もういつからかは覚えていないが、不思議な夢をよく見る
燃え盛る街から逃げる人々
見たことも無いようなおぞましい怪物が街に溢れかえり、人々を襲い、殺し·····
この光景を見ているだけで、夢とは言え、頭がズキズキと痛み、吐き気に襲われる
「これは夢·····これは夢なんだ·····」
夢を見ている最中にこれは夢だと言い聞かせるのは変かもしれない·····
だけどこうでもしないと、この頭痛と吐き気は和らぐ事はない。
そしてこの夢のオチもいつも同じだ。
「"時崎リュウト"、お前には魔王の資格がある····· 」
と、フードの様なもので顔の見えない黒い外套の男が、低い声でそう自分へと告げ、
───────この悪夢は、終わりを迎えるのだ。
◇◆◇◆◇◆◇
ピピピッ ピピピッ
「····· またこの夢か·····」
部屋に鳴り響く目覚ましの音で、意識はあの悪夢から現実へと引き戻された。
本来、目覚ましのアラーム音はあまり好きではないのだが、あの悪夢を見ている時であれば幾らでも鳴っても構わない、むしろもっと大きな音で鳴り響いて1秒でも早く現実へと引き戻して欲しいと思えてしまう。
眠い目を擦りながら、枕元にあるスマホで今の時間と日付を確認·····。
今日は日曜の午前九時。本当はこのまま二度寝をしたい所だが、今日は前から決めていた買い物の予定がある為起きなければいけない。
最悪の気分のまま洗面台へと向かい、少し眠気のある顔に冷水を浴びせて無理やり目を覚まさせる。
それにしても····· 最近あの夢を見ることが増えて来ている気がする·····
まるで悪い何かを予兆させる気がして·····とても不愉快でならない。
「さて·····」
顔を洗い、目を覚まして下の階へ行くと、置き手紙と共に朝食が置いてあった
「えーっと····· リュウトへ、ご飯置いてるから食べてね
か、母さん達はもう····· 流石に出たか·····」
両親はとっくの昔に用事で家を空けており、この時間の家にはもう俺しか居ない、休日の朝だと言うのにどうりで家の中が静かな訳だ。
食事をさっさと済ませて服を着替え、これで用事の支度は完了だ。
用事と言っても、ちょっと買い物をしに行くだけだが。
あんな悪夢を見た日は買い物してストレスを発散させるに限る、そうと決まれば早速出発だ
家を出ると目が眩むほど眩しい太陽の光が容赦なく照っていた。
今日は半袖で出てきて正解だったかもしれない。
そんな事を考えながら、徒歩で駅を目指す
駅に向かうまでの間、持っていたスマホでニュースを見る。今朝はテレビを見ずに家を出た為どんな話題があるだろうか。
流れてくるニュースはどれもあまりいい話題では無い。
政治についてや、連続殺人事件の話題。
そんな中で特に目を引いたのは次々とスポーツ選手が消えるニュースだった。この事件は動機や犯人像が未だに謎に包まれたまま被害者が増えており警察も手を焼いているらしい
「恐ろしい事件もあるもんだな·····」
なんて他人事な感じで呟くと背中に殺気の様なものを感じ足を止める。
「俺はお前の未来が恐ろしいがな」
何気なく呟いた言葉に予想外の返答が返ってきた
これが感じた殺気の正体·····?
後ろを振り返るとそこには黒いハーネスに身を包んだ、俺と同じ歳位の青年が立っていた。こちらを睨み、明らかな殺意が篭った目で此方を睨みつけている。
「あのー·····どちら様·····?」
恐る恐る俺は目の前の青年へと尋ねると
「名乗る名などない····· 今から倒す相手にな!」
青年は腰にベルトの様な物を巻くと、右手で持っていた赤い何かをベルトに差し込み回転させた
「変身!」
「変身……?」
仮面ライダー ゲイツ という音と共に青年は姿を変えた
「らいだー·····?」
青年が変身した姿の頭部に平仮名で刻まれた らいだー という文字を読み取る
さっきの音からするに彼の名はゲイツ·····?
「この時代のお前に恨みはない····· だが、最悪の未来を訪れさせない為だ····· ここで死んでもらうぞ!」
「えっ!? ちょ·····!」
ゲイツは手に持っていた武器を弓の様な物へと変形させると、あろう事か、こちらへ向けて放ち始めた!?
なんだかよく分からないが、相手が俺に対して明確な殺意を持ったことを瞬で理解し、とりあえずあの男から逃げる事を選んで俺は走り出す。
「逃がすか!」
当然ゲイツとやらも逃がす気はなくこちらを追いかける
それにしても·····悪夢を見た日に変なやつから襲われるとは·····
今日は死ぬほどツイて無さすぎる!
逃げる最中に見つけた建物の物影へと隠れ、襲ってくる青年から何とか逃げ切ったが、まだ家を出て30分しか経っていないというのに、もう一日分の体力は使ったはずだ····· 背中にかいた汗でシャツが身体に引っ付き、言葉にできない不快感が俺を襲う。
命が惜しい俺は仕方なく予定を変え、今日1日は大人しく家で過ごす事に決めた。
「はあああああああ·····」
家へと何とか戻ってきた俺は自分の部屋へと戻ると、大きなため息と共にベッドへと倒れ込む。
家に帰ってきた事でどっと安心感と疲れが体へ襲いかかる
ああ····· 何だか····· また眠く····· なる·····
·····
·············
·····················
······························
········································
··················································
気がついた俺は目の前の風景に気づき、大きくため息を吐いた。
またこの夢だ。
目の前で次々と人が倒れていく
もう幾度となく見た光景だが····· 来た、頭痛と吐き気だ
「これは夢····· これは夢·····」
「夢じゃない」
これは夢だといつものように言い聞かせていると、聞き覚えのない声で話しかけられた。
俺は声のする方へと振り返るとそこには1人の青年が立っている
「夢じゃない·····って?」
「今お前が見ているこれはお前に訪れる未来、魔王として歩む上で起こる出来事·····」
男はそう言うと、持っていたカメラで俺を撮り、出てきた写真を見て溜め息をついた。
「アンタは·····? 」
「俺か? いずれ会った時に教えてやる、代わりに忠告だ。 最低最悪の未来を変えたければ、力を集めろ じゃあな」
男は突然現れたオーロラへと姿を消していく
「力を集める·····? 」
男の言葉を困惑する中で、頭がクラクラしてきた
恐らく·····夢が終わる·····
◇◆◇◆◇◆
「ん·····また夢か ってなんだこれ!?」
夢から覚めると、右手には違和感があった。
違和感の正体、それは黒い時計の様なものだった。
この形、何処か見覚えがあるが·····
「そうだ! あいつが持ってた赤い奴!」
右手で持っていたそれは、街で出くわした青年が姿を変える際に使っていた赤い物と同じものだった。
「いつの間に·····!? 俺寝る前こんなもの握ってたか?」
〜同刻〜
「ゲイツ、何勝手なことしてるのよ!」
一方、別の場所では白い服を身にまとった女性が、仮面ライダーへと変身したゲイツを叱っていた
「ツクヨミ、お前も知ってるはずだ。アイツはオーマジオウになる男だ」
「そうだけど····· この時代の彼は関係ない!」
「確かにこの時代の奴はただの子供だ、だがいずれ奴は最低最悪の魔王となる····· ならばこの時代で奴を消す·····! オーマジオウにやられた仲間たちの為にも·····!」
そう言って、ゲイツはベルトを握る手に力を込める。
「ゲイツ·····」
「とにかく! 俺は魔王を倒す····· 」
ゲイツはツクヨミと呼んだ女性へとそう言い残すと、どこかへ向かっていった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「はあ····· 今日も疲れたなあ·····」
謎の青年の襲撃から1日、学校を終え自転車を押しながら、俺はいつもの様に帰っていた。
今日は部活も無く真っ直ぐ帰れる。
今から帰って何をしようか自転車を押しながら頭で考えてい
ると高校の先輩に帰り道で出会った。
「先輩、お疲れ様です」
「おう、リュウト 疲れた顔してるな? なんかあった?」
ギクッ とりあえずここは笑っておこう·····
「アハハ·····」
言えない·····昨日なんか変な奴に襲われて死にかけたなんて·····
「1人で帰るのはいいけど、なんか最近人が消える事件が増えてるからお前も気をつけて帰れよー」
「はい!」
立ち話も終わり先輩と別れた後、帰ったらゲームをすること決めた俺が自転車を漕ごうとしたその瞬間、
「うわああああああああ!!!!」
と、背後で先程出会った先輩の叫び声が聞こえた
「先輩!?」
俺は急いで自転車の向きを変え、叫び声がした方へと自転車を漕ぐ
現場へ急いだ俺が目の当たりにしたのは赤と青の怪物が先輩の首を掴み上げている所だった
「先輩!」
「リュウト·····! 助け····· てくれ·····」
「こ、このお!」
俺は咄嗟に、近くにあった木の棒で目の前の怪物へと攻撃するも、怪物のあまりの頑丈さに木の棒が折れてしまう
「折れたあ!?」
なんだこいつ!? 硬すぎる!
「ジャマ·····」
「うわああああ!!!」
怪物に掴まれた俺は、謎の怪物にそのまま容易く投げられ、近くの木へと叩きつけられてしまう
何とか立ち上がろうとするも頭を強く打ち、衝撃で体が動かない·····
「リ·····ュウト····· 」
赤と青の怪物はボトルの様な物を取り出し先輩へと向けると、リュウトの目の前で先輩はボトルへと吸い込まれていく
「テニス····· 」
「っ先輩·····!?」
「オマエハ····· 」
完全にピンチだ。
昨日は変な奴に襲われて死にかけたが、今日は怪物に襲われて死にかけ····· いやこのままだと死ぬ·····
あーあ、どうせ死ぬならもっと色々やるべきだった·····なんて考えが俺の脳裏を過ぎる
「はあああああああ!!」
すると突然、赤と青の怪物へと昨日出会った青年が蹴りを叩き込み怯ませた
「お前! 昨日の!」
「本来ならお前を消しに来たが、とりあえずは奴から倒させて貰うぞ 変身!」
昨日と同じように赤い時計の様な物をベルトに差し込み回転させると姿を変えた。
「ハッ! とりゃあ!」
右手に持つ武器で目の前の怪物を圧倒していく青年
目の前の怪物と自分を襲った奴同士の戦いを見守る中、背後から白い服の女がリュウトを引っ張り連れていく
「えっ!? ちょっ!? 何!?」
「いいから早く! こっちに!」
俺は言われるまま、女に引っ張られて連れていかれた。
「そろそろ終わりにさせてもらおうか!」
『ゲイツ タイムバースト!』
ベルトを再び回転させ上空へ飛ぶと、怪物へ向けて蹴りを放ち直撃する寸前、時計の長針が進むような音が周囲に鳴り響き時が止まる
「くっ! まさか!?」
上空で動きが止まったままのゲイツは目の前の怪物を前に動けないでいた
「邪魔するの辞めてくれないかな? 僕はこの時代で新たな王を生み出そうとしているのに」
止まった時の中で、悠々と1人の少年が歩きながらゲイツへと言い放つ
「新たな王だと·····?」
「そうさ·····あの最低最悪の魔王の代わりになる王をね、その邪魔はさせない 引くよ」
再び時が動き出した時、そこには少年と怪物の姿は既になかった
「くそっ!」
「ちょちょちょ! どこまで連れてくんだよ!?」
「いいから!」
白い服の女に手を掴まれたまま、俺は公園から少し離れた裏路地に入ると、白い服の女はようやく足を止めた。
「ここならゲイツも追って来ないはず····· 」
「はぁ····· なんなんだよ·····変な怪物に先輩が襲われたかと思ったら昨日俺を襲った赤いやつと戦い始めるし····· それに君は? ·····」
「私の名はツクヨミ、2068年の未来から来たの。私もゲイツも·····」
「ゲイツ·····? まさかあの赤い奴? ていうかなんでそんな未来から俺を·····!?」
「2068年、世界はオーマジオウという男が暴虐の限りを尽くしてる·····私とゲイツはそのオーマジオウと戦っていたの····· だけどオーマジオウの強さは圧倒的·····味方が次々と倒れていく中でゲイツは過去に戻り今の時間の貴方を消す為にこの時代に来た、そんなゲイツ追って私は来たの」
「そのオーマジオウってのと、俺がなんの関係があるんだよ!」
「貴方が持ってるそのライドウォッチ、それにはオーマジオウの力が眠っている」
ツクヨミはリュウトが持っていたブランクライドウォッチを指さす
「これに·····オーマジオウの力が·····?」
「ゲイツは貴方を消そうとしているけど、私は貴方がオーマジオウになるとは思えない! だから·····貴方を魔王にしないために·····」
「見つけたぞ·····! オーマジオウ!」
ツクヨミの話を遮る様に、ゲイツが変身したままリュウト達の方へと近づいてくる。
「ゲイツ····· 」
「最低最悪の未来を生み出さない為だ····· ここでお前を殺す·····!」
「ふざけんな! 魔王だかなんだか知らないけど、そんな簡単に殺されてたまるか! この力がなんなのかは知らないけど····· せめて足掻く位はしてやる!」
「お前·····! オーマジオウになる気か!?」
ゲイツは歩みを進めオーマジオウへと姿を変えようとするリュウトへ向かう。
「俺の覚悟、見せてやる!」
握っていたブランクライドウォッチはリュウトの覚悟と共に眩い光を帯びると共にジオウライドウォッチへと姿を変えた
「なっ·····! 生まれてしまったか、オーマジオウの力が····· ならば尚更消す必要がある!」
「本当に俺に王の資格があるなら·····!」
ライドウォッチを起動させたリュウトの腰を再び眩い光が包みゲイツと同じベルトが姿を表せた
「これ····· あいつと同じの!」
「ジクウドライバーまでも生み出しただと·····!?」
突然の出来事に、驚きの様子を見せたゲイツの歩みが止まる。
「……変身!」
先日、ゲイツが変身した時と同じ手順でライドウォッチをベルトに差し、回転させる。
眩い光が俺の体を包むと共に、仮面ライダー ジオウ という音と共に仮面ライダージオウへと姿を変えた
「これが魔王の力····· 体の奥から力が湧いてくる!」
「こうなった以上·····容赦はしない!」
ゲイツは片手に持った武器でジオウへと切りかかるも
俺は間髪、それを受け止めた
「こっちにも武器ならある!」
ジカンギレードを取り出したジオウは剣から銃へと変形させ、
ゲイツへと狙いを定める
「FPSなら結構やり込んだからなぁ!」
引き金を引き、放たれた弾丸は狙い通りにゲイツの身体へと全弾命中。
「よっしゃ! 当たった! まだまだ行くぞ! ……うぉ!」
ジオウの攻撃をくらい膝を着くゲイツと、攻撃が命中し喜ぶジオウへと火炎弾が命中し2人は吹き飛ばされる。
突然のことに混乱する俺の前に現れたのは、先程の赤と青の怪物だった。
「さっきの·····アナザーライダーか·····?」
「先輩を襲った怪物·····!」
そんな赤と青の怪物、ゲイツ ジオウの三竦みとなった様子を遠くで見守る男が居た
「この世界にもジオウの力が生まれたか·····」
黒い服を身を包んだ男はニヤリと笑うと、どこかへ消えていった