ラブライブ!サンシャイン!!〜Aqours☆RIDERS〜 作:白銀るる
進太郎がスクールアイドル部のマネージャーになってから一週間。わたし達は、進太郎の歓迎会を計画して着々と準備を進めていた。
進太郎)鞠莉、そしてベルトさんと買い出しに出掛けていた俺達だったが、そこへ銀行強盗を働くロイミュードと遭遇してしまう。ロイミュード達を撃破していく俺とベルトさんだったが、最後の一人を追う俺達の前に「死神」こと「魔進チェイサー」が現れた。
ベルト)チェイサーは、次に会う時は戦いの中である、とをわたし達に言い残し、その場を去る。そしてわたし達の知らない場所で、なにやら不穏なことが起きているのだった。
魔進チェイサーに処刑され、肉体を失ったロイミュード051がやっとの思いで辿り着いたのは、チェイサーと同格の二人──ファイトとミストが拠点と定めたマンションだった。
「無様ですね、051。貴方のその姿を見るのは何度目でしょうか?」
コアだけとなって自身の前に現れた051を鼻で笑うミスト。
その態度に051は怒りをあらわにして叫んだ。
「ふざけんな! テメーが死神にやらせたんだろうが!」
「ふざけているのはどちらですか? わたしは何度も忠告したはずですよ。あまり派手に暴れるなと」
ミストが鋭く冷たい眼で睨み付けると、051はその迫力に気圧されて萎縮してしまう。
「まあまあ、良いじゃないか。俺も051の気持ちは凄く分かる。俺だって暴れたいんだよ」
「やめてください、ファイト。貴方が暴れると後始末が大変なんですよ? それに、これは我々ロイミュードの存続がかかっている問題なんです。派手に動き回れば仮面ライダーが現れる。既に三人のロイミュードが倒されているんです。悪戯にこちらの数を減らすわけにはいきません!」
ミストは051に同調するファイトを叱る。
ファイトは「そう怒るなよ」と彼女をなだめようとするが、その言い分は正しい。
ロイミュードの総数は百八体のみ。
数少ない仲間を失うことは、彼らの計画の最終目標から遠ざかることを意味するのだ。
「そう言えば051。お前と一緒にいた089と104はどうした?」
ミストの説教を聞き、ファイトは051には二人のロイミュードの仲間がいたことを思い出した。
089と104も、051同様に何度もチェイサーに粛清されている。
いつも一緒になって自分達の元へ来ていたことを覚えていたのだ。
「それが……アイツらは仮面ライダーに倒された」
「何ですって!?」
クールダウンしかけていたミストは、顔を真っ赤にして051を怒鳴りつけた。
「貴方達は全く学習しないだけでなく、挙げ句の果ては仮面ライダーと接触して倒されたと言うのですか!?」
ビクビクと震える051だったが、二人の間にファイトが割って入った。
「まあまあ、落ち着け。 それで051、もう一度仮面ライダーと戦ったとして勝つことは出来るか?」
051は答えない。ファイトの問いかけに「イエス」と答えることが出来ないからだ。
彼のプライドが「出来ない」と答えることを許さないのだ。
「やはりそうか……」
自らと同じロイミュードである051を追い詰めた人間に対するワクワク感、そして勝てないと認めてしまう仲間の情けなさという複雑な想いに、ファイトは溜め息を吐く。
しかし、そんな彼の矛盾は一つの解決策をもって解消された。
「よし! 俺がお前を鍛えてやる! みっちりな」
「なっ!? 正気ですか!? 貴方がわざわざこんなバカ相手に特訓だなんて……」
「ミスト。そこまでにしておけ」
051をバカと罵るミストだったが、ファイトは彼女をたった一言で黙らせてみせた。
静かに、しかし確かな怒りが彼の瞳には宿っていた。
だが、それも数秒足らずで消え去った。
「あまり悪く言ってやるな。051だって俺達の仲間なんだから。仲間の力になるのは当然のことだろう? それに俺たちの目的の為には、強い仲間が一人でも多く必要なんだ。もう五人も大事な仲間がいなくなってる。なに、無茶はしないさ」
そう言ってファイトは051にコブラの形をしたバイラルコアを与え、肉体を取り戻した彼とともに去って行った。
そして二人と入れ替わるように、ゼロとミューズがミストのもとに帰還した。
「今、ファイトと051が二人で出て行ったようだが、何かあったのか?」
「……ファイトが051を鍛えるそうです。仮面ライダーを打倒するために」
「ふむ、そういうことか」
ゼロがファイトの行き先を確認すると、ミストは神妙な面持ちで部屋を出て行こうとする。
ゼロとミューズは、ミストが何かを持っているのを察知するも、ほとんど彼女の手に包まれているためにその全容を見ることは出来ない。
「わたしも少し出てきます。二人はここでファイト達の帰りを待っていてください」
「分かった」
マンションの一室に二人を残し、ミストは玄関の扉を開いた。
その手には、赤いボディのバイラルコアが握られていた。
─R─
スクールアイドル部に入部してから二週間が経った。
そして、明日はいよいよ俺の歓迎会が開かれる。
開催場所は、俺が居候させてもらっている正義叔父さんの家。
会場に選ばれた大部屋は既に飾り付けされていて、何時でも始められる状態になっている。
「明日には進太郎の歓迎会か。いいねー、青春だねー」
「すいません、叔父さん。この家を会場に選んでしまって……」
「そんなこと言うなって、何度も言ってるだろ。あの事件以来、友達が一人もいなかった進太郎に新しい友達が九人も出来て、しかも遊びに来てくれるんだ。こんなに嬉しいことは無いさ」
自分のことのように喜んでくれる正義叔父さん。
こんなに嬉しそうに笑っている叔父さんの顔は、一緒に住み始めてから初めて見た。
「で、その後はどうだい?」
そんなことを思っていると、笑っていた叔父さんは突然真剣な顔になり、ひそひそ声で尋ねてきた。
「まあ、ボチボチって感じですよ。マネージャーの仕事って意外と大変で……」
俺は、マネージャーのことを聞かれたのだと思い、この間の黒澤との話をしようとすると、叔父さんは「違う違う」と首を横に振った。
「小原のお嬢ちゃんとはどれぐらい進んだのか、ってことだよ」
叔父さんが聞いてきたことは、つまりは
「なっ……!? 何言ってるんですか!? 別に鞠莉とはそういうんじゃないです! 他のみんなと同じ『友達』ですよ!」
「えー……あんなに良い子、ほっといたら他の男に取られちまうぞ?」
「えー……じゃないです。だいたい、アイツは大企業の令嬢ですよ? そこいらの一般人、それも俺みたいに一度ドロップアウトしてる人間となんて……って何言わすんです!?」
反論する俺を見て、叔父さんはニヤニヤと笑っていた。
確かに鞠莉は容姿、性格ともに魅力的な女性だ。
だが俺達の関係はアイドルとマネージャー、そして良き友人であり、そこに恋愛感情はない。
「だ、第一、俺と鞠莉はマネージャーとアイドルです。そんな二人が恋愛なんて……」
そう、そんな感情は抱いてはいけない。
仮にそんな関係になったとして、それが世間に知られでもすれば鞠莉は糾弾されてしまうだろう。
そして、みんなとの関係も終わってしまう。
それだけはあってはならないのだ。
「そうか、そういやそうだったな。……お前はホント偉いよ。小原のお嬢ちゃん達に色目を使わず、ちゃーんと守ろうとしてる。大丈夫さ。あの子はお前を見放したりしねーよ」
俯く俺の頭に手を乗せ、バツの悪そうな笑みを浮かべていた叔父さんは、またにかっと笑った。
「うっし! 明日は俺もとびっきりのサプライズを用意してやっからな!」
「それを言ったらサプライズじゃないんじゃ……」
「こまけーことは良いんだよ。んじゃ、おやすみ~」
正義叔父さんはクルリと体を翻し、自分の部屋に戻っていった。
「おやすみなさい」と言葉を返し、俺も自室に戻って眠りについた。
─R─
そしてその日はやって来た。
煌びやかな飾り付けが施された部屋は、誰が見てもパーティ会場だと認めるだろう。
その中で参加者達はクラッカーを持ち、それを鳴らす合図を待っていた。
「それでは! スクールアイドル部主催、泊進太郎君の歓迎会を始めます! ようこそ、スクールアイドル部へ!」
高海の挨拶に続いて一斉に鳴るクラッカーと拍手。
シフトカー達もこっそりと小さめのクラクションで祝ってくれた。
「まずは主役の進太郎君から一言!」
「お、俺から!? えーっと……みんな、ありがとう。俺のためにこんな会を開いてくれて。まだまだ分からないことは多いけど、みんなと一緒に頑張ろうと思う」
再び拍手喝采が起きる。
なんだか照れ臭いが、同時に嬉しい気持ちが湧いてきた。
「みなさん、グラスは持ちましたか!?」
高海の号令にみんな元気よく返事をする。
やはり、シフトカー達も隠れながらクラクションを鳴らしていた。
「それでは、かんぱーい!」
「「かんぱーい!!」」
自分が住んでいる家で友達を呼んで遊ぶなんて、何年ぶりだろうか。
みんな楽しそうに笑っていて、その笑顔を見ていると俺もつられて笑ってしまう。
「楽しいわね、進太郎」
「ああ。こんなに楽しいのは久しぶりだよ。……本当にありがとな、こんな俺を誘ってくれて」
「お礼を言われることなんてしてないわ。わたしはオジサマとの約束を守っただけ。……それに進太郎のことを放っておけなかったから」
「理事長としてってことか?」
「それもあるけど……やっぱり、一番は同じ学校に通う仲間としてよ」
そう言って鞠莉は笑った。
鞠莉を見ていると、俺はきっと彼女には勝てないと思わされる。
そして、絶対に守り抜きたいと。
「進太郎ー! ちょっと手伝ってくれー!」
台所の方から叔父さんが俺を呼ぶ。
多分、料理を作り過ぎて一人では運び切れないんだ。
「今行きます」と返事をすると、「済まない」と言葉が返ってきた。
「待って、進太郎。わたしが行くわ」
「え? でも鞠莉はお客さんだし……」
「ノンノン。今日は貴方が主役なんだから。それじゃあ行ってくるわね」
鞠莉は立ち上がると、台所の方へと消えていった。
すると今度は高海と渡辺、桜内が俺の隣に来た。
よく見るとニヤニヤと笑みを浮かべている。
「ねえねえ、進太郎?」
「なんだ?」
「進太郎君と鞠莉ちゃんってすっごく仲良いよね?」
「もしかして二人はそういう関係……?」
「ちょっと二人とも。あまりそういうことを詮索するのは良くないわよ?」
どうやら俺達が恋仲であるのかと探りを入れに来たらしい。
桜内は、そういった繊細なことを勘ぐるなと二人を注意した。
「違うよ。俺達はただの友達だ」
「でも、最初に部室に来た時と二回目に来た時とで、二人とも結構距離が縮まってたよね」
「梨子ちゃんは気にならないの!? どうしていきなり二人が近づいたのか!?」
「そ、それは……」
俺の方をチラリと見て「やっぱりダメだよ!」と反論するが、どこか歯切れが悪い。
「ただ少し喧嘩しただけさ。俺が隠してきた本音をぶつけて、アイツがそれを受け止めてくれた。ただそれだけだ」
ベルトさん達のこともあるし、あまり包み隠さず話してしまうと空気を悪くしてしまうので、大まかに教えた。
「本音?」
「……友達が欲しかったんだ。こんな風に笑い合える友達がさ。だからみんなには本当に感謝してる。改めてありがとうな」
俺がお礼を言うと三人は微笑んだ。
それから、いつの間にか俺達の方を見ていた五人も同じように笑っていた。
「追加の料理を持ってきたぞー!」
「パーティはまだまだ始まったばかり! もっともっと盛り上げていくわよー!」
家の中が明るい笑顔で満たされていく。
あの日以来、初めて永遠に続いて欲しい時間が、思い出が出来た瞬間だった。
正義)いやー、歓迎会楽しかったな!まさか、進太郎があんなに友達を連れてくるなんて思わなかったぞ。
進太郎)一番びっくりしてるのは俺ですよ。また、あんな風に笑えるなんて思ってもみなかったですから。
正義)まあ、これから頑張ってけよ。マネージャーも、ドライブも。
進太郎)はい。それじゃあ予告いきましょう。
正義)アイドル部のマネージャーとして、忙しくも充実した日々を送り始めていた進太郎のもとに、Aqours宛のイベントの招待状が届いた。
進太郎)俺が加わってから初のイベントに、Aqoursの面々は気合十分でイベントに臨むが、そこに悪意の影が忍び寄っていた……。次回「5/スクールアイドル達を狙うのはだれか」