あれから暫く探し回ったが見付からずこれからどうしようかと悩んでいたところに
『ぶんぶん丸さん、前言ってたお目当てのアイテム見つけましたよ!』
送ってきてくれたのはフレンドで師匠でもあるアインズウールゴウンのギルドマスターであるモモンガさんだ。
『ホントですか!わざわざありがとう御座います。いや~今街の露店通りにいるんですけどここにもなくって諦めようかと思ってた所でしたので嬉しいです!』
『ではそちらに今から向かいますので待ってて下さいね』
『了解です、正門前にて待ってます。』
「お待たせしました、要望のアイテムはこれで間違いなかったですよね?」
モモンガさんからアイテム交換のアイコンが出てきたので確認する
「はい!これで合ってます!ではこちらも交換のアイテム渡しますので確認してください」
「はい、確認しました。でもホントにいいんですか、
「いいんですよ、無用の長物でしたし旗印の方が自分には価値がありますから。これで最後の華を咲かせられます。」
「あれホントにやるんですか!?」
「もちろん!モモンガさんが用意していた花火と一緒にドーンと御披露目しますので楽しみにしててくださいね。」
「おおぅ…、ではそれまで私は拠点にてギルドメンバーを待ってますので最後の時にまた会いましょう。」
そう言いながら冷や汗のアイコンのあとに笑顔アイコンを出したモモンガさんが
モモンガさんが転移するとそれじゃ自分は時間まで最後の思い出巡りでもしてますかとぶんぶん丸はユグドラシルの名所を巡り始めた。
(いや~色々あったなぁ、良いことも悪いことも今ではいい思い出だ)
ぶんぶん丸こと山田勇気がユグドラシルを始めたきっかけは自分のなりたいものになれるというアバターの自由度からであった。勇気はゴブリン
MTGとの出会いは勇気が幼い頃に祖父の家に遊びに行った際に倉庫の箱からたまたま見つけたものであった。祖父の親が若い頃に集めていたものらしく祖父も曾祖父と少しだけやったことがあったと言っていた。勇気も祖父に遊び方を簡単に習い一緒に遊んだのは楽しかったのを覚えている。その中でゴブリンデッキが気に入り、特にゴブリン
王冠を載せ邪悪でありながらも愛嬌を感じる笑顔、身長は高くなく、腹は出て足は短い。それにローブを羽織った姿は少年であった勇気になぜかヒットした。
その後MTGをやろうと調べてみたが残念ながら半世紀ほど前に電子販売が終了しており紙媒体に至っては1世紀も前に終了したいたので勇気の思いは不完全燃焼となった。
そんな気持ちも忘れ社会に揉まれている日常の昼休み、職場にあるTVでユグドラシルのCMが目に入った。
『今度のコラボはかつて全世界で楽しまれていたレトロゲームだ!ユグドラシルに迷い混んだプレインズウォーカーと協力して世界の未知を解き明かそう!!』
その後にMTGコラボ実施予定日が映りCMが終わった。それを一緒に見ていた部下がため息混じりに呟いた
「ユグドラシルも必死だねぇ。まあ、もうサービス開始して8~9年くらいたってるんだっけ?流石に他のゲームに人気は持っていかれるよなぁ。このコラボだって元ネタやったことあるやつなんて殆どいないだろうに。こんなのとしかコラボ出来ないってことはもう終わりが見えてきてるわ。」
それを聞いていた他の部下も相槌をしたり今ではこれが面白いんだよと別の話をしていたが自分にはまったく耳に入らず携帯端末でユグドラシルというゲームを調べていた。ただ一人、影の薄いほぼ話したことのない同僚のみが俯いていたのはその時は気にならなかった。
仕事が終わるとその足でゲーム機を買い、期待と不安の中で人生初のDMMORPGの世界へと飛び込んだ。
そこからコラボが始まる迄に上手くならねばと悪戦苦闘の日々を過ごし日夜ユグドラシルの事を考え行動していた。夢の中にまでユグドラシルが出てくるほどである。
しかし、このゲームは初心者に優しくはなく自分の理想であるビルドは組めていなかった。どうしたものかと職場の昼休みに頭を捻っているとユグドラシルのフィールド曲が聴こえてきた。
(あ~、幻聴まで聞こえてくるのはヤバイな。もうすぐ昼休み終わるし切り替えよう)
頭を振ってみたが音は鳴り止まず出所を探すと同僚の机の携帯端末からで丁度食事のゴミを捨てにいっており鳴り続けていたようだ。同僚が音に気付くと急いで手に取り取引先に謝りながら二言三言話すと通話を切りそのまま何とも言えない顔でこちらをチラ見してきた。
(これはもしかするのでは?)
伺うように話を切り出した。
「え~と、鈴木さんであってました?私同僚の山田なんですけど」
「はい、鈴木で合ってますよ。すいません昼休み中なのにうるさくしちゃって」
「いえいえ、取引先が自分勝手なのは分かってますからお構い無く。ってその話ではなくてですね」
「あ、はい。ではなくてというと?」
(頼むぞやっててくれ)
「もしかして鈴木さんってユグドラシルやってます?その着信音フィールド曲ですよね?」
鈴木さんは気まずそうに
「あ~~、はい。やってますよ。それがなにか?」
(ビンゴ!)
「それが最近私もやり始めたんですがなかなかビルド育成や攻略が上手くいかなくて悩んでいましてアドバイスしてもらえないかと思いまして」
すると警戒心をといたのかさっきまでの態度とは打って変わり
「そうなんですか、山田さんの種族は?どんなビルド構成をしたいと考えているんですか?攻略ということは欲しいアイテムに目星がついているんですか?私自身は異形種のロマンビルドですがフレンドにガチビルドもいますしある程度でしたら答えられると思いますよ」
(さっきまでと雰囲気変わりすぎだろ、何時もの鈴木さんは何処へ行ったんだよ。めっちゃハキハキ喋ってくるし自信に満ち溢れてる)
「あ、はい。種族はゴブリンでビルド構成は掴みきれてないところが多くておおまかにしか云えないんですがガチビルドではないと思います。欲しいアイテムはまだ特にないんですけどCMでやっていた次のコラボのアイテムや装備を中心にしていきたいと考えてます。」
「……なるほど、ゴブリンのロマンビルドですか。亜人種は正直畑違いですのでなんともいえませんが職業レベルのほうであればアドバイスはできると思いますよ。」
(亜人種はダメだったが光明は見えてきたぞ)
「それにしても次のコラボを中心とは、あれ私もよく知らないやつなんですよね。知ってそうな人はあまり来なくなってしまいましたし…。あれの元ネタご存知なんですか?」
「自分自身もストーリーは知らないんですけど元ネタで遊んだことはあってその中のカードの1つになりたいんですよ。だから元ネタであるコラボアイテム中心で揃えたいんですよね。」
「了解しました。私も金策目的でイベントには触れようと思ってましたので山田さんがいらないアイテムを譲って下さるのであればお手伝いしますよ」
(この人は神か)
「ありがとうございます、では個人用端末のアドレス教えてもらってもいいですか?色々聞きたいことありますので」
「構いませんよ、後で送っておきますね。」
ふと時刻を確認すると昼休みの終わり時間になっていた。
「了解です。昼休みも終わりましたので夜にでも連絡して大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です。では後程。」
鈴木さんは何事も無かったかのように仕事に戻っていった。
(いや~、過疎ゲーになりつつあるのに職場にまだやってる人がいるなんてついてるな。鈴木さんだから大したことないだろうけどアドバイス位は貰えるだろうし充分充分。)
そう考えながら仕事に戻る自分にはまだ鈴木さんのある意味本当の姿を知る由はなく。今考えると不敬極まりない思いであった。