ブルーのアオは煽りのアオ 作:はるみゃ
鬱蒼と生い茂った草木によって天然の迷路を作り上げているトキワの森。
むしポケモンが多く出現するということで、カントー地方女性トレーナー行きたくないランキングで毎回上位にランクインするその場所を、一人の少女が震えながら歩いていた。
可哀想に、むしポケモンに怯えているのだろうか――
「あはは、あの二人の悔しそうな顔…………これだから煽りプレイはやめられないのよね……」
――否。ただ幼馴染の痴態を思い出してゾクゾクしているだけである。
言わずもがな。
その少女の名前はブルーだった。
ついさきほどオーキド博士からポケモン図鑑をもらいマサラタウンから出発したばかりのブルーは、約二時間という異様な速度でトキワの森に進出していた。
理由は単純。
幼馴染達のように、野生のポケモンを捕まえたり、戦ってレベリングしたりなどを一切せず、ただひたすらに歩を進めていたからである。
――では、何故、捕獲や育成をしないのか?
これも理由は単純で。
記憶を手に入れてからの二年間で予め手持ちにするポケモンを捕まえ、育てていたからだ。
普通ポケモンを保有、捕獲、育成できる許可が下りるのはトレーナーとして活動できる十歳からなのだが、「まぁ、バレなきゃいいでしょ」とブルーはそれを破っていた。
そのため、ポケモンを捕獲する必要も、育成も本日手に入れたゼニガメ以外はする必要がなく……。
ゼニガメに関しても有利タイプである「いわ」ポケモンしか出てこないニビジムで育てることを予め決めていた。
そのため、野生のポケモンと遭遇しなくなるアイテム、むしよけスプレーを使いながら進んだ結果が……今に至る。
「あは……はは……流石に笑えなくなってきたわ……。どこかに新しいオモチャいないかな……あっ…」
トキワの森を歩き始めて早十分。
大体中間に差し掛かったであろう場所で、ブルーは虫取り網を片手に装備した少年を発見した。
「んー、いないなぁ……」
何かを探しているのか。キョロキョロと辺りを見渡す少年を見て――
――正確にはその腰にモンスターボールがあることを見て、ブルーは小さく舌舐めずり。
「……オモチャみっけ」
小声で呟くと、猫撫で声で少年に声をかけた。
「ねぇ、そこの君~! 何してるの~?」
「……!? 」
突然の出来事に少年は一瞬ビクリと肩を揺らしたが、ブルーの姿を認めると鼻の下を伸ばし始めた。
それも当然と言えよう。
ブルーは外見だけは清潔感を感じさせる清楚な美少女なのである。……あくまで外見だけで、内面は清楚の「せ」の文字もない性悪だが。
だが、初対面で内面を知ることが出来るはずもなく、少年はブルーの、その清楚な見た目にコロリと騙された。
「な、なにって。そりゃ、ポケモンを探してるのさ……! 俺はトレーナーだからね」
「へ~。君トレーナーなんだ~! 凄いね、実は私もなんだよ。今日なったばかりなんだけどね」
ブルーが今知ったとばかりに驚いたフリをすると、少年はへへっと鼻の下を擦った。
「実は俺、明日にでもニビのジムを受けようかと思っててさ――」
聞いてもないのに自分語りを始める少年に、すかさずブルーは相槌がてら提案する。
「そうなの――じゃあ私も一緒に受けてみようかな~」
「え、君今日トレーナーになったばかりなんだよね? やめておいた方が……」
「あはは、大丈夫だよ。記念に挑戦するだけだから……君と会った記念にね」
初対面の少年を赤面させる言葉を吐いたブルーだが、彼女は二つのことを知っていた。
一つはジムトレーナーの実力を。ジムリーダー、タケシの力を。十中八九この少年は破れるだろうことを。
根拠はジム戦前に、虫取り網を持ってポケモンを探していること。
その時点で実力は十分察せる。
――虫取り網で捕まえられるポケモンはキャタピーかビードルくらいですもの。
そんなポケモンをジム戦前に探しているときた。
どう足掻いてもタケシに勝てるとは思えない。
そして、もう一つ。
この場で戦って直接実力差を思い知らせるよりも、"自分が負けた相手に
ソースは
故に今日挑もうとしていたジム戦を明日にずらすことにした。
全ては、煽りのために。
元々タケシに煽って勝つつもりだったが、少年の後に戦えば、タケシと同時に少年も煽ることが出来る。まさに一石二鳥。
――どんな方法で煽ろうかな……あぁ……ゾクゾクしてきた……
そんなジム対策(?)を練りながらブルーは笑みを浮かべた。
邪悪な笑みを。