大通りに並ぶ施設の中で比較的大きな2階建ての乳白色に塗られた住宅の玄関先にΨ形の上に○を重ねた刺繍が施された旗が掲げられている。扉を守る様に金属鎧を纏った兵士が常駐しており、街の様子と平和を乱す者がいないか目を光らすのが彼の職務だ。しかし普段とは違って観察している暇はなく周りの人だかりからそれぞれ飛んでくる質問に何度も繰り返したのであろう、若干苛立ちが混じった声で大きく答える。
「パリアノを統治し導いてきた我等の王ブレイゴ様はかつての盟友セルヴァラの凶刃によって倒れた!!しかし!カストーディの御手により肉体の消滅は免れなかったが魂を残すことには成功した!したがってブレイゴ様は引き続きパリアノに存在し王位として君臨し続ける!!セルヴァラは護衛隊長のアドリアナ様が捕らえ地下牢にて勾留しており動機については不明である!これ以上は話せることはないぞさあ、散った!散った!!」
民衆はそれでもなにか他に隠していることがあるのではと離れようとはしない。それどころか兵士に飛んでくる言葉の矢が増えていく始末だ。人だかりから都市の事や有名な人物、今回の事件に対する住民の当てずっぽうな陰謀論等を聞き集めていたモモンガとぶんぶん丸の二人は兵士の言葉を聞き終わると目立たぬようにそこから離れる。
「早速事件が起きてますね」
「ちょっと休憩したいので宿屋でもとりましょうか」
ユグドラシルではこういった都市の攻略をしていく場合リスタート地点を宿屋等の
宿屋を見つけ部屋を取りリスポーン地点の設定が終わりモモンガがぶんぶん丸に向かい
「主要キャラクターだと思われるのを中心に整理しましょう、現在の統治者は王であるブレイゴで間違いなさそうですね」
「肉体を失っても魂のみで活動出来るってことは人間から幽霊に種族変更でもしたんですかね?」
「人間種から異形種にクラスチェンジですか?そんなことが可能なカストーディという集団も気になります。何らかのアイテムで行ったとしたらちょっと見てみたいですね」
モモンガが冗談混じりに逆もできるなら私も人間になれるかもしれませんしとおどける。
「そしてブレイゴを襲ったセルヴァラはブレイゴの盟友とも呼ばれていたのに何故ブレイゴを殺したのか?」
「¨かつての盟友¨って兵士が言ってましたしなにか確執でもあったのかもしれませんね」
「護衛隊長のアドリアナはどうでしょうかね?」
「う~ん、今の所怪しいところは聴かなかったんですよね。王に忠誠を誓う職務に忠実な優しい騎士って民衆の評価も高いです。ですから今回のイベントタイトルに書いてある王位争奪からは遠いと思うんですよ」
「王位を守ってるキャラですしね。男性だったらさぞ女にモテたでしょうねぇ」
住民も似たようなこと喋ってましたよとぶんぶん丸は返したあと今回の事件との関係はわかりませんがと前置きをして
「人相の悪い男に¨お前の親方がなんかしたのかもな¨って笑いながら言われました。親方?と聞き返したら¨あんたゴブリンだからてっきりグレンゾ親方の小飼かと思ったよ¨と」
「グレンゾ親方とはどんなキャラクターなんです?」
「王宮にある地下牢の管理人で多くのゴブリンを束ねていて犯罪者にも精通しているゴブリンと教えてくれました」
モモンガは嬉しそうに
「見つけましたね!それ前情報で出てたゴブリンのNPCだと思いますよ!」
「自分もそう思います。でも地下牢の管理人って微妙なキャラクターですけどね」
とりあえずグレンゾを探しだして話をしてみよう!と目標をたてた二人は宿屋を発ち太陽が落ち始めオレンジ色の光が差し込んでいる街に戻っていった。