自らをカラスと名乗る謎の男から挑戦状を叩きつけられたリュウト。
そんなカラスと街で交戦するもアナザーウィザードとなった彼に魔法の力で翻弄され、挙句窮地に追い込まれてしまう。ゲイツの加勢により興醒めしたカラスは撤退、そんな中リュウトはカラスの正体が命の恩人 辛島進では無いかと疑い始めた。
一方、別世界の操真晴人はどういう訳かリュウトの暮らす世界へと迷い込む。そんな彼らを待っていたかの様に門矢士は「ようこそジオウの世界へ」と告げるのだった。
アナザーウィザードと交戦し数日が立った。
あれ以来カラスの行方は掴めていない、だがその間にも街での変死体の数は日に日に増えており、それ故に頭を悩ませていた。
命の恩人が人の手では不可能な方法で人を殺めている... まだカラスの正体が辛島進だとは確定してはいない。 確定したくない。
記憶が無いから確信はないが、あの人は俺の命を救ってくれた...
「リュウト、考え事?」
リビングでテレビを見ながら険しい表情をするリュウトを見兼ねて母親 由紀は問いかける
「あのさ... 辛島進ってどんな人だった?」
「いきなりどうしたの?」
「前も言ったかもしれないけどさ、俺5歳の時の記憶が無いんだよ。 正確に言えばそれ以前のもないけどさ」
ないのは5歳の時の記憶だけじゃない、本当のことを言えばそれ以前の思い出もなかった。
今までは何となく『まぁ小さいときの記憶なんて朧気で当然だよなー』なんて考えていたが、今思い返してみると5歳より前の記憶に関しても断片的にすら思い出せるものがなかった。
何が好きだったのか なにが嫌いだったのか 普通なら断片的に覚えてそうなものの記憶が欠落している
「辛島さんは...いい人だったわ。 何ヶ月も昏睡したままのリュウトを見て一緒に悲しんでくれたし、最善を尽くそうとしてくれた。 まだ研究段階だった技術を使ってでもお子さんを助けます! なんて言って寝ずに頑張ってくれてた... 辛島さんの息子さんもリュウトと同じで事故にあって昏睡状態になったらしいから、どこかで重なったんだと思う」
「ふーん...」
辛島進に息子... 確かになにかの文献で見た
だがまさか自分と同じく事故で危ない状態になっていたなんて。
『私が君の事を知っている様に 君も私の事を知っている筈だ』
やはりあの時のカラスの言葉がどうにも引っかかる
こればかりは... 本人に聞くしかない...!
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同時刻、別の場所では操真晴人と門矢士の2人が喫茶店で話をしていた。
険しい表情を浮かべる2人の会話の内容、それはこの世界の事だった。
「ムネモシュネを覚えているか?」
「ああ、忘れる訳ない」
ムネモシュネ、ギリシャ神話に出てくる記憶を司る女神の名前。
だが門矢士が言うムネモシュネとはギリシャ神話の神の事ではない、過去に2人が巻き込まれた事件の黒幕的存在の事だ。
「あの時の黒幕... カラスとか言ったか、そいつがこの世界でお前に成り代わって悪事を働いてる」
「カラスが...? でも奴は...」
「ああ、俺たちが倒した。」
カラス... かつてディケイドとウィザード達が戦ったムネモシュネを悪用してライダーに偽の記憶を刷り込んで手駒にしようとした男。
しかし彼はウィザード達によって倒され事件は無事解決...
「この世界のカラス 辛島進はムネモシュネを本来の医療目的で使っていた。 だがある日突然姿を消したかと思えば、つい最近現れてこの世界のウィザードに成り代わった」
「つまり... 誰かが辛島進を操ってるとでも言いたいのか?」
「もしくはだ、何らかの理由で奴が進んでアナザーウィザードとなっているのどっちかだな」
門矢士の脳裏へとアーマの姿が過った
「この世界で何が起きてるかは理解した。で、俺は何したらいい? 俺の偽物退治か?」
「この世界を滅ぼそうとしてる魔王に力を貸してやって欲しい」
門矢士は笑みを浮かべ、晴人に告げる
「...世界を破壊するのはアンタの役目だろ」
「俺はただの通りすがりだ、この世界を滅ぼすか決めるのは奴だ」
そっか...という表情を浮かべ、晴人は入店した際に出された水を飲み干した
「それじゃあ、ちょっと手を貸してくる」
「ああ、頼んだ。」
喫茶店を後にした2人。 門矢士は操真晴人と別れ、別の目的を成すために移動するべくオーロラを出したその時、背後に感じた妙な感覚を感じてオーロラを消した
「居るんだろ、海東。」
「やっぱり、気づいてたか...」
居ることを門矢士に看破され、海東は渋々姿を現した
「お前、アーマについたらしいな 目的はなんだ」
門矢士はとっくの昔に海東がアーマと行動を共にしていることを知っている
「決まってるだろ、お宝の為さ。 君も分かってるだろ、彼がアレを持ってる事」
「アナザージオウllウォッチ...」
アナザージオウllウォッチ、それは世界を書換えるほどの力を持つ最強のアナザーウォッチであり、仮面ライダーが存在しないはずのこの世界に仮面ライダーが生まれた原因の一つ。
アーマがどうやってアナザージオウllウォッチを手に入れたのかは知らないが...
かつて海東大樹は別世界でこのアナザージオウllウォッチをスウォルツによって与えられていたが、常磐ソウゴ庇い死亡した門矢士を蘇らせるために使用した事によって失った。
海東大樹がアーマ陣営へとついた理由、それこそが失ったお宝を取り戻す為なのだ。
「お前はあの男が易々とウォッチをくれるような人間に思うか?」
「さぁ、どうだろうね。 どうであれお宝は必ず僕が戴く。 お宝の邪魔をするなら...僕は君が相手だろうが容赦はしないよ」
「勝手にしろ...」
門矢士は海東へと呆れたような口振りで返す。
彼はそのままオーロラを発生させてその場から消えた
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学校が冬休みへと入った。
高校三年生のリュウトにとってこれが高校生最後の冬休み... とは言っても置かれている状況が状況な為、気を抜く訳にはいかない。 アナザーウィザードには1度苦汁を飲まされている、負けっぱなしは性格に合わない
とはいえアナザーウィザード自体がどこにいるのかは分かっていない。前回遭遇した時の事を思うに奴は簡単にテレポートができる。
恐らく魔法の類いだろうか、見つけた所でどうにかして戦いに持ち込まなければ逃げられるだろう。
そんなこんなで俺は、自宅のベッドで横になりながら、辛島進と出会う原因でもあり、記憶喪失を引き起こした事故についてスマホで調べていた。
事故が起きた年は知っている、後はしらみつぶしで5歳の少年が被害者となっている記事を探していく。
調べ始めて数時間後、外の景色はいつの間にか真っ暗になっていたが、ようやくそれらしき記事を見つけた。
2007年6月4日。 皮肉にも事故が起きた日と、俺がジオウとして戦い始めた日が一致している。
記事を読み進めていく内に、俺は衝撃の事実を知る。
驚きの余りスマホが手から滑り落ち、同時に手足に震えが起きた。
「え...? あ...」
俺は今まで事故に遭ったのは俺一人だけだと、何故かそう思いこんでいた。
だが、被害者は俺1人じゃなかった。
俺以外にも、あの事故の被害者は居た。
頭の中が真っ白になる中、スマホに着信が入る
恐る恐る床に落ちていたスマホを拾い上げ発信者を確認。
...ツクヨミだ。
「もしもし...」
『リュウト!今どこ!?』
「家だけど...」
「ゲイツがアナザーウィザードと戦ってる! 早く来て!」
アナザーウィザード... ようやく現れたか。
色々思う所はあるがまずはアナザーウィザード撃破が先だ。それからの事は...これが落ち着いてからにしよう
俺は急いで用意をして、ツクヨミに指定された場所へと向かう。
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「仮面ライダーゲイツ... 聞いたほどでも無かったな」
アナザーウィザードの使う魔法に翻弄されるゲイツ
ファイズフォンXから放つ銃弾は地面から現れた巨大な岩壁に阻まれ、ジカンザックスによる攻撃は液体状になったアナザーウィザードには効かない...
と、このようにゲイツが放つ攻撃の殆どはアナザーウィザードによって容易く受け流され、むしろアナザーウィザードが放つ一撃一撃によってゲイツが追い詰められる という残念な結果だった
とはいえここまでゲイツはリバイブを使っていない。
リバイブはエネルギーの消費が激しい。現に前回はそれを逆手に取られて数の暴力に押されて敗れるという、なんとも不甲斐ない結果となっていた。
それ故に、ゲイツは心のどこかでゲイツリバイブになる事に恐怖心を抱いている
「(俺は... リバイブの力でこいつを破れるか...?)」
と その時だった。
「待たせたな。」
声の主はリュウト。遅れながらもゲイツがアナザーウィザードに敗れる前に無事に到着した
「仮面ライダー...ジオウ!」
「カラス、お前は... 辛島進か?」
ずっと聞きたかった事をリュウトはアナザーウィザードの変身者であるカラスへと問いかけた
「お前は動画でこう言っていた、 『私が君の正体を知っているように、君も私の正体を知っているはずだ』って。 あれから色々考えたけど、その言葉に該当しそうなのが辛島進だけだった。」
「そうか... 私の見込み通り、君は答えに辿り着いたか」
「アンタは命の恩人だ。事故で昏睡状態になった俺を助けてくれた、なのになぜ!」
リュウトの脳裏にこれまでアナザーウィザードが行ってきただろう連続変死体の事件が過ぎった。
母である由紀からは辛島進の人柄を聞いている、自分の息子も俺と同じような境遇に合ったらしい彼は、俺を救うべく尽力してくれた。そんな彼がなぜあんな事を。
「それは...」
「それは、そいつが君が知ってる辛島進じゃないからだ。」
カラスの発言を遮るように、1人の青年が近づきながらそう語る。
腰にはベルトが巻かれ、それを見た瞬間に理解した
彼は... 仮面ライダーウィザード!
「お前は誰だ?」
青年を第3勢力と疑うゲイツは警戒しながら問いかける
「俺は操真晴人、仮面ライダーウィザード 久しぶりだな、カラス。って言っても今のお前は俺を知らないか」
『シャバドゥビタッチヘンシーン シャバドゥビタッチヘンシーン』
『フレイム! ヒー!ヒー!ヒーヒーヒー!』
ベルトへとリングを翳した晴人を魔法陣が呑み込むと、彼は仮面ライダーウィザードへと変身した。
「ウィザードにジオウにゲイツ... 相手が誰だろうが関係ない!」
『コピー!』
次の瞬間、アナザーウィザードは三体に分身。それぞれがアナザーウィザードを相手取る事になった
「行くぞジオウ」
「ああ!」
「さぁ、ショータイムだ」
「「「 こい!仮面ライダーァ! 」」」
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ジオウが戦っているのは本体のアナザーウィザード
次々と放たれる攻撃を躱しながら、ジカンギレードで彼の胴体を切りつける。
とはいえ厄介な相手... 当たったかと思えばリキッドによって液体状になりながらジオウを翻弄させ、混乱している間を突いてジオウへとダメージを与える
流石に液体状する相手はこれまでに戦ったことはなく、対処が思いつかない
ならば力で押す。 俺はジオウllウォッチを起動させ、ジオウllへと姿を変えると、未来視で次にアナザーウィザードが何処から液体状から固体に戻って攻撃を仕掛けて来るか読む
...ここだ!
次の攻撃が背後から来る事を未来視で読んだ俺は、振り向き様にジカンギレードとサイキョーギレードを合わせた最強武器 サイキョージカンギレードの一撃を叩き込む
サイキョージカンギレードの力を込めた一振りは見事命中。ようやくアナザーウィザードの胴体に当たった感覚を感じ、攻撃の手を緩めずに一振り、また一振りと重い一撃を叩き込んだ。
ウィザードとゲイツもタイミングを掴んだようで分身体を追い詰めている。そもそも分身体自体には本体程の強さはないらしく、一定のダメージを与えた所で、分身体は消滅した。
残すは本体。 ジオウllによる追撃によるダメージと魔法を乱用した事によるエネルギー消費によって、先程に比べてアナザーウィザードの動きに隙が生まれ始めた。
この期を逃す訳にはいかない。
3人は疲弊するアナザーウィザードへと必殺技の構えに入る。
『チョーイイネ! キックストライク!』
『フィニッシュタイム! トゥワイス!タイムブレーイク! タイムバースト!』
3人の放つキックはアナザーウィザードへと命中。
既に疲弊していた事、そしてアナザーに対してオリジナルの力をぶつけた事。この2点が功を奏して、ついにアナザーウィザードを破った。
変身が解け、アナザーウィザードからスーツ姿の中年男性へとその身を変えるカラス。
リュウトの思った通り、その見た目はニュースで見た辛島進の顔と同じだった。
「アンタの負けだ。辛島さん。」
アナザーウィザードウォッチは変身が解けたと同時に砕け散った もう彼が変身する手立てはない。
リュウトはふと、先程操真晴人が言っていた台詞を思い出す。
『君の知っている辛島進じゃないからだ』
どういう事だろうか、彼は紛れもなく辛島進と同じ顔をしている。
頭を悩ませるリュウトの元へと アイツ がやってきた
「この男は確かに辛島進だよ 我が魔王。」
「ウォズ!お前どこに!?」
相変わらず神出鬼没だ。今更出ていても遅い気がするが...
「正真正銘彼は辛島進、だが君が知る辛島進としての記憶はない。 アーマは目的の為にムネモシュネの機能を使う必要があった。 だが彼は協力を拒んだ。だから、"別世界の辛島進"の記憶を彼へと移した」
「別世界...?」
「仮面ライダーウィザードが戦っていたこことは別の世界で、彼は自らをカラスと名乗る男と戦った。ムネモシュネを悪用してライダーへと偽の記憶を刷り込んで、自らの手駒に。恐らくアーマはその事象を何らかで知ったんだろう。 その再現をこの世界で行った、って感じでどうだい?」
ウォズは視線を操真晴人へ移し、ムネモシュネの説明があってるかを目で確認する
「...まぁ大体あってる。」
とはいえこれならアーマの動きに辻褄が合う。
ウォズが過去に言っていた通りなら、アーマの狙いは全てのライダーの力が詰まったグランドジオウウォッチを手に入れて自らの手駒にすることだ。
この世界に仮面ライダーは存在しなかった。だがムネモシュネを介して仮面ライダー存在を知ったアーマはどうにかしてこの世界にライダーが居たように書き換えた。
となれば...
「仮面ライダーがこの世界に生まれたのは...」
「ああ、恐らく君の記憶に存在した虚構としての仮面ライダーをアーマが具現化させた と考えた方が早いだろう。現にそれが可能になる力を私は見たことがある」
こことは別世界でウォズは見た。世界を書き換える力を持つ最強のアナザーウォッチを。同時に脳裏には加古川飛流の顔が過ぎる。
「まーよくわかんないけど、これで一件落着って事だろ? それで...お前に渡さないといけないものがある」
操真晴人はゲイツのウォッチホルダーについていたブランクウォッチを奪い取ると、自らのウィザードの力を送り、ウィザードウォッチを完成させる。
「!?」
リュウトは操真晴人の想定外の行動に固まった。
これまで気づいていたらウォッチを持っていた事や、リュウトやゲイツ自身がブランクウォッチを渡して力を継承した事はあったが、自らブランクウォッチを奪い取ってライドウォッチを渡してくるパターンはこれが初だ。
「この世界にとってジオウ、君が最後の希望だ」
操真晴人はニコニコしながらリュウトへとウィザードウォッチを握らせる
「あ、ありがとうございます... 」
こうして残す2つの力の1つ、ウィザードウォッチを継承。
ついに残すウォッチはあと1つ...!
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アナザーウィザード撃破から数日後。
自分の部屋のベッドで横になるリュウトは、これまでにない険しい顔で考え事をしていた。
それまで虚構の存在だったライダーが、この世界で実在する原因に自らが関わっていたとは思いもしなかった。
「5歳より前の記憶が無いのはそれだけじゃないよな...」
記憶を失ったのには、アーマが自らの記憶を利用したからだけでは無い。
もう1つ、理由があると考えている。 だがそれを今から確かめるべきかをずっと頭を悩ませ考えている。
いずれこうなる運命だったかもしれない。
リュウトが決心をすると同時に夕飯の用意ができたらしく、母親に名前を呼ばれた
重々しく部屋から出たリュウト。いつになく険しい表情を浮かべたまま食卓につくリュウトを母親と父親は心配そうに見つめる。
「リュウト、どうした?何かあったか?」
俺は心配する父からの問いかけに口篭る
言い出したいのに言い出せない。
先程の決心を思い出し、静寂を切って口を開いた
「俺さ、父さんと母さんの本当の子供じゃないよね」
続く。
アナザーウィザードを破った先に待っていた真実に苦しめられるリュウト。彼が戦意を失う裏で、ついに最後のアナザーライダー アナザーブレイドがスウォルツやアーマ、ジオウ達を相手取り、世界リセットのために動き出す。
次回、「崩壊へのカウントダウン2020」