転生者vsSCP   作:タサオカ/tasaoka1

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+2 浄罪の火

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対象:機動部隊い-34("未必の介錯")隊長 █氏

付記:█氏はインシデント193267-2発生時、終了計画・第██号に伴い近隣のサイト81██より出動中でした。

-<再生開始>

 

「事態は極めて急速に進行していた、エージェントや特事課の努力により事件の発生から23時間後には対象の特定に成功していたが、問題であったのは終了措置への是非だ」

 

「対象が未だにどのような存在であるかが断定できなかった事が争点になっていた、未知のオブジェクトの影響下にある一般人の可能性も存在していた、あの破壊執着者共が取りがちな手段を安易に用いてしまえば、対象の異常性が激化する可能性があったのは確かだ」

 

「対象が16歳だと判明した事は終了措置に対する大きな肯定条件になっていた、若く、それでいてある程度の知恵が回るようになってくる年頃だ、対象が現実改変者であった場合、それは措置を行使する我々にとって有害に働くファクターにしかならない、思考が老人ほど凝り固まってなく、赤ん坊ほど物を知らないわけではないからだ」

 

「そして対象はすでに不死性を発揮していた、どんな奇跡が起ころうともただの高校一年生にすぎない16歳の少年が、時速80km以上で突進してきた4tの物体の衝撃に耐えてはならない、致死量以上の血液を失っているにも関わらず次の日には笑顔を浮かべ学校に通うような事は起きてはならない、これがどれだけ厄介なことかわかるだろうか? 死んでいなければならない人間が生きているだけで、この世界に普遍する常識というものは容易く崩壊する」

 

「急がねば、ならなかった、対象は自らの異常性に気づき始めていたはずだ、幸いなことに周りに言いふらしているわけではなかったようだが、いやだからこそ自らの能力を個人的利益に還元し始めるまでそう時間はかからなかっただろう、人類への脅威となって被害を齎す前に終了しなければならなかった、予防措置のためならば子供を殺すことすら許容せねばならない、それが我々の仕事だ」

 

「もちろん厳重に監視するという手段もあったかもしれない、大抵の場合はそんなことは不可能だ、現実改変者は人類、文明、財団に対する明確な脅威でしかない、想うだけで人間を裏返し、内臓を露出させ、壁へと埋没させ、サイコロ状に細断する、異常を当たり前のように行使し、好き勝手に振る舞う、いわば財団の理念に真っ向から対立する天敵だと言っていい」

 

「故に終了措置の決行は全くの正当であったと主張する」

 

「だが我々は……それでも遅すぎたのだ」

 

<再生終了>

 

 

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PoI-████β班、菅沼研究員によるオリエンテーション。

 

こんにちは。

それでは皆さん、お手元にある資料を開いてください。

なるべくリラックスしながら、そこにあるワッフルでも食べてくださって結構です。

あ、ごく普通のワッフルですよ、何の遠慮もいりません。

うちのサイト自慢のデザートでしてね。

いえ幻覚剤が入ってたり、突然爆発したりしませんよ。安心してください。

糖分の補給とでも思っていただいても結構です、悩ましい問題ですからね。

でも美味しいですよ?

 

本題に入りましょう、この場において私の言いたいことは一つです。

PoI-████は現実改変者であるということです。

何をわかりきったことを、と思いますよね。

まず、こちらをご覧ください。

もともとこの地域はある日を境にヒューム値が極微量な低下を示していました。

我々はこれを誤差だと捉えていましたね。

当時の報告書を見ても、よくある許容範囲内の現実性変動だと捉えられていました。

みなさんもこの程度の数値の変動ならばよくある現象として済ましてしまうでしょう。

この判断を下した方々に責任はございません、が。

実際は違いました、我々はこの予兆とも言えるべき現象を見落としていたのです。

資料をお読みになっていただけたならわかりますね。

このある日というのはPoI-████が出生したとされる日と同一なのです。

病院の出生記録からはそう読み取ることが出来ます。

改変されていなければの話ですが。

我々がヒューム値を正確に測定できる範囲、回数などは限られていますが、今までの観測結果から鑑みるにこれはPoI-████の出生に端を発したものだと断言できます。

その証拠に、現段階でこの地域のヒューム値はPoI-████-2周辺を除いて、PoI-████出生以前と同じ値で安定しています。

PoI-████は自らの周囲のヒューム値を低下させていたと言えるでしょう。

それがインシデント-1により活性化し、制御され、現在に至ると。

つまり現実改変者としての振る舞い方を身に着けてしまったということになります。

インシデント-1発生以前のPoI-████が自身の現実改変能力に気づいていたかは怪しい所ですね。

彼ら、現実改変者が自らの能力に全く自覚がないまま現実を改変してしまうという例は決して少なくありません。

我々が普段から接触している異常な事柄(SCiP)なんて知らない一般人からすれば、自分が望んだ通りに改変してしまう現実なんて想像もつかないでしょう。

この手の研究をしているとどれだけ我々が普段から接している現実という物が、頼りないものか不安になりますね。

PoI-████がヒューム値を無意識に操作して、どういった現実を改変していたかは未だ不明です。

が、対象が自覚を持ってその能力を行使していたのなら、インシデント-1は発生していなかったでしょうね。

何しろ、それが決定打となって彼が今まで送ってきた人生と呼べるものは破壊されたのですから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

事件記録193267-2

 

SCP-████ » 事件記録193267-2

 

日付: 20██年██月█日██時

 

場所: 日本国██県███町██-██-██宅

 

概要:██時██分、対象(SCP-████)が帰宅し、監視中であった██宅より原因不明の火災が発生しました。非常事態に備え周辺で待機中であったエージェントが撮影した映像記録、及び上空からの監視を行っていた財団ドローンからは当時の██宅周辺環境では発生し得ない異常な燃焼速度が確認されました。

 

インシデント発生直後、██宅を中心とする約500m範囲のHm値は当地域の平均値を大きく下回る0.██Hmを記録し、これはSCP-████による現実改変が起因だと推測されています。

またその規模の大きさから複数の現実酔いの報告、舗装路の破損、建物の改変、付近の電線、水道管が断裂を起こしたため、日本国内一般緊急出動プロトコル、カバーストーリー『容疑者逃亡』が適用され一時、周辺区域を現地警察が封鎖しました。

 

██宅は大規模な現実改変現象により侵入が妨げられ、現場周辺に待機中であったエージェントは現場より逃走するSCP-████の確保には失敗しました。また財団ドローンは対象の姿を原因不明の現象により捕捉することができませんでした。この事から当時、SCP-████はPOI-████と認定され広域捜索対象となり、日本国内の全フィールドエージェント、警視庁公安部特事課への情報の伝達が開始されました。

 

後の██宅跡への探査によって、二名の遺体が新たに発見されました。

これらの遺体には燃焼による損傷が一切存在せず、解剖の結果、両遺体は死後十数年が経過していると見られ、歯の治療痕からSCP-████の戸籍上の両親にあたる████氏、████氏であったことが判明しました。

死因は二名とも頸部圧迫による縊死であり、その死因にSCP-████が関与しているかは現在調査中です。




出典元
SCP財団日本支部
http://ja.scp-wiki.net/

誤字報告感謝
大変長らくお待たせいたしました。

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