GOD SPEED STRATOS   作:ジャズ

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番外編2 地獄の男

やや明るめの大きなアリーナの中で、二人の女性が向かい合って立っていた。

一人は黒を基調とした服を着ており、ボロボロのマントのようなものを羽織っている。もう一人はISスーツを身につけている。

 

『では、これよりIS《アラクネ》・マスクドライダーシステム0号《ダークカブト》の模擬戦を開始します。両者、構えて』

 

アナウンスが流れ、ISスーツの女性、《オータム》は自身のISである《アラクネ》を展開する。顔はバイザーで覆われ、8本足のシルエットはさながら蜘蛛を連想させる。

それに対して黒の少女、Mこと《織斑 マドカ》は右手をゆらりと上げる。すると、どこからかダークカブトゼクターが飛来し、その右手に収まる。

 

マドカ「《変身》」

 

やや低い声でそう告げると、ゼクターを腰のベルトに装填する。

 

《HENSHIN》

 

カブトの音声よりもくぐもったような低い音声が流れ、黒い六角形のパネルがマドカを覆っていく。

そして、蛹のような分厚い黒と銀の装甲に不気味に輝く黄色い複眼が輝く。

マスクドフォームに変身完了したマドカは、続けてゼクターホーンを少し上げる。すると、『キュイイイイン』という音と共に黄色い電流が上半身に流れ、装甲が少し浮き上がる。

 

マドカ「《キャストオフ》……」

 

そして、ゼクターホーンを後方へ展開。

 

《CASTーOFF》

 

浮き上がった銀の装甲が周囲に弾け飛び、漆黒の装甲が露わになった。その胸部には、電子配線のような赤いラインが走っている。

そして、下顎から黒いカブトムシの角が上がり、その黄色い複眼に光が灯った。

 

《Change Beetle》

 

ライダーフォームへの移行が完了し、両者は無言で対峙する。

 

先に動いたのはアラクネの方だった。8本の足を器用に動かし、ダークカブトへ接近する。そして、右手に持ったブレードを振り下ろしていく。

ダークカブトはそれを上手く避け、隙を見てクナイガンのクナイモードで右腕を斬りつける。

しかし、マドカに戦闘の技量があるとは言え、ダークカブトはあくまで人の身体をそのまま反映するため、体格はそのままである。それに対し、アラクネの方はダークカブトの二倍ほどの体格があるため、有利なのはアラクネの方だ。

 

マドカ「《クロックアップ》」

 

《CLOCKーUP》

 

マドカはベルトの側面についたスイッチを押し、クロックアップを発動する。

瞬間、周囲の時間が変化し、アラクネの動きがほぼ静止状態となる。この時点で、ダークカブトはかなりの優位に立つことに成功する。

だがーーーーーー

 

オータム「《クロックアップ》!!」

 

《CLOCKーUP》

 

オータムの声にISから電子音声が流れ、アラクネもクロックアップ状態になる。

オータムはバイザーの奥でニヤリと笑うと、8本の足から紫色のビームを連射する。

マドカはそれを側転や後方転回を繰り返して被弾せずに躱していく。オータムは舌打ちをすると、今度は蜘蛛の糸を発射しマドカを拘束する。

 

マドカは右腕の制御を奪われるが、まだ自由の効く左手でゼクターのスイッチを押す。

 

《ONE》

《TWO》

《THREE》

 

そして、片手だけで器用にゼクターホーンを一度戻し、タキオン粒子をチャージアップする。

数秒チャージすると、再びゼクターホーンを展開する。

 

マドカ「《ライダーキック》」

 

《RIDERーKICK》

 

黄色い電流がゼクターから角へと走り、その黄色い複眼がより一層不気味に輝く。

そしてその場から駆け出し、勢いをつけてジャンプ。右足を突き出すと、その足底に黄色い電流が収束する。

 

マドカ「ハアアァァァーーーーッッッ!!!」

 

先程までの暗くも落ち着きのある声から一転、荒々しい叫び声と共に、マドカはアラクネへと飛び蹴りを放つ。

飛び蹴りは見事アラクネへと命中し、オレンジ色の大爆発を引き起こした。

 

《CLOCKーOVER》

 

ここでクロックアップが解除され、マドカは高速の世界から引き戻される。アラクネは未だに爆炎の中にいる。

だが、やがてその煙の中から、無傷のアラクネがゆっくり足を進めながら姿を現したのだ。

 

『そこまで!模擬戦はここで終了とします』

 

アナウンスが流れ、両者は距離を置く。

マドカは腰のダークカブトゼクターを外し、変身が解かれる。ゼクターはしばらくマドカの周りを飛んだ後、何処かへその姿を消した。

オータムもISを解除し、元のISスーツ姿に戻る。

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

そして、先程の模擬戦をモニタールームで監視していた人物が二人。

一人は金色の長髪に赤いドレスを纏った長身の女性、亡国企業の実働部隊のリーダーである《スコール・ミューゼル》だ。

彼女は口元に薄っすらと笑みを浮かべながら、となりの人物に問いかける。

 

スコール「……如何でしたか?根岸代表?」

 

《根岸》ーーーーーーこの名を聞いたことのある者は多いだろう。

そう、かつて秘密結社《ZECT》の評議会のメンバーであった一人。その正体は宇宙から来た生命体である《ネイティブ》であり、当時の《ZECT》のリーダーである《加賀美陸》に対してクーデターを起こした後、その全権を完全に掌握し、人類を全てネイティブ化するという恐ろしい計画を実行した人物。

最終的にその計画は総輝と大牙の祖父、《天道総司》と《加賀美新》の二人によって阻止され、根岸もまた崩れ行くZECT本部に巻き込まれて行った……

が、彼はその後辛うじて生きており、《亡国企業》に拾われた後は彼が立てた計画を亡国企業内で評価され、現在は亡国企業の実質的なトップに返り咲いている。

 

根岸「……素晴らしい、の一言ですねスコール殿。まさかあの《クロックアップシステム》をISに搭載するのに成功するとは思わなかった」

 

スコール「お褒めに預かり光栄ですわ代表」

 

スコールはぺこりと頭を下げる。

根岸はそれを見て満足そうに頷いた後、再びモニターに視線を移し

 

根岸「しかし、ライダーキックを受けても破壊されないのは驚いた。一体どんなカラクリなのですか?」

 

スコール「簡単なことですわ。ダークカブトのライダーキックの出力を測定し、そのデータを元にアラクネのシールドエネルギーを大幅に増加しただけです。これならカブトとガタックのライダーキックを受けても、アラクネには傷一つつかないでしょう」

 

根岸「ハハハハハ!全く恐ろしいですな。これなら、IS学園にいる戦略など取るに足りない。

……そう言えば、IS学園に襲撃をかける日ももう直ぐですが、どんな作戦でいくのか決まっているのですか?」

 

スコール「ええもちろん。こちらをご覧ください」

 

スコールは手に持ったタブレットを根岸に手渡す。

そこには、白銀のISのデータが載っていた。

 

根岸「これは……アメリカの軍用IS《銀の福音》ですか」

 

スコール「流石根岸代表、よくご存知で」

 

根岸はなにかを察したのか、頷きながら

 

根岸「…成る程、これを強奪し臨海学校中のIS学園に奇襲をかけるわけですか」

 

スコール「いいえ、惜しいけれど違います。この《銀の福音》はあくまでフェイク。福音をエサにIS学園にいる専用機持ちを駆り出します。そうなれば、学園の戦力は織斑千冬は専用機を持っていないようですから、カブトとガタックのみと見ていいでしょう」

 

根岸「つまり、戦力が手薄になった学園を奇襲するわけですな?Mとオータムの二人で」

 

スコール「そういう事です。更に、ZECTに存在した全てのゼクターの復元も完了しています。資格者が現れれば、彼らも向かわせます。無論私も向かいますが、所詮は高校生の坊や二人。実戦経験の豊富なMとオータムの敵ではないでしょう」

 

根岸「フハハハハ!!!それは爽快だ!遂にあのカブトとガタックに復讐の機会が巡ってきたわけだ。私も是非現場で見たい者だ、カブトとガタックが無様に粉々になるのを」

 

スコール「ええ、是非ご覧になって頂きたいですわ。

でも、なにが起こるかわかりませんから、貴方はここで待っていて下さいな。必ず、カブトとガタックの首を取って戻って来ますので」

 

根岸「…期待しているよ?スコール君」

 

スコール「ええ、このスコールにお任せください」

 

すると、根岸がなにかを思い出したように

 

根岸「そういえば、《銀の福音》のパイロットはどうするのですか?幾ら強奪するとはいえ、無人ではISは動かんでしょう。一体、誰を乗せるおつもりなのですか?」

 

スコール「それにも心配は及びません。既にこの人物を用意してあります。貴方もよく知る人物じゃないかしら」

 

そう言って、スコールは根岸の持つタブレットの画面を切り替える。それを見て根岸は目を見開いた。

 

根岸「これは……!何故この人物を?」

 

スコール「亡国企業の情報網にかかれば、ネズミの一匹や二匹居場所を特定して捉えるなど造作もない事です。ましてやそれが、地獄の男であるならば」

 

根岸「しかし、彼は男性ですよ?しかも年齢的に考えて………まさか」

 

根岸は何かに気づいてスコールの顔を見る。

 

スコール「ふふ。既に彼には様々な実験や薬を投与しました。少々手荒な事もやりましたが、まあどうせ生き場を無くした地獄の亡霊。誰も文句など言わないでしょうね」

 

根岸「おやおや……年齢を若返らせ、しかも人為的に男性でISに乗れるようにするとは。綺麗な顔をして、つくづく恐ろしい事をやりますなぁ〜。ハハハハハ!」

 

スコール「いやですわ根岸代表、“綺麗な顔”だなんて。うふふふふふ……」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

亡国企業の地下。光も差さない真っ暗闇の中、鉄格子の奥で一人の人物が座っていた。その顔には生気が無い。

が、突如ピクリと首を挙げ、その瞳がゆっくりと開かれる。

その瞳は獣のようにギラギラと光、闇の中で不気味に輝く。そして、その口をゆっくりと開き、ドスの聞いた低い声でこう呟いた。

 

???「……今、誰か俺を笑ったか?」

 

 

 

 

 




お読みいただきありがとうございます!
今回、まさかの根岸を出しました!根岸のキャラ、しっかり出せていたでしょうか?
それと、最後に出てきた男、もうお分かりですよね?
では、次回もお楽しみに!!!
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