魔法科高校の劣等生 Missing_number   作:イオハ

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長らくお待たせしました。

やっと書きあがりました。
ですが、内容が薄々かもしれないのでそのあたりはご容赦ください……。

何処を略し、どこを細かくするかの調整ができていない次第でございます……。


それでも頑張っていますので優しく見守っていただけると感謝で指が進みます。


Missing No.1-6 風紀にて災難

 黙々と片づけをしていると、生徒会室との直通階段から真由美が降りてきた。

 

「……ここ、風紀委員会本部よね?」

「いきなりご挨拶だな。」

「だって、リンちゃんにあれだけ口酸っぱく言われてたのに片付けなかったじゃない。」

 

 様変わりした風紀委員会本部を見て、目を丸くする真由美に摩利が抗議の言葉を放つ。

 が、真由美にも驚くだけの理由がしっかりとあったようだ。

 

「片付けなかったのじゃない! 片付かなかったんだ!」

「それ、男とか女とか以前に人としてまずいと思いますよ……。」

 

 あまりにもひどい発言に思わず兼がツッコミを入れてしまう。

 

「む。四々舞は目上に対する礼儀がなってないなぁ? これは仕置きが必要か?」

「ほどほどにしなさいよ? この間、剣先輩と沙耶先輩から兼君のことを頼むって言われたばかりでしょう?」

「え、それ初耳なんですけど生徒会長!」

 

 寝耳に水とはまさにこのことである。俺のことをどうして気にかけてくるのかと思ってはいたが、まさか兄と姉が関わっていたのか。

 

「あら、てっきり頼まれたことを知っているのかと思ったわ。」

「知ってるわけないでしょう……。兄さんも姉さんも俺のことを猫可愛がりしてきますが、まさかここまでとは思いませんでしたよ……。」

 

 兼が事故に遭う前の記憶を辿ると、それはもうこれでもかというほど二人に甘やかされていたのだ。

 事故以降は人格が変わったこともあり、それからは過度の甘やかしはほんのりと断り、本当に必要な物だけ頼ったりしていた。

 その結果、必然的に兄達は兼を甘やかす頻度が減り、欲求不満になっていた。

 直接的な甘やかしは減ったが遠回しな甘やかしや根回しは増えたが、その結果の一つがこれだったようだ。

 

「頼まれたときは驚いたわよ? かの有名な問題児の面倒を見て欲しいって言われたのだからね。」

「あの時は、ただのクソガキでしたからねぇ……。」

「そうね。頼むと言われた日以降、あなたの情報を出来るだけたくさん集めたわ。」

「悪ガキの弱みを握ればコントロールは容易いでしょうからねぇ。心中、お察しします。」

 

 真由美が情報を集め始めた当初は噂に違わぬ問題児だったのだが、事故を境に問題行動がほぼなくなっていることにも気づいたのだろう。

 

「とある事をきっかけに四々舞兼という人物の人物像が大きく変わったわね。まるで別人なんじゃないかってくらいに。」

「そんな大袈裟な……。確かに事故に遭ってからは問題行動をあまり起こしてはいませんが。」

 

 事故に遭う前の兼の人となりは、まさに『人でなし』という表現がぴったりなほど酷いものだった。

 その内容を語りだしたらきりがないので割愛するが……。

 

「ま、そんなことがあって最初は警戒してたけど今はその必要はないと判断しているわ」

「それは助かります。」

「でも、剣先輩達に任されていることを止めるわけじゃないから様子を時折見るからね?」

 

 いい笑顔でそう答える真由美。この時兼は、この人達のおもちゃにされるのか……と悟る。

 

「……もしかして、俺が風紀委員入りしたのって。」

「そういう側面もあったが、それだけじゃ風紀委員に入れたりしない。そんなことをしていては職権乱用だからな。」

「あなたの情報を集める過程で身体能力や魔法力に問題がないことは確認済みよ。」

 

 そこまで調べられていたのか。恐るべし七草ネットワーク。

 

「その上で質問なのだけど。どうして二科生なの?」

「どうして……とは?」

「さっきも言ったけど、兼君のことを調べた結論として貴方の学力と魔法力を考えると一科生でも上位に入れないわけがないのよ。」

 

 相手の魔法のことを聞くことは本来マナー違反であるのだが、兼のことを前々から調べていた真由美には彼が二科生という事実が納得できていないのだろう。

 兼はどう誤魔化そうか考える。

 

「……七草先輩が俺の実力を過大評価していたとは思わなかったのですか?」

「考えなかったわけじゃないけど……私が調べた情報が間違っていない限り、どう低く見積もっても一科生入りは確実なのよね。」

「言っちゃなんですが、それこそ情報に誤りがあった可能性は?」

「うーん……。 剣先輩と沙耶先輩から仕入れた情報だからそれはないと思うのだけれど……。」

「兄さんと姉さん……。」

 

 兼のことが好きすぎるからって情報そんなにホイホイ渡さないで欲しい……。

 やばい情報は渡してないだろうけど、俺のプライバシーというものが皆無だよ……。

 

「……あまり大きな声で言えるようなことじゃないのでオフレコで頼みますよ?」

「えぇ、わかったわ。」

「では、お耳を拝借して……。」

 

 本当のことは言えるわけない。もしもの時に用意していたもう一つの理由を真由美に話すことにする。

 摩利に聞かせても問題は無いが、達也に聞かれるのは後ろめたく感じる。

 摩利だけを除け者にはできないだろうから理由を聞かせるのは真由美だけにする。

 

(それに、もしこの情報が深雪さんの耳に入ろうものなら不興を買いかねない。教える人間は少ないに越したことはない。)

 

 というわけで、真由美の耳元に手を当て他の二人に聞こえないようにする。

 元々この手の話はデリケートな内容なだけに摩利も何も言ってこない。

 やけに上機嫌な真由美。だが、申し訳ないことに兼が二科生であることに特別な理由はない。

 

「それで、どういう理由なのかしら?」

「一言で行ってしまえば面倒だった……ですかね」

「め、面倒だった?」

「考えてもみてください。俺は次男坊で当主になるわけでもない。だからといって何もしないのでは家の名に傷がつく。」

「だから二科生として入学して、魔法師としての才能はあるけど並程度として、程よく生活しようってこと?」

 

 真由美が複雑な表情をしつつ察する。

 なまじ優秀だと家名のこともあり、政治的なものに関わる機会が出てくるだろう。

 それを防ぐために敢えて自分の能力を低く誤魔化していると。

 理解が速いのは、真由美が同じことを考えたことがあるからかもしれない。

 

「まぁ、(おおよ)そそれで合っています。後は悪目立ちを防ぐつもりでしたが……」

「風紀委員になった以上、これ以上に無いくらい目立つわねぇ。」

「俺の努力は一体……手を抜いて尚且つ二科生として合格するのは地味に大変だったんですよ。」

 

 常に全力で生きていてはガス欠を起こしてしまう。程よく手を抜いて世渡り上手である方が世の中生きやすいのだ。

 

「父はこのことを了承しているので俺の独断ではありませんからね?」

「まぁ、私よりも兼君のお父様のほうが貴方の力量を把握しているでしょうからそれは当然よね。」

「そういうわけです。このことは誰にも話さないでくださいよ? 話したところで意味はあまりないでしょうけども。」

「わかったわ。」

 

 実力を偽って順位を上げている場合は問題だが、手を抜いて順位を下げている場合は基本的にメリットはない。

 仮に誰かに話したところでそこまで深刻な問題にはなりえない。

 兼は真由美の耳元から離れ、達也と摩利の様子を確認する。

 二人は本部の整頓を終え、書類の電子化を行っている最中であった。実際は達也が書類の電子化をして摩利はそれを眺めているだけだが。

 

「そういえば、七草先輩はどうしてここに来たのですか?」

「様子を見に来たというのもあるけど、もうすぐ生徒会室を閉めるからそれを伝えに来たの。」

「了解です。二人にもそう伝えておきます。」

 

 そう言って生徒会室に戻っていく真由美。

 達也たちの方を確認すると、向こうも一段落終わり切り上げようとしているようだ。

 丁度よかったので真由美からの言伝を話す。

 

「わかった。それならここももう閉めてしまおう。」

 

 そう言って端末の電源を切り生徒会室のほうに戻る準備をしていた時、階段側の扉ではなく廊下側の扉が開き、二人の学生が入ってきた。

 風紀委員の腕章をしているのをしていることから、巡回から帰ってきたのだろう。

 

「……もしかしてこの部屋、姐さんが片付けたんで?」

「姐さんって言うな鋼太郎! お前の脳みそは飾り物か!」

 

 摩利が丸めたノートで姐さん呼ばわりした生徒の頭を叩く。

 それほど痛がっている様子ではないが、鋼太郎と呼ばれた男子生徒が頭を押さえて縮こまっている。

 

「そんなにポンポン叩かないでくださいよ委員長。……ところで彼らは? 新入りですかい?」

「こいつらはお前の言う通り新入りだ。生徒会枠でうちに来る一年E組の司波達也と風紀委員長選任枠で私が連れてきた一年E組の四々舞兼だ。」 

 

 男子生徒たちは二人とも驚きと疑問を持ったような表情をしている。

 無理もない。生徒会の推薦と摩利の推薦が二人とも二科生なのだから当然だろう。

 

「へぇ、二人とも二科生ですか……。」

「そんな了見だと足下をすくわれるぞ? ここだけの話だが、さっき服部が足下をすくわれたばかりだ。」

「なんと! あの入学以来負け知らずの服部が?」

 

 こいつは逸材だ!と、歓迎される達也。

 鋼太郎と呼ばれた男子生徒が兼に歩み寄ってくる。そして耳打ちをするように顔を近づけてくる。

 

「四々舞って言ったか? 姐さんが引っ張ってきたって段階で疑っちゃいないが……その、頑張れよ。」

 

 歓迎はされているものの、どういうわけか言葉の端々から同情の色が見え隠れしている。

 

「は、はぁ……。それは一体どういう?」

 

 疑問を解消しようと質問を投げかけるが――

 

「こらこらお前たち、入学したての一年坊たちを可愛がりたくなるのもわかるが時間が時間だ。親睦を深めるのはまた今度にしろ。」

「おっと、時間切れみたいだ。まぁ、そのうち分かる。」

 

 摩利が割って入った為、納得のいく答えを得られなかった。

 そのあとお互いに改めて自己紹介をし、解散となった。

 

 

 

 

   ◇   ◇   ◇

 

 

 

 

 解散し、生徒会室の方に戻るときに兼は達也を呼び止める。

 直ぐに行くと伝えたので摩利は先に生徒会室に戻った。

 

「どうした、何か聞きたいことでもあるのか?」

「いや……聞きたいことというより、忠告?」

 

 そう。本来なら真由美は兼と会話するのではなく達也と会話する。

 その時に達也は真由美の本性、というか素の状態を知ることになって彼女との接し方を確立するわけだが……。

 

(今回は俺が会話したことによって達也は真由美のことを深く知らないままになってしまっているからな。フォローしないと。)

 

 勿論、それが原因でとんでもないことになるとは限らない。だが、知っておくことに越したことはない。

 

「忠告? 一体何の?」

「七草先輩についてだ。」

 

 達也の表情が心なしか険しくなった気がした。互いに四葉の縁者だと知っているからこその警戒か。

 だが、兼が話そうとしていることはそんな面倒な話じゃない。そこまで真面目腐った雰囲気を出されても困る。

 

「あー……忠告っつっても性格の話だぜ? あの人は普段は猫を被ってるから互いに気を付けようぜってことを言いたかっただけだよ。」

「……なんだ、そんなことか。 人は常に本心でいるわけじゃないからそんなものは当たり前だ。 ましてや彼女は十氏族だ。腹芸を身に着けていない方があり得ない話だろう?」

 

 御尤もである。ただ、兼が言いたかったのはそういうことじゃない。

 

「えーっと……そうじゃなくてだな。俺が言いたかったのは、あの人が素顔を見せるときは相手を認めている時だけらしい。」

「今回はお前にその素顔を見せてきたから俺にも見せてくる可能性があるって言いたいのか?」

「そう! それを言いたかったんだよ。そんで、互いにおもちゃにされないように頑張ろうぜってな。」

 

 言いたいことは言い切ったとすっきりしたような表情で階段を上っていく兼。

 達也は言葉を返さず一緒に階段を上る。

 

(兼はそんなことを言うためだけに俺を引き留めたのか? 四葉の表舞台専門の実働部隊『四々舞』の子息が?)

 

 あまりにも単純なことを忠告してきたから何か裏があるのではないかと勘繰ってしまう達也。

 しかし、わからないことを考えても仕方がない。達也は忠告のことを一旦頭の隅に置くことにした。

 兼本人は、真由美のお茶目な性格に注意しとこうぜ。とお節介を焼いただけである。

 互いの意識の差からこうもすれ違いが起きるとは兼も思いもしないだろう。

 この一件で兼がちょっとした災難に遭うわけだが達也も、ましてや兼本人も知る由もなかった。

 




読んでいただきありがとうございます。

UA、お気に入り、励みになっています。

まだタグの『残酷な表現』にたどり着けていないのが心残りですが、もう少ししたら出てくるはずですのでご容赦ください。

あと、恋愛要素ですが。出せたらいいなーとは思っています。誰かとくっつくとかも全く決まってすらいない状態ですが……。



次の更新は翌月15日を目指します。
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