Angel Beats! the after story 作:騎士見習い
俺とかなでが歩き出して、もう五分ほど歩き目的地まであと少しという場所まで来た。
目的地に着く前に俺はかなでの友達がどんな人なのか知りたくなり、我慢出来ずについ聞いてしまった。
「かな……じゃなくって、君の友達ってどんな人なの?」
危なかった。死後の世界にいた時の癖で名前で呼びそうになってしまった。
あっちからすれば、まだ会って十分ぐらいしか経ってないのにいきなり名前で呼ばれたら驚くよな。
これからは気をつけようと考えていたら、かなでは優しく答えて
くれた。
「私の友達ですか?そうですね〜面倒見が良くって、とても頼りになるお姉さんみたいな人です」
「そうなんだ。いい人なんだね」
「はい!」
友達のことを褒めた時のかなではとてもうれしそうだった。まるで自分のことでもあるかのように喜んでいた。
死後の世界でもそうだったけど、ほんとに友達思いなんだな。
俺がそんなことを思っていると目的地が見え始め、かなでは例の友達のところへ走って行った。
「おくれてごめんね〜。来る途中で色々あって」
かなでがそう言い終えると同時に、かなでの友達が怒っているらしくここまで声が聞こえてくる。
「も〜何分待ったと思ってるのよ!あんたから誘ってきたっていうのに」
「だからごめんってば〜」
女の子らしいほのぼのとしたやりとりが数回行われた後、かなでの友達が俺に気付いたらしくかなでに聞いてきた。
「ねぇ、ところで後ろの人は誰?」
その反応は予想はしていたけれど、いざ少し冷たい目で見られるのは心にくるものがある。
「あっこの人はさっき駅の近くで知り合った人だよ。ここの麻婆ストラップを持ってたから誘ったの」
「はぁ〜あんたってほんと警戒心のカケラもないのね……」
かなでの友達が呆れながらも、
「まぁいいわ、かなでが連れてきた人だから悪い人ではないと思うし。それに、立って話すのもなんだし中に入りましょ」
「うん」
「で、あんたはそれでいいの?」
「ああそれでいいよ」
「じゃあ決まりね。入りましょう」
俺はかなでの友達が誰かに似ているような気が……。
「先に行っちゃいますよ」
そう言われ俺は急いで店の中に入っていった。
店の中はどこにでもある食堂みたいな造りになっている。お昼時のせいか中にはたくさんの客がいた。
そのほとんどが、30代のおじさんやサラリーマンが占めている中をかなでたちは堂々と歩き空いている席へと座った。
俺もかなでたちの後をついていき同じテーブル席に座る。
「相変わらず混んでるわねここ」
男性客の多さにかなでの友達は少し嫌そうだったけどそんなことを気にしてはいない、かなではメニューを見るのに必死だった。
今の俺らの席割りは俺の前にかなでとその友達という席割りになっている。
「二人とも何食べるかもう決めた?」
やっぱりここに来たのなら『これ』を食べなければな!
「じゃあ〜私は野菜炒めでいいわ」
「俺は麻婆豆腐で」
俺が麻婆豆腐と言ったときかなではやはり嬉しそうだった。
「すみませ〜ん注文お願いしま〜す」
店員がすぐに来てメニューをとる。
「野菜炒め1つと激鬼辛唐辛子10倍麻婆豆腐2つください」
俺たちのオーダーに店員は少し驚いた顔をしていたがすぐに営業スマイルに戻った。
そりゃ〜驚くわな。
可愛い女の子がここの麻婆豆腐を頼むなんてよっぽどのことがない限りないからな。
俺もここの麻婆豆腐を完食したからわかるが名前以上に辛かったのを覚えている。
死後の世界の麻婆豆腐を食べ慣れていたおかげでなんとかなったが、かなでの笑顔のためなら背に腹は変えられないよな……。
「あの、この娘のわがままで迷惑かけてないでしょうかこの娘いつもこういう感じだから心配で……」
「そんなことはないよ。彼女よりも俺の方が迷惑をかけたんだよ。だから彼女は迷惑なんてかけてないよ。それに君の友達は本当に思いやりのある良い人だね」
「そうですか!ほっ」
彼女もかなでと同じように友達を褒めらることは自分にとって嬉しいことらしい。
かなでの言う通り、かなでの友達はお姉さんみたいな印象を持っていた。
「あっ」
彼女は何かに気づいたらしく声を上げた。
「そういえば、自己紹介まだだったわね」
「そういえばそうだったな」
お互い自己紹介をしようと思ったときに、ちょうど店員が頼んだ料理を持ってやってきた。
「麻婆豆腐の方はどちらで?」
「私とそっちの方です、野菜炒めは私の隣です」
かなでがそう言い終わると店員は慣れた手つきで料理を置き、かなでは麻婆豆腐が置かれたと同時に食べ始めていた。
かなでの友達は、途中で野菜炒めを食べる手を止めた。
「あらためて、自己紹介しましょ」
「そうだな。なら俺からでいいか?」
「いいわよ」
「俺の名前は音無 結弦、医科大に通ってる」
「意外だわ!?大学生だったのね」
かなでの友達は驚いた顔をしていた。
俺って大学生に見えないかと思うと少しショックだった。
「次は私たちね。今夢中で麻婆豆腐を食べているのが、私と同じ高校に通ってる立華 かなで。で、私の名前は仲村 ゆり。彼女と同じで高校三年生よ」
仲村ゆり。聞き慣れた名前に俺は硬直した。
髪を伸ばしていて気付かなかったが、少しつり上がった目や口調があっちの世界と同じことに気がついた。自分の観察力がないことを悔いているのが現状である。
ゆりはいきなり固まった俺を少し心配そうに見ていたが俺はゆりに俺らのリーダーに会えたことが何よりも嬉しかった。
「ちょっ、何いきなり泣いてるよの」
目元を拭った。この行動は今日で2回目だがやっぱり涙が止まらなかった。
「どうして泣いてるのよ、あんた男でしょ。女の子の前でいきなり泣かないでよ」
きついことを言いながらもハンカチを渡すあたりがゆりらしかった。
「ごめん、あまりにも麻婆豆腐が辛くて……」
「そんなに辛いのをよくかなでは食べられるわねってもう完食してるし」
食べ終わったかなではとても満足そうな顔をしていた。俺も少し落ち着いたからもくもくと、辛さで麻痺して甘く感じてきた麻婆豆腐をたいらげる。
それから少しした後みんなが食べ終わり、店から出た。
「んぅ〜食べた食べた。また来ようねゆりちゃん」
「ほんとあんたここの麻婆豆腐好きだよね」
呆れているように見えているけど俺にはとても幸せそうに見えた。
「音無さん、今日は付き合ってくれてありがとうございました。こっちからお願いしたのに、奢ってもらって本当に申し訳ないです」
「今日は楽しかったわ。ありがと音無くん、また一緒遊びましょ」
「 俺も今日は楽しかったよ。また誘ってくれないか?」
「いいですよ。次はどこの麻婆豆腐がいいですか、オススメは……「ストップ、ストーップ!」
かなでが麻婆豆腐のことを話し始めたのをゆりが止めるとゆりがケータイを取り出した。
「また遊ぶには、連絡先が必要でしょ。だから交換しましょ。ほら、かなでもよ」
かなでもケータイを取り出した。俺もポケットからケータイを取り出し赤外線通信でメアドと電話番号を交換する。
「これでよしっと。いつでも連絡して頂戴、暇つぶしぐらいなら相手してあげるわ」
「音無さん、また連絡するのでその時はまた遊びましょうね」
二人がそう言い俺も答える。
「俺のケータイにもいつでも連絡してくれ、相談ぐらいなら好きなだけ乗ってやるからさ」
何かが可笑しかったのらしく二人ともクスクス笑っていた。
「じゃあそのときはお願いしますね」
「あなたに相談なんしないとは思うけど、そのときはお願いね」
こんな、なんでもないやりとりが死後の世界に戻ったような気がした。
「じゃあ、私たちはこのへんで。さよなら音無さん」
「じゃあね音無くん」
「あぁ、またな」
俺たちそれぞれの帰路についた。
これからもがんばります。