Angel Beats! the after story   作:騎士見習い

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TK 〜Opening in the dead world〜

目覚めたら…雲一つない広い青空が広がっていた。

そんな景色を見て、すぐに思う…なんで、僕は生きているんだ?

 

僕は、確か、階段から落ちて死んでしまったはずなのに、血も傷すらなかった。痛みも感じない…

まだ、階段から落ちた瞬間の浮遊感で、足がふらつきながらも立つと、それは初めて見るものが多くって、言葉にならなかった。

 

ドラマで見た何倍も大きな学校、グラウンド、周りは森や山に囲まれていた。

何回も見ていると、興奮のあまり気づかなかったけど、僕はこの学校の制服らしき服を着ていることに気づいたが、1番の驚きは、目が完全に見えることだった。社くんから貰った、ヘアバンドがなくなっていた。目が完全に見えることの喜びと同じくらい、絶望していたら…

 

「あなた…ここで何をしているの?」

いきなり、声を掛けられて、咄嗟に声の主の方を向くと…そこには、少しでも触れれば壊れてしまいそうな繊細な見た目、だが、瞳は力強い意志を感じさせる雰囲気の…まるで天使といった、風貌の女性だった。

 

「えっと、その、僕も分かりませんが、気づいたらここに…」

「…そう」

そんな、素っ気ない返事をされながらも質問をする。

「僕って…死んだんですよね」

「…そう、ここは、生前に充実した学校生活を送れなかった人がくる…死んだ後の世界…」

「やっぱりそうなんですね。でも、その証拠があるんですか?」

それがNGワードとも知らずに言ってしまった僕は、後悔するのだった。

「handsonic」

聞きなれない英語とともに、手の甲にこんな可愛い女の子から、生えるはずのない、切れ味の良さそうな鋭く短い剣が出てきた瞬間、自分の胸を刺そうと突っ込んできた。あまりの事態に混乱してしまったが、反射的にバックステップで避けたが、制服の胸の部分が綺麗な・こんな感じの穴が開いていた。

 

彼女は、追撃をしないで、不思議といった風に首を横に傾げている。その仕草はものすごく可愛いんだが、手の甲にある、物騒な剣さえなければの話だが…

 

「どうして避けるの?」

「いきなり、こんなことをしていたら誰だって避けますよ!」

「…あなたが…証拠を見せろといったからよ…」

「まさか…死んだ世界だから、死んでもまた生き返るから1回死ねってことなんですか?」

「…そうよ」

 

言葉が出なかった。見た目と違って、ここまで天然だなんて…

まぁ。一応はこの世界ことが分かったけど、まだ知らないことが多すぎて頭がパンクしそうだった。

そして、彼女の提案で、切れた制服を変えるために、被服室という場所に連れて行かれた。

 

 

その途中までは…

「あの、お名前は?」

「立華 かなで。あなたは?」

「僕はTKっていいます」

「外国人なの?」

思っていた通りの反応なので、そこは丁寧に否定して、日本人ということを伝えた。またもや、「…そう」と素っ気なかったがそういう性格なんだと思い、立華さんの後をついて行く。

「…ここよ」

「被服室?」

知らないの?という顔で見られ、生前は学校に行けなかったのでと答えると、「…そう」とは言わず、ただ無言で教室のドアを開けた。

 

 

教室の中には、ミシンなどといった、裁縫道具一式が置いてある。初めて見るものが多く、色々と見ていたら、いつのまにか、立華さんが制服を用意してくれていた。

「制服の下に着るものが見つからないから、ここにある、Tシャツを使って…」

「わざわざすみません」

そういいながら、出してくれたTシャツをあれやこれやと選んでいると、立華さんが「まだなの?」と聞いてきたので、咄嗟に手元にあった、Tシャツを掴んで、これにすると言ってしまった。

 

「白が好きなのね…」

そう言われ、見てみると白の無地のTシャツだった。

切られた制服を脱ぎ、用意してくれた制服と選んだTシャツに着替える。

 

どうせなら、と死ぬ前に見た雑誌に載っていた、着崩しというファションをしようと思い、ボタンを全部開けてみる。

「似合いますかね?」

「…そういうのは…分からないわ」

似合ってないのかな?と思い、悩んでいると、こっちに近づいて来るらしく、男性の声が聞こえてきた。

 

「クッソ〜、ゆりっぺのやつ、な〜にが、個性のある奴を連れてきなさい!だ、ポケモンの色違いを探す方がまだ簡単だぜ…」

どうやら、ゆりっぺ?という人への愚痴らしく、だんだん近づいてドアの前を通って、とホホといった顔で中を確認した後に

「やっぱり、簡単に見つかるわけ…って、いたーー!!」

僕を指差し、硬直していた。

「あの〜」

僕が声を掛けたら…

「I cannot speak Japanese」

「…あなた、日本語が話せないの?」

「…………」

「…………」

「…………プッ」

つい、ふきだしてしまった。

 

立華さんの冷静なツッコミ?なのか、青っぽい髪の男性は黙ってしまった。

(学校に行ってなかった僕でも分かる英語なのに、それを間違えるなんて…ヤバイ、腹が痛い)

「…日本語…話せないの?」

さらに、立華さんの追加攻撃に男性は

「すいませんでしたー!!少しパニックになりましたー!!」

「……そう」

「HAHAHAHAHA!!」

 

笑ってしまった。まるで、漫才を見ているようで楽しかった。

 

「うおっ!笑った!」

珍しいものを見たかのような反応をされたが気にせずに

「すみません。おもしろくって、つい」

「いやいや、気にするなって………日本語、話せんのかよ!」

ポカーンとしていた。それでも一応、自己紹介をしてみる。

「初めまして、僕、TKっていいます」

「あ、あ、ああ、俺は日向よろしくな。それって、名前なのか?」

「え、まぁ、そうですよ」

「そうか、うん、いい名前だな」

名前のことは、あまり信じていないようだけど、とても親しみやすい人だった。まるで、社くんと話してるような気分だった。

 

「…自己紹介は…終わったの?」

さっきまで、黙っていたのは、気を遣ってくれたのだろう、立華さんは本当に良い人だと思っていると…

「って、何で、天使がここにいるんだよ!」

天使?何のことかと思い、立華さんに聞いてみる。

「天使ってなんですか?」

「私も…よくわからないけど…彼らが勝手に…私のことを…そう呼ぶの」

「ヘェ〜、そうなんですか」

(可愛いから天使?、優しさが天使?、ん〜よくわからないな〜)

「立華さんに合ってると思いますよ」

「……そうかしら?」

「はい、合ってますよ」

「…そう」

「まてまてェ〜い、俺をほっといて、会話をするな〜!」

相当な寂しがり屋なのか、少し泣き目だった。

 

 

そして、気になっていることを聞く。

「ところで…何で制服が違うんですか?」

よくぞ聞いてくれましたという顔をして教えてくれた。

「それはだな、俺の所属しているところは、これを着ることになってるんだよ」

「どんな、ところなんですか?」

「天使も知っているはずだぜ」

スポーツ関連かと思い、立華さんの解答を待つ。

「たしか…死んだ世界旅行記よ」

「そうさ、俺たちが死んだ世界旅行記さって、ちが〜う!」

また漫才をするのかなと思って、先を聞いてみる。

「もう、俺が言うわ」

「待って頂戴、これじゃあ、生徒会長として恥じだわ、ちゃんと思い出す」

立華さんって、生徒会長だったのか〜と思いつつも会話を聞く。

「思い出したわ。たしか…ユリッぺラーズよ」

 

自信満々に答えたが、本当にあってるのだろうか…

 

「そうそう、俺がボイスパーカッション担当でって、そのアカペラ集団みたいな名前はもう、変えましたから!もう、俺が教えてやるよ…俺の所属しているところの名前は死んだ世界戦線っていうんだ!」

「やっぱりそうだったのね」

「取ってつけたような、バレバレな嘘はやめてくれ」

「本当にわかってたわ」

「…さいですか」

人は見かけによらないって言うけど、立華さんにピッタリと思うが、死んだ世界戦線?のことを日向くんに教えてもらおうとしたが、「天使の前では、言えないことが多い」と言われたので、立華さんの顔を見ると「あなたの…好きにしていいわ」と言われ、何回もお礼を言って、被服室をでた。

 

 

死んだ世界戦線のことを教えてもらったが、簡単に直すと、神を探して倒すということらしく、今はその使いの天使(立華さん)を色々な作戦、通称オペレーションで神の居場所までを知ることをするらしい。

そのためには、拳銃、クナイ、ハルバート、爆弾などの武器を使用しているらしい。そんなものがここにあるんですか?と聞くと「土塊から作るんだ」と意味が分からなかったが、校外の粘土質の土塊を不恰好だったが野球ボールにしていた。すぐにその仕方を教えてもらったが相当難しく、根気強く粘って、2つのものを作った。

「ヘアバンドと手錠?」

「はい、ある友達から貰った、大事なヘアバンドをイメージして作りました。手錠は…ファションですよ」

「ふ〜ん」

僕は嘘をついた、ヘアバンドは本当だが、手錠は…僕は1度犯罪に手を染めようとした、だからそのことを忘れないためにも、自分への、戒めして側に置きたかったからだ。ヘアバンドを頭に付け、手錠を首からぶら下げる。

 

 

「戦線に入る気になったか?」

「はい。でも、条件があります」

「条件?」

「僕と、ダンスで勝負してください!」

またもや、ポカーンとしていた。理由は簡単、確かめたい、それだけだった。社くんは言っていた…会話をするより、ダンスを踊る方がその人ことをよく知れると。

「分かった」

「場所を変えましょう」

「変える必要はないぜ、この教室でやろうぜ」

「ここは…空き教室ってやつですか」

「そうだぜ。じゃまするぜ」

日向くんはそう言い、ドアを開ける。

 

誰もいないと思っていた教室には、赤みのかかった髪のクールな女性と茶髪でポニーテールの勝気のありそうな女性の2人がいた。一見すると、綺麗な人だが、その手には…ギターを持っていた。

「休憩中か?」

「まぁな、珍しいな、日向がここに来るなんてな。岩沢もそう思うだろ?」

「ん、そうだな。珍しいな…そんなことより、ひさ子、弦が少し緩んでないか?」

「相変わらずの音楽キチっぷりだな。それよりも、お前らに頼みがある」

「頼み?」

「ああ、ちょいっとだけ、適当に弾いてくれないか?」

「別に構わないけど、理由は?」

「こいつとの勝負のためだ」

そう言われ、背中をポンと押され、前にでてしまう。

 

「僕はTKっていいます。今、ダンスで勝負するための演奏をしてくれる人を探しているんです。見た感じだと、お2人は、ギターを弾けるんですよね。だから、お願いします!」

ポニーテールの女性が日向くんの耳元で、何かを喋っている。たぶん、色々と聞いているんだろう。そして、納得したらしく、僕の方を向く。

「私はひさ子。んで、この音楽しか興味なさそうな奴が岩沢だ。よろしくな」

「こちらこそ。で、演奏の方は?」

「ああ、もちろんOKだ。岩沢もいいだろ?」

「ダンスに合わせての演奏…うん。たまにはいいかもな、そういうのも。私もいいぞ」

「じゃあ、頼むぜ」

「まかせろって」

ここは、いい人が多いと思いつつ、ひさ子さんたちが曲の打ち合わせを始めた。それが終わるまで適当に準備運動をする。

 

それから5分ぐらい経ち、ギターを構い始めた2人を見て、僕も準備運動をやめ、教室の中央にいる日向くんの横に並ぶ。

「こっちは、準備できた。日向たちは?」

「準備万端、気合満タンだ」

「じゃあ、ひさ子打ち合わせ通りするぞ」

「おう」

岩沢さんたちが弾き始めようとする直前に、何故かあの時言われた、僕の大切な言葉を…次は、僕が言う番だ…そして口を開く。

 

「Come on let's dance」

僕の…憧れた親友との出会いの言葉……今、僕がそう聞かれたら迷わずに、こういうだろう。

「OK let's dance!」

 

 

 

 

 

 

 

「TK、言ったことを覚えているな?」

「もちろん。外国人っぽくハイテンションで英語ですね」

 

結局ダンスは僕の圧倒的な勝ちだったが、途中からは、勝負を忘れて楽しんでいた。日向くんはそんな力を持っていると思う。最初から戦線に入るつもりだったが、日向くんとのダンスを通して、ますます入りたくなった。

入ると言ったときの日向くんは、嬉しかったらしくハシャイでいた。ひさ子さんには白い目で見られていたが、岩沢さんは何もなくそのまま弾き続けていた。

 

戦線に入るにあたって、日向くんからこう言われた。

『できる限り、外国人感をだしてけ。そのままでも十分いいんだが、ゆりっぺのことだ、もっと上をいかなきゃ、俺が怒られる』

『分かりましたけど、僕、最低限の英語しかできませんよ。かっこいい英語はちょっとしか知らないし…』

『大丈夫だ。俺が言うのはなんだが、あいつらはバカだ』

『わかりました!この京都男児、TK、頑張ります』

とそんな感じであった。

 

「準備はいいな?」

「はい!」

「いやいやいや、そこは外国人っぽく言おうぜ」

「あ、はい。おっとSorry」

「いきなりかよ!もう一度いくぞ」

「準備はいいな?」

「OK! Mr Hinata! Come on!」

「性格変わりすぎだが、まぁいいか。いくぜ!」

そういい、日向くんはドアノブを回す。

そして、僕は勢いよく飛び出す。

 

「Yoooooo!!!!!!!」

 

 

 

僕は、まだ見ぬ死んだ世界・戦線での生活を楽しむために……僕は、いつまでも……踊り続ける……

 

 

 

これが、僕の……Opening in the dead world

 

 

 

 

 

 




TKの過去編、無事に終わってよかったです。岩沢さんの雰囲気がものすごく難しかったです。
さて、次回ですが、日向がTKのところに行っていた、同時期の誰かの出来事です。
みなさん、これからもよろしくお願いします。
(意見感想お待ちしてます。)

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