オーバーロード if -魔導王の凱旋- 作:AOG第100席
街へ向かって歩き出した悟だが、いくつか決めておかなければならない事があった。
ナザリック地下大墳墓がこの世界に転移してきたとして、何を持って目標を達成したとするべきか。優先すべきものは何なのかを決めておかなければ、いざ目の前に選択肢が現れたとき判断に遅れがでてしまう。
ナザリックが転移したと聞いたとき、悟には幾つかの思いが去来した。
ひとつは、かつての仲間とともに作り上げた誇るべき拠点を再び見ることが出来る喜び。
ひとつは、失ったと諦めていた莫大なアイテムが目の前に現れたこと。
ひとつは、意志をもったNPCたちへの恐怖。
「自分たちが作り出したキャラクターが動いてるのは、すこし……いや、すごく見てみたいが、そもそも俺を認識してくれるのかな」
アインズ・ウール・ゴウンの子供たちとも言えるNPCに、他人のような冷たい態度でも取られたら、いくらアンデッドに感情の抑制が働くとも言えど、じわじわと感傷を引きずるのは想像に難くない。
NPCは創造主に忠実であるという情報は存在する。
六大神の従属神、天空城の守護者、氷河城の門番、海上都市の管理人、その他にも無人の遺跡を徘徊する強大な力を持つ魔物。拠点のみが転移してきた形跡はこの世界に多々あり、同じ数だけNPCの形跡もある。
NPCは基本的に拠点防衛のために作られており、その設定上外界へ進んで出ることは考えにくい。実際に、歴史上にその存在が現れたのは六大神の従属神である、俗に言う"魔神"と呼ばれた者たちだけである。
そのうちの一体に悟は出会ったことがある。
何故そうなってしまったのか。
悟はそのことを思い出すと悲しみと怒りの感情が沸き上がる。創造者たちは愛着をもってNPCを作り上げている。それを他者が支配し良いように操るなど許されることではない。
結局何者が彼らを
そして同じ悲劇がナザリックのNPCに起こらないとは限らない。
仮にそうなった場合は、最悪だ。
魔神たちは拠点レベルが低かったのか、レベルの低いNPCしか存在しなかった。しかしナザリックにはレベル100のNPCが複数、しかも単純な能力で言えば悟をも上回る存在が数体いる。
それらが敵対勢力となると想像すると、危険度は竜王に匹敵する。
いずれにせよ、敵対することだけは避けなければならない。
この調査のベストな結果は、ナザリック地下大墳墓とNPCの支配権を全て得て、周囲の国々から反発を招かない事。
その中でも優先すべきことは、第一にNPCと敵対しない事、第二に他者にナザリックを支配させない事、第三に世界級アイテムの確保である。
「本当に最悪の場合は……」
悟は右手に握られた七つの宝玉が込められた金に輝く
「もしかすると、探している物というのは、これかもしれないな」
NPCたちからすれば自らの命が握られているようなもの。
悟とて、このギルド武器を壊すのは最後の最後の手段、キーノたちに危険が及んだときのみと考えている。武器とは言え、かつての栄光そのものであり、二百年ともに歩んだ謂わば体の一部。そう易々と壊すことは出来ない。
「そういうわけだ。すまないが、今回はアイテムボックスの中で待っていてくれよ」
悟が決めるべきもうひとつの課題。
それは如何に変装して街へ潜り込むか、だ。
仮面の
現地人としてはどの職業に於いても英雄レベルであり、遅れを取ることは少ない。
だが今回の相手は違う。
80レベル相当の敵が出てきてもおかしくない。最悪は守護者たち100レベル相当との遭遇。そうなった場合に能力を制限された状態というのは圧倒的不利。万全を期すならば
超位魔法であろうと一撃で死ぬことはまずないので、逃げることは可能だろう。それに今回はひとりの潜入調査。多少の危険であれば回避することも難しくない。
「そうと決まれば、どのアバターにしようか……な」
魔神は転移してきた別のプレイヤーに精神支配を受けたという設定にしました。スルシャーナのNPCだけ魔神にならなかったのは、アンデッドには効かないから。そのプレイヤーは常闇に完殺されたやつ。無念。
悟さんはどの職業で潜入しますか?
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仮面の魔法詠唱者(魔法詠唱者)
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漆黒の大剣使い(剣士)
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災厄の戦斧(斧士)
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傾国の傭兵(複合職)