ブルーのアオは煽りのアオ 作:はるみゃ
「待てブルー」
それはハナダシティのジムリーダーであるカスミを煽り倒した後。
ご満悦なブルーが桟橋を渡ろうとした時だった。
名前を呼ばれて振り向くと、はぁはぁと息を切らす
「あら、グリーンじゃない。こんな所で会うなんて奇遇ね。ちゃんとジムバッチは集めてる?」
「無論だ。ハナダのジムはまだだが、ニビなら取った」
「へぇー」
余裕そうに言いながらも、ブルーは内心焦っていた。
と言うのも、グリーンはブルーと違い、ヒトカゲを貰う前からポケモンを保有する、といった行為はしていなかったからだ。
故に、例え虫取り少年を煽るのに無駄に一日を使っていたとしても、自身に追いつかれることはないと考えていた。
ーーーライバル補正ってやつかしら。
予想を遥かに超える進行スピードに、小さく舌打ち。
若干苛つきながらも、ブルーは自分を呼び止めたグリーンに何の用かを尋ねた。
「決まってるだろ。ポケモンバトルだ」
「あぁ、そう」
はぁ、とブルーは小さく溜息を吐く。
確かにレッドやグリーンは煽り甲斐があり、戦うのは楽しい。
だけど、今回は前回戦ってからの期間が短すぎる。
タケシを倒して多少自信が付いたのかも知れないが、ぶっちゃけそう大して実力も変わっていないだろう。
ーーー本当はもうちょっとジムを攻略させて自信が有頂天になってるところを叩き潰したかったんだけど。…仕方ないか。それはレッドにしよう。せっかく二人も幼馴染みがいるんだし、有効的に活用しないとね。
「ま、いいけどさぁ……ルールはどうするの? 何ならハンデつけてあげるけど」
「三対三でいい。ハンデはいらん」
「強がっちゃって」
ーーーまぁ、どっちにしても全力は出さないんだけど。さて、どの子を出そうか。グリーンは恐らくヒトカゲをエースにしてるはず。負けた理由をタイプ相性の所為にされても嫌だし、やっぱり煽りを兼ねるなら不利なポケモンで行くべきだよね。
「使うポケモンは決まったか?」
「オーケーオーケー。問題ないよ。さぁ、かかっておいで」
「そんな軽口を叩けるのも今日が最後にしてやるぜ、行けピジョン!」
「出ておいでバタフリー」
ーーーピジョンか〜、よし、不利なタイプ! これで二体は確定ね。
場に出されたピジョンを見て口元を歪めるブルー。
不利なタイプを出されて喜ぶのは彼女くらいである。
「何笑ってやがる。知らないのかブルー、むしタイプはひこうタイプに弱いんだぜ。ピジョン『つばさでうつ』」
「へぇ……そーなんだ。凄いねー。バタフリー、空高く飛んでピジョンから離れて」
知らないわけないでしょうが。そう突っ込みたくなる気持ちを抑えて、ブルーはバタフリーにそう指示を出す。
「な、距離を取るつもりか!? 追え、ピジョン!」
当然ながら蝶のバタフリーよりも鳥のピジョンの方が飛ぶスピードは速い。
見る見るうちに追いついたピジョンの羽がバタフリーの胴体を叩こうとした、寸前。
ブルーはニヤリと笑みを浮かべて指示を出した、
「『しびれごな』を『かぜおこし』」
「な! 避けろ、ピジョン!」
「無駄だよ」
しびれごなやねむりごなと言った粉系の技は、効果は強いのだが、いかんせん射程範囲が短く技の速度が遅い。その為、命中率が非常に低い。
それは命中率に補正がかかる『ふくがん』の特性を持つブルーのバタフリーでも変わらない。
しかし、ブルーは『しびれごな』をピジョンのから落とすように発動すること。そして『かぜおこし』をアシストとして使うことで欠点である射程距離、技の速度を補っており。
またピジョン自身、バタフリーに接近していたのもあって、『しびれごな』を顔面から受けることとなった。
ーーーゲームの時は同時に技なんて無理だったけど。現実になると出来ちゃうんだからポケモンバトルって奥が深いのよね。
身体が上手く動かず墜落していくピジョンを眺めながら、感慨深く目を細めるブルー。
「バタフリー、『エアスラッシュ』を放ち続けなさい」
無論、殺意はマシマシである。
ちなみに『ねむりごな』採用しなかった理由については、動けない相手を痛ぶるのは楽しいが反応がないとつまらないから、だ。
まさに非道だった。
「も、戻れピジョン!」
堪らずピジョンを戻すグリーンに、ブルーはニヤニヤとした笑みを浮かべる。
「あれー? タイプは有利じゃなかったの? どうして負けてるのかなー? あはははは」
「くっ、リザード!」
「バタフリー、そのままの高さで『しびれごな』を撒き散らしなさい」
「リザード避けながら『ひのこ』! チッ、届かないか!」
バタフリーはかなりの高度を維持しており、リザードの『ひのこ』は届く前に消えてしまう。
ーーーぶっちゃけ、ひこうタイプって飛べない相手に対しては無双なのよね。ひこうタイプのポケモンが物理技しか覚えていない場合や、相手のポケモンが『かえんほうしゃ』や『サイコキネシス』など強い特殊技を覚えている場合なら話は別なんだけど。
必死に『しびれごな』を回避していたリザードも、やがてスタミナが尽きる。
『しびれごな』が当たったところで『エアスラッシュ』連発。
グリーンの最後のポケモンのラッタも同様の手段で蹂躙し、ブルーはダメージを食らわず勝利を収めた。
「そんな…オレが……」
「だーから、ハンデあげようかって聞いたのに。バタフリー一体に自慢のポケモンが三体やられた気分はどう?」
3タテをされ、ショックを受けるグリーンにブルーは悪そびれず煽り散らす。
それからしばらくの間、桟橋ではブルーの笑い声だけが流れていた。
◇
「くそ!」
散々煽り散らしたブルーが満足して去っていった後、グリーンは桟橋を強く叩いた。
ーーー旅の途中で出会ったトレーナーやニビのジムリーダーは余裕を持って倒すことができた。間違いなくオレは強くなっているはずだ。
ーーーなのに…あの女には勝てない。ダメージを与えることすら出来なかった。
ギュッと唇を噛みしめ、思考を巡らせる。
ーーー何がダメだった? オレの指示? いや、間違った指示は出してない。そもそも天才であるオレが間違えるわけがない。ピジョンが、リザードが、ラッタが、オレの指示に従うのが遅かった。もしくはしっかり従えてなかった。そうに違いない。
ーーーそう言えば爺さんから聞いたことがある。ポケモンにも才能があると。個体によって才能の違いが大きく出るのだと。
恐らくブルーはそう言った才能があるポケモンを使っているのだと、グリーンは考えた。
ーーー天才なオレには天才なポケモンが相応しい。凡才な、そこらで捕まえたようなポケモンなんて要らない。一から、いや卵から個体を厳選して、英才教育をして、究極の個体を作り出してやる。
この日からグリーンは5番道路への滞在が多くなった。
5番道路=育て屋