位の浄化魔法を食らったのだ。消滅しない方が可笑しい。

 

 つまり、今の俺はベルディアの残留思念に過ぎないのであろう。だが、其れが如何したというのだ。

 

「ちぃっ!」

 

「くぅっ、やりおる!」

 

 勝負の行方がどうなろうとも、俺は今度こそ消滅する事だろう。ならば、俺の望みは!

 

「どうした!?貴様の武は其の程度か!今のままでは俺を倒す事は出来ぬぞ!」

 

 俺はそう叫び、女騎士を挑発する。

 

 だが、此れは、俺の強がりだ。実際には何度も切られ、ダメージを重ねて行っている。このまま行けばきっと俺が倒れる方がはやいだろう。

 

 女騎士は憤慨した様に、力強く俺に刃を叩きつける。勿論受け止めてはいたが、衝撃で体全体にダメージが入る。

 

 悪くは無いが、俺に残された時間は少ないらしい。ならば

 

 俺達は一度距離を取り、戦いを仕切りなおす。そして、其のタイミングで女騎士に支援魔法が飛んだのを確認した。

 

「勝負だ!」

 

……

 

…………

 

 

 

 <ダクネス視点>

 

「くっ!」

 

 私はベルディアと何度打ち合ったのか…、やはりこの男は強い!

 

 何時までも打ち合っていたい物だが、私としても此処で何時までも足止めを受けているわけには行かない!

 

 ガキィッ!!

 

「なっ!?」

 

 くっ、此処で愛剣が折れてしまうとは!?

 

「ダクネス!使え!!」

 

 カズマが、私に自分の愛刀…、ちゅんちゅん丸を投げる。其れを受け取った私は刀を引き抜いた。

 

「ほう…。」

 

 ベルディアが感心した様な声を上げる。

 

「だが、付与されているとはいえ、その様な細い剣では、俺は倒せぬぞ!」

 

「どうかな?試してみるとしよう!」

 

 カズマのちゅんちゅん丸は、そこらの剣とは一線を画する。そう、魔剣に引けを取らないのだ! 

 

「…見事!」

 

 何時も使っている剣より、格段に軽かったからなのか、あっさりベルディアを切り裂いてしまい、私自身驚いていた。

 

「ベルディア!貴様、わざとか!?」

 

「そんな訳ないだろう、俺はこれでも元騎士なんだぞ?…此れはお前との戦いの結果だ。」

 

 そう答えるベルディアを改めて見ると、所々再生出来ておらず、満身創痍だった事に気付いた。

 

「…礼を言う。」

 

「何を?」

 

「この様な形で復活したとはいえ、最後は武人として果てる事が出来る。だから、俺は満足している。」

 

「ベルディア…。」

 

「ふん、そんな顔をするな、お前とは敵同士なのだぞ!」

 

 そう言うベルディアは半分以上消滅している。カズマの奴ちゅんちゅん丸に退魔魔法を付与していたみたいだな。

 

「さあ、終らせてくれ。」

 

「…分かった、さらばだ、ベルディア。貴様のような強敵に出会えて嬉しく思うぞ!」

 

 私の言葉に、ベルディアはふっと笑い、そのまま昇天していった。

 




フィオ      作中年齢14歳(うちの子設定)

 魔剣の勇者として名高いミツルギ氏の元、かつて王都で活躍していた冒険者で職業はシーフ。
 現在はベルゼルグ王国屈指の魔王軍討伐部隊、アクセル軍(仮称)に名前を連ねている。

 レベルは39とメンバーの中では上位組。

 総司令官であるカズマ氏とは当初不仲だった様で、アクセルの町で決闘騒ぎにまで発展したらしい。実際に決闘をしたのはミツルギ氏だが。

 以前の性格は少々ヒステリックであり、周りに噛み付くような少女だったらしい。

 最近はその様な状態を見る事もなく、取材した著者からすると常識人の様に思えた。が、周りの話では昔は酷かったらしい。

 容姿に関しては、若干丸みを帯びた女性らしい体格で、画面の向こう側にいる編集長は抱き心地が良さそうだと言っている。編集長はそのうち捕まるかもしれん。

 恋愛面の噂ではミツルギ氏にご執心の様だ。…が、ミツルギ氏は其の思いにまったく気付かない事から彼女が不憫でならない。

 交友関係では、仲間のクレメア嬢と仲が良く、最近ではアクア嬢とも仲が良いと噂されている。飲み仲間なんだそうだ。

 彼女の今後の活躍にも期待していきたい!                 アクセル編集部
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