Angel Beats! the after story 作:騎士見習い
優しく腰に手を回し、振り向けばすぐにキスができそうな距離まで密着する。歩幅を合わせ、ゴールに直向きに走り出す…。
いくら二人三脚といっても、さすがにこの距離は男として色々と感情が噴き出してしまう…。
朝に風呂でも入ったんだろうな。かすかに香ってくる汗と柑橘系の香りに鼻腔をくすぐられながら、出るとこは出ている胸の感触を感じながら走る…どうにかなってしまう前に…。
必死に燻る感情を殺しながら目の前に見えるゴールテープを全力でぶった切り、ゴールする。
あの感触を脳から拭き取るかのように額の汗を拭う。先程まで密着していたパートナーは俺のそんな心境を考えることなく目の前にやってきた。
爽やかな笑顔を見せつけながら俺に現実を突きつけてきた。
「音無!!俺たち相性ぴったりだな!!それに…薄々思ってたが、良い肉体してるよな///」
「そんなこと言うんじゃねぇ!!俺は…俺はっ!奏と走りたかった!」
なんで俺は日向と二人三脚をしてしまったのか…。
〜〜1時間前〜〜
全校生徒、教師、保護者の目を釘付けにした入場とともに俺たちはグラウンドに並び立つ。そして進行通りに選手宣誓へと進むのだが、目の前の台で生徒代表の素晴らしい言葉に胸を打たれながら、我らがリーダーが教師たちの制止を振り切り、台に立つ。
「お、おい…ゆりっぺのやつ何をするつもりなんだよ…。何か聞いてるか…?」
「い、いや。俺にもさっぱりだ」
「みんな知ってるか??」
後ろに振り向き、確認をとるも首を横に振る。全員それぞれ、これから起こることを想像しながら、ある者は武者震いに震え、ある者は過呼吸になり、あるダンサーは踊っていた。
『あーあーテステス。はじめまして四軍の選手たち。これから大事なことを伝えます。心して聞くように』
ざわつく会場を気にせず、ゆりっぺは話し出す。
『私たちは!!!音無初音を筆頭に紅組から反旗を翻す!!!そして独立軍として戦い通す!!紅でも白でも黒でも青でも……どっからでもかかってこんかーーいーー!!!!!以上ッッ!!!』
期待に応えたかのようにコチラに視線を向け、ウインクでのアピールを俺たちは絶望に襲われながら苦笑いでしか返せなかった。
怯えながら愛しき妹の方を見ると
「おおおお、お兄ちゃん…わ、わたし、な、なにも知らないんだけどどどどど」
驚きのあまり全身を震わせる。遊佐も頭のキャパが超えたのか固まっていた。
本来なら学校側で対応があるのが普通だが、校長先生は二つ返事で独立軍を認めていた。
「な、なぁゆりっぺ。お前、校長先生に何をしたんだ?」
「べっつにー。"私は"何もしてないわよ。ただ初音ちゃんの思い出に残る楽しい体育祭の企画を誠心誠意に心に訴えかけて相談したら協力してくれたのよ」
「へぇ。ちなみに誰が同席してたんだ…」
「…………直井くん」
「ガッツリ国家権力使ってんじゃねぇよ!!校長先生の心どころか人生そのものに訴えかけてるだろうが!」
俺の知らない間に、とんでもないことをしてたのか…。なってしまったものはしょうがないと出てくる言葉を飲み込む。
いま、気にするべきは初音だ。今頃、号泣して隅に固まってるに違いないと励まし方を模索しながら初音を探す。
「貴様ら分かってるのか!!私が筆頭となったからには甘えを捨てろ!!返事は!!」
「「「サーイエッサー!」」」
いつのまにか軍帽にマント、意味のわからない勲章をいくつも身につけ、号泣どころか染まりきっている妹に恐る恐る近づくと
「お兄ちゃん、いや違うな。結弦一等兵!貴様はこの戦いに勝利する気があるのか??」
「あるけど…」
「返事はサー!イエッサー!だ!馬鹿者!」
どうやら驚いたのは最初だけだったらしく、本人は乗り気なら俺からは何も言うことはない。なら、やるべきことは一つだ。
「この私に勝利を!優勝を!名誉を全て捧げ!!この体育祭の歴史に我々の足跡を残すぞっっ!!いいかっっ!!」
「「「サー!!イエッサー!!」」」
〜〜〜
そんなこんなで、俺たちは限られたメンバーで競技に参加することとなった。