Angel Beats! the after story   作:騎士見習い

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記憶戻しの野球試合④

4回の裏の守備が終わり俺は肩で息をしながらベンチに戻る。

さすがに他の連中も疲れが出てきてるのだろう声をかけてくる奴はいなかったこいつを抜かして

「おい音無、ボールのキレなくなってっぞ。そんなんじゃ最後まで、もたねぇぞ」

 

日向がニヤリと笑いながら言う。

(こいつなんでこんなに元気なんだよ)

 

 

そのことを考えていたが疲れで頭が働かなくなってきてるので諦めた。

 

 

ベンチに戻って癒しのチアガールたちを見ても見慣れたせいで少ししか回復ができなくなってきている。

俺の疲労具合に気づいたかなでとゆりは歩み寄り飲み物とタオルをくれた。

その行動は俺と日向だけではなくチームのみんなに同じことをしている。ユイとかなでは応援をするだけと考えていたらしかったがゆりの真面目な考えで3回からマネージャーみたいな仕事を始めている。

もらった飲み物を飲みながら元気に話している日向の方を見る。

 

 

ユイが視線に気づいたらしくこっちにくる。

「音無っちなんか気になることがありますね。この私がズバッと解決してあげます。なぜあんなに先輩が元気かというと...」

(まさかあいつ毎日厳しい練習をしているとか)

 

「野球バカだからです。」

「あーそういうことか」

「あれ納得しちゃうんですか?」

「まぁーな言われてみればそうだなってな」

「そうですか。では私は先輩がヤキモチを焼く頃合いなので」

(どんな頃合いだよ)と思いながらもユイは日向のところへ歩いていった。

「野球バカか〜」

 

俺は独り言のように小さく呟く。『〜ばか』という言葉を聞いた時一人の女性を思いだす。だが俺は思いだすのをやめ試合に集中することだけを考える。

 

 

今打席に立っている仲間がアウトになり俺の番がまた近づいてくる、初打席は左中間のヒットだったが思った以上疲れているせいで思いっきり振れるかわからない、そんな心配をしながらバットを持ちネクストバッターズサークルという白い円状の場所で心を落ち着ける。

 

 

「音無かんばれよー」

 

「音無っちファイトー」

 

「音無さんがんばってー」

 

「音無くんがんばりなさいよー」

みんなの応援を背にバッターボックスに入る。

 

 

(これが俺の最後の打席だな)少し名残惜しいがバットを構え集中し俺はピッチャーの投げるボールを待った。

その時が来た。

 

ピッチャーの投げたボールは外角の低めの俺が予想したところにボールが来た。俺はそのボールを大きく振りかぶったバットで捉える、その瞬間踏み込んだ足に力が入らず俺が打ったボールは高くピッチャーの真上に上がりそのままキャッチされアウトになってしまった。

 

「クソ!」

 

 

最後の打席がただのフライになり悔しさのあまりメットを地面に叩きつける。

俺らの攻撃が終わり、そして5回の表俺らの守備が始まる。

 

マウンドに立った俺はまだ最後の打席で打てなかったことを後悔する。そんな集中できない状況で迎える第一球投げたボールはキャッチャーの指示とはまったく違うところにいってしまった。切り換えようと思っても切り換えられず四死球で打者を進めてしまう。

 

 

それが2回続きあっという間にノーアウトランナー1.2塁でピンチになってしまった。

 

そんな中、キャッチャーの指示どおりにボールを投げたが打者に打たれてしまった。打たれたボールは2塁打になってしまい同点になってしまった。

 

「タイム!」

 

そんな俺の焦りに気づいた日向はタイムを取り俺のところへ向かってくる。

「どうしたんだお前らしくない」

心配させたくない俺は笑顔を作って返事をする。

「悪かったなもう大丈夫だ。」

そう言ったら日向が真剣な顔になる。

「嘘だな」

「そんなことねぇーよ」

 

俺は否定したが日向が言う。

 

「誘った俺が言うのは間違いかもしれないが今のお前はただマウンドに立っているだけの邪魔者だ。正直言って今のお前はこのチームにはいらない。」

 

 

正直にそんなことを言われて俺の怒りが込み上げてくる。

「じゃ、じゃあ俺はどうすればいいんだよ!」

俺が悪いのは知っているがどうしても怒りをぶつけてしまう。

 

 

俺の怒りを真正面から受け止めた日向は大きな声で言う。

 

「俺らを頼ればいいだろ!俺らはチームだ、誰かが挫けそうになったら他の誰かがそいつを助けるそれがチームってもんだろ!お前のミスは俺らが全力でカバーする後ろは俺らが守るお前はただ目の前にいるやつを真正面からぶっ倒せばいいそれだけだ。なぁお前ら!」

 

「「「「おう!!」」」」

いつのまにか周りには仲間がいた。この時だけは戦線にいるような感じだと俺は思った。

 

日向たちのおかげで心が切り換わり自然とマウンドを囲むように円陣を組む。

 

日向が大きく息を吸い

 

 

「この回、絶対抑えるぞー!!!!」

「「「「「おおーー!!!!!」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日向たちのおかげでさっきまでのピッチングが嘘のような変わりように相手は驚いていた。そのまま勢いに乗り三者三振で抑えて最終回の俺らの攻撃が始まる。

 

「音無、さっきとは比べもんにならないくらい良いピッチングだったぞ。」

「目が覚めたからな、それに仲間の大切さを改めて知ったよ。」

 

俺の言葉に日向は満足したように笑みを浮かべ準備に取り掛かった。

飲み物を飲んでいるといきなり肩を掴まれ後ろを振り向くと鬼というよりも般若みたいなものすごい顔をしたユイが立っていて恐る恐る聞いてみる。

 

「ど、どうしたんだ?」

 

一瞬の間がありいつもの顔に戻ったユイが答える。

 

「音無っちあーれーほーど先輩の邪魔しちゃーいけないって言いましたよね....」

 

冷たい声で言い放つユイに助けを求めるためにかなでとゆりの方を見ると何故か、かなではシスターがやっているような祈りのポーズをとり、ゆりは手を合わせて祈っていた。

 

「よそ見してどうしたんですか先、輩」

あまりの怖さに腰が引けてしまう。

「悪かった!」

 

身の危険を感じた俺はその場で土下座をしていた。周りの連中は味わったことがあるように同情した顔をしている中ユイは気にせず続ける。

 

「何を謝ってるんですか?四死球を出したことですか、点を取られたことですか、それとも先輩に怒鳴ったことですか?私は全然気にしてませんよ。」

 

 

次々くる言葉の暴力に泣きそうになってしまいそうな俺を誰も助けるどころかみんな手を合わせていた。

 

そんな中、俺に一筋の希望の光が見えるそれは日向がバッターボックスに立とうとしているところだった。

「おいユイ見てみろよ日向の番だぞ。最後の打席なんだからちゃんと応援してあげないとな」

ガシィとユイが俺に近づき肩を掴み言う。

「ありがとう音無っち。オラァーみんなで先輩応援すっぞ!」

チーム全員が鍛えられた軍隊のように無駄な動きなく1列になり日向の応援をする。

 

(どうなってんだ?)この時俺はユイが少し怖くなった。

 

 

気を取り直して俺も日向の応援に加わる。訓練でもしたかのような完璧な応援に相手チームは驚いていたが事実俺もかなでもゆりも相当驚いていた。

 

そんな時ピッチャーがボールを投げた。そのボールはど真ん中に入った。まずは一球見逃したのだろう日向は落ち着いてバットを構えて集中していた。

そして二球目ボールは曲がり日向は空振った。そして追い詰められた日向は落ち着いているそしてますますその集中が増してここまで空気がピリつくのが分かる。

ピッチャーが3球目を投げた時その瞬間が来た。

 

 

日向はボールをバットの芯に当て力強く振った。そのボールは高く飛び外野までいく俺らは大きく歓声をあげ相手チームは力が抜けていた。打った本人は塁をゆっくり走るのではなく全速力で走っていた、それに違和感を感じた俺らはボールを見る。そんな違和感に最初に気づいた相手チームの監督は大声で叫ぶ。

 

「お前らボールを追え!!それはホームランにはならない早くしろ!!」

監督の指示を受けた外野手は全力でボールを追うがボールはフェンスに当たり下に落ちるそのボールを拾った外野手はおもいっきりボールをホームに投げる。

 

日向は2塁を駆け抜け3塁に向かう。外野手が投げたボールはホームに届かず他の選手がボールを捕球する、そして日向は3塁を蹴り「うぉぉーー!!」と叫びながらホームに向かう。ボールを捕球した選手は全力でホームにボールを投げる。日向がホームにおもいっきり突っ込むのと同時にキャッチャーの元にもボールが届いた。砂煙でまだわからないが少し経ち審判がよく響く声で言い放つ。

 

「セーフ!!」

 

沈黙の後俺らは声にならない歓声をあげる。

「よしゃーーー!!!」

日向も喜びで声をあげる。

 

日向の活躍のおかげで同点から逆転に変わる。

 

そして俺らの最後の守備を迎える。

 

 

 

 

 

 




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