Angel Beats! the after story 作:騎士見習い
目の前にそびえ立つのはチャーのおもちゃ会社の本社。さすが日本有数の企業だけあって出入りする人たちは優秀そうな人ばかりだった。そんな場所に俺を含め場違いな四人がいる。
色々と感想だのなんだの共有したいところだが……。
「なぁ……一つ聞いてもいいか?」
「なにかしら?」
「なんでお前らは私服なんだよぉ!!スーツを着てる俺が馬鹿みたいじゃねぇか!」
竹山に言われた通りにそれなりの服装で来たんだが、ゆりっぺも野田も大山までもが休日を有意義に過ごすようなオシャレな私服に身を包んでいる。そもそも竹山がこの場にいないのが不思議でならない。
「戦線のメンバーに会うだけなのにスーツを着る意味があるのかしら。ねぇ、竹や……まくんは用済みだから帰したんだったわ」
「服装以前にお前の竹山に対する扱いを見直してやってくれよ。不憫で泣けてきちまう」
前向きに検討しとくわ、と見直すつもりのない返答にため息を付きつつ、その他の裏切り者の方を見る。
「どうだ日向。このユニ〇ロのコストパの素晴らしさを見てくれ!!これで三千円だぞぉ!ハルバードより安いぞ!」
動く広告のように見事なまでのユニ〇ロファション。言葉を発する度にアホだということがバレてしまうことが残念でならない。
「見て見て日向くん。このG〇のコスパの良さ!普段は高級ブランドを着るけどこれはこれで気に入ったよ。これで三千円だよ!チャカより安いんだよ!」
言葉の上から下までがツッコミどころのオンパレードで逆にツッコむタイミングが読めない。
「お前らはなんで変なモノで価格を比較するんだよ!!そもそも三千円縛りでもしてるのかよ!!どこの企画番組だよバカヤロー!!」
息を荒らげながら怒涛のツッコミのせいで疲れながらも、もしや、とゆりっぺの服装を改めて見る。
「み、見るなぁぁぁ!!あ〜!そうよ!!悪かったわね!しま〇らで!あのお値段以上の質の良さは大学生からしたら泣いて喜ぶ代物なのよ!!そりゃあ天下のユニ〇ロやG〇には勝てないわよ!!笑えばいいじゃない!笑いなさいよ!あ〜はっはっは!!…………ううっ」
何も言ってないのに自分からボロを出した挙句、自己嫌悪に陥ってしまったゆりっぺ。
「いやいやいやそんなことはねぇと思うぞ。俺もよく使ってたぞ。しま〇らの服。な?こんなとこで騒いでたら迷惑だし、ささっと中に入ろうぜ?なぁ!野田、大山」
「ああそうだとも、ゆりっぺ!世界広しといえどもしま〇らの服を着こなせるのはゆりっぺだけだ!」
「そうだよゆりっぺ。なんなら支店の一つぐらい買ってあげるよ?」
なんとも独特な励まし方だが、効果があったらしく伏せていた顔は上がり、ほんと?変じゃない?という最終確認を求めて来た。
「「「ああ!もちろんだとも!」」」
「ふふっ。そうよね!大丈夫、何も言わなくていいわ。私も薄々は気づいてたのよね。これからはしま〇らの時代だってね。さすが私、流行の先を行く才能があるなんて、我ながら恐ろしいわ!」
だいぶ調子に乗っているが下手に横槍を刺すと殺されかねない。
ひと騒動あったものの、ようやく落ち着きを取り戻した俺たちはチャーの本社へ足を踏み入れた。
*
会社の中はおもちゃ会社らしく等身大のフィギュアやら大量のミニカーなどなどユーモア溢れている。私服三人とスーツ一人とすれ違う度に視線を感じるがそれに慣れる前に受付に到着する。
どうやら竹山はしっかりと役目を果たしてくれたらしく受付のお姉さんに名前を伝えると『お待ちしていました』と社長室へ案内してくれた。
『ごゆっくりどうぞ』そう言い残し、俺たちを社長室の前に置いていった。
「入るわよー」
「ノックぐらいしろよ!」
綺麗に無視され扉は抵抗することなく開いた。
「助けてくれぇぇぇ!!!ゆりっぺぇぇぇ!!!」
一瞬しか顔が見えなかったが確かにチャーだった。ものすごい勢いでゆりっぺに近づき、顔を腹に埋めるように抱きついてきた。
あきらかに犯罪臭が溢れる現場に遭遇しているが、こちらが下手に手を出すと痛い目を見ることを知っている俺らはただ傍観する。
「な、何さらしとんじゃ!!!!ボケがァ!!!」
がら空きのチャーの鳩尾に膝蹴りをし、顔が腹から離れた瞬間に顎へ強烈なアッパーを繰り出す。美しく弧を描きながら飛んでく姿を見て、俺らは静かに黙祷を捧げた。
*
「いやぁ〜さっきはすまなかったな」
一時間ほど気絶していたが大した怪我もなく、座ってくれ、と客用のソファーに案内された。
「折角の再開だし許してあげるわ。感謝しなさい」
「ハッハッハ!!我らがリーダーの心が広くて助かった助かった」
心の底から楽しそうに笑うチャー。あの頃の時間が再び蘇ったような不思議な感覚に浸ってしまう。
「ところで何で日向だけスーツなんだ?浮いてるぞ」
「うっさいわ!そういうのは心の中で思ってればいいんだよ!!」
ツッコまれたくないところをツッコまれ再び怒りがこみ上げてきたが、話が進まなくなると思い怒りを鎮める。クールにイこうぜ俺!
あらためてチャーの話に耳を貸す。
「本当なら感動の再開をしたいところだが、頼む!力を貸してくれ!!」
「おいおい突然どうしたんだよ。お前らしくない」
俺の言葉に賛同するように全員が頷く。目の前が爆発しようが銃を突きつけられようがドンっ!と構えるのがチャーという人間だと思っている。
「暴力沙汰ならウチの若いの貸してあげるよ」
「大山……どういうことだ?それは」
「大山くんの言葉は無視していいわ。今の彼は争いしか産まない思考回路だから」
なら俺が、と野田は何か言うとしたがゆりっぺによってテーブルに置いてあるお菓子を無差別に口に詰め込まれる。
「それで?どうしたんだ?」
先程までと違い、真面目な空気を醸し出すチャーに息を呑む。ほんの少しの沈黙が訪れる。
「実はだな……お見合いをすることになったんだ」
予想の斜め下すぎる悩みに気を張って損した気分になる。
「んだよ。もっとこう、会社が潰れるぅ、とか命を狙われてるぅなら分かるがお見合いのどこに助ける要素があるんだよ」
「そうよ、おめでたい話じゃない。心配して損したわ。さてチャーの顔を見たし、帰りましょ」
呆れた俺たちはソファーから立とうとするとチャーが全力で止めに入る。
「待ってくれぇぇ!頼むぅぅぅ!一生のお願いだぁぁぁ!!」
泣きかけているチャーを見ると何か悪いことをしているんじゃないかという錯覚に陥りそうになるが、ここまで頭を下げるチャーは滅多にない。
どうやらチャーにとっては一大事らしく、俺たちは気を取り直して再び座り直す。
「一応聞くけどお見合いのどこが嫌なの?カタギじゃないとか?」
「そうだ。普段のチャーはどこにいったのだ。そこまで嫌な相手なら断るべきだろう」
野田の言う事は最もだし。相手がとんでもなくブサイクとか性格が悪いとかなら分からなくもないが、ここまで心が乱れる原因にはならないよな。
「恥ずかしい話なんだが……お見合い写真を見せてもらったんだ……。そしたら、お見合い相手が前世の妻に瓜二つだった」
俯いていても恥ずかしさで顔が紅潮しているのが十分に分かる。
「はは〜ん。長年、男くさいギルドで生活していたから女性に対する免疫がなくなったということね!!その様子だと今の人生で女性と親しくなったことがないでしょ!」
チャーは魂が抜けたように真っ白に染まってしまった。ゆりっぺの言葉の弾丸によって瀕死の重傷を心に負ったようだ。
「まぁ、チャーの頼みを無下にはできないわ。それで?お見合いはいつなのかしら?」
「今月の末だ。本当にどうにかできるのか」
任せなさい!と胸を叩くゆりっぺに続くように俺たちも頷く。
「恩に着る。例え彼女が別人でも俺はもう一度、彼女と家庭を築きたい」
目の奥に宿る強い気持ちを汲み取るように全員でチャーの手を掴む。死後の世界は知識があれば色んなモノが作れる。だが、どれだけ精密に理解していたとしても命あるものは作れない。数え切れない年数をギルドでのモノづくりに注いできたチャーには十二分に分かっているだろう。
今まで戦線に尽くしてくれたチャーのためにも、と俺は自分の頬を叩き気合いを入れる
「んじゃあ!時間もねぇことだし急いで作戦練ろうぜ」
もう二度とないと思っていたこの四人での作戦会議に俺は頬をほころばせた。
どうも騎士見習いです。前話の投稿から約1年も経ってしまいました。読者さんがいるか心配です。
久々に書いたので内容的にも量的にも不十分なところが多々あるかもしれませんが優しく見守ってください。
次回はいよいよチャーのお見合いです!初期メンバーの力を見せ所です!
では、あらためまして読んでくださってありがとうございます。これからもよろしくお願いします。1年経っても見習いの騎士見習いでした!(意見、感想、評価も気軽にどうぞ)