『転生特典はガチャ~最高で最強のチームを作る~』   作:ドラゴンネスト

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四十三話目

「な、なんだよ、これは……」

 

その日、空から照らす熱い太陽の輝きとは対照的に兵藤一誠の心は絶望の闇に沈んでいた。

この世界にファントムとか居たら確実に生み出して居ただろうと言うレベルで。

 

「どうやら、うまくいった様だな……」

 

そんなorzな姿で項垂れているイッセーを眺めながら、実験結果を確かめている科学者の様な目で見下ろし、その実行犯である四季はそう呟く。

 

「天地ぃ、お前の仕業か!? なんで……なんでこんな酷いことをするんだよ!?」

 

「当然だろう? オレがお前に相応の対処をするのは」

 

悲しみと怒りを抱いたイッセーの言葉に四季はそんなイッセーを見下ろしながら何処までも冷酷に言葉を返す。

 

「記憶出来ない、見えない……女の子の水着姿が!?」

 

「こっちの女子三人からお前に水着を見られたく無い、記憶されたく無いって言われたんだよ」

 

そこに誰がいるのかは分かるが、どんな水着を着ているのかが分からないのだ。生徒会から渡されて要着用と言われた四季制作の水中眼鏡を着けてから。

 

四季にしてみればルパンレンジャーの変装用のアイマスクの認識阻害機能を応用して作った即席の水中眼鏡だが、意外と生徒会の女性陣には好評であった。

 

今のイッセーの目には其処に誰がいるのかは分かってもどんな水着を着用しているのかは分からない。

ついでに言うと今後プールの授業の際にはイッセーにはこのゴーグルの着用を義務付けようか、いっそ学園生活の間は着けさせようとも話し合われたほどだ。

 

なお、だったら外せばいいと思うのは当然の事なので一度つけると最低三時間は外れないようにしてもいる。

 

「……終わった。オレの夏は終わった……部長の、朱乃さんの、クリスちゃんの水着姿が……」

 

「随分短い夏だったな」

 

そもそも女の子の水着姿を見ることがイッセーの夏ならば、クリス以外の二人の水着姿を見る機会さえも、表向きには罰が与えられない代わりの眷属教育で夏休みは消えているのだから、正真正銘此処でイッセーの夏は終わったと言って良い。

 

「効果は少なくともプールを使ってる間は続く上に、効果の持続時間の間は外れないようにもしてある」

 

外そうともがいた挙句に痛みでのたうち回っているイッセーを眺めながらそう宣言する。

 

「チクショー!!!」

 

イッセーの絶叫が夏の日差しの下に響き渡るのだった。

なお、水中眼鏡は木場が聖魔剣で切らないかと模索していたが、頭を絞め殺さんばかりの勢いでフィットしている為、下手に切ったらイッセーにも怪我させてしまいそうで出来なかった。リアスの魔力も同様である。

 

完全に密着させることで着用者を盾に破壊を防ぐのも四季の設計の一つだ。なお、外れないようにもなっているがそちらもプールから帰る頃には解除されるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、リアス達からの接触禁止は飽くまで悪魔としてのもの。変に抜け道を探されても迷惑なのでわかりやすい抜け道を用意しておいたわけだ。

 

そんな中で契約前から決まっていた合同でのプール掃除。

ソーナ自体、リアスと四季の賭けを知らなかったこともあるが、手の空いてる部活がオカ研と出来たばかりの軽音部しか無かったのもある。

 

イッセーにとっては夏は冥界のグレモリー家に於いて勝手な行動をした木場とともに眷属教育を基礎から学ばされることとなっている為、学校指定のものではないリアス達の水着姿を目にする唯一のチャンスだったのだ。

しかも、今回は軽音部との合同。一年生の美少女である詩乃と雫、三年生に転校してきた小柄だがスタイル抜群のクリスに二年生に転校して来たゼノヴィアと合法的に彼女達の水着姿を拝めるのならば神でも魔王にでも祈りを捧げていいと思っていた。

 

「うおおおおおおおおおおおおおお!」

 

掃除が終わった後はオカ研と軽音部が優先的に使用できるプール掃除。そんな訳でイッセーは全力でプール掃除をしていた。

 

「張り切ってるな……」

 

もうイッセー一人で良いのではと思えるペースでブラシがけを物凄い速さで行なっている彼を見ながら呆れた様子で呟くのは四季だった。

彼が張り切る理由はわかる。だが、その希望は近い未来に砕かれる事が分かっているだけに憐れみさえ感じてしまうのだ。

 

(拝啓、天国のお祖父様へ。初夏となりました。爛々と輝く太陽は暖かな陽光を届けてくれます。オレはこれから訪れる幸福に涙が止まりません)

 

歓喜の涙を流しながらプール掃除を終え水着に着替えたイッセーは心の中でそんな事を呟いていた。

 

プール掃除は終わり、後は優先的に使えるプールで自分達が遊ぶ時間だ。

詩乃達も折角掃除したのだからと水着に着替えてプールを楽しむとの事に、我が身に起こった幸運に感謝していた。

 

イッセーへの軽音部の女性陣への接触禁止の契約だが、この状況なら仕方ない。視界に入ってしまう程度なら問題ない。そう考えながら自身の幸運に感謝する。

 

(オレ、生きてて良かった。悪いな、松田、元浜。お前達の分まで皆んなの水着姿を堪能させて貰うぜ)

 

そう考えながらプールを使う間は着用する様にと生徒会から渡された水中眼鏡を着ける。

本人はそれを普通の水中メガネと勘違いして、ラッキーとばかりに受け取ったのだが。

 

「あれ?」

 

水着に着替えた詩乃が更衣室から出て来た時に初めて異変に気が付いた。

 

「な、なんだよ……? なんなんだよ、これはぁ!?」

 

そこに誰がいるのかは分かる。だが、見えていない、認識出来ない。

 

「ウソだろおおおおおおおおぉ!!! 誰かウソだって言ってくれよぉ!!!」

 

残酷だがそれは現実の光景である。

初夏の日差しの下にイッセーの絶望の叫びが響き渡るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ダメだ、見えない、部長のも、朱乃さんのも、記憶出来ない」

 

そう、詩乃達だけでなく四季制作の水中メガネを通したイッセーの目には、リアスや朱乃の水着姿もイッセーには見えていなかった。

 

爛々と輝く日差しの下、イッセーの周辺だけが絶望の闇に捕らわれていた。

 

「外してくれ、外してくれよぉー!!!」

 

「生徒会から許可は貰ってるから文句はそっちに言ってくれ」

 

幽鬼の如く四季に縋り付きながらそれを外す事を懇願するイッセーだが、四季は取り合わない。

そう、イッセーにその水中メガネを渡したのは飽くまで生徒会側。使わせるか否かの判断はソーナ達生徒会側に委ねたのだ。

 

「安心しろ、飽くまで水着姿の女子を認識出来なくなるだけだから、プールから出れば時間切れまで支障はない」

 

「支障ありまくりだぁ!」

 

どっちにしても三時間経たなきゃ外れないように作ってあるので四季に懇願したところで意味は無い。

 

後は物理的な破壊だけだが、実はかなり丈夫に作ってあるので一、二回の倍加した力で全力で殴らなければ破壊出来ない。……顔面に密着した物を。

 

なお、リアスの滅びの魔力や木場の魔剣での破壊を防ぐ為の対策でもあったりする。頭の上に乗せた薄布一枚だけを傷付けずに切る事は木場のレベルでは無理だろうとの判断だ。

 

唯一の例外は四季の雪蓮掌と巫炎による急激な温度変化を利用した破壊なのだが、それについては教える義理もないので黙っていた。

 

「お兄さん、ナイス」

 

「これで安心して遊べるな」

 

「ああ」

 

雫とクリスからの称賛の声にそう答える。水の中からイッセーに覗かれてると思うと落ち着いて泳いでいられないと言うのがクリスの意見だ。

記憶と認識が出来なければそれも問題ないだろう。仮に自分の視力に譲渡したとしても認識と記憶の阻害に対しては意味は無い。

 

「イッセーさん、大丈夫ですか!?」

 

「イッセー、しっかりして!」

 

真っ白に燃え尽きたイッセーに向かって安否確認をしているアーシアとリアスだが、イッセーに反応はない。

イッセーの夏は過去最短で終焉の時を迎えたのだった。

次に追加して欲しいキャラは(第2回)?(選ばれなかった人は次回持ち越し)

  • 切姫夜架(最弱無敗の神装機竜)
  • 長谷川千雨(魔法先生ネギま)
  • 更識楯無(インフィニット・ストラトス)
  • ユキ(プロジェクト東京ドールズ)

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