五等分の…なんだって?   作:焼きそばの具

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屋台のたこ焼きが好きです
当たり外れ大きいけど…


第7話 花火大会

日曜日!それは学生にとって一週間のうちで最も楽しみな日。

何をしようと自由、二度寝をしようが、一日中漫画を読もうがゲームをしようが囲碁を打とうが自由。

そう、完全に自由が約束された日。それが日曜日なのだ。

 

それに、最近は気が付いたらいつもあの姉妹と一緒に居るような気がしてきていたところだ。

たまには1人でゆっくりと過ごしたいと思ってた…思ってたんだけど。

 

「御影さん!あっち行ってみませんか!楽しそうですよ!」

「ちょっと四葉さん!あまり離れすぎちゃだめだよ!」

「御影!あんたさっきの店に財布置き忘れてたわよ!」

「ご、ごめん二乃さん!ありがとう。」

「フータロー君、私疲れちゃった。おんぶしてくれない?」

「うるさい、自分で歩け一花。」

「キョーヘー。綿あめ欲しい。買いに行こ。」

「わかった、行こうか。」

「上杉さーん!らいはちゃん借りていきますねー!」

「お、おい四葉!」

「大丈夫だよお兄ちゃん!私が見てるからー!」

「祭りならフランクフルトは外せませんよね!私買って来ます!」

「五月さん!せめてポテトと焼きそば食べてからにしてよ!」

 

結局こうなっちゃうんだよなぁ…

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

時刻は数時間前までさかのぼる。

やっとやってきた待ちに待った日曜日。僕は盛大な二度寝をかましたため、目を覚ましたころにはすでに15時を過ぎていた。

初っ端からとんでもないやらかしである。僕は起き上がりながら自分を呪った。

1人暮らしだと好きなことを好きにやれるから気を使わなくていいのは楽なんだけど、こういう時に起こしてくれる同居人がいないのは少し不便に感じる。

 

今日は朝起きたら掃除と洗濯、カップ麺のストックがそろそろ切れるのでそれの補充の買い出しをした後に久々に趣味の囲碁を打ちにいくつもりだったんだけどこれじゃ台無しだ。

この時間だと掃除は無理だから洗濯だけして買い物に行った方がよさそうだな。そのあとは適当にネットで囲碁を打って積みゲーの消化をすればいいか。

と言うわけで、そう判断した僕は僕は現在洗濯物を干した後に外出して街の中をスーパーマーケットへ向けてトコトコと歩いていた。

 

「…それにしても、今日は浴衣を着ている人が多いな?この辺で何かあったっけ。」

 

いつもと違って浴衣を着た人でにぎわう街の様子を見て、僕はそんなことを漏らしていた。

何気なくスマホを取り出して調べてみると、どうやら今日は花火大会の当日のようだ。

 

「…あれ、花火大会って今日だったんだ。来週くらいだと思ってたんだけど。」

 

この街で花火大会をするということは知っていたけど、まさか今日がその当日だとは思わなかった。てっきり来週と勘違いしてしまっていたよ。

でも待てよ、花火大会ってことは屋台もたくさん出店しているはず。だったら今日はカップ麺じゃなくて屋台のものを食べるというのもいいかもしれない。

いつもいつもカップ麺ではやはり飽きちゃうからな…バリエーションが多いとはいえ、たまには別のものも食べたくなるのが人間の性だ。

 

「よし、じゃあ決まり!今日の夜は屋台の出し物にしよう!」

 

それにせっかくの日曜日だ。1人で思う存分屋台を回って遊ぶのもいい気分転換になるかもしれない。

そう考えると俄然テンションが上がってきた。やっぱりいくつになってもお祭りと言う行事には心躍らずにいられないよ。

じゃあそうと決まれば善は急げだ、僕は祭りの会場へ向かうために方向転換をした。

祭り会場までは大型のゲームセンターの近くを通れば良かったはず、ちょうどあの姉妹の家の近所とかだったはずだから道はもう覚えているしね。

 

「それじゃあ祭り会場に向けて…レッツゴー!」

「あーっ!御影さんじゃないですか!」

 

祭り会場へ向けて歩き出そうとした瞬間に、僕の後ろから超大きな聞き覚えのある声が聞こえてきた。

…これってもしかしなくてももしかするパターンの奴では。僕は油の切れたロボットの如くギチギチと首を後ろへ回す。

 

「やっぱり御影さんだ!おーい!」

 

すると、そこにはバッチリと決まった浴衣姿の四葉さん(多分)がこちらへ向けて手をブンブンと振っている光景があった。

四葉さんはそのままこちらへ向けてダッシュすると、僕の前でぴったりと停止した。

 

「わー、こんなところで会うなんて奇遇ですね!」

「そ、そうだね…ところでその浴衣はもしかして?」

「はい!私達、これからみんなで花火大会に行くんです!」

 

やっぱりか…と言うか、どうでもいいけど浴衣姿であんなに素早く走れるなら四葉さんで間違いないだろう。

顔同じだから誰か分からなかったけど…さすがはスポーツ万能と言ったところか。

 

「そうなんだ。浴衣、似合ってるね。四葉さんにぴったりだよ。」

「えへへー。そんなに褒められると照れちゃいます!」

 

四葉さんは黄緑色の浴衣を身にまとい、手首から黄色の巾着袋を下げていた。

元が美人なんだから似合わないわけがない。浴衣を着た四葉さんは雑誌に出てくるモデルよりも可愛くてきれいだった。

 

「って言うか君がいるなら当然他の皆も…」

「はい!いますよ!」

「ちょっと四葉!あんたいきなり走り出して何を…って、御影!?」

「あれ、キョーヘー君じゃん!」

「こんなところで何やってるのキョーヘー。」

 

僕が四葉さんと話し込んでいると、彼女の後ろから他の姉妹がぞろぞろとやってきた。

みんな四葉さんと同じくそれぞれがそれぞれの浴衣を身にまとっている。

美人姉妹が4人、目の前に並ぶ。しかも全員浴衣姿で普段とは全然違った雰囲気を醸し出していて。

僕はその雰囲気に圧倒されてしばし唖然と4人を見つめていた。

 

「こ、こんにちは…」

「こんにちはじゃないわよ!何であんたがここにいんのよ!」

「いや、買い物に行こうと思って出歩いてたんだよ。そしたら四葉さんと会ったもんだからさ。」

「ついつい声をかけちゃいました!あははー。」

 

それにしても、顔が同じで誰が誰か分かりにくいな…

多分蝶のリボンのついたウサギの浴衣が二乃さん。ヘッドホンを付けた水色の浴衣が三玖さん。何もつけてないのが一花さん。頭にリボンが四葉さんで間違いないだろうけど。

って言うか全員めっちゃ美人だしめっちゃかわいいんだけど。周囲からの視線が僕に突き刺さっている。やめてくれ、望んでこうなってるわけじゃないんだぞ。

 

「…あれ、そう言えば五月さんは?」

「五月ちゃんなら朝からフータロー君の家にお給料を払いに行ってるよ。」

「あ、そうなんだ。それで別行動なんだね。」

「…でもお給料を渡しに行っただけなのに遅い。どこで道草してるんだろ。」

「まぁ彼女にも予定とかあったんじゃないのかな?」

「かもね!五月ちゃんとは現地で合流する予定になってるからさー。」

 

スマホを触りながら一花さんはそう言った。

 

「そうだ!御影さん、この後暇ですか!?暇ですよね!?」

「え、まぁ暇だけど…」

「それじゃあ、私達と一緒に花火大会に行きませんか!」

 

四葉さんはめっちゃ目をキラキラさせながらそう言った。

 

「お、それいいね!女ばっかで男っ気がないと思ってたんだー。」

「はぁ!?私は嫌よ!なんでこんな奴と一緒に花火大会に行かなきゃいけないのよ!」

「キョーヘー、一緒に来るの?楽しくなりそう。」

 

反応は3者共に違っているが、どうやら3-1で多数決では僕が同行することに賛成ということになりそうだ。

うーん…今日は1人でのんびりしたかったんだけど、いつもみたいにこの子達とわいわい騒がしくお祭りに行くのも悪くないかもしれないな。

それに、美人の女の子に誘われてそれを断るなんて男なら出来るわけない。結果は最初から決まっている。

 

「分かった、一緒に行くよ。」

「本当ですか!?やったー!御影さんと一緒なら楽しくなりそうです!」

「ちょ、ちょっと!私は賛成してないからね!?」

「3-1で賛成の勝ち。二乃の意見は少数派。」

「なにそれ!理不尽じゃない!」

 

僕はみんなが話してる隙にスマホを取り出し、せっかくだから上杉くんも誘おうと思いメールを打ち込む。

…でも、上杉くんってこういう催し物あんまり好きじゃないんだよな。日曜日ってことは一日中勉強しているだろうし。

女の子5人の中に男1人だけってめっちゃ肩身が狭いから居てくれると心強いんだけど、勉強の邪魔をしても悪いと思った僕はメールを消してスマホを閉じる。

 

「んじゃ、そうと決まれば会場に行こっか!」

「おー!」

 

そう言うと、4人は会場へ向かって歩き出したので僕も慌てて後を追う。

 

「でもキョーヘー君も幸せ者だねぇ。こんな美少女達と一緒にお祭りに行けるんだから。」

「周囲の視線が痛いっておまけつきだけどね。」

「まったく…なんでせっかくの花火大会にこいつと一緒に行かなきゃいけないのよ。」

「そんなに嫌がらないでよ…応えてないように見えるけど心の中では結構ダメージ受けてるんだからさ。」

「ふん、どうだか。どうせ心の中であっかんべーでもしてるんじゃないの?」

「…なんでバレたの?」

「やっぱりかゴルァァァ!!!」

「冗談だって冗談。まぁ固いこと言わずに楽しもうよ。お詫びに何か奢るからさ。ね?」

「…ふん!あんたの奢りなんていらないわよ!」

「素直じゃないなぁ二乃は。さっきこっち向いたときに嬉しそうな顔してたくせにー。」

「一花ァァァ!!!」

 

あはは、相変わらずだなぁ…二乃さんは。

そんな事を思いながら歩いていると、三玖さんの歩き方が少し変な事に気が付いた。

 

「三玖さん、大丈夫?」

「うん。普段これ履かないからちょっと歩きにくいだけ…」

「確かにスニーカーかローファーだもんね…」

 

普段動きやすい靴を履いているだけに、浴衣に合わせたサンダル(でいいのかなこれ?)だと確かに歩きづらいんだろうね。

一花さんと二乃さんはオシャレでサンダルをよく履くのか、安定して歩いてるけど四葉さんも今見ると結構ふらふらしているし…

こけたら危ないし、いつでも支えられるような位置に移動しておこうかな。

 

「一花さん、二乃さん。もうちょっと歩くスピード緩めてあげて。三玖さんと四葉さん、結構歩きにくそうだからさ。」

「え?あ、ホントだ…ごめんねー。全然気づかなかった。」

「あんたに言われるのは癪だけど…まぁいいわ。怪我でもしたら困るしね。」

「うん、ありがとう。」

 

すぐにスピードを緩めてくれた2人に対して僕はお礼を言う。

 

「ありがとう、キョーヘー。」

「ありがとうございます御影さん!」

「キョーヘー君って細かいところよく見てるよねー。将来いい旦那さんになりそうじゃない?」

「褒めても何も出ないよ、一花さん。」

「…あれ?ねぇ、あれって五月じゃない?」

 

僕達がちょうど、ゲームセンターの横を通り過ぎようとした時だった。突然二乃さんが前方を指さしてそう言った。

そちらへ視線を向けてみると、特徴的な星形のヘアピンを付けた女の子の姿があった。

間違いない、五月さんだ。そして五月さんの横には見覚えのある姿がもう2つあった。

 

「上杉くんに…らいはちゃん?」

 

そう、その人影とは上杉くんとその妹であるらいはちゃんだった。

兄妹揃ってゲームセンターの近くで五月さんと何やってんだろう…?そんな事を思っていると、突然五月さんが走り出したのを上杉くんが追いかけていく。

ますます何やってんのか分からないぞ…とりあえず、らいはちゃんに聞いてみるか。

僕は3人に近寄ると、らいはちゃんに声をかける。

 

「こんにちは、らいはちゃん。」

「あ、御影さん!こんにちは!お久しぶりです!」

「久しぶり。お兄ちゃんと一緒…だよね?」

「うん!お兄ちゃんと、その家庭教師先の生徒さんとさっきまでゲームセンターで遊んでたの!」

「あぁ、そういうことか。」

 

恐らく五月さんは給料を渡すために上杉家へ行ったときに、何かしらの理由で3人でゲームセンターに行くことになったんだろう。

上杉くんも五月さんもそんな事を自分から言い出す人ではないし、らいはちゃんの希望でそうなった可能性が高そうだね。

ちなみにらいはちゃんとは僕と上杉くんが1年生の時はよく家に遊びに行ってたので顔見知りである。最近は全然顔を合わせてなかったんだけどね。

 

「ちょっと御影!あんたいきなり何を…」

「あれ?…お兄ちゃん、五月さんが4人いる!?」

「なんだと!?」

 

らいはちゃんは僕の後ろの姉妹達を見てそう口走った。初見なら無理もない感想だろう。

その言葉に上杉くんが振り向くと、上杉くんは驚愕の表情を浮かべた。

 

「お前ら何故ここに!?」

「わお!上杉さんじゃないですか!」

「な、なんでそいつと一緒に居るのよ五月!?」

「もしかしてデート中だった?ごめんねー。」

「だ、誰がこんな人と!違います!断じて違います!」

 

そう言うと、五月さんは姉妹の輪の中に入ってわいわいと話を始めた。

恐らくこうなったいきさつを説明しているのだろう。

 

「やっほー上杉くん。」

「御影!?な、何故お前がそいつらと一緒に…」

「ちょっと買い物行こうと思ったらバッタリ出くわしてね、それで今から連行されるところ。」

「なるほどな…お前も災難だな。休みまでそいつらの相手をすることになるとは。」

「あはは…まぁにぎやかだし悪くはないよ。」

 

ポリポリと頬をかきながらそういう。

 

「あれ?もしかして上杉さんの妹ちゃんですか!?」

「は、はい…」

 

僕と上杉くんがお互いに苦笑いを浮かべていると、らいはちゃんに気付いたらしい四葉さんが彼女に声をかけていた。

 

「これから一緒に花火大会に行きましょう!」

「花火!?うん、いくいく!」

「ちょ、ちょっと待て!」

 

らいはちゃんに上杉くんが駆け寄る。

 

「俺には勉強する予定があるし、お前らも宿題があるだろ!」

 

上杉君がそう言うと、中野姉妹は全員一瞬体を震わせるとそれぞれ視線を宙に泳がせ始めた。

いくらなんでも反応が露骨すぎるでしょ…これじゃ、宿題やってないって言ってるようなもんだ。

 

「お兄ちゃん…だめ?」

「うっ…も、もちろんいいさ!」

 

らいはちゃん、それは反則技ですよ。

当たり前だけどシスコン気味の上杉くんが妹のキラキラした視線に勝てるわけもなく、こうしてアッサリと上杉兄妹の同行が決まった。

でも、上杉くん達が一緒に来てくれるのはありがたい。いくら美少女とは言え女の子5人の中に男1人は気苦労がやばそうだから。

 

「ただし!お前らは宿題を終わらせてからだ!!!」

「まぁそうなるよね…んじゃ、一回あの子たちをマンションに戻しますか。」

 

僕と上杉くんは顔を見合わせて頷くと、五つ子たちへ近寄った。

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

結局あの後、ぶーぶーと文句を言う五つ子の首根っこを掴んでマンションへ戻した僕達は彼女達に宿題をキッチリとすべて終えさせることに成功した。

絶対にやらないだろうと思ってたんだけど、今日は二乃さんや五月さんも真剣に宿題をやっていて少し驚いた。

そんでもって、僕達は今宿題を終わらせた彼女達とらいはちゃんを迎えに行ってから屋台の立ち並ぶ通りへとやって来ていた。

周りを見ると人、人、すべてが人。これぞお祭りって感じがひしひしと伝わってくる。

 

「やっと終わった~!」

「みんなお疲れ様!」

「あれ、花火って何時からだったっけ?」

「19時から20時まで。」

「ねぇねぇ屋台行こー!」

「…なんだ、あのテンションの高さは。」

「あはは…まぁ楽しみにしてたみたいだしね。いいんじゃない?せっかくのお祭りだしさ。」

 

方やテンションアゲアゲの女性陣、方や疲れ切っている男性陣。温度差がありすぎだなこれ。

僕達は彼女達の後ろをついて歩きながら苦笑いを浮かべる。

 

「あ、金魚すくいしませんか!」

「うん!やるー!」

「…御影、俺ちょっとそこ座ってるわ。」

「あ、じゃあ僕も。宿題教えたせいで疲れたしね…」

 

僕と上杉くんは手ごろな自転車止めを発見するとそこに並んで腰かける。

 

「まぁあいつらにしては珍しく宿題もすんなりやってたし…そこまでして花火が見たいかね?」

「うーん…まぁ何か思い入れとかあるんじゃないの?ないかもしれないけどさ。」

 

まぁ、普段宿題なんて絶対にやらないであろう二乃さんや五月さんがあそこまで必死になって終わらせることを考えると何か理由がありそうな気はするけどね。

目の前ではしゃぐ一花さん、二乃さん、三玖さんをボーっと眺めながらそんなことを考える。

 

(…水飲むか。)

「なんですか?その祭りにふさわしくない顔は。」

 

カバンからペットボトルを取り出そうと手を入れた瞬間、不意に声がかかる。

声の主は星形のヘアピンを付け、赤い浴衣を着てアメリカンドッグをむしゃむしゃと頬張っていた。

…これは五月さんだな。さっきまで赤い浴衣着てる子はいなかったし。

 

「あ、あんまり見ないでください…」

 

五月さんは僕達に眺められたのが恥ずかしかったのか、顔を赤くしてそっぽを向く。

 

「…誰だ?」

「五月さんでしょ。星形のヘアピンしてるし。」

「紛らわしい…たださえ顔が同じでややこしいんだ。髪型を変えるんじゃない。」

「何ですって…?どんなヘアスタイルにしようと私の勝手でしょ!」

 

あーあー五月さん怒っちゃったじゃんか。

僕が言えた義理じゃないけど、女の子に対してそれは失礼な気もする。とりあえずフォロー入れておくか。

 

「五月さん。その恰好、僕は似合ってると思うよ。」

「お、お世辞は結構です!」

「お世辞じゃないって。それに君は元が美人なんだから何着ても似合うと思うよ。」

「…そ、そうですか?ありがとうございます、御影君。」

 

そう言って五月さんはニッコリと笑った。

よし、とりあえず機嫌は直してくれたようだ。

 

「あーあー、駄目だなぁフータロー君は。女の子が髪型を変えたらとりあえず褒めなきゃ。」

「一花…」

 

いつの間にか僕達のそばに来ていた一花さんが上杉くんの隣に腰かける。

 

「ほら、浴衣は本当に下着を着ないのか興味ない?」

「それは昔の話な、知ってる。」

「本当にそうかなぁ?」

 

そう言うと、一花さんは何ためらいもなく浴衣の首の部分に手をかけた。

 

「ちょ、一花!?」

「なーんて冗談でーす!少しはドキドキした?」

「…ウッザ!!!」

 

上杉くん渾身の叫びである。

一花さん、色仕掛けやるのは別にいいと思うけど相手を考えた方がいいような気がする。上杉くん一番そう言うの嫌いなタイプだから。

 

「キョーヘー君はどう?ドキドキした?」

「本当に下着付けてないならそこまでためらいなく浴衣に手をかけられないでしょ。」

「あはは…手厳しいなぁ。」

 

水のペットボトルを煽る僕を見て一花さんは苦笑いを浮かべながらそう言った。

 

「あんた達、こんなとこで何してんのよ…一花、行くよ!」

「ごめん、ちょっと電話!」

 

一花さんはそう言うと、スマホを手にして少し離れた場所へ移動する。

 

「っていうか、今日は5人で花火を見に来たのに何であんた達もいるわけ!?」

「俺は妹と来てるだけだ。」

「いや、僕は君達に誘われたから来たんだけど…」

「私は誘ってないわよ!」

「知らんがな!」

 

詰め寄ってくる二乃さんに対して僕は応戦をする。

 

「デレデレしてるんじゃないわよ!まったく!」

「僕がいつデレデレしたのさ…」

「五月の浴衣姿を見て褒めてたじゃない!デレデレしてる証拠よ!」

「えぇ…」

 

浴衣姿見ただけでデレデレしてるってどういう理論なんだ。解せぬ。

上杉くんがまた機嫌損ねちゃったからフォローしただけなんだけどなぁ…じゃあ、ちょっと仕返ししてあげようかな!

 

「二乃さん。」

「なによ。」

「その浴衣、すごい似合ってると思うよ。」

「は、はぁ!?あんたいきなり何言ってるのよ!?」

「だって本当のことだしね。」

 

今言ったことに嘘はない。二乃さんが着ている浴衣は彼女にマッチしていると思う。

 

「そそそ、そんないきなりそんなこと言われても知らないわよ!」

「テンパりすぎでしょ、ちょっと落ち着きなよ…」

「…キョーヘー、私は?」

「三玖さんもすっごい似合ってると思う。いつもと違う雰囲気で新鮮だよ。」

「…ありがとう、嬉しい。」

「ふん!もう知らないんだから!」

 

にっこりと微笑む三玖さんと、そっぽを向いてしまった二乃さんを眺めながら僕はもう一口水を飲む。

 

「お兄ちゃーん!見てみてー!四葉さんが取ってくれたのー!」

「ん?らいはか…!?」

 

いつの間にか元気良く戻ってきたらしい四葉さんとらいはちゃんの姿を見て、上杉くんの表情が硬直する。

なんだなんだと思って僕も彼女を見ると、彼女の手には大量の金魚の入った袋がぶら下がっていた。

あはは…これは上杉くんが固まるのも分かる気がするよ。と言うかあんなに取ってきて上杉くんの家で飼う場所あるのか…心配なんだけど。

 

「も、もう少し加減は出来なかったのか?」

「あっはっはー…らいはちゃんを見ていると、不思議とプレゼントしたくなっちゃいます!」

「あ、あとこれも買ってもらったの!」

「それ今日一番いらないやつ!」

 

らいはちゃんが誇らしげに見せつけた花火セットを見ながら上杉くんは叫んだ。

 

「だって待ちきれなかったんだもん…」

「…四葉のお姉さんにちゃんとお礼言ったか?」

「四葉さん、ありがとう!大好き!」

 

そう言ってらいはちゃんは四葉さんに思いっきり抱き着いた。

抱き着かれた四葉さんはと言うと、感極まって泣きそうな顔をしている。

気持ちは分かる。らいはちゃんにあれをやられて耐えられない奴はいないだろう。

 

「あーん!らいはちゃん可愛すぎます!私の妹にしたいです!」

 

らいはちゃんにめっちゃ頬ずりしながら四葉さんはそう叫んだ。

…上杉くんの前でそれは禁句だと思うけど黙っておこう。

 

「待ってくださいよ…私が上杉さんと結婚すれば合法的に姉と妹に…」

「あんた自分で何言ってるか分かってる?」

 

いや、さすがにわかってるとは思うけど。いくら四葉さんとはいえ。

 

「上杉、あんたも四葉に変な気を起こさないでよ!」

「ねぇよ!」

「あんたもだからね御影!」

「はーい。」

「適当な返事すんじゃないわよ!」

「ごめん!お待たせー!」

 

そんなやり取りをしていると、電話を終えた一花さんが戻ってきたようだ。

 

「さ、行こ!」

「…ん?行く場所でもあるの?」

「二乃がお店の屋上を借り切ってるから。」

「借り切るだと!?ブルジョワか!?」

「いやブルジョワでしょ。しかしお店の屋上を借り切るって…」

 

中野家の財力は一体どうなってるんだろう。お金持ちすぎて庶民の僕からしたら時々怖くなるんだけど。

 

「んじゃま、そこ行けばいいんだね?じゃあ早く…」

「ちょっと待ちなさい!せっかくお祭りに来たのにアレも買わずに行くわけ?」

「「「「「あっ…」」」」

 

皆が借り切っているらしいお店へ行こうと歩を進めると、二乃さんが待ったをかける。

ん…アレ?アレってなんだ?

 

「そう言えばアレ買ってない…」

「もしかしてアレの話?」

「アレやってる屋台ありましたっけ?」

「早くアレ食べたいなー!」

「…なんだよ、アレって。」

「「「「「せーの!」」」」」

 

掛け声と同時に、五つ子は一斉に口を開いた。

 

「かき氷!」

「りんご飴!」

「人形焼き。」

「チョコバナナ!」

「焼きそば!」

「えぇ!?バラバラじゃん!?」

「「「「「全部買いに行こー!」」」」」

「…あいつらが本当の五つ子が疑わしくなってきたな。」

「まったくだよ…」

 

と言うか他の4人はデザートとかスイーツ系なのに1人だけガッツリ麺類言った子がいるけど一体誰なんだ…想像はつくけどさ。

とりあえず、はぐれたら困るので僕と上杉くんは彼女達の後を追って隣に並んだ。

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

時刻は19時前、そろそろ花火大会が本格的に始まるころ。

周囲を見渡してみると先ほどよりも明らかに人の数が増えている。これは本格的にはぐれないよう気を付けないと。

 

「らいは、はぐれたら困るからここ掴んでろ。」

「うん!」

 

上杉くんはらいはちゃんが人込みではぐれないよう、自分の服の袖を掴ませていた。

 

「キョーヘー、私もあれやりたい。」

「いや、君高校生だよね!?」

 

三玖さんがぐいぐいと僕の服を引っ張ってらいはちゃんを指さすが、さすがに恥ずかしいのでやめてほしい。

 

「まったく…納得がいきません!あの店主!」

 

そうこうしていると、人形焼を調達し終わった五月さんと一花さんが列に合流してきた。

彼女達の手には人形焼の袋があるが、明らかに量が違う。なんか一花さんの方が五月さんの3倍くらい量があるような。

 

「どうしたの五月さん?随分とご立腹みたいだけど。」

「聞いてくださいよ御影君!私と一花で同じ店へ行ったんですけど、一花だけ別嬪さんだからって理由でおまけしてもらってたんですよ!同じ顔なのに!」

「あ、あはは…」

「…複雑な五つ子心。」

 

そう言って頬を膨らませる五月さんの横では一花さんが苦笑いを浮かべていた。

複雑な五つ子心…なぁ。

 

「確かにそれはひどい話だね…」

「そうですよ!まったく!」

「僕は五月さんも一花さんに負けてないくらい美人だと思うんだけどね。」

「ふぇ!?」

 

何気なく僕はそう言うと、五月さんは顔を真っ赤にする。

 

「おぉ!キョーヘー君いっけめん!だってさ五月ちゃん!良かったね!」

「そ、そそそそんな!私なんて一花に比べたら!」

「さっき同じ顔なのにって言ってたじゃん。つまり、君も同じくらい美人ってことだよ。そうじゃない?」

「…ふふっ、嬉しいです。ありがとう御影君。」

「ううん、どうってことないよ。気にしないで。」

 

そう言うと、五月さんは満面の笑みを浮かべた。うんうん、やっぱり女の子は笑ってる方がいいよ。

どうやら五月さんの機嫌も直ったようだし一件落着だね。

 

「キョーヘー、またそんな事言ってる…」

「いや、だってさすがにかわいそうじゃんか…」

 

何故か三玖さんが不服そうに頬を膨らませるが、実際五月さんが不憫だったんだからフォローはしてあげないと駄目でしょ。

 

「…誰にでもそんな事言っちゃだめだからね。」

「う、うん。分かったよ。」

「罰として私とキョーヘーもフータローと妹さんのやってることやる。決定。」

「えぇ!?ま、まぁいいけどさ…じゃあ今日は長袖だから服のすそ掴んでなよ、ほら。」

「ん。」

 

僕が服のすそをくいくいと指さすと、三玖さんは満面の笑みでそこをきゅっと掴んだ。

…良かった、機嫌を直してくれたみたいだ。

 

「らいはちゃーん!次は輪投げしよっかー!」

「うん!やるー!」

「おい!迷子になるなよ!?」

「あ、焼きそば焼きそば!」

「あんま離れすぎちゃだめだよ五月さん!」

「あんた達遅い!何やってんの!」

 

散らばっていく皆をしり目に、先頭を歩く二乃さんが大声で叫ぶ。

 

「二乃さん、えらい張り切ってるね…」

「あぁ、それにお前らもずっとテンション高いし…花火なんて毎年やってるだろ?」

「…花火は、お母さんとの思い出なんだ。」

 

三玖さんの言葉に一瞬、まずいことを聞いたかと上杉くんの表情が曇る。

 

「お母さんが花火が好きだから毎年揃って見に行ってた。お母さんがいなくなってからも毎年揃って。私達にとって花火ってそういうもの。」

「…そういうことか。聞きづらいこと聞いて悪かったな。」

「ううん。いい。」

 

なるほど、そういうことだったんだね。

今の話を聞く限りでは、花火は五つ子にとって母親との大切な思い出なんだろう。そして今は母親はもういなくて、でも思い出を残すために毎年5人揃って花火を見ている。

…だから二乃さんも五月さんも必死になって宿題をやってたんだね。

 

それにしても、母親がいなかったとは初耳だ。

何か声をかけようと思ったけど、こういうのは事情を知らない奴が軽い気持ちで同情するのは彼女達にとって失礼に当たるだろう。

時には沈黙が正解だということもある。僕は黙っておくことにした。

 

「どうりで二乃が張り切るわけだ。」

「そうだね。絶対に5人揃って花火を見させてあげなきゃね。」

 

やっぱり、二乃さんは家族の事を一番大切に思ってるんだろうね。

だからこそ嫌だろうけど宿題もやり切ったし、ああやって先頭を歩いて張り切ってるんだろう。

花火はこの子達とお母さんをつなぐ大切な思い出なんだろうな…なら今年も無事に花火を見られるように僕達も全力でサポートしなきゃね。

…と言っても、何も起こらない限りは無事に店まで付けそうだけど。

 

『大変長らくお待たせいたしました!まもなく花火大会を開始いたします!』

 

そんなことを考えていると、花火の打ちあがる時刻になったようだ。会場に設置されたスピーカーから開始を告げる合図が鳴り響いた。

それじゃあ、後は五つ子を無事に店まで送り届けたら僕達のミッションは完了。僕はりんご飴でも食べながらのんびり花火を眺めているとしよう。

…そう呑気に思っていた、この時までは。

 

「…人が多くなってきたね。」

「まぁそろそろ開始時刻だからな、こりゃ本格的にはぐれるとまずいぞ…」

「そうだね。とにかくはぐれないように…!?」

 

そう思って後ろを見た瞬間だった。

 

「上杉くん、みんながいない…」

「なんだと!?」

 

僕の言葉に上杉くんも慌てて振り返るが、そこには人の大群がいるだけで一花さん、四葉さん、五月さん、らいはちゃんの姿はどこにもなかった。

…どうやら、この人込みの中ではぐれてしまったらしい。あれだけ遠くへは行くなって言ってたのに、解せぬ。

 

「上杉くん、らいはちゃんの連絡先は分かるよね?」

「あぁ、今電話してみる!」

「三玖さん、他の皆に連絡取れる?四葉さんはらいはちゃんと一緒のはずだから、一花さんか五月さんに。」

「うん、かけてみる。」

「ありがとう2人とも。えーっと、それで二乃さんは…いた!」

 

2人に連絡を頼んだあと先頭を歩いていた二乃さんを探すためにきょろきょろと周囲を見渡すと、かなり先へ進んだところにウサギの浴衣姿が見える。

…まずいな、この距離でこの騒がしさだと大声でギリギリ声が届くかどうかだぞ。おそらく二乃さんは僕達が付いてきてると思って急ぎ足で進んでしまったんだろう。

これ以上距離が離れるとまずい。

 

「くそっ!らいはの奴出ねぇぞ…!」

「こっちもだめ。一花も五月もつながらない。」

「マジか…困ったな。よし、繋がらないものはしょうがない。とりあえず今は二乃さんと合流しよう!」

「そうだな!」

「うん。」

 

ここで二乃さんとまではぐれてしまっては本格的に全員集めるのが大変になってしまう。

そう思った僕は2人に声をかけ、二乃さんと合流するために一歩前へ出た。

しかしその瞬間だった。人の波が大きくうねりながら動き始める。僕の周囲を大量の人が行きかう。

 

「ぐっ…こりゃ大変だな…2人とも、大丈夫!?」

 

ここまで人でごった返してしまうと前へ進むのも1苦労だ。上杉くんは大丈夫だろうけど、三玖さんが心配だ。

僕は2人に無事か聞くために声をかけるが…おかしい、返事がない。

最悪の事態を想定して冷や汗を流しながら振り返ると…そこには上杉くんと三玖さんの姿はなく、人の山だけがあった。

 

「…最悪だ。」

 

僕は頭を抱える。おそらく、さっき人の波が動いたときに2人とも流れに呑まれてしまったのだろう。

周囲を見渡すが上杉君の姿も三玖さんの姿も見えない。こういう時に身長がもっとあれば…!自分の低身長を恨まずにはいられない。

とにかく、頭を抱えてここでじっとしていても何も始まらないだろう。

僕はとりあえず人の波からいったん外れるため、横へ向かって進もうと足を踏み出した。

 

「ちょっと!足踏んだの誰よ!」

 

すると、人の波の前方から聞き覚えのある声が聞こえてくる。

この声は…二乃さんか?騒がしくてかすかにしか聞こえなかったけど、距離的に考えるとそう遠くはなさそうだ。

なら予定を変更しよう。まずは二乃さんと合流して、彼女に予約した店まで連れて行ってもらおう。

店を予約しているなら他の姉妹もそこへ向かっているはず、ならばはぐれたとしても現地合流してしまえば問題ないだろう。

三玖さんの事は心配だけど、彼女には上杉くんが付いているはずだ。なら、二乃さんを助けよう!

そう決心すると、僕は人の波をかきわけて彼女の声のした方へダッシュするのだった。




ダブルヒロインにするとどう描写するか悩む…
次回、風太郎が大活躍(予定
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