Angel Beats! the after story   作:騎士見習い

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その手を伸ばせ

俺とかなではゆりにこっぴどく怒られた後……

 

 

「で?なんでまた来てんだ?あぁ!?」

……また……怒られている。

「だから…ケータイを…」

 

なぜ、怒られているのか。理由は簡単だ。

「忘れたなんて言わせねぇ〜ぞ!」

ということだ。

 

「すいませんすいませんすいませんすいません」

 

まさか、たった数十分で二回も泣くはめになるとは……

「だから言ったじゃないですか。今行くと地獄を見ますって」

ごめんかなで…君の言葉を信じなかった俺を許してくれ。

 

「ほんとは小一時間ほど説教をしたいところだけど…運がいいわ。ちょうど男手が欲しかったのよ。クロ○コヤ○トから今度する運動会の父兄参加の大玉転がしの大玉が配達されてきたの、だからそれを運んでくれれば今日のことはチャラにしてあげる」

 

 

地獄の仏とはまさにこのこと、ありがとうTO○IOのみなさん。大玉を運んでくれて。

「喜んで運ぶよ」

「よかったですね音無さん」

「じゃ、頼むわよ。倉庫に運んでくれればいいから」

 

 

「大玉って想像よりも軽いんですね」

「まぁ、普通は小中学生が使うからな」

 

俺はゆりに言われた通りに大玉を倉庫まで運んでいる。幼稚園といっても、使うものは特別小さくなってるわけでもなく、ただ普通の大玉だった。

 

「悪いな手伝ってもらって」

「いいんですよ。それに私、音無さんには感謝してるんです」

 

「感謝?」

 

何かしたっけ?と、かなでとの記憶を遡ってもなにも出てこない、唯一出てくるのがチアガール姿なのが悲しかった。あのかなでは可愛かったな〜と変な方向にいくのを止めるように

「私が感謝しているのはゆりちゃんのことです」

「ゆり?」

 

ゆりとの記憶を遡っても……出てこないな。唯一出てくるのが説教の時の鬼の形相だけ……

「はい。少し長くなりますけどいいですか?」

「かまわないよ」

俺はかなでの話しを聞く。

 

「ゆりちゃんはいい子です」

「知ってる」

即答できるのが少し恥ずかしいが、あいつのがんばりはあっちの世界でいやというほど見てきた。それで今の俺があるぐらいだ。

 

「でも、その人のことを思って言ってるのに口調がキツくなって……私たちの学年でリーダー性があるって憧れる人もいるんですが、それを良く思ってない人も中にはいて……」

 

「いや、ちょっと待ってくれ。そのどこが感謝に繋がるんだ?」

 

「すみません。話が唐突すぎましたね。簡単に言えば……私はゆりちゃんのお姉さんみたいな優しいところが好きです。時には優しく、時に厳しい、そんな性格が好きです。でも、それは私をふくむ学年の一部の人だけです。」

「かなでをふくむ学年の一部以外には嫌われていると…」

 

「そうですね。でも学校全体ではないですよ!?。私たちの学年の中の話です。他学年のみなさんはあまり関わらないので、ゆりちゃんはモテモテなんですけどね」

 

ようやくわかった。かなでがなぜ俺に感謝をしているのかが…

「ここまで話したら、鈍感な音無さんにもわかりますよね」

「まぁな」

「おしゃべりはこの辺にしてチャチャと終わらせましょう」

 

かなではスピードを上げようと早足になる。

 

そうだよな。今は、あんな殺伐とした世界じゃない。あの世界での日常を体験していない人たちにはわからないゆりの優しさ。ゆりは自分から手を伸ばさない。自分から手を伸ばさない限り、ゆりはその手を掴まない。俺があの世界で学んだことだ。

 

 

「よっこいしょと」

「ふぅ〜疲れました〜」

「お疲れ」

 

倉庫までの距離が案外あったため、少し時間がかかってしまった。

「戻るか」

「そうですね」

かなでとしゃべりながらゆりのところに戻っていると。かすかに子供の泣く声が聞こえた。不意に背筋が寒くなる。

 

「かなで!先行ってる!」

「待ってください音無さん!」

 

「念のため、建物の中には入るな!少ししても帰ってこなかったら、警察を呼んでくれ!」

「ちょっ….」

 

かなでが止めようとしたが、何かが起こっていると確信するものがないが、ゆりのもとに全力で走る。これが杞憂で終わることを願いながら…

 

 

 

 

 

 

 

いきなり、不審な人が包丁を持ち入ってきた。薬品か何かで正気ではないことは目を見てすぐわかった。そしてすぐに教室の隅に子供たちをまとめた。

子供たちが危ない。

そう思ったら身に覚えのない記憶が浮かんできた。

 

状況は多少異なるけど、その記憶は前に経験したような記憶があった。この時代じゃないどこかで……

ちがう点を挙げるとすれば、複数人ではない点。今目の前にいる相手は一人だった。数が少なくなっても、絶望的状況には変わらない。

 

突然の事態で子供たちは放心していたけど、一人が現実を受け入れ泣きだす。それが呼び水となり、周りに広がっていく。私は必死であやそうとするけどおさまらない。今、先生はいない。

 

この幼稚園は教室を年齢ごとに分けている。0〜2歳児、3歳児、4歳児、5歳児となっていいて。私が手伝っているのが5歳児で他の0〜4歳児は公園に遊びに行っている。なんで5歳児だけおいていくの?と先生に聞くと、好奇心旺盛で運動能力も上がっている5歳児のめんどうを見るには先生の大半が必要で、だから今日は0〜4歳児、明日は5歳児と分けているらしい。

 

だから、幼稚園は普段より人が少ない。でも、ちゃんと幼稚園に先生も残っているんだけど、二人いるうちの一人は今日5歳児のみんなが食べるおやつが切れていることに気づき、買いに行き。もう一人の先生は急に体調を崩した園児を病院に連れて行った。

 

留守番として私が残りの子供たちのめんどうをみている。さすがに何ヶ月も手伝っているため、留守番を任せられるまで信頼されていたけど今回は他の先生を呼んだ方がよかったと思うわ。

 

私のあやしも無駄になり、包丁を持った男はうるさい!と怒鳴り散らす。

それが火に油を注ぐことになり、ますます泣き声が大きくなる。

 

今、私が思っていることは一つ….…子供たちを無傷で逃がすこと。自分に何があっても……。だんだん鮮明に思い出される、大切なものを失った記憶。私の小さい頃に似ている長女。弟と妹のために必死で強盗が喜びそうなものを探す。でも、結局は何も守れなかった……何一つ。

 

なんでこんな記憶が浮かんでくるのよ!知らないわよこんな記憶!でも、もしこの記憶が本当に私の記憶なら、必ずこないはずの助けを永遠に呼んでいたと思うわ。

 

なぜかしら、日向くんとユイちゃんの馴れ初めの話が浮かんでくるのは……どうせ誰も来ないなら、マネしてもいいよね。

 

………誰か…助けて……

 

 

「ゆ〜〜〜〜り〜〜〜〜!!!!」

近所迷惑ってほどの大音量の声とガラスの割れる音とともに現れた……

「お…とな……しくん」

「大丈夫かゆり!早く子供たちを逃がせ!」

ほんと…かっこよすぎよ。タイミングもバッチリ、狙ってたんじゃないでしょうね。でも今は…

 

「みんな!早く外に出て!慌てないでゆっくりよ!」

 

誰よりも早く逃げる自己中心的にみんななると思ったけど、子供たちは立派に成長していた。男の子は女の子を先に行かせて、腰を抜かして立てない子には手を差し伸べる。こんな状況じゃなかったら泣いて喜んでいたかもしれないそんな光景だった。

 

「逃げてんじゃねぇ〜ぞ!」

いきなりの乱入者に戸惑っていた不審者は子供たちが逃げていることに気づき、包丁で攻撃をしようしている。

 

「行かせるかよ!」

「みんなこっち!」

音無くんは必死に不審者の包丁を持つ手を抑える。遅れてやってきたかなでが外に避難した子供たちを移動させていた。

 

かなでたちが見えなくなり、ようやく避難が終わる。

「音無くん、こっちは終わったわ!」

「了解!」

 

音無くんは私の方に顔を向けて子供たちが避難したのを確認した。だけど……

「邪魔だ!」

音無くんが顔を不審者から逸らした瞬間だった。

 

不審者は音無くんの一瞬の隙を利用して、音無くんの手を振りほどき、そのまま私めがけて包丁を突き出してくる。

 

目をつぶった。でも、いくら待っても痛みが感じない。そっと目を開けると、目の前に音無くんが立っていた。

「大丈夫かゆり?」

「大丈夫かってあんた、人の心配してられる状態じゃないでしょ!」

 

「そうかもな。でも、体が勝手に動いたんだ。戦線のリーダーを守るのが戦線のメンバーの役目だからな…ケホケホ。ゆり!これから言うのは独り言だ!」

「何言ってるのよ!血を吐いてるじゃない!」

 

床に血が垂れて水たまりみたいになっている。

「いいから!お前は、良い奴だ。後から入った俺だけじゃない戦線のみんなが知っている!いつも俺たちを導いてくれた!変なオペレーションをさせられたけど…それでも俺たちはお前についてきた!なぜならお前はあの意味のわからない世界で唯一俺たちに目標をくれた!非日常の日常をくれたんだ!」

 

「だから血が……」

 

「お前は……死んだ世界戦線のリーダーだ!」

音無くんは刺されていることを気にしていなかった。ただ、私に何かを取り戻して欲しい、そう言っているようだった。

「だけど、今のお前は腑抜けすぎだ!こんな状況の一個や二個打破できないなんて、リーダーが聞いて呆れる!記憶を戻すのが怖いのは分かる。でも、辛い記憶と向き合うことで強くなれるって教えただろ!」

 

記憶を戻すのが怖い…そうかもしれない。自分でも分かってる。後は自分が……

「ゆり!手を伸ばせ!手を伸ばせばその手を俺たちが掴む!お前がしてくれたように引き上げてやる!だから……手を伸ばせ!」

 

先に言われちゃったわ。そうね今、私の頭に流れこんでくる数々の記憶。辛い記憶、楽しい記憶…そんな記憶があるから生きていると実感できる。

私は本当の意味で生きたい!だから……私は手をめいいっぱい伸ばす!みんなが引き上げられるように……

 

 

 

 

 

 

 

これだけ言ってもダメなら、もう諦めるしかないのか……でも、これだけは言っておきたい!

「そんなんじゃ!日向が戦線のリーダーになっちまうぞ!!」

 

言いたいことはすべて言えた。後はゆりを信じるだけだ……

「ふっざっけんじゃないわよぉぉーーーーー!!あんた正気、日向くんがリーダー?バッカじゃないの!TKがリーダーになるぐらいありえないわ!!戦線のリーダーはあたし以外考えられないの!わかる?」

 

さっきまでのゆりが嘘みたいに微妙に別人に変わり、立ち上がり言い放った。それでこそウチらのリーダーだ。

そして、日向……お前の評価は底辺だぞ。

 

「でもまぁ感謝はするわ。好き勝手言ったことはチャラにしてあげる。そして、そこの包丁野郎!子供たちを怖がらせた挙句、ウチのメンバーを傷つけてくれたわね。その罪!重いわよ!」

 

包丁を持った不審者を見てもまったく動じない。ほんと、お前はすごいリーダーだよ。

それと、俺今、刺されっぱなしを無視するとか違う意味ですごいリーダーだよ。

 

「音無くん、迷惑かけたわね。ご苦労様」

「さっきから、ゴチャゴチャうるせぇ〜んだよ!!お前から死ねや!」

 

不審者は俺の腹に刺さった包丁を抜く。その瞬間、激痛が走る。血が溢れでて止まらないでも、今は耐える。壁に寄りかかりながら、ゆりの戦いを見る。

 

不審者はゆりと距離を開ける。

「私はあなたを絶対に許さない!」

「うるせぇ〜!!」

 

包丁をゆりに向けて突き刺しにいく。

「そんな単純な攻撃が当たるわけないわ!」

 

ゆりは不審者の包丁を避け、不審者の手首を掴みそのまま床に叩きつけた。それでも不審者は立とうとする。なぜかゆりは不審者との距離を開けて……

 

「ゆりっぺ〜〜キッ〜〜ク!!」

 

かわいい技名とは裏腹に顔面に直撃した不審者はそのまま数メートル吹き飛ばされた。

 

まったく、恐ろしいやつだよ……

 

 

 

 

 

かすかに声が聞こえる。誰だろうと耳を澄ます。

 

「音無くん!起きて音無くん!」

「音無さん起きてください!」

 

かなでとゆりか……どうしたんだよ泣いて。らしくないな…

 

そうか、俺刺されたんだ。まだ血が溢れでている。

医者の卵の俺でもわかる。

俺……死ぬんだな……。

 

この感覚は2回目だ。悔しいな、ここまで来たのに……悔しい。悔しい。

 

でもいいか、ゆりの記憶が戻ったんだ。後は任せてもいいよな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ゆりっぺの記憶が戻りました!!
でも、音無くんが((((;゚Д゚)))))))
さて、次回ですがオリキャラを入れたいと思います。
これからもがんばっていくので応援お願いします。
これからもどうぞよろしくお願いします。
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