ラブライブ!サンシャイン!!〜Aqours☆RIDERS〜   作:白銀るる

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進太郎)前回までのラブライブ!サンシャイン!!〜Aqours☆RIDERS~……なんか長いな。
鞠莉)じゃあ、ラブライダーズなんてどう?
進太郎)ラブライダーズか……まあ、略称としては少し長いけど、悪くは無いかな。
鞠莉)それじゃあ決まりね!改めて……前回までのラブライダーズ!
進太郎)三年前のグローバルフリーズで親友と両親を亡くし、トラウマを抱えた俺は、転入先の浦の星でもその過去を引きずっていた。
鞠莉)わたしは進太郎のオジサマのお願いを聞き入れ、浦の星の理事長として、そして同じ学校に通う仲間として進太郎に馴染んでもらおうと奮闘するも、進太郎は頑なに心を開かないまま。何も話してくれない進太郎に遂にわたしの怒りが爆発したの。
進太郎)鞠莉の涙を見た俺は、本当の気持ちを彼女に打ち明けようと決意する。しかし、そんな俺達の前に三体のロイミュードが現れる。絶体絶命の危機かと思いきや、そこへ駆けつけたベルトやシフトカー達の力を借り、戦士ドライブへ変身したことで窮地を脱したのだった。

一部改定しました。


2/彼はなにを守るのか

 ベルトさんのナビゲーションのもとトライドロンを走らせること数十分。

 辿り着いたのは正義叔父さんと俺が暮らしている家だった。

「ここは……?」

「俺と叔父さんの家……。ベルトさん、ここで間違いないのか?」

「ああ、ここで合っているよ。少し待ってくれ、今ロックを解除しよう」

 ロックを解除? 一体何の? 

 そんな疑問が浮かんだのもつかの間、次の瞬間に俺はとんでもないものを目にした。

 なんと、家の隣の車庫が開き、その中に地下への道が開けていたのだ。

「何、これ……」

「俺にも分からん……」

 二人揃って呆然としていると、トライドロンがひとりでに進み始めた。

 多分、ベルトさんが動かしているのだろう。

 

 トライドロンが進む通路はまさしく秘密基地の出入口という雰囲気で、普段生活している家の地下にこんなものがあったのかと思うと、驚かずにはいられない。

 やがてトライドロンが暗闇の中で止まると、しばらくしてからパッと明かりがついた。

 一瞬だけ目を閉じて再び瞼を上げた時、そこはやはり秘密基地と呼ぶにふさわしい景色が広がっていた。

「ドライブピットへようこそ、二人とも!」

 いつの間にか外に出ていたベルトさん、そしてシフトカー達のクラクションでの歓迎に俺達はまた驚かされた。

 俺はトライドロンから降り、台座にハマっているベルトさんに歩み寄る。

「ベルトさん、これは……?」

「ここはドライブピット。わたし達の秘密基地さ。ドライブの秘密を話すには、ここが一番最適な場所だろう?」

「秘密基地……か。まあ、それは良いけどよ……」

 俺が視線を移した先にいるのはもちろん鞠莉だ。

 面食らった顔をして完全に止まっている。

「お、おーい。大丈夫か?」

「……は!? し、進太郎!? ……ここはどこなの?」

「俺の家の地下っぽい……。とりあえず降りろよ。話はそれからだ。な、ベルトさん」

「ベルトさん……?」

 誰のことだ、と言いたげに首を傾げる鞠莉。

 まあ、それはそうなるだろう。

 なんせ、俺が話しかけた先に人はいない。

 そこにいるのは、奇妙な形をしたベルトだけなのだから。

「初めまして、小原鞠莉君。わたしの名前はクリム・スタインベルトだ。よろしく」

「べ、ベルトが喋った!? それにわたしの名前も……」

「君のことは進太郎からよく聞かされていたんだ。会えて光栄だよ」

「ど、どうも……。えっと、ベルトさん……で良いのかしら?」

「ああ、好きに呼んでくれて構わないよ」

 鞠莉はベルトさんに機械ならぬ奇怪な物を見るような目を向けていた。

 一方、ベルトさんはそんなことは気にも留めずに話を続けた。

「君達をここに招待したのは、わたし達と奴らの話をするためなんだ」

「奴ら……?」

 突然、妙な場所に連れてこられたことに戸惑いながら、鞠莉はベルトさんの「奴ら」という言葉に首を傾げる。

 それもそのはず、鞠莉は……鞠莉達はロイミュードについてなんの知識も持ち合わせていないからだ。

 三年前、ロイミュードはグローバルフリーズを起こし、その名前と存在が世界中で認知されたが、その詳細を知っている者はほとんどいない。

 世間では、ロイミュードは突如現れた謎の怪物なのだ。

 だから、まずベルトさんはロイミュードのことを話した。

 

 ある二人の科学者が生み出してしまったアンドロイド、それがロイミュードであること。

 一人の裏切りによってそのほとんどが悪に堕ちてしまったこと。

 そして、グローバルフリーズが起きた時、二人ともロイミュードに命を奪われたこと。

 

 とても現実のこととは思えない、壮絶な過去が彼の口から語られた。

 鞠莉はもちろん、ロイミュードのことをある程度聞いていた俺でさえも言葉を失ってしまった。

「そして命が尽きる最期の瞬間、一人の科学者は小さなベルトにその意識をコピーした」

「それが……ベルトさん……」

「イグザクトリー。わたしは未来に希望を託した。わたしとともに戦ってくれる戦士が現れることを」

「それがあの赤い鎧の姿なのね……」

「イエス。あの姿は戦士ドライブ。わたしとシフトカー達の力を使うことで進太郎が変身できる、ロイミュードに対抗出来る唯一の存在。言わば、『正義のヒーロー』さ」

「正義のヒーロー……」

 その名前は、漫画やアニメで聞く以上に重いものを感じた。

 ベルトさんの過去が、彼の願いがそうさせたに違いない。

「あの装備を身に着けることで、重加速……君達がどんよりと称する状況下でも自由に動くことが出来るんだ。一度変身した君はその力を感じただろう」

 俺は、ベルトさんにそう聞かれ、戦いの記憶を蘇らせた。

 確かに変身した時、俺は普通に……いや、いつもより速く動くことが出来ていた。

 それにロイミュードにダメージを与え、倒せるほどのパワーもあった。

 心の奥底から力が漲る感覚があった。

「ああ。浦の星を守りたい、そう思ったらベルトさん達が来て俺を変身させてくれたんだ」

「ドライブシステムには変身する者、つまり君の心が必要不可欠なんだ。大切なものを守りたい、という正義の心がね」

 ベルトさんの言葉に反応し、マックスフレア達がクラクションを鳴らす。

 そしてフレアと緑色のシフトカーが俺の両肩に、紫色のシフトカーが鞠莉の手のひらに乗った。

「そして彼らはシフトカー。マックスフレアにファンキースパイク、そしてミッドナイトシャドー。体は小さいが一台一台が特殊な能力を持っている。我々の頼もしい仲間だ」

 ロイミュードを相手に戦っている彼らの姿は俺も見た。

 その様はベルトさんが言ったように、本当に頼もしく勇ましかった。

「改めてよろしくな、三人とも」

 俺がそう声をかけると、フレア達は再びクラクションを鳴らして返事をくれた。

「……ロイミュードとドライブのことは分かったわ。でも、まだ分からないことが一つある。なぜ進太郎なの? ロイミュードと戦うなら、もっと強い人にドライブになってもらえばいいのに」

 ふと、そんな疑問を鞠莉はベルトさんにぶつけた。

 言い方は多少心にくるが、全くもってその通りだ。

 俺より強い人間ならこの世界にはごまんといる。

 それなのに、なぜ俺だったのか。

「うむ、それはね……私にも分からないんだ」

 真剣な表情をディスプレイに浮かべ、間を置いて更に醸された深刻な雰囲気は、彼の陽気なトーンによって一瞬で打ち砕かれた。

 拍子抜け過ぎる答えに、俺達はギャグ漫画よろしく、肩口をずらしてズッコケた。

「わ、分からないって……本当にどういうことなんだよ……」

「本当に分からないんだ。進太郎の他にも、ドライブの候補者は何人もいた。その中には、確かに進太郎よりも力のある人間もいたよ。けれど進太郎を見てわたしは、彼しかいない、そう思ったんだ」

「なるほど……つまりベルトさんは進太郎に一目惚れしたってわけね」

「おい、その言い方は何か良からぬ誤解を招く」

「はっはっはっ! 確かにそういうことになるね」

「ベルトさんもノらないでくれ!」

 鞠莉のノリにベルトさんも乗っかり、二人は完全に意気投合していた。

 元々、俺に対しての接し方が似ていたから、この二人が出会ったらもしかしたらとは思ってはいたが。

 

 それから二人は俺のことで話に花を咲かせていた。

 ベルトさんと楽しそうに笑う鞠莉を見て、俺は彼女を救うことが出来たんだと改めて実感する。

 そしてこれからも守っていくんだ、という使命感も心の中に湧き上がってきた。

 

 それからしばらくの間、ベルトさんと鞠莉の会話は絶えることなく続いた。

 それが中断されたのは、ある人物がここに訪れたからだ。

「よう、クリム。意外と早くにここのことを明かしたんだな……って小原のお嬢ちゃんまで!? 一体どうなってやがんだ……」

 現れたのはドライブピットの頭上にある家、泊宅の家主である泊正義叔父さんだ。

「まあ、色々事情があったんですよ……。って、叔父さんが帰ってきてるってことは……!?」

 スマホの時計を確認すると、時刻は既に午後五時半を回っていた。

「もうこんな時間なの? もっとクリムと進太郎のことでトークにフラワーを咲かせたかったけど、そろそろ戻らなきゃ」

 ベルトさんのことを「クリム」とサラッと呼び捨てにする鞠莉。

 しかも、ベルトさんがそれを指摘しないなんて、どれだけ仲良くなったんだ……。

「それじゃあ進太郎、君が鞠莉を送ってあげるといい。わたしは正義と少し話すことがあるのでね」

「分かった。んじゃ、行くか」

「ああ、それから、鞠莉、ドライブとわたしのことはここにいる我々だけの秘密にしておいてくれ」

「オーケイ。それじゃあ、またゆっくり話しましょう」

 鞠莉とベルトさんはそう別れを告げ、俺達はトライドロンに乗ってドライブピットを出発した。

 

 ─R─

 

 ドライブピットに来た時と違い、トライドロンには俺と鞠莉の二人だけ。

 さっきは終始ベルトさんに問答していた為に少々騒がしかったが、今はとても静かだ。

 声を出すのも少し躊躇われたが、ここで話をつけなければ覚悟を決めた意味が無い。

 俺は再び腹を括り、なんとか話を切り出した。

「なあ、おは……じゃない。鞠莉、お前に話があるんだ」

「……え」

 突然声をかけられた鞠莉が驚いているのは、運転していて顔を見ていなくてもよく分かる。

「俺、スクールアイドルのマネージャーやろうと思う。今までは、いろいろと一人で背負ってていっぱいいっぱいで、全然余裕が無くて誤魔化してたけど……やっと気付いたんだ。俺は、また友達と笑い合いたかったんだ、って……。まあ、まだうまくいかないこともあるだろうけれど、お前が許してくれるなら、俺はスクールアイドル部に入りたい」

 ユウとの思い出、三年前のあの事件、そして鞠莉と関わったここ最近の記憶が脳裏に過ぎる。

 もし、俺にその資格があるなら、許されるならば、俺はもう一度友達と笑い合いたい。

 懇願というのは少し違うが、俺の中の願いのようなものを言葉にし、彼女に告げた。

「もちろん、わたしは歓迎するわ! ……やっと、言ってくれたわね、『友達』って……」

 赤信号で車が止まると同時に、鞠莉は微笑みながら了承の返事をくれた。

「本当は『マリー』って呼んで欲しかったけれど……」

「うっ……それは流石に恥ずかしいから『鞠莉』で許してください……」

 信号が青になって再び車が走り出す。

 その頃には、ロイミュードと戦う前のギスギスした空気は消え去っていた。

 俺達は談笑しながら船着き場まで車を走らせた。

 

 ─R─

 

 進太郎と鞠莉がドライブピットに着いた頃、少々浮いた格好をした四人組が町の一角でたむろしている所に029の数字の形をした何かが飛来した。

「029? 029じゃないか。どうしたんだ、その姿は?」

 黒いジャケットを来た長身の男が、その数字に声をかける。

 そう、この029はドライブとの戦いに敗れ、肉体を失ってしまったロイミュード、そのコアなのだ。

 ジャケットの男の問いかけに、029は悔しそうな声を絞り出す。

「……人間にやられた。赤い姿に変わった人間に。他の奴らはコアまで破壊された!」

「赤い姿に変わった人間? ほう……それは面白そうな話だな」

 029の話を聞くと、ジャケットの男は不敵な笑いをう浮かべる。その顔は、まるで新しいおもちゃを買ってもらった子供のようにも見える。

「行けませんよ、ファイト。強そうな相手を見つけては戦いたがる。貴方の悪い癖だ」

 ジャケットの男──ファイトを窘めるのは、青いスーツを着込みメガネをかけた女性。

 彼女はファイトとは異なり、落ち着いた雰囲気を纏っている。

「分かってる。少し興味が湧いただけさ。全く、ミストは心配性だな」

 スーツの女性、ミストはやれやれと大きく溜め息を吐いた。

「029、その人間はベルトをしていませんでしたか?」

「ああ。ちっこい車も使って、赤くなった後は重加速の中で俺達に戦いを挑んできたんだ!」

「そうですか……」と、ミストはまた溜め息を吐いて深刻な面持ちになった。

 彼女は思い出しているのだ。三年前、憎き奴に舐めさせられた苦汁を。

「頼む! 俺にバイラルコアをくれ! 今度こそ奴を打ちのめすんだ!!」

「……良いでしょう」

 029の懇願にミストは、蛇が巻きついたような装飾が施されたミニカーを029に与えた。

 すると、029はミニカーと融合してロイミュードとしての姿を取り戻した。

「恩に着るぜ、ミストさん。これで今度こそ……!!」

 憎しみを込めた言葉を吐きながら、029は人間の姿に化けて町の中へ消えて行った。

「おいおい……俺はダメなのに029の奴は良いのか?」

「ファイト。わたしの予想が正しければ、029が遭遇したのは『仮面ライダー』だ」

「『仮面ライダー』……? それはあの時、俺達の仲間を一人残らず倒したっていう奴か? だが奴ならマックスが……」

「いえ……仮面ライダーは生きていますよ。ゼロ、貴方も行って見てきてください」

「……分かった」

 029とのやり取りに、一切口を出さなかった紫色のライダースジャケットを来た少年、ゼロは短い返事をして029の向かった先に足を向ける。

「……わたしも行く」

 ゼロの背中を追い、彼より頭一つ分ほど背の小さい少女が、これまた小さな声でそう申し出た。

「いえ、ゼロ一人でじゅうぶ……「別に良いじゃないか」ファイト……」

「ミューズもゼロが心配なんだ。お前と同じだ」

「……分かりました。しかし、余計な戦闘などは避けてください」

 ゼロとミューズはこくりと頷き、今度こそ029の後を追いかけた。

「全く……貴方は本当にミューズには甘いですね」

「仮面ライダーか……どんな奴何だろうな?」

「……聞いてませんね」

 ミストは再三溜め息を吐く。

 バトルジャンキーのファイトと仮面ライダーと思しき敵。

 大きな悩みの種は、彼女を憂鬱にする。

 

 ─R─

 

 翌日、放課後に鞠莉達とともに部室に姿を見せると、やはり高海達は昨日と同じ……いや、昨日より驚いた顔で俺を見ていた。

 もっとも、あんな去り方をして再びここに来たのだから、驚かないわけがないのだが。

「えっと……今日からスクールアイドル……なんだっけ?」

「Aqoursよ、進太郎」

「そうそう、Aqoursのマネージャーをすることになった泊進太郎だ。改めてよろしく。俺のことは好きに呼んでくれて構わない」

「という訳だから、みんな進太郎と仲良くね」

「うん! よろしくね、進太郎君!」

 鞠莉の仲介もあり、ひとまず害は無いと判断されたようで、高海達は俺のことを快く受け入れてくれた。

「それにしても、どういう風の吹き回し?」

「大したことはないさ。少し自分の気持ちに素直になっただけだ」

「そう、なら安心した。また鞠莉が何かしたんじゃないかと思ってさ」

「むぅ、果南! それどういう意味!?」

「それは自分の胸に聞きなさい」

「えー! ダイヤまでひどーい!」

「いや、あれは俺もどうかと思うわ」

「進太郎まで!」

 松浦、黒澤に続き、俺も鞠莉の軽率過ぎる行動を窘める。

 俺だったからまだ良かったものの、もし危ない男だったらどうなっていたことか……。

 そのことを知らない高海達は、疑問符を浮べて首を傾げる。

「四人とも、どうかしたの?」

「チカっち聞いてよ! 進太郎に……」

 高海達に余計なことを口走ろうとした鞠莉を再び三人で止めた後、スクールアイドル部について彼女達から教わることとなった。

 

 ……なったのだが。

「お、おお……」

 プロジェクターに映し出された映像及び資料を背にし、延々とスクールアイドルについて語り続ける黒澤を前にして、俺はただただ呆然としているしかなかった。

「な、なあ、松浦。黒澤はいつもああなのか……?」

「あー……多分、泊君に教えられるのが嬉しくて舞い上がってるんだと思うよ。まあ、こうなったら誰にも止められないし、全部聞くまで逃げられないと思った方がいいよ」

「マジか……」

 松浦は苦笑いしながらそう答えた。

 そして彼女の言った通りこの講習は長時間続き、解放される頃には完全下校時刻の三分前まで迫っていた。

 

 理事長(鞠莉)の許可を貰い、設けてもらった駐車スペースに泊めたトライドロンの中で、俺はベルトさんと今日のことを振り返っていた。

「はあ……初日からこんなに教えられるとは……おかげで授業で覚えたもん全部上書きされた……」

「はっはっはっ! 確かにスクールアイドルにかける彼女の情熱は凄いものだよ。何かに対するああいう姿勢は、わたし達も見習わなければね」

 黒澤に関心しているベルトさん。

 対する俺は嘆息してぐったりしていた。

 

 だがスクールアイドル部に入り、これまでなら想像もつかなかった新たな発見もあった。

 まさか、黒澤にあんな一面があるなんて思いもしなかった。

 普段、教室で見ているアイツとはまるで別人のようだ。

 いや、あれこそが本当の「黒澤ダイヤ」の姿なのかもしれないな。

 俺は「友達」の新しい姿を発見出来たことに喜びつつ、帰宅する為にトライドロンのキーを回した。

 

 その時だった。

 一瞬だけどんよりが俺を襲った。

 シフトカー達のおかげで俺はどんよりから解放されたが、トライドロンの外はまだ重加速に飲まれたままだ。

「またロイミュードが出たのか!?」

「そのようだ。しかもかなり近い。進太郎、先に変身して襲撃に備えよう!」

 俺はベルトさんに従い、トライドロンの中で変身を完了させた。

 そしてシフトカー達とともにロイミュードの捜索を開始した。

 

 ─R─

 

 重加速に飲み込まれてしまった浦の星学院。

 昨日(さくじつ)襲撃を受けたばかりで、一日の間も置かずに再び襲ってきたどんよりは生徒や教師達、学校内に残っている者達にこれ以上ないほどの恐怖を与えた。

 

 一人の生徒の前に現れたロイミュード、胸に彫られているナンバーは029。

 この学校を再び襲ったのは、ドライブによって一度倒されたはずのロイミュードだった。

「出てこい、赤い鎧の人間……! さもなくば、ここにいる人間を全員殺す! こんな風になぁ!!」

 怒りの雄叫びを上げながら、029は手に持っていた鉄棒を生徒目掛けて振り下ろした。

 が、鉄棒が女生徒に当たることは無かった。

 どこからともなく発砲されたエネルギー弾が棒を消し飛ばし、更に二発目と三発目が029の体に命中して彼を退かせたからだ。

 

「見つけたぞ! ロイミュード!」

 そして、倒れた029の前に一度自らを倒した存在、ドライブが現れた。

 

 ─R─

 

 シフトカー達と手分けして遂に見つけたロイミュード。

 その前には逃げられなくなっていた生徒がいたが、妙なことにロイミュードは倒れて仰向けになっていた。

 何とも不可解な状況だが危機的なことには変わりない。

「進太郎。レバーを倒してシフトアップで加速して奴をこの学校の外へ連れ出すんだ!」

「レバーを倒すんだな、分かった!」

「スピード!」

 シフトスピードを変形させたレバーを一回倒す。

 すると、昨日戦った時よりも更に強い力が湧いてきた。

 俺は、立ち上がったロイミュードを捕え、そのまま学校外まで引きずり出した。

 

 人気のないところでロイミュードを離し、戦闘の態勢に入る。

「貴様……昨日は良くもやってくれたな! 俺の楽しみを奪っただけでなく、仲間まで! 絶対に許さん!!」

 怒りの言葉を吐きながら殴りかかって来たロイミュード。

 奴の言葉に俺はハッとする。

「昨日……お前、鞠莉を襲うとしたロイミュードか!」

「そうだ! 俺の怒りを思い知れ──ッ!!」

 ロイミュードは怒号を響かせる。

 その瞬間、俺の目の前で驚くべき出来事を目にした。

 なんと、ロイミュードの姿が変わったのだ。

 コブラのような形だった顔が、鬼のような形相というよりも鬼そのものとなり、肩にも怒りの表情を浮かべた鬼の顔が掘られたアーマーを纏っている。

 更に肉体も筋骨隆々なものへ変化し、その背には無数の棘のついた金棒が確認出来た。

「不味い……! 怒りの感情が奴を進化させてしまったようだ!」

「んなのありかよ!?」

 オーガロイミュードとでも呼ぶべき姿に進化した奴は、背負っていた金棒を振り回して攻撃を始めた。

 威力はさっきまでより強力なうえ、リーチも長いのでこちらの攻撃を当てることが出来ない。

「奴が武器を使うならこちらは盾を使おう!」

「盾!? そんなもんがあるのか!?」

「新しい仲間の力を借りるんだ。カモン、『ジャスティスハンター』!」

 ベルトさんの掛け声とともにどこからともなく新たなシフトカーが現れた。

 白と黒のツートーンカラーに、ルーフに取り付けられている赤色灯。

 警察車両──パトカーのシフトカーだ。

 パトカーのシフトカー、ジャスティスハンターはオーガを翻弄してから俺の手元までやって来る。

 俺はすかさずハンターをキャッチし、シフトスピードと入れ替えでシフトブレスにセットした。

「タイヤコウカン! ジャスティスハンター!!」

 マックスフレアの時と同様、胸部のタイヤがシフトカーに対応したものにコウカンされた。

 しかし前回と違う点が一つあった。それは、タイヤのコウカンと同時に円形の何かが俺の手に握らされた。

「なんだこれ!? もしかしてこれが盾か!?」

 盾というには格子のような形状をしていて頼りなさそうに見えるが……。

「そんなもんで俺の攻撃が防げるかー!!」

 ジャスティスハンターに妨害されたことで更に逆上するオーガ。

 オーガは金棒をでたらめに振り回した。

 咄嗟に俺は頼りなさそうな盾を構えて防御した。

 するとどうだろうか、盾はオーガの攻撃を完全に防ぎ、反動すらも感じさせない。

「え、なにこれスゲー!」

「それがジャスティスハンターの武器、『ジャスティスケージ』だ!」

「ジャスティスケージか。よし、このまま押し切るぞ! ハンター、ひとっ走り付き合えよ!」

 ブレスのセットされたハンターはサイレンを鳴らし、俺の言葉に答えた。

 

 再び金棒を振って襲い来るオーガだが、その攻撃をジャスティスケージで防ぐ。

 やはり攻撃が通ることは無く、奴は仰け反り体勢を崩した。

「仲間を倒されたお前の怒りは分からないでもない。だが、お前達がやろうとしたことを許すわけにはいかない!!」

「黙れ! 人間ごときがぁぁぁ!!」

 俺はベルトのキーを回してレバーとなったハンターを倒し、必殺技を発動した。

 ジャスティスケージをオーガに向かって放り投げると、ケージは檻となって奴を閉じ込めた。

 オーガはケージを破壊して脱出しようとするが、格子に触れた瞬間に強い電撃が流れてダメージを与える。

 そしてケージの周りに高速回転するタイヤの力で加速し、檻ごとロイミュードを貫いた。

 オーガは爆発四散し、排出された数字のようなものも砕け散った。

 こうして、二度にわたるロイミュードの襲撃事件は幕を閉じたのだった。

 

 ─R─

 

 029とドライブの戦いを見届けていたゼロとミューズ。

 二人は029が倒されたのことを確認し、ファイトとミストのもとへ帰った。

「やはり……色は違うが間違いない。仮面ライダーが復活した……」

 ゼロからドライブについての報告を受けたミスト。

 焦り、そして憎しみといった負の感情が彼女の顔から見て取れる。

「進化した029に勝ったのか! なるほど……ますますその『仮面ライダー』に興味が湧いてきた!」

 そんなミストとは真逆で、ファイトは強敵の出現に心を躍らせていた。

「ファイト! そんなことを言っている場合では無いのですよ!? 我々は一度奴に大敗している……。しかも、今度の奴はコアを破壊出来るほど強力になっている。負ければ命は無いんですよ!?」

「分かってるさ。けど、それでも俺は戦ってみたい。きっと楽しいんだろうな」

 子供のような無邪気な笑顔を見せるファイトに、呆れ果てて嘆息するミスト。

 そしてゼロもまた、ミストとは違った種類の険しい表情をしていた。

「大丈夫……?」

「ああ……頭の中が少しモヤモヤするだけだ。心配するな」

 心配そうな顔をするミューズにそう答えるゼロ。

 彼の脳裏に過ぎるのは、029を倒した赤い戦士。

 その姿が彼の中にある何かを刺激するのだ。

 だがそれが何なのか、彼には分からなかった。

 

 ─R─

 

 ロイミュードの浦の星襲撃から一夜が明けた今日。

 登校すると、ある話題が学校中でもちきりになっていた。

「仮面……ライダー……!?」

 廊下に張り出された校内新聞にでかい見出しとして書かれていたその名前。

 その隣には、ドライブの写真が掲載されていた。

 一体どういうことなんだと思った俺は、その新聞に群がっていた生徒の一人に声をかけた。

「な、なあ、ちょっと良いか? この新聞に載ってるのって……」

「そこに書いてあるじゃないですか! 仮面ライダーですよ、仮面ライダー!」

「えっと、そうじゃなくてだな、その仮面ライダーって何なんだ?」

「知らないんですか!? 三年前に起きたグローバルフリーズの中で、暴れ回るロイミュードを倒していったって言われていた正義の味方のことですよ!」

「へ、へえ……そうなんだ……」

 女の子とは思えないほど鼻息を荒くして熱く語る彼女。

 

 そして教室でも彼女同様、ほとんどの生徒が「仮面ライダー」の話で盛り上がっていた。

「仮面ライダー……仮面ライダードライブ。悪くない名前だ」

 周りに聞こえないほどの小さな声で、ベルトは呟いた。

 戦士ドライブ改め、正義のヒーロー「仮面ライダードライブ」の名はあっという間に広がっていったのだった。

 

 

 




???)なかなかやるね、ドライブ。まあ、今回のは借りにしておいてやるよ。俺がネクストシステムを使いこなせるようになったら、出番は無いかもね~。さて次回だ。「3/神とはいったいなんなのか」お楽しみに~。
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