GOD SPEED STRATOS   作:ジャズ

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遅くなりました、ジャズです!
七月中は、テストや色々な予定が詰まっていたので、中々進めることができませんでした。お待たせして本当にすみませんでした!
それと、もう一つ皆さんに言っておきたいことがあります。
この小説形式なのですが、前回台本形式を辞めると言いましたが、七月中に色々考えた結果、私は台本形式の方がやりやすいと感じたため、この小説は台本形式でいきます。混乱させてすみませんでした。

では、お待たせいたしました!今回はvsラウラ戦です!


第十二話 強さとは…

ラウラとの戦闘を終え、鈴とセシリアは負傷していたため病室に来ていた。

 

鈴「別に助けてくれなくても良かったのに」

 

セシリア「あのまま続けていれば勝っていましたわ」

 

病室のベッドに寝かされた二人が頬を膨らませながら総輝と大牙に言う。

 

総輝「……そんな状態で本当に勝てたのか疑わしいな」

 

総輝が腕を組んでため息をつきながら言う。

それもそのはず、二人は今、全身を包帯で巻かれているほどの重症なのだ。

 

大牙「で、何だってラウラと戦うことになったんだよ?」

 

鈴「うぐっ!あ、いや…それは、その……」

 

セシリア「ま、まあ…乙女のプライドを侮辱されたからといいますか……」

 

大牙の問いに、二人はゴニョゴニョと言葉を濁しながら答える。

 

その直後、ドアが勢いよく開かれ、一夏が慌てて入って来た。

 

大牙「一夏じゃねぇか。どうしたんだよそんなに慌てて」

 

一夏「すまん2人とも、助けてくれ!」

 

その直後、病室に女子生徒の雪崩が飛び込んできた。

 

「織斑くん、わたしと組んで!!」

「加賀美くん、是非わたしと!」

「シャルルくん、わたしと一緒に組もう!」

「天道くん、一緒に天の道を往きましょう!!」

 

女子生徒たちは男子たち(1人は女子)に一枚の紙を見せつけながら我先にと迫る。

 

総輝「……なんだこれは」

 

総輝が女子生徒たちが持つ紙を一枚取り、書かれている内容を読む。

 

“今月末に行われる学年別トーナメントでは、より実践的な戦闘にする為、二人組での参加を必須とする。尚、締め切りまでにペアが決まらなかった時は抽選でのペアにする”

 

と書かれていた。

つまり、2人組みでの参加となった為、女子たちは数少ない男子と組もうとここへやって来たわけだ。

大体の事情を察した総輝は少し思案する。

 

総輝「(…俺なら別に、誰と組んでも構わないんだがな……ただそうなると、シャルが女子だとバレる恐れもある。織斑先生が知っているとはいえ、本人の口から発表があるまではこの事実は伏せておかないとな)」

 

そこまで考えた総輝はシャルの方をチラッと見た後、女子達に向き直り

 

総輝「…済まない、俺はシャルルと組むことになったんだ」

 

と、申し訳なさそうな顔でシャルの肩を組みながらそう言った。

シャルは一瞬驚いた顔になったが、総輝の意図を察したのか少し苦笑いで相槌を打つ。

すると、大牙も一夏の肩を組んで

 

大牙「ご、ごめんみんな!俺も実は一夏と組むことになったんだ!なぁ、一夏?」

 

一夏「えっ?あ、おう!!そうそう、その通り!ははは……」

 

一夏は一瞬戸惑った顔だったが、すぐに大牙の左肩に手を回してそう言う。

それを聞いた女子達は、少し残念そうな顔をしつつも部屋から退散する。

 

「そっかぁ〜、男子同士で組むなら仕方ないね〜」

「残念だなぁ〜」

「でも、これは大牙×一夏のカップリングが……ぐへへ」

 

最後の女子の独り言に少し背中に寒気を感じつつ、何とか女子の集団を退けることに成功した大牙と一夏はホッ、と胸をなでおろす。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

〜翌日・学年別トーナメント初戦〜

 

会場は大勢の人(99.9%が女子)で賑わっていた。

そして、アリーナには二対二向かい合う四機のIS。

 

第一回戦

《織斑一夏&加賀美大牙

vsラウラ・ボーデヴィッヒ&篠ノ之箒》

 

ラウラ「……まさか初戦から当たる事になるとは。待つ手間が省けたと言うものだな。織斑一夏」

 

黒いIS《シュヴァルツェア・レーゲン》をその華奢な体に纏い、眼帯で隠れていない方の目で鋭い視線を送りながら一夏に話しかけるラウラ。

 

一夏「…ああ、こっちも同じ気持ちだぜ。ラウラ・ボーデヴィッヒ」

 

一夏もそれに対して不敵な笑みを浮かべながら返す。

ラウラはそれに対して「ふん」と息を吐き出すと、今度は一夏の隣に立つ大牙に視線を移す。

 

ラウラ「貴様もな、加賀美大牙。織斑一夏とペアを組んでいるのは意外だったが丁度いい。ここであの時の屈辱を晴らさせてもらおう」

 

大牙「…上等だ。かかってきやがれ」

 

試合開始のカウントが残り数秒になり、アリーナに漂う緊張感が高まっていく。

そして、カウントはついにゼロになり、試合が始まる。

 

「「「叩きのめす!!」」」

 

三人が同時に叫んだ。

 

箒「(……あれ?私は?)」

 

 

箒は1人疎外感を感じていた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

まず、一夏がラウラに雪片で斬りかかるが、ラウラが右手を伸ばすと一夏の動きが止められる。AICだ。

 

ラウラ「……開幕直後の先制攻撃か。分かりやすいな」

 

ラウラが不敵な笑みを浮かべながら言う。

 

一夏「……まあな。生憎、俺の機体の性質上、これしかできないんでね」

 

ラウラ「ならば丁度いい。ここで終われ」

 

そう言って、ラウラは一夏に向けてレールガンの銃口を向ける。しかし、一夏は動じない。

 

一夏「……ラウラ、忘れたのか?これはタッグマッチなんだぜ?」

 

一夏の言葉にラウラはハッとした顔になるが、もう遅い。

 

大牙「うおおおおおおりゃあああああああ!!!!!」

 

大牙がラウラの右側から右手のストレートパンチを頬に叩き込んだ。ラウラはそのダメージで数メートル吹き飛ぶ。

ラウラが一夏に気を取られている隙に、大牙が回り込んでいたのだ。

 

ラウラ「…訓練機でこれほどのパンチ力とは。貴様、只者では無いな」

 

大牙「たりめぇだろ!こちとら昔から、年の割に馬鹿みてぇに元気な爺さんに鍛えられてきたんだよぉ!」

 

そう言って、大牙は再びラウラに殴りかかる。

ボクシングのような高速パンチにラウラは対応できずにいる。AICは相手の動きを任意に止める事ができるので一対一の戦闘では無二の強さを誇るが、それを発動するには多大な集中力を要する。

そのため、今パンチの猛攻を受けているラウラはAICを発動させるほどの集中力を出すことが出来ずにいた。

加えて、この至近距離でレールガンを放てばその爆風で自分も大ダメージを受ける可能性があり、ラウラは有効な反撃手段を出さずにいた。

 

その時だった。

 

箒「はああっ!!」

 

箒が大牙に自身の刀で斬りかかったのだ。

 

箒「私を忘れて貰っては困る!」

 

再び、箒は刀を上段に構え、一気に振り下ろす。

しかし大牙は、その斬撃を左手で刀身を掴む事で受け止めた。

 

箒「なっ、白刃どりだと?!」

 

大牙「邪魔を………するなあ゛あ゛あ゛っ!!」

 

大牙は反対側の手で掴んだ刀身を思い切り殴りつける。

その攻撃で、箒の刀は真っ二つに折れた。

そして、今度は箒にパンチを連続で叩き込む。

 

大牙「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!!」

 

箒「くっ……!!(こんな漫画のような拳の連続……まともに反撃もできないっ!)」

 

刀を失った事で有効な反撃手段を失った箒は一気にシールドエネルギーを無くし、脱落する。

 

その間、一夏はラウラと接近戦を繰り広げていた。

一夏の雪片とラウラのエネルギーブレードが火花を散らしながらぶつかり合う。

 

一夏は箒ほどでは無いが、かつては剣道を嗜んでいた身。相手が代表候補生であっても、近接戦であれば善戦に持ち込むことは可能だ。

思うようにダメージを与えられないラウラは苛立ちを募らせ、痺れを切らして肩のレールガンを構える。

が、レールガンが火を噴く直前にそれは爆発した。

 

ラウラ「なっ……」

 

目を見開き、あたりを見回すと大牙がライフルを構えているのが目に止まった。

大牙が正確な射撃でラウラのレールガンを破壊したのだ。

 

ラウラは「チッ」と舌打ちすると、ワイヤーブレードを展開して大牙に巻き付ける。

 

大牙「くっ……ふんぬ〜〜〜〜〜〜っっ!!!!」

 

しかし、大牙は自分に巻きついたワイヤーを掴み取ると、それを力一杯引っ張る。その力でラウラは大牙の方へと引き寄せられる。

そして、ラウラが自分に到達すると同時に大牙は右の拳でラウラを思い切り殴りつける。その攻撃でラウラは吹き飛ばされ、アリーナの壁に激突する。

この好機を逃すまいと、一夏と大牙は同時に動き出す。

ラウラはそうはさせまいと、一夏の方に右手を伸ばした。

AICが発動し、一夏は強制的に動きを止められる。

すると、大牙がここで何かに気づいた。

 

大牙「(もしかして……AICは複数の相手には使えないのか?)」

 

そして一夏もそれに気がついたのか、大牙に目配せをする。大牙もそれに応じ、2人は揃ってラウラから距離を置き、再びラウラに接近する。

 

ラウラ「無駄なことを……」

 

そう呟くと、もう一度集中力を高める。

再び一夏は動きを止められるが、ニヤッと笑いかける。

 

一夏「……何度も言わせるなよ。俺たちは2人なんだって」

 

直後、大牙の飛び蹴りがラウラにヒットする。

そのダメージでラウラはよろめき、さらに一夏がここで決めるために単一仕様能力(ワンオフアビリティ)の《零落白夜》を発動し、ラウラに斬りかかる。

しかしラウラも簡単にはやられない。ギリギリのところで体制を立て直し、何とかその攻撃を躱す事に成功する。

一夏は攻撃に失敗すると、苦い顔で零落白夜を解除する。

 

ラウラ「ふっ、今のでシールドエネルギーが大幅に減ったようだな?貴様はもうまともに戦えまい!!」

 

ラウラは勝ち誇ったような笑みを浮かべると、一気に一夏に接近する。が、その行く手を大牙が阻んだ。

 

大牙「だからよぉ、これはタッグ戦だと……言ってんだろがぁ!!」

 

大牙はラウラを拳で思い切り殴りつけた後、背後に回って羽交い締めにする。そして、スラスターを吹かしてラウラを抱えたまま上空へと飛び上がる。

 

ラウラ「貴様、何を?!」

 

大牙はそれに対してラウラの耳元で呟くように言う。

 

大牙「ラウラ…俺と一緒に、地獄に落ちよう?」

 

すると、大牙はその体制から格闘技のドラゴンスープレックスの要領で一気に上下反転し、ラウラ共々頭から猛スピードで急降下する。

 

ラウラ「なっ…貴様、それをすれば貴様も一緒に……や、やめろおぉぉぉぉぉぉーー!!!」

 

ラウラの叫びも無視し、2人は地面に落下。大きな土煙が巻き起こる。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

地面に叩き落とされ、意識が朦朧としていく中、ラウラは昔のことを思い出していた。

 

ラウラは人工的に生み出された人間。ドイツ軍の舞台である《シュヴァルツェ・ハーゼ》部隊の隊長として、戦うために作られ、生み出され、育てられた。

当初、ラウラは“優秀”だった。部隊の中でも最高レベルを維持し続けていた。

しかしISが登場した時、その状況は一変した。

ラウラはISの適合性向上のため、左目に肉眼へのナノマシン移植手術を受けた。が、ラウラの肉体はその左目からやってくる情報量に対処できず、その結果、ラウラは失敗作の烙印を押されてしまった。

 

しかし、そんなラウラの前に現れたのが、織斑千冬だったのだ。彼女がラウラ達IS部隊の教官となったことで、ラウラは再び最強の座に返りつくことが出来た。

だからこそ、彼女は許せなかった。千冬が世界最強になる筈だった大舞台で、あの男がいたせいで彼女は優勝を逃してしまった。

そう、ラウラは織斑一夏を憎んでいた。だから彼を倒すためにここIS学園へとやって来た。

 

ラウラ「(……力が欲しい……)」

 

ラウラがそう念じた直後、ラウラの脳内に何者かの声が響く。

 

ーー“願うか?汝、己より強力な力を欲するか?”ーー

 

その問いに対し、ラウラは迷うことなく答える。

 

ラウラ「ーーー寄越せ!!」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

ラウラのISを中心に、電流が流れる。

 

ラウラ「ぐっ……ああああああああああ!!!!!!!」

 

悲鳴とともに、彼女のISがスライムのようにウネウネと蠢き、そしてラウラの全身を完全に覆い尽くしてしまった。

 

大牙「なんだよ……あれ……?」

 

大牙は目の前の光景に只呆然としていた。

すると、一夏が声を震わせながら呟く。

 

一夏「あれは……雪片…?!」

 

目の前の変貌してしまったISの右手に握られていたのは、一夏の姉、千冬がかつて使用していた武器である雪片とよく酷似していたのだ。

そして更に、衝撃的な光景が彼らの前に現れた。

目の前の黒いナニカは、遂に人型となった。その姿は……

 

一夏「千冬姉……?」

 

そう、ISを纏った織斑千冬の姿とそっくりだったのだ。

直後、それは右手の刀を振るい、一夏を吹き飛ばした。

雪片の全てをコピーしたのか、一夏は残りのシールドエネルギーが消し飛ばされ、ISが強制解除される。

そして追い討ちをかけるように、偽の千冬は一夏へと近づいていく。一夏は体が震え、その場から動けない。

そして、とどめを刺さんと再び右手を振り上げた直後、何かが一夏の前に立ちはだかった。

 

大牙「一夏ああぁ!!逃げろオォ!!!!!」

 

大牙だ。

大牙は偽の千冬の刀を両手で受け止める。

しかし、その刀は雪片の性質を模しているため、その特性のせいで大牙の訓練機のシールドエネルギーも全て削られ、大牙は生身の状態で吹き飛ばされる。

 

一夏「大牙!!」

 

一夏は慌てて大牙に駆け寄る。

 

大牙「…大丈夫だ一夏。心配すんな」

 

大牙は何とか起き上がる。

一夏と大牙は、揃って目の前の黒いISを改めて見上げる。

すると、既に脱落していた箒も駆け寄ってくる。

 

箒「2人とも無事か?!」

 

一夏「ああ、この通りピンピンしてるぜ」

 

箒は安心したようにため息をつくが、

 

大牙「……にしても、何なんだこれは」

 

大牙が疑問を呈する。

すると、その問いに一夏が答えた。

 

一夏「多分だけど、これはモンドグロッソの時の千冬姉だ」

 

箒「千冬さんだと?!…ああ、でも確かに似ているな」

 

大牙「マジか……じゃあ一筋縄では行かなそうだな」

 

一夏「というか、今の俺たちにはもうISが無いから、どうすることもできないな……」

 

しかし、一夏のつぶやきに対し、大牙が不敵な笑みを浮かべて

 

大牙「…いや、まだ終わってねぇ。俺にはまだ、これがある」

 

そう言って、大牙は銀のベルトを何処からか取り出した。

 

一夏「お前それ…何処にしまってたんだよ?!」

 

大牙「俺のISの拡張領域に入れておいたのさ。まあ、正直使うことになるとは思ってなかったけどな」

 

そう言いながら、大牙は銀のベルトを腰に巻きつける。

 

大牙「と言うわけで2人とも、後は俺に任せて、安全な所まで下がっていてくれ。あいつは俺が何とかする」

 

一夏「ラウラは、どうするんだ?」

 

大牙「そりゃお前……助けるに決まってるだろ」

 

大牙が当然、とばかりに答える。

 

箒「助けるって……あんな奴をか?」

 

大牙「あんな奴って事はねぇだろ。あれでも俺たちのクラスメイトなんだし……まあ、あいつには後で何か奢って貰おうぜ」

 

一夏「そうだな……分かった、ここは頼むぜ!仮面ライダー!!」

 

大牙「おう!」

 

そう言って、2人は拳を打ち付けた後一夏は箒と共にその場から駆け出し、大牙はそれを見送った後再び黒いISに向き直る。

 

大牙「さてと……んじゃ、いっちょやるか!!」

 

大牙がそう言うと、上空からガタックゼクターが飛来し、大牙の右手に収まる。そして、大牙はそれを腰のベルトにセットする。

 

大牙「変身!!」

 

《HENSHIN》

 

電子音声が流れ、大牙の体を青い六角形のパネルが腰から徐々に覆っていく。

変身が完了し、ガタックマスクドフォームとなった大牙は、ガタックゼクターの角を後方へ展開する。

 

《CASTーOFF》

 

再び電子音声が流れ、マスクドフォームのアーマーがとてつもない速さで周囲に吹き飛ぶ。

そして、青い装甲があらわになり、頭部の角が左右から上に上がる。

 

《Change Stag Beetle》

 

ガタックライダーフォームとなった大牙は、肩に装備されたガタックダブルカリバーを引き抜き、構える。

すると、目の前の黒いISも右手の雪片を正面に構える。

しばらくにらみ合いが続いたが、やがて同時に飛び出した。

ガタックの剣と雪片がぶつかり合い、火花が飛び散る。

だが、模倣とはいえやはり世界最強は伊達ではなく、そのパワーで大牙は吹き飛ばされる。

地面に倒れこむ大牙だったが、なんとか体制を保つ。

しかし、そこへ目にも留まらぬ速さで黒いISは大牙に接近し、上から雪片を振り下ろす。

大牙はダブルカリバーを交差させる事で受け止めるが、その凄まじいパワーに徐々に押されていく。

 

大牙「くっ……ぉぉおおおおお!!!」

 

大牙は気合で何とか押し切ると、その場から後方へ飛びのき、距離を置く。

 

大牙「こうなったら……《クロックアップ》!!」

 

《CLOCKーUP》

 

大牙が腰の側面に付いたボタンを押すと、電子音声が流れ、世界の時間がほぼ停止する。

大牙はその場から駆け出し、黒いISの背後に回り込む。

が、ここで目を疑う光景が大牙の目に移った。

 

黒いISが、僅かではあるが後ろを向いているのだ。

 

大牙「なっ…クロックアップに反応した?!

………やっぱ偽物とはいえ、織斑先生って訳か!!」

 

とはいえ、やはりクロックアップ状態の大牙の速度には追いつかず、黒いISは対抗できずにいる。

だが、幾ら両手のダブルカリバーで斬りつけても、その装甲は中々切り裂けない。

とはいえ、ライダーキックではISごとラウラにダメージを与えかねない。

 

大牙「……悪いラウラ、少しだけ我慢してくれ、痛みは一瞬だ!!」

 

そう言って、大牙は手に持ったカリバーを反転させ、そしてそれらを噛み合わせ、鋏のような形態にする。

そして、大牙はそれを黒いISの腰に押し当てる。

 

《RIDERーCUTTING!》

 

音声が流れると共に、オレンジ色の電流がカリバーから一度ガタックの角に流れ、角の間で増幅した後再びカリバーに戻る。

 

大牙「ふんっ!!!」

 

そして、目一杯の力で鋏形態のガタックダブルカリバーを閉じる。

その瞬間、遂に黒いISの装甲が破れ、その中のラウラが露わになった。

 

大牙「ラウラ!!!」

 

大牙はラウラを抱きかかえると、急いでその場から離れた。同時に、クロックアップが解除され、時間流が通常に戻る。

大牙は気を失っているラウラを地面に寝かせる。

 

大牙「ラウラ!しっかりしろラウラ!!」

 

大牙はラウラを揺さぶる。

すると、ラウラの目がゆっくりと開かれた。

 

ラウラ「…ぅ……き、さま………かが…み……?」

 

大牙「気がついたか?!ったく、色々聞きてえことがあるが、とりあえず今は後だ」

 

そう言って、大牙は再びラウラを抱きかかえ、その場から歩き去ろうとしたその時だった。

 

一夏「大牙ああぁぁぁぁぁ!!後ろおぉぉぉぉぉ!!」

 

一夏の叫びがこだまし、大牙は慌てて後ろを振り返る。

すると、ラウラが抜けた事で無人であるはずのラウラのISが、未だに千冬の姿を保ったままこちらに斬りかかろうとしているのが目に入った。

 

大牙「くっ?!!」

 

大牙はラウラを抱きかかえたままその場から飛び退く。

直後、大牙が立っていた場所に雪片が振り下ろされた。

 

大牙「クソッタレが!!何で無人で動いてやがる!!」

 

大牙が吐き捨てるように言うが、黒いISは未だに止まる気配がない。

大牙はラウラを肩に担ぐと、全速力でダッシュし一夏と箒の元へ駆け寄る。

 

一夏「大牙!!」

 

大牙「大丈夫だ。とりあえずこいつを頼むわ」

 

そう言って、大牙はラウラを一夏に預ける。

そして、再び止まらない黒いISへと歩きだす。

 

ラウラ「よせ……無茶だ……!」

 

すると、ラウラが悲痛な声で大牙を引き留める。

大牙はその声を聞き振り返る。

 

ラウラ「あれは………全盛期の教官の全てをコピーしている……お前1人じゃ………勝ち目は無い……!」

 

大牙「……そうだな。相手があの織斑先生なら、ここにいるIS操縦者は誰一人勝てねえだろうな」

 

ラウラ「だったらっ……」

 

すると、大牙はラウラの言葉を遮るように

 

大牙「だったらどうする?あれをほっとくのかよ?」

 

ラウラ「そ、それは…………」

 

ラウラは何も言えなくなり押し黙る。

 

大牙「何だ?心配してんのか?

……ありがとよ。けど、それなら大丈夫だぜ。俺の強さは、お前も知ってるだろ?だから心配すんな。その閉じてねぇ方の目でよく見てな……仮面ライダーの力を!」

 

ラウラの頭を撫でながらそう言い切ると、大牙は今度こそ再び黒いISと対峙する。

 

大牙「……行くぜ、《アナザー千冬》。仮面ライダーの力、その身で味わいやがれ!!」

 

大牙はガタックゼクターのボタンを押す。

 

《ONE》

《TWO》

《THREE》

 

そして、ゼクターホーンを元に戻し、タキオン粒子をチャージアップする。

 

大牙「ライダーキック!!」

 

《RIDERーKICK》

 

ゼクターホーンを再び展開すると、音声とともにオレンジ色の電流が流れ、頭部の角で増幅していく。

その間に、大牙は駆け出し黒いISへと接近する。

黒いISも駆け出し、互いの距離が急激に縮まる。

 

大牙はある程度進むと、左足で飛び上がる。

それと同時に、後方の右足を横から大きく振りかぶり、ボレーキックで蹴りを放つ。

黒いISも刀を横から振り抜き、ガタックの右足とISの刀がぶつかり合い、大きな放電を起こす。

 

大牙「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

互いの力は暫く拮抗していたが、大牙の右足が徐々に押し始め、遂に黒いISの身体に直撃する。

大牙は黒いISを背に地面に着地する。

そして、立ち上がると同時に、黒いISは大爆発を引き起こした。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

夕日が医務室の中をオレンジ色に照らす中、ベッドに横たわるラウラはゆっくりと目を開いた。

 

「……気がついたか?」

 

声が響き、ラウラは視線を横に向ける。そこには千冬が座っていた。そしてその後ろに、大牙と一夏が立っていた。

 

ラウラ「わ、私は……何が起きたのですか……?」

 

千冬「……一応、機密事項の重要案件なのだがな……」

 

そうため息をつきつつも、千冬は説明を始めた。

ラウラがああなったのは、ラウラのISに積まれていた《ヴァルキリー・トレース・システム》、通称《VTシステム》と呼ばれるもので、ISの《世界大会優勝者(ヴァルキリー)》のデータを完全に《模倣(トレース)》するシステムだ。

しかし、操縦者に起こりうる危険を完全に無視するシステムであったため、IS条約によりその開発・運用その他全てに関わることを禁止されているものだ。

 

千冬「……ISの蓄積ダメージ、操縦者の精神状態や意思、いや、願望と言った一定の条件を満たせば、発動できるようになっていたらしい」

 

ラウラ「……私が……引き起こしたのですか……」

 

ラウラは悔しそうな顔で、シーツをギュッと掴む。

そんなラウラに、一夏は語りかける。

 

一夏「……なあ、ラウラ。お前が俺を敵視するのは、俺のせいで千冬姉が世界大会優勝を逃したからだよな……?」

 

ラウラは一夏に視線を移すが、何も言葉を発さない。

一夏は続ける。

 

一夏「お前の言う通りだ……確かに、あの時俺がドイツに居た所為で、千冬姉は優勝を逃した……

俺はあの時、誘拐されたんだ」

 

一夏の言葉に、ラウラは目を見開いた。

 

一夏「……それで、千冬姉は決勝戦を棄権して、俺を探したんだ。その時にドイツ軍が協力してくれたから、千冬姉はその礼として、ドイツ軍で教官を務めた。ラウラは、その時に千冬姉に出会ったんだろ?」

 

ラウラは無言で頷く。

すると、今度は千冬が言葉を続けた。

 

千冬「お前の言うように、あの時一夏がドイツに一人で来ていなければ、私は優勝していたかもしれん。

だが、お前も気づいているだろう?もしあの時、一夏があの場に居なければ、お前は私と出会っていなかった。違うか?」

 

ラウラ「……その……通り、ですね……」

 

すると、一夏がラウラのそばに寄る。

 

一夏「……なあラウラ。お前は知ってるだろうけどさ、俺すっごく弱いんだ。昔から千冬姉には守られてばかりでさ……そんな自分が情けなくて…だから強くなりたいんだ。強くなって、みんなを守りたい。

総輝や大牙みたいな《仮面ライダー》みたいにはならないだろうけどさ。でも、いつかは大切なものを自分の力で守れるようになりたいんだ。だからまずは、ISで強くなりたい。ラウラ、俺に力を貸してくれないか…?」

 

ラウラは暫く無言で一夏を見つめていたが、

 

ラウラ「織斑一夏……私は、お前のことを今はどう思っているのか、自分でもよく分からない……

でも、私のこれまでの非礼を許してくれると言うならば……幾らでも力を貸そう」

 

それを聞いて、一夏は優しく微笑み、

 

一夏「……ありがとう、ラウラ」

 

そう言って、ラウラの右手を両手で掴む。ラウラはその手を優しく握り返す。

 

大牙「……よかったな、一夏」

 

大牙は一夏の肩を掴みながら言う。

 

千冬「……そろそろ時間だ。行くぞ」

 

そして、三人は同時に歩き出すが、

 

ラウラ「……加賀美大牙」

 

ラウラが大牙を呼ぶと、大牙は立ち止まり振り返る。

ラウラは彼の顔を見つめながら問いかける。

 

ラウラ「何故……なぜ、私を助けた?」

 

大牙は真剣な瞳でラウラを見つめながら答える。

 

大牙「人を助けるのに、理由は必要かよ?」

 

するとラウラはガバッと起き上がる。

 

ラウラ「だが!私とお前は少なくとも試合の直前までは対立する関係だった筈だ!」

 

大牙「関係ねぇよ。俺とお前はクラスメイトだろ?それに、日本にはこんな諺があるぜ?《昨日の敵は友達だ》」

 

ラウラは暫く呆気に取られた顔をしていたが、呆れたように笑いながら

 

ラウラ「……呆れた奴だな。お前はお人好し、いや、正真正銘の馬鹿だな」

 

大牙「なっ……バカって言うなよ!せめて“筋肉”つけろよ!」

 

一夏「いやそっち?!そっちに怒るのお前?!」

 

ラウラはしばし笑っていたが、やがて窓の外に視線を移す。

 

ラウラ「……教官、暫く加賀美と、二人にしてくれませんか?」

 

千冬「…構わん。加賀美、寮には寄り道せずに戻れよ?」

 

千冬はそう言い残し、一夏と共に部屋から出た。

部屋には大牙とラウラが残された。

 

ラウラ「……私の話を、聞いてくれるか?」

 

大牙「何だよ、改まって……まあいいぜ。どんな話だよ?」

 

すると、ラウラは左目を覆っていた眼帯を外す。

 

大牙「お前それ…………」

 

ラウラ「驚かないのだな?これは、ISのセンサーの補助機能を持つナノマシンでな、《ヴォーダン・オージェ》と言う」

 

大牙「へえ……いや、俺はてっきり失明したのか怪我してるから付けてるのかと思ってさ」

 

ラウラ「……この瞳を見る者は皆、気味悪がるか好奇の視線を向けるかどちらかだったぞ。お前の感性はどうにかしているな……」

 

大牙「気味悪がる?何でだよ。綺麗な眼じゃねえか」

 

その瞬間、トクンとラウラの心臓が音を立てて跳ねた。

 

ラウラ「綺麗……だと……?」

 

大牙「ああ。赤と黄色で丁度グラデーションみたいな感じでさ、凄え綺麗じゃん」

 

ラウラ「……この瞳を綺麗だなどというものなど今まで居なかったぞ。やはり、お前は変わっているな……」

 

大牙「だからなんでそうなるんだよ、実際綺麗なんだしよ……んで、その眼がどうかしたのか?」

 

ラウラ「さっきも言ったが、この眼にはISのセンサー機能を高めることが出来るのだが、私の身体はこれを処理できなかった。故に私は失敗作の烙印を押されたのだ……」

 

それを聞いて、大牙は激怒する。

 

大牙「失敗作ぅ?!!ざっけんな!勝手に色々弄っといてそりゃねぇだろ!!……ん?失敗“作”ってどういう事だよ?」

 

ラウラ「ああ、私はお前たちのように親がいない。私は、試験管の中で人工的に作られた人間なんだ」

 

大牙「ふぅ〜ん。まあ、そこはどうでもいいけど」

 

ラウラ「どうでもいいのか?私としてはかなり大事な事だと……まあいい。とにかく、この眼のせいで、私は部隊の中でも最底辺の落ちこぼれになってしまってな……」

 

大牙「そこで出てきたのが、織斑先生だったと、そういうわけか」

 

ラウラは頷くと、自然と笑顔になり

 

ラウラ「あの人は私にとって救世主の様なものだった。あの人が教官になってくれたから、今の私がいる」

 

大牙「なるほど……けどよ、確かに織斑先生が教官だったからかもさんねぇけどよ、そこからまた這い上がれたのはお前自身の努力だったんじゃねえか?」

 

ラウラ「なに……?」

 

ラウラは少し驚いた様な顔で大牙を見つめる。

 

大牙「織斑先生はあくまで“教官”だったんだろ?なら、織斑先生に出来んのは結局教え子を導くことなんだよ。やり方とか、今どうすべきなのかを教えてさ……けど、結局それで変われるかどうかは自分次第だろ?だから、お前が今ここにいるのは、それはお前が必死こいて努力したからじゃねえのか?」

 

ラウラは目を伏せて少し黙り込んだ後、再び顔を上げて尋ねる。

 

ラウラ「だが、お前は私よりも強かった。教えてくれ、なぜお前はそれ程に強い?その、《仮面ライダー》とやらになれば、私も今以上に強くなれるのか?」

 

大牙はそれに対して少し考え込んだ後、ポツリポツリと語り始める。

 

大牙「ん〜〜〜………ラウラはさ、《強さ》ってなんだと思う?」

 

と逆に尋ねた。

 

ラウラ「強さ?ふむ……私にとって《強さ》とは、まさしく教官の様なものだな……周りの追従を許さない、圧倒的な力……私はそう思う」

 

大牙「……そっか……俺は、“誰かを守れること”が強さだと思うんだよな。そういう意味じゃ、一夏と似てんだけど。昔、俺のじいちゃん達は、《仮面ライダー》として街の人達を陰ながら守ってたらしいんだ。

俺は、その力を受け継いだ。だから、じいちゃん達みてぇに誰かを守れる様になりてぇんだ」

 

ラウラ「…まるで、織斑一夏の様だな」

 

大牙「…そうだな。一夏もおんなじこと言ってたな……でも、あいつがそう言うのは、昔織斑先生に守られてたからなんだよな。だからあいつは、そんな織斑先生みてぇに強くなって、誰かを守れる様になりたいって思ってる……多分織斑先生も、あの人が強ぇのは周りを圧倒するためじゃない…たった一人の弟である、一夏を守るために強くなったんじゃねえかな?だってそうじゃないと、世界大会の決勝すっぽかしてまで一夏を助けたりしねえだろうしな」

 

ラウラ「……誰かを……守る力か……」

 

大牙「ああ……だから俺は、これからも《仮面ライダー》としてみんなを守っていきたい。もちろんお前もな、ラウラ」

 

ラウラ「…………」

 

しばし沈黙が続いたが、やがて大牙はゆっくりと立ち上がる。

 

大牙「……さてと、俺はもうそろそろ行くわ。ちゃんと寝てんだぞ?」

 

そう言って、大牙は出口に向かって歩き出そうとする。

 

大牙「……そうだ、もう一つお前に言っときたい事があったわ」

 

そう言って、大牙は振り向く。

 

大牙「お前さ、ずっと自分が失敗作だとか、織斑先生が救世主だとか言ってたけどよ……それってもう“過去の話”だろ?そんな辛気臭ぇ過去なんて忘れちまって、これからは“未来の話”しようぜ?」

 

ラウラ「未来の……話……?」

 

大牙「ああ、どんなことでもいい。明日の朝飯何にしようとか、明日はどんな服着て行こう、とか……そんなくだらねえ事でも、未来の話すれば、明日が楽しみになるだろ?そうなりゃ、毎日が楽しくなんじゃん?だから、これからはもう過去の話はやめにして、未来の話して行けよな」

 

そう言い残し、今度こそ大牙は部屋を出た。

部屋には、一人ラウラが残っており、ただ静かな時が過ぎていた。

 

ラウラ「(《誰かを守る力》……か……そうか、私はずっと履き違えていたのだな。教官の強さが何たるかを。そしてそれは、織斑一夏も加賀美大牙も同じだった…)」

 

そこまで考えると、ラウラは自嘲気味に笑い出す。

 

ラウラ「…ふふっ、勝てないはずだな。私は織斑教官の事を、正しく理解していなかったのだからな……」

 

そしてラウラは、最後に大牙が言い残した言葉を思い出していた。

 

ラウラ「未来の話、か………」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

〜食堂〜

 

シャルル「トーナメント戦は、中止らしいね」

 

総輝「当然だろう。あんな事が起きたんだからな」

 

夕食時、多くの生徒で食堂が賑わう中、総輝とシャルルが向かい合って座ってディナーを楽しんでいた。

すると、少し離れたところで女子達が悲しそうな目で

 

「優勝チャンス無くなった……」

「交際……無効……」

「うわあーーーん!!」

 

そして、涙目で駆け出していった。

すると、そんな女子達と入れ違えで真耶が総輝とシャルルの元へやって来る。

 

シャルル「山田先生、どうしたんですか?」

 

真耶「二人とも、今日も一日お疲れ様でしたね!」

 

総輝「いや、俺たちは全く疲れていないのだがな…」

 

だが、真耶はそんな総輝の呟きを気に留めずに続ける。

 

真耶「でも、そんなお二人の労をねぎらう場所が、今日から解禁になったのです!」

 

何のことか分からず、総輝とシャルルは首を傾げる。

 

真耶「その場所とは……男子の大浴場です!!」

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

一流旅館の温泉の様な大浴場の浴槽に、総輝は一人くつろいでいた。何故か大牙と一夏は中々やって来ない。

一人で使うには広すぎるが、総輝はそんな事を気にする事なく、一人のびのびと浸かっていた。

すると、大浴場の扉が開く音がする。

一夏と大牙もやって来たのか、そう思った総輝は扉の方を向く。

 

シャルル「お、お邪魔します……」

 

そこにいたのは、全身をタオルで巻いたシャルルだった。

 

総輝「シャルル……?ああ、そうか。お前はまだ表向きは“男子”なんだったな」

 

そう、シャルルはまだ自分の正体を公言していなかった。

シャルルは浴槽に入ると、総輝の隣に座る。

 

総輝「……なら、俺はもう上がろう。風呂はもう堪能したし。一夏と大牙には、もう少し待つ様に言ってくる」

 

総輝は立ち上がろうとするが、シャルルがそれを止めた。

 

シャルル「待って総輝!あの……話が、あるんだ……」

 

総輝「話……?」

 

総輝はシャルルに背を向けて座る。

 

シャルル「うん。その、僕ね……もう自分のことを隠すのをやめようと思うんだ」

 

総輝「……そうか。ならもう、これからはシャルロットとして……」

 

シャルル「そう、もう《シャルル・デュノア》じゃなく、《シャルロット・デュノア》として過ごすよ。それでね、総輝……」

 

シャルル、いや、シャルロットは振り返り、総輝の両肩を掴む。総輝の背中に女子特有の柔らかい感触が伝わる。

が、負担の男子ならここで動揺するところだが、総輝は全く動じる気配がない。寧ろ通常運転だ。

 

シャルロット「その……これからはシャルロットって呼んで?僕の、本当の名前で……」

 

総輝「……わかった。シャルロット」

 

シャルロット「……うん……///」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

〜翌日〜

 

真耶「き、今日は皆さんに、転校生を紹介します……」

 

真耶が引きつった笑顔で転校生の紹介に入る。

ざわめく教室の中へ入って来たのは、金髪の女子生徒だ。

しかし、皆はその顔をよく知っていた。

 

シャルロット「どうも、皆さん。改めまして、《シャルロット・デュノア》です」

 

真耶「ええっと……デュノア君は“デュノアさん”という事でした……」

 

直後、教室は大きな騒ぎが起きる。

 

「……え、女の子?」

「なぁ〜んだ、おかしいと思った」

「美少年じゃなくて美少女だったわけね」

「って天道君!同室だから知らないってことは……」

「じゃあ、同じ男子生徒の織斑君も加賀美君も……!」

 

一夏「ちょ、ちょっと待ってみんな!それは誤解だ!俺たちは何も知らな……」

 

弁明を図る一夏だったが、そんな一夏の言葉を遮る様に教室の壁が轟音を立てて破壊された。

中に入って来たのは……

 

鈴「一夏ああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

なぜか怒り心頭の鈴だった。

鈴は既にISを装備しており、肩の龍咆が発射体制に入っている。

 

一夏「待て鈴!!俺の話を少し聞いて」

 

鈴「問答無用!!!」

 

一夏「くっ……」

 

聞く耳持たずな鈴に対し、一夏は後ろの席の大牙を引っ張り出した。

 

一夏「《ガードベント》」

 

大牙「おいバカ!何したんだよお前?!!」

 

一夏「近くにいたお前が悪い!後こないだの仕返しだ!!!」

 

そして一夏は大牙を盾にするように前に突き出す。

そしてそんな大牙に龍咆がついに火を吹いた。

 

大牙「ちょ待て一夏、ヤメルルォォォォォォォォ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大牙が恐る恐る目を開くと、大牙は無傷だった。

 

大牙「ん……?」

 

大牙が無傷だった理由は、大牙の目の前にある人物が立っていたからだった。

その人物は……

 

大牙「ラウラ!!」

 

そう、ラウラだ。ラウラは既に自身のISを装備しており、AICで龍咆を止めたのだ。

 

大牙「た、助かったぜラウラ!」

 

ラウラは振り向くと、大牙の目をまっすぐに見つめる。

 

ラウラ「……大牙、私の未来の話を、聞いてくれるか?」

 

大牙「え?ああ、そのことか!いいぜ、聞かせてくれよ!」

 

大牙が満面の笑みで返す。そんな大牙にラウラはゆっくりと歩み寄り、そしてその顎に手を当てて自分の唇を押し当てる。

 

そう、《キス》ってやつだ。

 

「「「?!!」」」

 

総輝「……ほう?」

 

クラス中の女子達が目を見開き、総輝がニヤリと口角を上げる。

 

大牙の唇を話すと、ラウラは赤面しながらこう叫んだ。

 

ラウラ「お前は、私の嫁にする!決定事項だ、異論は認めん!!!」

 

大牙はしばらく呆気にとられていたが、やがてその意味を理解したのか、絶叫する。

大牙「ウソだドンドコドオォーーーーン!!!!!!!」

 

 




久々すぎて、すごいブランクを感じました。上手くかけていたでしょうか?
今回、ラウラが大牙のヒロイン枠に追加されました!
ああ、簪のメンタルが……((((;゚Д゚)))))))
では、また次回!!

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