このすば カズマが冷静で少し大人な対応ができていたら。   作:如月空

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今回は少し短めです。


再会

何処かのソードマスターがクエストを絶滅させてから一週間。

 

一昨日くらいからようやく、クエストが増えだして俺達にもクエストが回ってきた。

クエストの数が極端に少ないため、ギルドの人が各パーティーに振り分けている。

今回俺達の担当になったのは初心者殺しの討伐任務。

そいつはその名のとおり、弱い魔物を餌に駆け出しの冒険者を刈り取る狡猾なモンスターだった。

今回はゴブリンの巣の周辺に出るらしく、最近つるんでいるテイラー達との合同であたることになった。

 

その道中

 

「カズマ、今回はどんな作戦で行くんだ?」

 

テイラーの質問に

 

「…初心者殺しの実力はどんなものなんだ?大型の猫のような魔物と聞いたけど。」

 

牙を持つ獰猛な猫科の魔獣。イメージされるのはサーベルタイガーだ。

そんな猛獣と真正面からやり合えるものなのか?

 

「カズマの支援があれば、少しは抑えられると思うがその間にやれないか?」

 

「…初級コンボの目潰しか。フラッシュもしくはパラライズ、後はバインドか…

どれかが通ればめぐみんで終わると思うんだけど。」

 

「カズマカズマ。上級魔法はどうです?」

 

当たれば倒せるだろうけど、制御がまだいまいちだ。

 

「正直自信ないな。手元をミスればテイラーが危ない。」

 

「…やはり、無力化が最善だな…」

 

「ねぇねぇ、キースとカズマで遠距離から狙撃するのは?」

 

横からリーンが意見を出す。それにはテイラーが

 

「無理だろうな。初心者殺しは探知範囲が広いと聞く。多分鼻が利くんだろうな。」

 

感知されれば、素早い初心者殺しに当てるのは至難という話だ。

最悪の事態も想定し、無力化が出来なかった場合はめぐみんたち3人を先に町に転送し、

その後に、俺とテイラーがテレポートで撤退するという作戦を立てた

 

「あの山か?」

 

「ああ、そうだ。隊列を組みなおそう。」

 

山の麓にやってきた。俺達は隊列を組みなおし作戦を確認していると―――

 

「!!…感知スキルに反応があった。数は一つ。強い個体だ…」

 

俺の言葉で全員に緊張が走り、めぐみんが

 

「どうしますか?カズマ…」

 

不安げに聞いてくる。

 

「一旦引くぞ。テイラー以外の4人で潜伏!テイラーは相手を引き付けておいてくれ!」

 

「わかりました!」「「「わかった!」」」

 

3人が後方に下がりテイラーは盾を構える。

 

「『パワード!』」「『プロテクション!』」

 

テイラーに支援スキルを掛けて、3人の元へ下がる。

テレポートの位置登録を済ませ、潜伏して敵を待つ。

 

「……!!来るぞ!」

 

「『デコイ!!』」

 

俺の声に合わせるようにテイラーがデコイを発動させる。そこに大型の獣が現れた!

全長はゆうに3メートルはあるだろう。獰猛な猛獣がテイラーに牙をむく。

 

「こい!!毛だるまがああ!!!」

 

テイラーが叫ぶ!

 

「『クリエイトアース』」

 

俺は少量の砂を握り、初心者殺しに気づかれないように移動する。

テイラーは初心者殺しの一撃を受けて、吹き飛ばされつつも地面を踏みしめ相手を睨む。

 

「…こい!!」

 

テイラーの挑発に乗るように初心者殺しがテイラーに飛び掛り――

 

「『ウインドブレス!!』」

 

「ギャン!」

 

横合いから来た、俺の目潰しを思いっきり食らっていた。

 

「テイラー!…『テレポート!』」

 

テイラーの手を掴み、俺とテイラーが後方に離脱する――

 

「『エクスプロージョン!』」

 

テレポートからの爆裂魔法。定番になった、俺とめぐみんの連携が決まる。

 

「ふふふ、やりましたよ!カズマ!!初心者殺し討伐です!!」

 

リーンに支えられてプルプルしながら、めぐみんは冒険者カードを見せてくる。

 

「ナイスだ!めぐみん!! テイラーもお疲れ!!…怪我はしなかったか?」

 

めぐみんにサムズアップしながら、テイラーに声を掛ける。

 

「ああ、少し痺れてはいるがダメージはない。少し休憩すれば問題なく動けるだろう。」

 

「…なぁ、リーン俺達役に立ってないんじゃないか?」

 

キースが横にいるリーンに話しかける。

 

「いいじゃない。それを言うなら前回はキース…大分活躍していたでしょ?」

 

そんな会話の中で俺はめぐみんをリーンから受け取り――

 

「…よっと。んじゃ、この後のゴブリンは任せたわ。俺めぐみん背負っているから。」

 

めぐみんを背負いながら二人に言った。

 

「よっしゃ!まかせろ!」

 

気合十分なキースと

 

「あー、でも敵感知はお願いね。」

 

とこちらに言ってくるリーン。

少し休憩して、テイラーが動けるようになったので移動を開始する。

 

「確認だ、ゴブリンの方だが目撃されたのはこの山道を登り、ちょっと下った所らしい。

山道の脇にでもゴブリンが住み易そうな洞窟でもあるのかも知れないという話だ。」

 

とテイラーが情報のおさらいをする。

 

「よっし!カズマ達ばかりに活躍されっぱなしじゃ、こっちもつまらないからな!気合入れるぜ!」

 

「おう、頑張ってくれよな。キース。」

 

話をしながら山道を進んでいると、かなりの数が敵感知にひっかかる。

 

「…ちょっと待て!なんかすごい数の反応があるぞ。」

 

「すごい数っつっても所詮はゴブリンだろ?任せろって!」

 

いや、アーチャーが先行するなよ!

俺達も慌てて追いかける。

 

「ちょっと!キース!この間のジャイアントトードみたいなのもあるんだから慎重にやろうよ!」

 

リーンが、非難の声を上げるが

 

「なんだ!こりゃあ!!」

 

先行していたキースが大声を上げた。

追いついたテイラーも

 

「うおっ!何だあの数!?50匹はいるぞ!!」

 

「嘘だろ!ゴブリンなんて普通20匹もいたら異常だろ!」

 

「だから言ったじゃん!慎重にやろうって!」

 

そこへ遅れて俺達も合流する。

 

「!弓使いがいる!キース先に排除しろ!」

 

俺はキースに叫ぶ!

 

「う、あ、任せろ!!『狙撃!』」

 

動転していた状態をどうにか落ち着かせ攻撃を開始する。

 

「『ウインドカーテン!』」

 

弓使いがいるという俺の言葉を聞いていち早く、防護魔法を唱えるリーン。

 

「あとは迎撃だ!気合を入れろ!」

 

テイラーが喝を飛ばす。

そこへ流れ込もうとしている子鬼達に

 

「『クリエイトウォーター!!』」「『フリーズ!!』」

 

即席のスケートリンクを提供した。

 

「ナイスだ!カズマ!!いくぞ!キース!リーン!」

 

3人がゴブリンを討伐していく。めぐみんに肩を貸して、その様子を見守っていた。

 

「地面を凍結させるとは考えましたね。魔法の組み合わせで色々出来るんですね。」

 

めぐみんは興味深そうに感想を述べている。

 

「他にも組み合わせってないものかなー?」

 

「そうですね。上級魔法同士は魔力消費が酷くなりますから考えるならまずは中級あたりですか…」

 

俺達が思案していると、一匹のゴブリンがヨタヨタと氷の上を歩いてきた。

ライトニングで倒そうと思って手をかざし…一つ浮かんだ。

 

「『ライトニング!』」「『バインド!』」

 

俺の放ったライトニングがゴブリンに絡みついた。まさか出来るとは…

 

「…えぐいこと考えますね、カズマ…」

 

めぐみんがドン引きしていた。

 

「ドン引きやめろください!……なぁめぐみん?カースドライトニングでも出来ると思うか?」

 

俺の質問にめぐみんは顔を逸らした。

 

 

――――――…

 

 

 

 

 

テイラー達が残敵を殲滅させ、特に問題も起こらずにギルドに帰ってきた。

 

「では、ゴブリン及び初心者殺しの討伐報酬300万エリスです。」

 

これから用事があるというテイラー達に180万エリスを渡す。

 

「悪いな、じゃあまたな!カズマ、めぐみん!」

 

「おつかれさん!」

 

「またねー!」

 

「おう、お疲れー!」

 

3人に別れを告げて遅めの昼食をとる。

 

「カズマカズマ!今日は肉にしましょう!肉です!」

 

「おう、じゃあ、久しぶりにがっつりいくか!」

 

俺達が肉祭りをしていると、ギルドに二人の美少女が入ってくる。

一人は見覚えがあり、もう一人は特徴的な姿からめぐみんと同じ紅魔族だろうと思った。

二人は周りを見回し…俺達を見ると、まっすぐこちらに向かってきた…

 

「やっと、見つけたわ!カズマ!」

 

と言う水色の髪の美少女と、その横で息をすぅっと吸って

 

「ひさしぶりね、めぐみん! 約束どおり決着をつけるために修行をしてきたわ。さあ、勝負よ!」

 

という紅魔族の美少女に

 

「「…どちら様でしょう?」」

 

 

――――――…

 

 

 

 

 

 

「なんでよおお!カズマ私のこと本当に忘れちゃったの!?」

 

いや、心当たりはあるんだけど、あの時の女神?なんて言えるわけねーし。

めぐみんに絡んでいる子も涙目でめぐみんに掴みかかってるし…

 

「ねえ、めぐみん、本当に私のコト忘れちゃったの!?

ホラ!テストでも何でもあなたに勝負を挑んだら対価が必要とか言って…

弁当を賭けるなら受けて立つとか言って…よく私のお弁当を巻き上げてたじゃない!」

 

「…お前そんなことしてたの?」

 

めぐみんを見るとプイって顔を逸らされた。

 

「カズマさああん!私の話も聞いてよおお!」

 

「あー、わかったわかった!順番にやってくれ!」

 

いつの間にか俺達を中心に人だかりが出来ていた。

順番にというと二人はお互いに譲り合いをし始めた。

結局、話し始めたのは数分後で相手の説得に疲れたらしい”アクア”が話し始める。

 

「カズマさん…私のこと本当に覚えてないの?ほら天界で会った…」

 

「……なんでお前がここにいるんだよ…」

 

軽く頭痛がしてきた。あの時散々煽ってきたので俺も存分にやり返している。

そんな相手が尋ねてきたのは穏やかではない。

 

「なんだ、覚えているんじゃない。嫌ねーカズマさんも人が悪いんだから!」

 

「…で、俺に文句を言うために来たのか?」

 

「…まぁ、文句がないわけじゃないけど。それはもう良いわ。それより貴方にお願いがあるのよ!」

 

こいつの以前の印象からして、絶対に文句を言ってくると思ってたんだけど…どういうことだ?

 

「…出来る範囲でなら聞くけど?」

 

俺の言葉を聞いてアクアはぱあっと表情を明るくして

 

「お願いします!私達をパーティーに入れてください!」

 

と言ってアクアが頭を下げてきた。

え?俺が困惑しているとめぐみんも更にアクアの連れの子も驚愕して

 

「ふぇ!?アクアさん!えーと…その…不束者ですがお願いします…」

 

連れの子も深々と頭を下げてきた。そんな二人に

 

「お断りします。」

 

とばっさりめぐみんは切り捨てた。

 

「いや、事情も聞かずに即断するなよ、めぐみん。」

 

と言ってめぐみんに軽くチョップを入れる

 

「痛いじゃないですか!大体名乗りもしないで私に対する風評被害を撒き散らせている相手ですよ!?」

 

多分、これは風評被害じゃねーな。

 

「な、なのり…」

 

紅魔族の子が縮こまってしまった。それを見たアクアは何を思いついたのか、急に立ち上がり―

 

「我が名はアクアー!最高のアークプリーストにして、水を司る者!神聖魔法を極めし者ー!」

 

ノリノリで紅魔族風の名乗りを上げていた。

それを見た紅魔族二人がプルプルと震え―ー

 

「我が名はめぐみん!紅魔族随一の天才アークウィザードにして最強の攻撃魔法爆裂魔法を操りし者!!」

 

めぐみんはマントをばさりと翻しポーズを決めた。

めぐみんとアクアから期待の視線が送られてくる…

しょうがねえなぁ! 俺はめぐみんと対になるようにポーズを決め――

 

「我が名はカズマ!最弱の冒険者にして、あらゆるスキルを操りし者!」

 

恥ずかしいけど3人でやっていれば多少は緩和される。3人の視線が残る一人に向けられる。

 

「我が名はゆんゆん!アークウィザードにして、上級魔法を操る者!やがては紅魔族の長になる者!」

 

恥ずかしいのかプルプルしながら自己紹介してくれた。

 

「と、いうわけで彼女の名前はゆんゆん。紅魔の里にある学校の同期です。」

 

淡々と説明を始めるめぐみん、こいつも良い性格しているな。

覚えているんじゃないと言うゆんゆんを無視し、涼しい顔をしているめぐみん。

 

「それで、どうしたんだよアクア?」

 

「うん、それがね――」

 

アクアが事情を説明する。この世界に来る事になったのは自業自得だと思ったが

その後のことが不憫すぎて流石にかわいそうだと思ってしまった。

アクアは口調は変わらないものの、天界で会った時のイメージと違っていた。

アクアを連れ回したという、俺の同郷に怒りが沸く――

 

「成程。その男が私達に散々迷惑掛けた人なのですね。」

 

「ん?ああそういうことか。その時に必死に止めてたお嬢様っていうのはお前かアクア。」

 

アクアにだけではなく、俺達アクセルの冒険者に迷惑を掛けた奴だったらしい。

 

「えっと?何のこと?」

 

「ここでそいつはクエストを請けまくってギルドの人に注意されていたんだろ?」

 

「あー、そんなこともあったわね。あの人、全然人の話を聞いてくれなくてね…」

 

そして、アクアを危険な目にあわせた挙句、無一文のアクアを放置してどこかに消えたらしい。

アクアが見せてきた手紙を読むと、怒りを通り越して呆れてくる…

 

「それで、カズマ…私達とパーティーを組んでもらえますか?」

 

俺はめぐみんと顔を見合わせる。

 

「…カズマが決めてください。私はカズマに従いますよ。」

 

ゆんゆんはめぐみんの旧友みたいだし。さっきの話を聞いた後じゃアクアを放置するのも寝覚めが悪い

 

「…しょうがねぇなあ。アクア、ゆんゆん。クエストの時はちゃんと指示に従えよ?」

 

「わかったわ!」「わかりました!」

 

俺とめぐみんだけだったパーティーに、新たに二人の仲間が加わった。

 




ライトニング・バインドって本当に出来たらかなりえぐそうですよね。

何故か名乗り上げが4人に増えてしまった。
ダクネスは出来るかな?ダクネスの羞恥心の基準って特殊ですよね。
そして、うちのメンバーから散々言われてしまっている、ミツルギさん。
再会時にめぐみんに爆裂魔法撃たれないと良いですね…

次回も構想だけは出来上がりました。なるべく早めに出したいと思います。

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