Angel Beats! the after story   作:騎士見習い

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しおりんとふみっち

こんばんわ関根しおりです。えっ?今何をしてるかって?

 

「こ"め"ん"さ"い"調子乗りすぎましたぁー!!」

 

今日一日の疲れを癒そうと、みんなで旅館の温泉で幸せの一時を過ごそうとしたけど、この私が調子に乗って大暴れした結果、案の定ひさ子先輩に叩きだされたよ……。

 

今回は相当なキレ具合だったから大人しく温泉の入口近くで時間でも潰そう。ため息を漏らしつつ、『女』と書かれた暖簾を潜ると、

 

「うげっ!」

 

「人の顔を見てその反応はどういうことだ?」

 

こ、ここここいつは!

私が戦線の中で最も苦手意識が高い人……。

 

「な、直井…ふみ……と」

 

「なぜ遺言のように名前を呼ぶんだ貴様は。さっきから失礼なやつめ」

 

会話なんてしたこともないし、しかもこの人は戦線のみんなをボロ雑巾いや一週間牛乳で漬け込んだような雑巾みたいにした張本人。

 

「ん?そうか、貴様ガルデモのハムスターみたいなのといつも隣にいる金髪か」

 

「ムッ!みゆきちはハムスターじゃなくってリスだよ!失礼だよまったく」

 

「よく分からんな」

 

みゆきち検定五級も受からないよこの人は。でもまぁ話してる感じだと悪い人ではないのかも。

 

「おい金髪。ここで会ったのも何かの縁だ。暇潰しに付き合え」

 

「やだ」

 

「んな!?仮にも僕は国会議員だぞ!頼みをそんな安々断るなんて身の程を弁えろ!」

 

「やだ」

 

しおりんは決して権力に屈しません!私は誰にも縛られない自由な存在でいたいから!

 

「分かった。あそこにある、瓶の自動販売機で好きなのを奢ってやる。それならどうだ?」

 

ははぁ〜ん、次は物で釣ろうだなんて安直だね。政治家も大したもんじゃないね。ま、所詮は死後の世界で中二病やってただけあるよ。ふふん♪

 

「……じゃあフルーツ牛乳」

 

やっぱり勝てませんでした。テヘッ☆

 

「一番高いのを選ぶのか……まぁいい」

 

買ってる間にすぐ近くにある、ふかふかのソファーに座る。極楽じゃあ〜〜。

 

「受け取れ」

 

「かたじけない」

 

キンキンに冷えたフルーツ牛乳の詮を抜いて……一気に流し込む!これが最も美味い飲み方。

牛乳の濃厚な味とフルーツのさっぱりとしたトロピカルな味わいが私の喉と舌を唸らせる。

 

「ぷはぁー!!生き返るぅ!」

 

「ふっ大袈裟なやつめ。だがまぁその方が奢りがいがあるというものだ」

 

ムムッやはり悪いやつではない。警戒メーターが下がってるため隣に座るのを許す。

 

「んで?どうやって暇を潰すんだい、ふみっち」

 

「ふ、ふみっち……まぁいい」

 

渋々といった様子であだ名を受け入れてくれるふみっち。

 

「新世界の神だの選ばれた者だの自負してたらしいふみっちと話す話題なんてないよ」

 

ラスボス感溢れる演出で登場してたらしいけど、その頃私たちは空き教室で練習してて気づきもしなかったんだよね。仲良くお菓子を食べながら談笑してたのが本当に申し訳なかったよ。

 

「やめろぉー!!!それを掘り返すなぁー!!違うあれは僕じゃない僕の形をした何かだ!」

 

どうやら中二病特有の時間が進むと地雷へと変わる呪いにかかっていたらしい。真っ赤に赤面した顔を両手で隠しながら悶えてる。

 

「あ、あははっごめんごめん。悪気はなかったんだよ」

 

「はぁはぁ普段なら名誉毀損及び精神的な致死傷害罪で訴えてるが今回は咎めないでおこう」

 

「本当にありがとうございます!ふみっち様!」

 

九十度のお辞儀で誠意を示す。そしてまた座ります。

 

「一つ謝るが暇潰しというのは建前でだな。本当は聞きたいことがあるのだ」

 

も、もしかしてこの美少女関根しおりへと愛の告白!?

 

「僕が政治家として今、いじめ問題について奮闘してるのは知ってるな?」

 

「うん知らない」

 

基本的にニュースとか見ないよ。だって頭とか痛くなるもん。

 

「おほん。まぁ奮闘してるわけだ。一環として、ここ十年ぐらいのいじめ問題について被害者と加害者のことが記されている機密事項が存在している。率直に聞く。…………いじめを受けたことがあるな」

 

全身が固まったように動かなくなる。楽しい日々が続いてて忘れていたことを思い出してしまう。あの醜く醜悪な日々を。

直やんの真剣な目を見ると誤魔化すことができないと悟る。

 

「うん。中学の頃かな。こんな性格だからさ、周りに溶け込もうとするけど裏目に出てちゃってうざがられた結果、中二の頃には一人だったんだよね」

 

始めは楽しかった。笑顔で私の言葉を聞いてくれた。でも、日が経つ連れて笑顔は消え、不愉快なものを見るかのような目で私を見始める。陰口を言われるようになってから私は人の言葉を信じることがてぎなくなった。

 

「その時出会ったのがみゆきちなんだ。おどおどして面倒臭そうだなって思ったけどみゆきちは私と仲良くしてくれた。

最初は同情とかかな?って考えたけど、そんな器用なことできないようなドジな子だからすぐに疑うことはなくなったよ」

 

落ちた消しゴムを拾ってあげたってだけの些細なことだったけど、出会いに小さいも大きいもないと分かった。

 

「てっきりガルデモ結成時に出会ってるものだと思っていた。そんなに長い付き合いだとはな」

 

「みゆきちの恥ずかしいことなら何でも知ってるよ。どうだいお一つ?安くしますぜ」

 

「遠慮しとく。話を戻すが情報によれば、いじめは消えずまだ続いてたらしいな」

 

ズカズカと人のプライバシーに踏み込んでくるなぁ〜ふみっちは。

 

「そう続いてたよ。無視されたり仲間外れにされたりと小さいのがちょくちょく。でもそんなのが霞むぐらいみゆきちとの学校生活は楽しかった」

 

音楽が好きって聞いて夢中で話して、演奏したいなって聞いてますます意気投合して話し合った。一緒高校に入って音楽を始めよう。そう約束した。

 

「よく思ってなかったんだろうね。いじめてた人たちが私の机をある日教室からどこかへ隠したんだ。もちろん担任の先生も授業の時間を削って犯人探し。私は心が折れて家に帰ったよ」

 

あの日は辛かった。犯人の検討はすぐについたけど言葉にできなかった。先生に言えばますます辛いことが増えるだけ、そう思った瞬間、あっ人生なんてこんなもんなんだなって思った。

 

 

「そこから二日休んで学校に来たら何も言わずみゆきちはいつも通り接してくれたんだ。不思議なことにいじめも影も形もなくなってた」

 

「つまり、いじめがなくなった原因が分からずじまいだと」

 

「ううん違う。私も不思議に思ってクラスの子に聞いたの。何かあったの?って」

 

 

返ってきた言葉に私は本当に驚いた。

 

「そしたらね、入江さんが怒ったって言われたの」

 

みゆきちは私がいない間にクラスのみんなを集めて『しおりんが嫌がることをしてるのは誰なの!!!』と怒鳴り問いかけたらしい。

クラスのみんなが認知してるのは温厚で感情を顕にして怒りに顔を歪ませるようなことをしない入江 みゆき。

 

そう認知されているだけあって、誰もが言葉を失ったらしい。入江さんがあんなに怒るなんて………って異常な事態なんじゃないかって周りが思い始めて、一人、また一人とポツリポツリと語られ、犯人はすぐに見つかった。

 

「ほう、見直したな。友のためなら普段できないことをする。良い友を創ったな」

 

「へへ、私もそう思う」

 

そのことをみゆきちに聞いても誤魔化して何も言わない。それは今でもそう。きっと私に気を遣わせないためだと思う。

 

「そろそろ戻ってくるだろう。貴重な時間を過ごせてよかった。お願いなのだが、その話を色んな学校で話してもよいだろうか?」

 

「もう終わったことだし全然いいよ。なんなら私の話だって言ってもいいよ」

 

「感謝する。実名公開はいつかさせてもらおう」

 

洗面所のドアが開く音がし、湯気がこちらにまで漂ってくる。みんなが出てきたらしく話し声が聞こえる。

 

私の親友は暖簾をくぐり私と目が合う。隣にはひさ子さんや岩沢さんたちがいた。

 

「おっ、珍しいな関根が直井といるなんてな」

 

最もなひさ子先輩の質問。

私はソファーから立ち上がるとふみっちも立ち上がり、出口の方へ歩いていく。

 

「本当に感謝するぞ関根しおり。──それと大切にするんだぞ」

 

そんな表情ができるだ…、と思うほど優しい笑顔でこちらに微笑むふみっち。私は不思議、疑問で首を傾げている親友に勢いよく抱きつく。

 

「もちろん!だって………大好きだもん!!」

 

 

私もふみっちに向かってにっこりと笑う。

 

 

また、ふみっちと話したいな。今度は彼の話を聞きたい。それで五分五分だしね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




少し更新が遅れて申し訳ないです。騎士見習いです。

ただいま別の小説も執筆してまして交互に更新するって形になると思いますのでご考慮お願いいたします。

さて、今回は直井くんとしおりんの組み合わせが読みたいという意見がありましたので書きました。ギャグ多めと考えてましたが真面目展開としました。


次回は岩沢さんか初音のどちらかを出します。

では、あらためまして読んでくださってありがとうございます。これからも余裕持って頑張るのでよろしくお願いいたします。



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