ラブライブ!サンシャイン!!〜Aqours☆RIDERS〜   作:白銀るる

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ベルト)前回のラブライダーズ!
過去のトラウマが原因となり、人と避けるようになってしまった進太郎。しかし、クラスメイトである小原鞠莉に危機が迫ったことで、彼の心のエンジンに再び火がついた!
鞠莉)戦士ドライブ改め、仮面ライダードライブに変身した進太郎はロイミュードを倒して、それを目撃したわたしを連れてドライブの秘密基地、ドライブピットに帰還した。
進太郎)そして、俺はスクールアイドルのマネージャーとなり、正式に彼女達の仲間になるが、そこへ倒したはずのロイミュードがパワーアップして蘇ってきた。一度はピンチに陥るも、ジャスティスハンターの力を借りてロイミュードを退けたのだった。



3/死神とはいったいなんなのか

 その出会いはまさしく突然だった。

 町に出掛けていた俺達は、銀行強盗を働くロイミュード達と遭遇。

 その内の二体を撃破し、最後の一体を追い掛けていた。

「待て! ロイミュード!!」

「うるせー! 待てと言われて待つ奴があるか! それに……早くしないと死神の野郎が……」

「死神……?」

 俺の腕を振り払ったロイミュードは、重加速の所為で動けずにいた車を奪取し、町中を爆走して逃走を図ろうとした。

 俺ははすぐさまトライドロンを乗り込み、それに乗ってロイミュードとのカーチェイスが始まった。

 なんの躊躇いもなく、障害物の間を針を縫うように走る奴と、動けない人や車を避けながら走る俺。

 奴と俺の差はどんどん開いていった。

 このままでは奴を取り逃してしまう……。

 そんな焦りを感じ始めた時だった。

「ロイミュードの車が止まった……?」

 逃げていた車が突然急停止し、その次の瞬間にロイミュードのものと思しき断末魔とともに爆発を起こしたのだった。

「何だ!? 何が起こったんだ!?」

「まさか何者かがあのロイミュードを倒したのか……!?」

 目の前で起きた出来事に、俺もベルトさんが驚きの声を上げる。

 そして、やはり今の爆発でロイミュードは倒されたらしく、重加速が解除されて周りの時間の流れも元に戻った。

 

 煌々と燃え上がる車の向こう側から人影が現れる。

 紫を基調としたチグハグな装甲。

 仮面ライダーとは言い難いが、目の前のソイツの姿はドライブに近しい何かを感じる。

 ふと、さっきのロイミュードが言っていた言葉が蘇った。

「……死神」

 それが、俺とソイツの出会いだった。

 

 ─R─

 

 スクールアイドル部に入部してから一週間が経った。

 専門的な知識を覚えるのは少々手間取ったが(主に黒澤の所為で)、必要な練習の種類やマネージャーとしての仕事に関しては、比較的すんなりと飲み込むことが出来た。

 部員達との関係もまだ何人かとは距離を感じるものの、良好的と言って差し支えない。

 そう遠くないうちに完全に打ち解けられるだろう。

 

 と思っていたのも既に過去のこと。

 実は、昨日の部活で「進太郎君の歓迎会をしようよ!」と高海が言い出し、満場一致で流れるように開催が決定されたのだ。

「歓迎会だなんて大げさな」と断ろうとしたのだが、何人かとの「見えない壁」を指摘され、歓迎会兼懇親会として、何故か俺の家で開催されることになったのだ。

 そして現在、鞠莉と一緒にデパートで買い物を済ませた俺は、会場である家に帰る為にトライドロンを走らせていた。

 一緒に出掛けた鞠莉はもちろん、ベルトさんとシフトカーたちもいる。

 俺が運転している隣で、みんな楽しそうに歓迎会のことで話に花を咲かせていた。

「なあ、楽しそうなのは良いんだが、どうして俺まで駆り出されてるんだ?」

「うちの部には進太郎みたいに力持ちな子が果南しかいないのよ。だから果南がいなくなっちゃうと、会場の準備の方が滞っちゃうの。だから、ごめんね」

「なるほど、それは納得だ。でも(うち)でパーティするのはベルトさん的には良いのか?」

「問題無い、むしろ大歓迎だよ。フレア達も君の友人が遊びに来るのを楽しみにしているんだ」

 ホルスターから発進したマックスフレアが、頷く代わりのクラクションを鳴らす。

「『進太郎の友達が初めて家に来るんだ。楽しみ以外の何物でもない』そうだよ」

「フレアってば、まるで進太郎のパパみたいね」

 鞠莉とベルトさん、さらにシフトカー達も一緒になって賑わう車内。

 以前の俺ならただ「うるさい」としか思えなかっただろう。

 それが、今は楽しいと感じてしまってしようがない。

 

「……なんか良いな。こういうの」

 彼らを横目に自然と口が動いていた。

「進太郎、今何か言った?」

「別に。大したことじゃないさ」

「えー、気になるー。あ、もしかしてマリーみたいな美少女とデート出来て嬉しいとか!?」

「自分で美少女って言うのか……」

 そうツッコんではみたものの、本人はきっと冗談のつもりで言っている。

 だがその冗談は冗談の域に留まってはいない。

 実際、鞠莉の容姿は他の女子高生のそれを遥かに上回っている。

 特にスタイルは、Aqoursのメンバーの中でも秀でている。

 ……オッサン臭い発言とセクハラがなければ、完璧なスーパー美少女だ。

「……まあ、それがお前の良いところかもな」

「あまり独り言が多いと髪の毛が無くなっちゃうわよ〜」

「お前は小学生か」

 そんな冗談を交わしながら、叔父さんの家を目指した俺達。

 

 だがその平穏は、たった数秒で惨劇と化した。

 

 この辺り一帯を重加速が覆い、トライドロン以外の車の動きがゆっくりになる。

「近いぞ、進太郎!」

「ああ、分かってる! 変身!!」

「ドライブ! タイプスピード!!」

 ドライブに変身して辺りを見回すと、札束の覗くカバンを持った不審な三人組の男が銀行から逃げ出して行った。

「あの人達、どんよりの中でも動けてる?」

「恐らく奴らがロイミュードだ」

 ロイミュードと思しき男を追いかける為、アクセルペダルを踏み込もうとすると、今度は銀行のドアが銃で撃ち砕かれた。

 そして、その中から三体のロイミュードが姿を現した。

「まだロイミュードがいたのか!?」

「さっきの三人はハンター達に追わせよう。君はあの三体を倒すんだ!」

「了解だ、ベルトさん! フレア、スパイク、シャドー。お前達は俺と来てくれ。他のみんなは鞠莉を頼む!」

 ハンターとファイヤーブレイバー、そしてバーニングソーラーがトライドロンから飛び出して男達を追いかけ、フレア達はホルスターに収まった。

 残りのシフトカー達は、「任せろ」と言わんばかりにクラクションを鳴らした。

 俺が降りると鞠莉を乗せたトライドロンはこの場から離れていく。

 トライドロンが隠れたことを確認した俺はロイミュード達に戦いを挑んだ。

 

「そこまでだ、ロイミュード!」

 俺の声に反応し、奴らは一斉にこちらに視線を向けた。

「貴様は……仮面ライダーか!?」

「俺達の邪魔をするなら容赦しねえ!」

 ロイミュード達は怒号を上げ、一斉に構えて襲いかかって来た。

 だが、以前戦ったオーガ・ロイミュードと比べ、攻撃の威力は低く、反撃も容易く通った。

 多対一と言えど、苦戦する相手ではない。

「ち、チクショウ……! なんて強さだ!」

「怯むな! 相手は一人だ。三人で連携を取ればいける!」

 ロイミュード達は闇雲に戦っていても勝てないと判断し、俺を囲むようにして陣形を組んできた。

 数で優っている奴らが連携をとれば、俺達が不利になるのは明白。

 そうはさせまいと、俺は正面にいたロイミュード051に攻撃を仕掛けた。

 

 それが罠だと気付かずに。

 

 051は真正面から迎え撃ち、俺の拳を掴んだ。

「掛かったな! バカが!」

 罵る言葉と共に大声で笑う051。

 これが罠だと悟った時には既に手遅れで、俺はロイミュード089が吐き出した糸に絡まれてしまった。

「しまった……!」

「こーんなに簡単にひっかるなんてなー。仮面ライダーも案外大した事ねーな」

 糸には粘着性があり、俺の体を腕ごと縛って自由を奪う。

 そして思うように動けなくなった俺を嘲笑し、奴らは攻撃を仕掛けてきた。

 

 この間のオーガ程ではないにせよ、ロイミュードの攻撃をまともに受けるのはかなりキツイ。

 このまま受け続ければ、そう長く変身した状態は保てない。

「ベルトさん……何か手は無いか……?」

「援軍を呼ぼう。カモン、マッシブモンスター!」

 ベルトさんが大声で叫ぶと、オーガ戦の時と同じように一台のシフトカーがやって来た。

 そのシフトカーは体当たりでロイミュード達を弾き、更には俺の体に巻き付いた糸を噛み千切った。

「ベルトさん、コイツは?」

「彼はマッシブモンスター。非常に強力なパワーを持つシフトカーで、わたし達の仲間の中でも随一のならず者さ」

「よろしく頼むぞ、モンスター!」

 クラクションでの返事を聞き、モンスターを変形させてシフトブレスに装填する。

 それからいつもの手順でレバーとなったモンスターを倒した。

「タイヤコウカン! マッシブモンスター!!」

 トライドロンからモンスターのタイヤには専用の装備が付属していて、タイヤがたすき掛けされると同時に両手に装備された。

「モンスターのタイヤには顔がついてるのか。よし、いくぞ!」

 俺はモンスターの武器で089を殴りつけた。

 その威力は凄まじく、たった一撃で089を軽々と吹き飛ばした。

「おお……! コイツはスゲー! よし、さっさと倒してあの男を追い掛けるぞ!」

「こんにゃろう! 俺達のことはもう眼中にねーのかよ!」

 わめくロイミュード104は翼を広げ、空に飛んで助走をつけて突撃して来た。

 しかし、104はタイヤから伸びた舌に叩き落とされ、攻撃は失敗に終わった。

 二体がダウンしたので立っているのは一体だけ。

 まずはそいつに狙いを定め、俺は必殺技を発動させた。

「ヒッサーツ! フルスロットル! モンスター!!」

 両手の武器に緑色のエネルギーが蓄積されていく。

 俺はその攻撃を確実に当てるために、再びタイヤの舌を伸ばして089を捕らえた。

「や、やめろ──ッ!!」

 体に巻きついた舌は、089を無理やり技の発動圏内に引きずり込んだ。

「嫌だァァァァッ!!」

 断末魔とともに089は爆散し、そのコアも砕け散った。

「コノヤロウ! よくもやりやがったな!!」

 089が倒されたことで、104が怒りをあらわにしながら拳を振るう。

 だがその攻撃は俺には届かず、俺は再び奴を舌で引っぱたいた。

 最後はもう一度武器にエネルギーを溜めて104を噛み砕いた。

「ば、バカな……! こんなことが……」

 一気に二人もの仲間を失い、形成逆転されたことに酷く狼狽した様子を見せる051。

 だがこの町の平和を乱し、人々を恐怖に陥れたロイミュードにくれてやる慈悲は無い。

「さあ、後はお前だけだ! 覚悟しろ、051!!」

「冗談じゃない! こんな所でくたばってたまるか!」

 051は背負っていた袋を俺に顔に投げつけて視界を遮る。

 袋の中からは、奴らが銀行から奪った大量のお金が詰め込まれていた。

「ちょ、待て! あーん、でもこれを放置するのも不味いし……」

 小さくなっていく051の背中と袋からこぼれそうになっているお金の板挟みになり、おろおろしているとタクシー型のシフトカー「ディメンションキャブ」がやって来た。

「このお金は彼に任せよう! 君は奴を追うんだ!」

「分かった。ちゃんと銀行に返しておいてくれ。頼んだぞ、キャブ」

 俺はシフトカーをシフトスピードに戻してレバーを倒し、加速してロイミュードを追跡した。

 

 シフトアップしたドライブは重加速下にあるにもかかわらず、途轍もない速度であっという間にロイミュードに追いついた。

 051を捕らえるが、奴は倒されまいと抵抗をしてきた。

「待て! ロイミュード!!」

「うるせー! 待てと言われて待つ奴があるか! それに……早くしないと死神の野郎が……」

「死神……?」

 捕らえた051はさっきとは比べ物にならないくらいの焦りを見せていた。

 必死の抵抗を受けた俺は遂に腕を振り払われてしまい、奴の逃走を許してしまった。

 051は重加速の影響で逃げ遅れてしまっていた車を強奪し、遠く離れていく。

「奴をこのまま野放しにするわけにはいかない! 行くぞ、進太郎!」

 ベルトさんがトライドロンを呼び、それでロイミュードを追うように促してくる。

 助手席に乗っていたはずの鞠莉とフレア達の姿はなかった。恐らくフレア達と一緒にどこかに避難しているのだろう。

 俺はトライドロンに乗り込み、ロイミュードが運転する車を追いかけた。

 

 そして、俺がロイミュードに追いつくと同時に奴が奪った車は爆発を起こし、炎上したのだった。

「何だ!? 何が起こったんだ!?」

「まさか何者かがあのロイミュードを倒したのか……!?」

 予想だにしなかった展開に、俺もベルトさんも驚きを隠せなかった。

 爆発の際に聞こえた断末魔は間違いなく051のもの。

 つまり、ドライブ以外の誰かが奴を倒したことになる。

 顔は仮面で隠れてしまっているため見れないが、俺は口を開けたまま炎上する車を眺めていた。

 すると、俺とベルトさんは車の向こう側に誰かが立っているのをこの目で捉えた。

 紫、黒、銀色を主なカラーとする左右非対称のアーマー。

 全体的にバイクを彷彿とさせるデザインをしているが、その風貌はどこか仮面ライダーに似ているような気がする。

 

 アイツが051を倒したのか……? 

 そう言えば、051はこんなことを言っていた。「早くしないと死神の野郎が……」と。

「死神……」

 奴の言っていた死神とは、目の前にいるアイツのことなのか……? 

 俺が「死神」の言葉を呟くと、アイツはそれに反応したのかこちらに視線を向けた。

「お前が……死神か?」

「……相手の名前を聞く時は、まず自分から名乗るのが礼儀というものだろう」

 その風貌のイメージ通りの低い声で、俺の問いかけに答えるツギハギの戦士。

「だが……そうだな。俺が死神だ。そして、ロイミュードの番人。魔進チェイサー」

「魔進チェイサー……。ロイミュードの番人ってなんだ」

「俺の役目は、ロイミュードとして相応しくない行いをはたらく者を処刑し、リセットすることだ。故に俺は死神と呼ばれている。だが、俺から言わせてみれば、コアまで破壊してしまうお前の方がよほど死神と呼ぶに相応しい」

「俺の方が死神だと……? バカを言うな! 俺達人間からすれば、お前達ロイミュードの方が死神……いや、悪魔だ!」

 俺とチェイサーは睨み合い、互いに一歩も引かなかった。しかし、少しするとチェイサーは体の向きを変え、立ち去ろうとした。

 だが、二、三歩歩いた所で立ち止まって少しだけこちらに顔を傾けた。

「次に会う時は戦うことになるだろう。その時は覚悟しておくことだ。俺は他の奴ら程甘くは無い」

 チェイサーは再び歩み始め、車の反対側に止められていたと思われるバイクで去って行った。

 

 その後、ハンター達が追跡した銀行強盗達は気絶した状態で発見された。

 気を失っていた原因は分からなかったが、俺は三人を拘束して警察に引き渡した。

 

 ─R─

 

「えっ!? じゃあロイミュードに逃げられちゃったの!?」

「ああ……多分な」

 鞠莉達と合流し、再び帰路についた俺達。

 車内での会話はやはり戦いの話になってしまった。

「魔進チェイサーと名乗ったあの戦士……。恐らくドライブに匹敵する、あるいは同等以上の強さを持っているはずだ。彼と戦うためにも、早急に新装備を完成させてもらい、戦力の増強を図ろう」

「新装備か……」

 車内は重ためな空気に支配される。

 まあ、こんな物騒な話をしていれば当然だろう。

 だがこの空気は鞠莉によってすぐに打ち破られた。

「二人ともそんな難しい顔しない〜。準備も含めてみんなパーティを楽しみにしてるんだから」

 屈託のないその笑顔は昼を照らす太陽のようだ。

「……そうだな」

 俺は彼女の言葉に頷き、トライドロンを走らせた。

 

 ─R─

 

 051を処刑した魔進チェイサーはミューズの待つ場所までバイクを走らせた。

「大丈夫だった、ゼロ?」

「ああ。051はミスト達の所に行くだろう」

 チェイサーは武装を解いてゼロの姿に戻りながら、「それから……」と続けた。

「仮面ライダーと会ってきた。正確には丁度居合わせたか」

「もしかして戦ったの……?」

 ミューズはどこか後ろめたそうな表情でゼロに尋ねる。

 対してゼロは全く表情を崩さずに答えた。

「いや、今回は戦ってない。だがいずれ戦う時は来る。そう遠くないうちに」

「そう……」

 ミューズは、ゼロからヘルメットを受け取る。

「やっぱり戦うのね……」とミューズは呟くが、バイクのエンジン音に掻き消され、ゼロに届くことはなかった。

 

 

 




進太郎)死神と出会ってから一週間が経ち、正義叔父さんの家で俺の歓迎会が開かれた。……本当になんで叔父さんの家なんだ……?
鞠莉)Aqoursのみんなが入れるくらいの大きさの家ってなかなか無いでしょ?それにオジサマ達にもちゃんと挨拶しなきゃ。
進太郎)挨拶って……嫁入りじゃあるまいし……。まあ、ひとまず予告だな。次回、「4/そのパーティーの主役はだれか」

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