GOD SPEED STRATOS   作:ジャズ

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どうも皆さん、ジャズです。
一昨日、ハーメルンを開いてビビりました……

ま・さ・か・の・評価がレッド到達!!!
本当に嬉しいです!まさかいきなりレッドゾーンなんて……
評価してくださった皆さん、本当にありがとうございます!
そしてこれからも、《GOD SPEED STORATOS》をよろしくお願いします!!


第十話 シャルルの選択

今日は土曜日、授業はなくアリーナが全面開放されているため、専用機持ちはアリーナで自主訓練を行っていた。

一夏もまた、月末に開催されるタッグマッチトーナメントに向けて、いつものメンバーで自主訓練をしていた。

 

箒「こう、ずばっ!!とやってがきん!!という感じだ!」

 

鈴「感覚よ感覚!習うより慣れろとかよく言うじゃない」

 

セシリア「防御の時は右半身を斜め上前方に5度傾けて、回避の時は後方へ二十度反転ですわ」

 

代表候補生の少女たちが口々に説明するが……

 

一夏「分からん!!」

 

一夏が頭を抱えて叫んだ。

 

箒「なぜ分からんのだ?!」

 

鈴「あんたねぇ……人が説明してるのにちゃんと聞きなさいよ!!」

 

セシリア「いいですか?もう一度説明しますが……」

 

と、再び彼女たちの説明(?)が始まる。

 

総輝「あの説明で、理解しろと言うのが難しい話だ」

 

彼女達の様子を腕を組んで見ていた総輝がため息をつきながら呟いた。

すると、

 

シャルル「ねぇ一夏、僕と模擬戦をやってくれないかな?白式と戦ってみたいんだ」

 

と、シャルルが自身の専用機、《ラファール・リヴァイブ・カスタムⅡ》を装備してやって来た。

 

一夏「シャルル!いいぜ、やろう!」

 

そう言って、一夏がアリーナの中央へと足を進めようとするが、ここで待ったをかける人物がいた。

 

総輝「ちょっと待ってくれ。シャルル、俺とやってくれないか?」

 

総輝だった。

実は、総輝は先日シャルルの正体及びこの学園に来た目的について全てを知っていた。今はまだそのことをシャルルーー否、シャルロットに伝えてはいないが、彼女とその背後にあるデュノア社の目的である一夏と白式のデータの流出を防ぐため、総輝は一夏とシャルロットが戦うのをさり気なく阻止していた。

 

シャルル「総輝?……いいよ、やろう!」

 

シャルルは嫌な顔を少しも見せずに総輝との勝負を受ける。

 

一夏「総輝がやるのか。なら、俺は後ろに下がってるな」

 

そう言って、一夏は総輝と場所を交代し、総輝とシャルルが相対する。

因みに総輝は専用機を持っていないため、訓練機の《打鉄》を使用している。

 

すると、観客席の方から「見てみて!シャルルくんと天道くんが模擬戦をやるみたいだよ!!」と、シャルルと総輝の試合に注目する生徒が増え始めた。

 

そして、試合が始まった。

まず、シャルルが両手にサブマシンガンを携え、それを総輝の方へ乱射しながら接近する。

総輝はそれを、複雑な動きで回避しながら前進する。

そして、二人の距離がほぼゼロになったところでお互いが近接武器を取り出し、近接戦闘に入る。

しかし、シャルルが専用機持ちであるとはいえ、近接戦闘では仮面ライダーである総輝に分があり、シャルルのシールドエネルギーは徐々に削られていく。

 

鈴「何よあれ。専用機持ちに訓練機であそこまで出来る普通?」

 

鈴が信じられない、という表情で思わず呟く。

箒もそれに頷きながら

 

箒「ああ。やはり、仮面ライダーは伊達では無いと言うことなのだろう」

 

セシリアは目を輝かせて

 

セシリア「流石ですわ総輝さん!」

 

とはしゃいでいる。

一夏は少し神妙な面持ちで

 

一夏「俺とあいつ……何が違うんだろうな。俺にも、あんな力があれば……」

 

と呟いていた。

 

総輝の猛攻に防戦一方だったシャルルだが、一瞬の隙に上空へと飛び上がる。

総輝もそれを追って上空へと飛ぶ。

 

シャルルは総輝が追ってくるのを確認すると、両手に再びサブマシンガンを取り出し、後方の総輝へと斉射する。

しかし総輝は、その弾丸の雨を体を回転させながら上手く回避し、スピードを上げて再びシャルルへ急接近する。

 

シャルル「くっ……」

 

シャルルは悔しそうな顔で歯ぎしりする。

総輝へとそんなシャルルの表情を見てしてやったりとばかりにニヤッと笑い、そしてさらに加速してシャルルのは背後に飛ぶ。

 

シャルルは“しまった!”と思い振り向こうとするがもう遅い。総輝は手持ちのソードでシャルルの背中のスラスターを斬りつける。

スラスターを斬られ、推進力を失ったシャルルは地面へと墜落していく。

 

地面に激突し土煙が起こり、総輝はシャルルが落ちたすぐ近くの場所に着陸する。

しかしシャルルはまだ終わってはいない。残ったスラスターを全力で吹かし、土煙を切り裂いて総輝へと急接近する。だが、総輝はシャルルの不意打ちが分かっていたとばかりにそれを右手で軽くいなし、シャルルはそのまま総輝の横を通り抜ける。これで、シャルルは総輝の背後へと回ることに成功する。シャルルは“今が好機!”と考え、再び総輝へと近づく。

 

総輝「はあっ!!!」

 

しかし、この状況こそ総輝にとって好機。シャルルが総輝に到達すると同時に、総輝は振り向きざまにカウンターの回し蹴りを発動し、左足を軸に右足を振り抜きシャルルの頭部に直撃させる。

 

シャルル「うわぁぁーーーっ!!!!」

 

その蹴りでシャルルは大きく吹き飛び、そのままアリーナの壁に激突する。その衝撃でシャルルのシールドエネルギーがゼロになり、ISが強制解除される。

 

これで試合が終了し、アリーナ中に歓声が沸き起こる。

鈴達も盛大な拍手と共に総輝に歩いて行く。

 

鈴「凄いじゃない!訓練機で専用機持ちを圧倒するなんて!!」

 

箒「うむ。シャルルの攻撃を少しも受けずに勝利するとは。見事だ」

 

セシリア「素晴らしいですわ、総輝さん!!私は感服致しました!!」

 

すると、壁に激突したシャルルが総輝の方へ歩いて行く。

 

シャルル「完敗だよ総輝。まさかこんなに手痛くやられるなんてね」

 

シャルルの表情には少し悔しさが滲み出ていた。

 

総輝はふっ、と笑い

 

総輝「当然だ。何故なら最強は俺だからな」

 

と返す。それに対して鈴達は苦笑しつつ

 

鈴「全力で否定したいけど、さっきの試合見たらねぇ……」

 

箒「ああ。私はお前が生身でも勝てない気がする」

 

セシリア「私は一度負けていますからね……しかも、ほぼ生身同然の状態で」

 

 

一夏「すげえな、総輝。どうやったらそんなに強くなるのか教えてくれよ」

 

総輝「一夏が勝てないのは、おそらく射撃武器の特性を理解していないからじゃないか?」

 

一夏はそれを聞いて顎に手を当てる。

 

一夏「う〜ん……一応、理解はしてるつもりなんだがなぁ」

 

シャルル「白式って“後付武装(イコライザ)”が無いんだよね?」

 

一夏はシャルルの言葉に頷き

 

一夏「ああ。何回か調べてもらったんだけど“拡張領域(バス・スロット)”が空いてないらしい」

 

シャルル「多分だけど、それって“単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)”に容量を使ってるからだよ」

 

一夏「ワン・オフ…?」

 

一夏が聞きなれない単語に眉をひそめると、総輝がため息をついて

 

総輝「…授業で習っただろう?“操縦者とISが最高状態になった時に発動する能力”の事だ」

 

一夏「ああ、なるほど。俺の場合は《零落白夜》がそれか」

 

一夏が納得したように頷きながら言う。

 

シャルル「初代《ブリュンヒルデ》…織斑先生の機体と同じ能力なんだよね?姉弟だからって同じ能力が出るものなのかな……?」

 

総輝「分からん。ただ1つ言えるのは、白式は初心者である一夏が乗るには、あまりにもピーキーすぎる機体と言うことだな」

 

一夏「あはは…でも、仮に射撃兵装があったとしても、それを上手く使いこなす自信は俺には無いな。だから寧ろ、刀一本という方が俺にはしっくり来るかもしれない」

 

彼らがそう語り合っていた時だった。

ふと、周りがざわついているのに総輝は気づく。辺りを見回すと、一点に目がいく。

そこにいたのは、黒いISだった。

 

「見て!ドイツの第三世代型よ!」

「まだトライアル段階って聞いたけど……」

 

ざわめきの中、そのパイロットの顔が露わになる。銀色の長髪に左目を覆う黒い眼帯。

そう、先日シャルルと共にやってきた、もう一人の転校生……

 

総輝「《ラウラ・ボーデヴィッヒ》……」

 

総輝がその名を静かに呟く。

すると、ラウラがその口を開く。

 

ラウラ「織斑 一夏……貴様も専用機持ちのようだな。ならば話は早い……私と戦え」

 

低く、威圧感のある声でそう告げる。

しかし一夏はそれに臆することなく答える。

 

一夏「……断る。戦う理由がない」

 

ラウラ「貴様になくても私にはある。どうしても戦わないと言うならーー!!」

 

そう言って、ラウラは右肩に装備されたレールガンを展開し、そして発射する。

突然のことで反応が遅れる一夏だったが、レールガンが火を吹く直前に動き出し、そして一夏の前に立ちふさがる者がいた。

 

総輝「ーーふっ!!」

 

総輝だった。

総輝は一夏の前に出ると、左足を軸に反時計回りで右足による回し蹴りを放つ。

レールガンの弾丸は右足を直撃するが、総輝の右足がそれを押し切り、弾丸をラウラの方向へ飛ばす。

弾かれた弾丸はラウラのすぐ横を通り抜け、壁に激突し大きな爆音と共に土煙を起こす。

 

ラウラ「貴様……」

 

ラウラが舌打ちしながら総輝を睨む。

総輝は再びラウラへと向き直る。

 

総輝「警告も無しにいきなり発砲とは。物騒な奴だな」

 

ラウラ「もう一人の男性操縦者……《天道 総輝》……」

 

すると、総輝の横にISを再展開したシャルルが両手にサブマシンガンを構えて立つ。

 

一夏「シャルル!!」

 

シャルル「いきなり戦闘を仕掛けるなんて、ドイツの人は随分と沸点が低いんだね!!」

 

ラウラ「フン……フランスの第2世代と、日本の訓練機か……そんな機体で、私の前に立ちふさがるとはな」

 

ラウラの言葉にシャルルはキッ、と鋭い視線でラウラを睨み

 

シャルル「いつまでも量産化の目処が立たないドイツの第三世代よりは動けるだろうからね!!」

 

総輝「機体の性能差が本当の実力差であるとは限らないぞ、ボーデヴィッヒ?」

 

そのまま両者のにらみ合いが続くが、ここで教師のアナウンスがアリーナに鳴り響く。

 

“そこの生徒!何をやっている!!”

 

その声に、ラウラは引き時を悟ったのか、ISを解除する。

 

ラウラ「…今日のところは引いてやろう。

織斑 一夏、貴様を倒し二度と動けなくしてやる」

 

吐き捨てるようにそう告げると、アリーナの奥へと姿を消した。

 

 

〜更衣室〜

 

 

男子更衣室のベンチで、一夏は思いつめた表情で座っていた。

そんな彼を不安げな表情でシャルルが覗き込む。

 

シャルル「…一夏、大丈夫?」

 

一夏「…ああ、大丈夫だシャルル。さっきはありがとうな」

 

一夏は無理に作った笑顔で返す。

そんな彼に、壁に腕を組んでもたれかかっていた総輝が声をかける。

 

総輝「お前は悪く無い。ラウラがあんな態度なのは、《第2回モンドグロッソ》での出来事が原因だろう?」

 

一夏「ーーっ?!」

 

総輝の言葉に、一夏は跳ねるように顔を上げ目を見開いて総輝を見つめる。

 

一夏「どうしてそれを……?」

 

総輝「……大牙の爺さんがな、そう言うことに関しては情報通なんだ。そこで知った」

 

一夏「……そうか……」

 

一夏はため息をつきながら項垂れる。

 

シャルル「第2回モンドグロッソ…?一体何があったの?」

 

話について行けていないシャルルがある総輝と一夏を交互に見ながら尋ねる。

 

一夏「…そうだな。今度、みんなに話すよ。第2回モンドグロッソで、俺の身に起きたことーー」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

一夏達がアリーナで訓練している頃……

 

〜とある整備室〜

 

大牙は、幼馴染である《更識 簪》に連れられて整備課の部屋へと来ていた。

そこには、一機のISが鎮座していた。

 

大牙「これって……」

 

簪「私の専用機ーー《打鉄弐式》」

 

簪の言葉に、大牙は目を見開く。

 

大牙「専用機って?でも、これって……」

 

簪「うん。まだ、完成してない」

 

そして簪は、この機体についてポツリポツリと語り出した。

曰く、この機体は日本代表候補生である自分に用意される予定だった専用機であったこと。

しかし、突如現れた高いケースである《織斑 一夏》のデータを取るため、彼の専用機である《白式》の開発の為に人員を割かれこの機体が未完成の状態で放棄された事。

それを、簪本人が自らの力で完成させると引き取り、現在は八割まで完成に至っている事。

 

大牙「そうだったのか……」

 

大牙がそう呟いた直後、どす黒いオーラのようなものが簪から流れる。

 

簪「ふ…ふふふ……そうだよね。女子の代表候補生なんてどこにでもいるしね。数少ない男性操縦者のデータを取る方が大切だよね。どうせ私なんか、お姉ちゃんにも劣る出来損ないだしね……笑え……笑いなよ……」

 

大牙「ちょ、ちょっと簪さん?!なんか凄いオーラ出てるよ?!」

 

簪「大牙はいいよね……どうせ私なんか……ふふふふ……」

 

大牙「簪いぃぃぃぃぃ!!!!!」

 

 

〜10分後〜

 

 

なんとか簪を宥めることに成功した大牙。

 

大牙「全く……びっくりしたぜ」

 

簪「ご、ごめんね……?なんか最近、こういうの多くて……」

 

簪は頬を染めながら言う。

 

大牙「完全に病んでるじゃねぇか!!もう無理すんな!これからは俺が手伝うから!!」

 

簪「それはダメ!!!」

 

簪が突然大声を出し、大牙はビクッと体を震わせる。

 

大牙「か、簪……?」

 

簪はわなわなと体を震わせながら

 

簪「それじゃあダメなの……この機体は、私が……私一人で完成させなくちゃいけないの……でないと……でないと………お姉ちゃんを超えられないから!」

 

大牙「お姉ちゃん…?楯無さんをか?」

 

簪はこくっと頷き

 

簪「お姉ちゃんはロシアの国家代表で、この学園の生徒会長で、あの人の機体を自分一人で組み上げて……それなのに、それなのに私は……あの人に勝つ要素が何一つない……」

 

そう語りながら簪の顔は徐々に徐々に下へ下がっていく。

そんな彼女を見て、大牙は少しため息をついた後、簪の両頬をバシッ!と挟んで再び上に向ける。

 

簪「ふぇ……大牙……?」

 

大牙「しっかりしろ簪!!たしかにあの人はすげぇ人だ。俺自身も尊敬してる。

けどなぁ!!お前だってすげえやつだってこと、俺が一番よく知ってる!!簪が誰よりも負けず嫌いで、努力家な事を俺が知ってる!!」

 

簪「大牙……」

 

大牙「お前が困ってどうしようもなくなってるなら、俺がいつでも手を貸してやる!お前が悲しいときは、いつだってそばにいてやる!お前が傷つけられたなら、俺が守ってやる!それが……《仮面ライダー》だ!!」

 

簪「……っ////」

 

その瞬間、簪は顔が火傷したかのように熱くなるのを感じた。

 

簪「(こ、これってもしかして……告白?!大牙は私のこと好きって事なの?!あ、でも……大牙なら……)わ、わかった。よろしくお願いします……////」

 

大牙「おう!(良かった。心開いてくれたみたいだな。頑張れよ、簪……)」

 

その後、大牙は翌日も簪の専用機の開発作業を手伝う約束をし寮に戻って行った。

 

〜その道中〜

 

突如、少女の叫び声が響いたので大牙はその方向を見る。

司会に移ったのは千冬と、彼女に詰め寄るラウラだった。

 

大牙「(ラウラと織斑先生?何話してんだ?)」

 

少し気になった大牙は木の陰に身を隠し聞き耳をたてる。

 

ラウラ「答えてください教官!何故こんなところで……」

 

千冬はやれやれとため息をつきながら答える。

 

千冬「…何度も言わせるな。私には私の役目がある」

 

そんな千冬に、ラウラはさらに食いつく。

 

ラウラ「こんな極東の地で、一体どのような役目があると言うのですか?!お願いです教官、もう一度ドイツに戻って来てください!こんな場所では、あなたの能力は半分も生かされません!!」

 

千冬「…ほう?」

 

ラウラの言葉に千冬はピクリと眉を動かす。

 

ラウラ「大体、この学園の生徒達は貴女が教えるに足る者達ではありません!危機感に疎く、ISをファッションか何かだと勘違いしている。そのようなもの達に、教官が自ら教えるなど時間の無駄遣いもいいところで……!」

 

千冬「そこまでにしておけよ、小娘」

 

突如千冬が、ドスの効いた低い声で威圧するように言う。

その迫力に押され、ラウラは思わず押し黙る。

 

千冬「…少し見ない間に偉くなったな?十五にしてもう選ばれた人間気取りとは恐れ入る」

 

ラウラ「わ、私は……」

 

千冬「…今日はもう戻れ。私は忙しい」

 

たじろぐラウラを尻目に、千冬は元の声色で話す。

ラウラは歯ぎしりした後、逃げ出すようにその場から走り出す。

彼女をじっと見つめた後、千冬はその場から振り向かずに

 

千冬「…そこの男子。盗み聞きとは感心せんな?」

 

大牙「……気づいてたんですか」

 

大牙はおずおずと木の陰から姿を現わす。

 

千冬「…お前も早く寮に戻れ。夕食の時間だぞ」

 

そう言って千冬は立ち去ろうとするが、大牙は彼女を呼び止めた。

 

大牙「あの!」

 

千冬「…何だ?」

 

大牙「その、織斑先生は、ラウラとどう言う関係なんですか?」

 

千冬「……お前に話すことはない。知りたいのなら、一夏から聞くんだな」

 

そう言い切ると、今度こそ千冬は歩いて行った。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

〜総輝とシャルルの部屋〜

 

訓練を終えた後、シャルルは先に部屋に戻りシャワーを浴びていた。

そしてその後から総輝が部屋に入った。

ベッドに腰掛けると、総輝はある考え事をしていた。それは、シャルルの正体ーー《シャルロット・デュノア》についてだ。先日に彼ーー否、彼女の正体とこの学園に来た目的について知ったのだが、彼はまだ本人にそのことについて話していなかった。

因みに総輝はもうすでにこの件についての解決の手は打ってあった。しかし、そのことを切り出すタイミングを見つけられずにいた。

 

総輝「(いつ切り出そうか……?)」

 

そう思案している時だった。

風呂場から『ガタン!』という音がし、シャルロットの「いったぁ!!」という声が響く。

総輝は反射的に立ち上がり、風呂場に駆け寄る。

 

総輝「シャルル、すごい音がしたが大丈夫か?開けるぞ?」

 

総輝はそう声をかけて、ドアノックに手をかける。

 

シャルル「わあっ、総輝?!まって、ちょっと待って!!」

 

シャルル(シャルロット)の慌てた声が響くがもう遅い。

総輝はその扉を一気に開ける。

 

総輝「……」

 

シャルル「……っ…////」

 

そこには、地面に蹲って座るシャルルの姿があった。

しかし、そこにいたのは男子ではない。膨よかな体つきに女性を象徴する胸の膨らみ。

 

総輝「(しまった!!)」

 

総輝は慌ててドアを閉める。

シャルルが女子であることは既に知っていた総輝だが、彼女が現在裸である事を完全に失念していた。

 

〜数分後〜

 

総輝がベッドに座っていると、シャルルが髪を拭きながらもう一つのベッドに腰掛ける。

しばらく沈黙が続いたが、不意に総輝が切り出す。

 

総輝「……すまなかった。まさか君が…(裸だったなんて)」

 

シャルル「う、ううん。大丈夫……悪いのは男だって偽ってこの学園に来た僕だから……」

 

総輝「ああ、その事なんだが……」

 

総輝は気まずそうな顔で、

 

総輝「君のことについては、既に知っていた。シャルル、いやーーシャルロット」

 

その瞬間、俯いていたシャルルの顔が跳ねるように起き上がる。

 

シャルル(以下、シャルロット)

「ど、どうしてそれを……?!」

 

震えた声でそうたずねる。

 

総輝「実は、 加賀美の祖父さんが警視総監でね。あの人に調べてもらったのさ。君の会社のことや、出自についても……」

 

シャルロットは目を見開いていたが、やがて寂しそうな笑顔で俯く。

 

シャルロット「……そっか。やっぱりダメなんだよね、嘘をついちゃ……」

 

総輝「お祖父ちゃんが言っていた……“手の込んだ料理ほど不味い。どんなに真実を隠そうとしても、隠しきれるものじゃない”ってな」

 

シャルロット「ははは……ぐうの音も出ないよ……」

 

シャルロットは乾いた笑いでそう返す。

 

総輝「それで、お前はこれからどうするんだ?」

 

シャルロット「きっと、本国に呼び戻されるだろうね。僕は代表候補生の資格は剥奪で、刑務所行きは確定かな?」

 

自嘲気味に言うシャルロットだったが、総輝は不意に立ち上がる。

 

総輝「そうじゃない、シャルロット。お前自身がどうしたいのかを聞いている」

 

シャルロット「ふえ?」

 

キョトンとしているシャルロットだったが、総輝は構わず続ける。

 

総輝「お前はデュノア社の操り人形ではない。一人の人間、“シャルロット・デュノア”だろう?ならばお前自身で、自分がどうしたいのか決めることはできるはずだ。お前はどうしたい?どんな人生を過ごしたい?」

 

シャルロットはしばらく沈黙していたが、やがてその両目に涙を浮かべてポツリ、ポツリと語り始める。

 

シャルロット「僕は……僕はこんなことしたくない……会社に縛られないで、自由に生きていきたい……もう嫌だ……嘘をつくのも……人も、自分も騙すのも……!」

 

シャルロットはいつのまにか総輝に抱きついて悲痛な声で自分の願望を語る。

総輝はそんな彼女の頭を優しく撫でながら言う。

 

総輝「……なら、自由になるか?」

 

シャルロット「えっ?」

 

シャルロットは思わぬ言葉に総輝の体から頭を話し、総輝を見上げる。

 

総輝「……実はな、既にシャルロットが自由になる為の手はもう打ってあるんだ」

 

シャルロット「え……ええぇぇぇ?!」

 

総輝「だがその前にシャルロット、お前一つ確認しておきたいことがある。お前は、デュノア社に……実家に何か未練はあるか?」

 

総輝の言葉にしばらく思案していたシャルロットだったが、

 

シャルロット「……無い、かな。二年前にお母さんを亡くしてから、僕はずっと会社の道具みたいに生かされてきたんだ。非公式ではあるけど、会社の機体のテストパイロットもやらされて、挙句こんなことまでさせられて……父と話したのも一時間にも満たないし……」

 

総輝「…そうか。ならばいい、ついてきてくれ」

 

そう言って、総輝はシャルロットの手を引いて部屋から出る。

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

シャルロットが連れてこられたのは、職員室だった。

 

シャルロット「あの、総輝…?」

 

総輝「少し待ってろ」

 

そう言って、総輝は中に入って行く。

しばらくすると、総輝と共に千冬が出てきた。

 

シャルロット「お、織斑先生?!」

 

千冬「ああ、お前もいたのか。案外早くバレたものだな」

 

千冬は軽く笑いながらシャルロットに言う。

 

シャルロット「早くって……え?もしかして織斑先生……」

 

千冬「気づいていないとでも思っていたのか?まあ、確証はなかったから聞こうにも聞けなかったんだが、こいつが全ての証拠を持って来てくれてな。それにしても、男を演じるなら役者の勉強でもするんだったな。全く男らしさを出せていなかったぞ?歩き方然り、仕草然りなんだあれは。本当に男性になりきっていたつもりだったのか?あれならまだ私の方が」

 

シャルロット「分かりましたぁ!分かりましたから、もうその辺にしてください…」

 

シャルロットは涙目になって千冬の毒舌を遮る。

 

千冬「ふっ、冗談…ではないがこれは置いておこう。

さて、お前の処遇だが……一応聞くぞ。本当に、デュノア社に未練は無いのか?実の父から縁を切る覚悟はあるか?」

 

シャルロット「……そのことは、さっき総輝にも話した通りです。僕はもう、あの会社に縛られたくは無い…自由になりたいんです」

 

千冬はそれを聞いて満足したように頷くと、

 

千冬「…よくわかった。その言葉だけで、もう十分だ。あとは任せておけばいい」

 

そう言って、千冬は職員室へ戻ろうとする。

 

シャルロット「あの、何をするんですか?」

 

シャルロットの問いに答えたのは総輝だった。

 

総輝「加賀美の祖父さんが集めたこの証拠資料を、日本政府を通じてデュノア社に叩きつける。そうなればお前は身寄りが無くなるわけだが……お前には日本国籍が与えられる。そうすれば、この学園を卒業してもシャルロットはデュノア社にもフランスにも強制帰国させられることはない。勿論フランスに自分で帰ることも出来るが、お前は自由になれるんだ」

 

それを聞いてシャルロットはしばらく理解が追いついていないのかぽかんとしていたが、徐々にその意味を理解したのか、両目から涙が溢れでる。

 

シャルロット「…なれるの……?僕は、自由に……なれるの……?」

 

確認するように総輝に近づきながらたずねるシャルロット。そんな彼女を優しく抱きとめ、頭を撫でながら総輝は笑顔で答える。

 

総輝「ああ。今までよく我慢したな。これでもう、お前は何にも縛られることはない。自分の意思で、自分の人生を決められるんだ」

 

その瞬間、シャルロットは声を上げて泣いた。今まで押し殺していた全ての感情を溢れさせながら……

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

シャルロットが泣き止み、部屋に戻る途中。

 

シャルロット「…ありがとうね、総輝」

 

そう言われ、足を止めて総輝は振り返る。

 

総輝「礼には及ばない。お前が本当の笑顔でこれからを過ごせるのならば、安いものだ」

 

シャルロット「ふふっ……でも、どうして?なんで総輝は、ここまでしてくれるの?」

 

総輝「人を助けるのに、理由は必要か?」

 

シャルロット「でも、普通あってそれほど繋がりもない人に、ここまでする人なんていないよ。それに、日本の警察の人や政府の人まで動かすんだから……」

 

総輝はしばし思案したあと、ゆっくりと語り始める。

 

総輝「ある人が言っていた。“ヒーローとは、正義のために戦うんじゃない。人の笑顔と、夢と希望、そして自由を守るために戦うんだ”とな。俺は、お祖父ちゃんから受け継いだものがある。俺はお祖父ちゃんからこの国のヒーロー、《仮面ライダー》の力を受け継いだ。でも、それはただ戦うだけが全てじゃない……その他の方法でも、困った人を助けるのが、本当のヒーローなんだ」

 

シャルロット「…ヒーロー、か……一体君は何者なのさ?」

 

その問いに、総輝は右手の人差し指を天に向けて答える。

 

総輝「お祖父ちゃんが言っていた……俺は“天の道を往き、総てを輝かせる太陽”、《天道 総輝》だ」

 

シャルロットはしばらくぽかんと口を開けていたが、思わず吹き出す。

 

総輝「…何が可笑しい?」

 

少しムッとした総輝がシャルロットに問いかける。

 

シャルロット「ううん、違う違う。すごく言い得て妙だなと思ったんだよ。総輝は僕の心を照らしてくれた。さっきまで僕の心は、悲しい気持ちや悔しい気持ちでいっぱいで……まるで、雲が立ち込めて真っ暗だったんだ。

だけど君は、まさに太陽のように、僕の心を希望と言う光で照らしてくれたんだ……だから、何度でも言わせて?

 

ありがとう、総輝…僕のヒーロー」

 

 

 

 

 

 




お読みいただきありがとうございます。
今回、シャルロットの決断についてですが、これは私が本編で感じていた不満を総てこちらで解決させていただきました。
原作での一夏の処置って、このコメント欄でもあったんですが所詮は問題の先送りでしかないんですよね。つまり、シャルロットが卒業すれば後はどうするのか……
なので、もうこの段階で解決させちゃおうと考え、この展開にしました。賛否両論はあるかと考えますが、僕が一番いいと思ったのはこの方法だったので。
では、次回もよろしくお願いします!
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