一年一組の生徒たちは、実習授業のためグラウンドに出ていた。
すると、ジャージ姿の千冬が生徒たちの前に出る。
千冬「ではこれより、実習授業を開始する。専用機持ちは前に出てISを展開しろ」
セシリアと一夏は言われた通りに自身のISを展開する。
セシリアは慣れているので一瞬でできたが、一夏は中々展開できない。
一夏「……あれ?」
千冬「早くしろ。熟練のIS操縦者は1秒とかからないぞ」
一夏「そ、そんなこと言ったって…」
するとセシリアが一夏に声をかける。
セシリア「一夏さん、それほど難しく考える必要はありませんわ。頭の中でイメージすればいいのです。自分がISを展開している姿を、頭の中で描いてみてください」
言われて一夏は目を閉じ、言われた通りにイメージする。
すると、右腕のガントレットが光り一夏は白式を纏っていた。
一夏「で、できた……!」
千冬もそれを見て満足したように頷き、
千冬「…では天道、加賀美も“打鉄”を装備しろ。四人で同時に飛行演習を行う」
言われて総輝と大牙はそばに置いてあった訓練用ISの打鉄を纏う。
千冬「では、飛べ!」
セシリア「はい!」
三人「「「了解!」」」
まず、セシリアが空中へ飛び、それに続いて男子三人も飛翔する。
セシリアと総輝が並んで飛び、そのすぐ後ろに大牙、それに追従するように一夏が飛んでいる。
千冬『どうした織斑。性能ではお前の白式が一番高いはずだぞ?』
一番後ろを飛んでいる一夏を見かねて、千冬が通信で一夏に発破をかける。
一夏「そんなこと言ったってな……《自分の前に角錐を展開するイメージ》とか言ってたけど、なんかうまく出来ないっていうか……」
一夏がそんなことをぶつぶつと呟いていると、セシリアが減速して一夏の隣へ並び、
セシリア「一夏さん、イメージは所詮イメージですわ。自分がやりやすいようにすればいいんです」
総輝「その通りだぞ、一夏」
すると今度は総輝がセシリアと反対側に一夏の隣へ行き
総輝「お祖父ちゃんが言っていた。“あらゆる成功はイメージすることから始まる”ってな。山田先生が角錐がどうとか言ってたが、それにこだわる必要はない。例えば、自分が空を飛んでいる姿を思い浮かべてみろ。そうすればもっとやりやすくなるはずだ」
一夏「自分が……飛んでいる姿……」
すると、一夏の飛ぶ速度が徐々に上がっていき、先程までの覚束ない感じはなくなっていた。
大牙「うおっ?!すげえじゃねえか一夏!!」
一夏「総輝とセシリアがアドバイスしてくれたおかげだ!ありがとな、二人とも!!」
セシリア「そんな、私ではなく総輝さんのアドバイスがあったからこそですわ!」
総輝「そんなことはない。お前のアドバイスも、代表候補生らしい的確なものだった。ISに関してはあまり詳しくないからな。俺も是非教授願いたい」
セシリア「は、はい!喜んで///」
セシリアは満面の笑みで、頬を赤く染めながらそう答えた。
それを見たとき、大牙は悟った。セシリアは総輝に惚れていると。
そして一夏はこう思った。“セシリアのやつ、顔真っ赤だけど大丈夫か?熱でもあるんじゃないか”と。
しばらく飛び回っていた四人だったが、ここで千冬から通信が入る。
千冬『よし、では四人とも急降下から完全停止してみろ。目標は地表10㎝』
セシリア「では、まずは私がいきますね」
総輝「ああ、よろしく頼む」
そしてセシリアは地表へ降りていく。
千冬「……11.5cmというところか。まあ、及第点だな」
セシリア「あ、ありがとうございます」
総輝「ーーでは、次は俺が行こう」
そう言って、総輝は急降下を開始する。
体をすり抜ける風がより強くなり、地面が近づくスピードがどんどん早くなっていき、総輝といえど若干体が強張る。
しかし、そこで冷静さを欠く総輝ではない。地面との距離を慎重に見極め、早過ぎず、かつ遅過ぎないタイミングがいつなのか測る。
総輝「(ーーここだ!!)」
そして、体の向きを上下反転させ、足を地面に向ける。
スラスターを全開に吹かせ、急降下でついたスピードを緩めていく。
そして、ついに地面に足がつく。
総輝の着地を見ていたクラスの女子達からは盛大な拍手が起き、総輝はそれを受けながら打鉄から降りた。
千冬「初心者にしては中々の出来じゃないか。これからも精進に励めよ」
総輝「ありがとうございます」
総輝は千冬からの賛辞に頭を下げながら静かに答えた。
セシリア「総輝さん!流石ですわ!!」
セシリアが満面の笑みで総輝に抱きつく。
総輝「お前が手本を見せてくれたお陰だ。ありがとうな」
セシリア「えへへ……///」
総輝がセシリアの頭を撫でながらそう言った。
頭を撫でられてセシリアはだらしない笑顔になっている。
大牙「ーーよし、次は俺が行ってみる」
そう言って、大牙は急降下を開始する。
急降下を開始した大河を見て、千冬は思わずため息をついた。
千冬「ーーあいつは馬鹿なのか?急降下しろとは言ったがーーーーーーー
ーー地面に向かって垂直にいくやつがあるか!!」
とんでもない角度で急降下する大牙を見て、クラスのメンバーからはどよめきが起きている。地面に向かって頭から垂直に降下するなどきわめて危険なことこの上ないからだ。ISには絶対防御があるとはいえ、何が起こるかはわからない。
一方の大牙はある程度降りると体を反転させてスラスターを全開に吹かせる。
しかし、一気についたスピードを中々落とすことができない。
大牙「(ヤベェ!!)ふんぬ〜〜〜〜〜〜〜っっっっ!!!!!!」
大牙は歯を食いしばって打鉄に着いたスラスターを全て思いっきり全開にする。
それによって少々スピードは落ちるものの、完全に殺すことはできずに地面に激突し土煙が起こる。
煙が晴れると、大牙は地面に右膝をついて、右手の拳を地面に打ち付けている体制を取っていた。
相当強い力で打ち付けたのか、右手の拳を中心に地面にはひび割れが起きている。
千冬「まったく、あんな急降下をする奴があるか馬鹿者が。こっちは内心ヒヤヒヤしたぞ。着地と同時に膝立ちで拳を地面に打ち付けたことで、急降下でついた勢いをそのまま地面に移して無傷でいられたようだが、今後はあんなやり方はするなよ?」
大牙「はいっ!すみませんでした!」
大牙はそのままISからおりた。
千冬「…さて、残るは織斑だけか……」
そう言って千冬は空を仰ぐ。
その視線の先には、一夏がこちらに向かって急降下しているのが見える。
すると、何かを察した総輝が大牙に向かって
総輝「大牙、今すぐそこから離れろ。一夏が凄い勢いで落下してくるぞ」
大牙「まじか!」
大牙は慌ててその場から飛び退く。
その約5秒後、一夏がものすごい勢いで地面に激突した。
大きな土煙が上がり、それが晴れると一夏が落ちたところに直径5メートルくらいのクレーターが出来ていた。
箒「一夏あぁぁぁぁぁ!!!」
大牙「うわぁ……派手に逝ったなぁ」
真耶「加賀美君、漢字が違うと思うのは気のせいでしょうか?!」
総輝「……彼奴は流星に……」
「「「「なってない(ません)!!!」」」」
一夏「なんかみんな酷くない?!」
一夏が起き上がりながらそう叫んだ。
千冬「グラウンドに穴を開けてどうする馬鹿者」
一夏「も、もう少し白式が答えてくれたらいけたんだよ……」
千冬「機体のせいにするな。訓練機でありながら、加賀美はちゃんと着地したし、天道は代表候補生を超える見事な着地をして見せたんだぞ、お前にもできるわけないだろうが」
一夏「こ、これからも鍛錬に励みます……」
千冬「……よろしい。では、これにて実習は終わりだ。各自次の授業には遅れないようにな。
それから織斑、お前はグラウンドを元に戻しておけよ。
では、解散!」
千冬の号令とともに、生徒達が戻っていく。
その中で、総輝と大牙、箒の三人が一夏に駆け寄った。
大牙「一夏、俺たちも手伝うぜ」
箒「この規模はお前一人で終わらせるには困難だろう」
一夏「ありがとうみんな。気持ちは嬉しいんだけど、三人とも次の授業に遅れちまうぜ?迷惑はかけられねぇよ」
総輝「そんなことはない。寧ろ、人数が多い方が早く終わるだろう。それに、今日の主役に倒れてもらっては興醒めだからな」
大牙「あー」
箒「確かにな」
一夏「???」
一夏だけが何のことを言っているのかわからない様子だったが、とりあえずグラウンドの整備に取り掛かった。
四人でやったおかげで、休み時間中に終わらせることができ、次の授業には全員間に合うことが出来た。
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〜放課後〜
一同「「「織斑君、クラス代表就任おめでとう!!!」」」
その日の放課後、一組のメンバーが食堂の一角を貸し切り状態にして、一夏のクラス代表就任式を開いたのだ。
テーブルには普段絶対食べられないような豪華な食事が用意され、一夏の周りにはクラスの女子達が群がっている。
箒「…楽しそうだな、一夏」
箒がジト目で一夏をにらみながら小声でそう言うと、
一夏「…楽しそうに見えるか?」
と、苦い表情でそう返した。
そんな二人の間に割って入るように
大牙「何だよ二人もシケた面してよぉ〜!せっかくのパーティなんだからもっと楽しもうぜ!!」
と、箒と一夏の肩を組んでそう言った。
箒「なっ、何をする!気安く肩を組むんじゃない!」
大牙「んだよつれねぇなぁ〜」
大牙は口を尖らせなが離れた。
未だにむすっとしている箒を見かねたセシリアが箒に声をかける。
セシリア「箒さん、そんな顔をしてはいけませんよ。せっかくのパーティなんですから、もっと楽しまないと」
箒「そ、そうは言ってもだな……」
するとセシリアが箒の耳元へ近づき、
セシリア「……そんな顔をしては、一夏さんの心が離れてしまいますわよ?大好きな殿方の為にも、ここは盛大に祝ってあげてくださいな」
箒「ーーっ///」
箒はその瞬間顔を真っ赤にして
箒「お、お前はにゃにを言っているのりゃ!!わ、私がこいつと……そ、そんにゃことあるわけがにゃいだろう!!///」
セシリア「(明らかに動揺してますわね)」
箒「そ、そういうセシリアはどうなのだ?!天道の隣にいなくてもいいのか?!」
セシリア「そ、そんなこと言ってもっ!肝心の総輝さんがどちらにいらっしゃるのかわからないのですわ!!」
総輝「俺を呼んだか?」
セシリア「ひゃああぁぁぁぁぁ!!!」
急に背後から現れた想い人の声にセシリアは驚く。
セシリア「そ、総輝さん!!びっくりさせないでくださいまし!!」
箒「どこに行っていたのだ?」
総輝「クッキーを焼いていたんだ。パーティだからな」
そう言って、総輝は皿いっぱいにクッキーの乗った大きめの皿をテーブルの上に置く。
すると、女子達が我先にとクッキーを一つずつ手に取る。
「〜〜!美味しい〜!!」
「何これ?!こんなクッキー食べたことない!!」
「凄い!これ本当に手作り?!」
と、口々に感想を述べていった。
そして一夏と箒、大牙、セシリアもクッキーを頬張る。
一夏「うまっ?!」
箒「なっ……何だこのクッキーは?!」
セシリア「口いっぱいに広がる程よい甘さ……サクサクとした口当たりの良い食感……パサパサとせずちょうどいいしっとり感……素晴らしいですわ!!」
と、総輝のクッキーを絶賛していた。
大牙「流石だな、総輝。プロ並みの腕前だ」
総輝「プロ以上……そう言ってもらいたいな」
そうして、クラスのみんなが総輝の手作りクッキーを堪能していると、カメラを持った女子生徒がやって来た。
???「はーい、ちょっと失礼するよ!私は《新聞部》二年の《黛 薫子》です!ちょっと取材させてもらってもいいかな?」
一夏「え?あ、はい……構いませんけど」
薫子「ありがとう!それじゃあ、クラス代表に就任した意気込みを聞かせてくれるかな?」
一夏「えっと……頑張ります」
一夏の回答に薫子は口を尖らせながら
薫子「え〜?もっとなんかないの〜?例えば『命、燃やすぜ!』とか『ノーコンティニューでクリアしてやるぜ!』とか」
一夏「いやそれどんな決め台詞ですか……」
薫子「それじゃあ次は、対戦相手だった加賀美君!何か一言あるかな?」
大牙「ああえっと……まあ、俺は一夏と戦ったから、こいつの実力ならきっと、優勝も目指せると思います。頑張って欲しいです」
薫子「おお!これはいい一言!
それじゃあ次は、セシリアさん、何かあるかな?」
セシリア「私は今まで、男性に対して見下す態度を取っていました。でも、その考えは誤りだと気付かされました。
一夏さんがクラス対抗戦で勝てるよう、代表候補生として精一杯支えます」
薫子「イギリスの代表候補生が指導するなら、心強いことこの上ないね!
では、最後に天道君お願い!」
総輝「お祖父ちゃんが言っていた、“つゆの味は見ただけではわからない”ってな。 一夏にも、隠れた才能や力があるかもしれん。これを機に、一夏が“
薫子「天道君らしい一言ね!
それじゃあ最後に、記念撮影をするからみんな並んで!!」
言われて総輝達は横一列に並ぶ。
薫子「いい絵だね!それじゃあ行くよ!
35×51÷24は?」
三人「「「え?」」」
総輝「74.375だ」
薫子「正解!」
思わぬ掛け声に戸惑う三人だったが、構うことなくシャッターが切られる。
一夏「あれ?箒…って、みんな入ってるじゃん」
セシリア「これって四人の写真ですわよね?いいんですか?」
薫子「全然問題ないよ!」
大牙「いいのかよ」
総輝「やれやれ…」
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〜IS学園入口〜
その夜、一人の少女がIS学園に乗り込んだ。
???「ここがIS学園……」
そう呟くと、少女は不敵な笑みを浮かべる。
???「待ってなさいよ……一夏!!」
お読みいただきありがとうございます!
というわけで、セシリアが総輝にデレました!!
正式なヒロインにするかは未定ですが、セシリアの気品さが総輝には合ってると思います。
そして、最後に出て来た少女、皆さんはお分かりですよね?
では、また次回!!