デュノアとボーデヴィッヒが転入して数日が経ったある日の事。1組は何時もと変わらない風景が広がっていた。
「モグモグ イッチー、このお菓子美味しいねぇ」
「う、うん。餡と餅、それにイチゴの風味がバランスがいいね」
「確かにそうだね」
「うんうん」
一夏と本音、そして鷹月達はイチゴ大福を食べながらお茶を飲む。
【喜んでいただき大変嬉しいです! 餡や餅はご近所の餅屋から。イチゴは何時も御贔屓させてもらっている八百屋さんからいただきました。無論は調理したのは私です( ´∀` )】
プラカードでそう見せながらメサは持っていた急須で一夏の湯呑にお茶を注ぐ。
4人、特に一夏と本音ののほほんとした雰囲気にほんわかしながら見守る生徒達。
だが、そんな生徒達とは違い鋭い視線を送る2人の生徒が居た。
毎度お馴染みの自称幼馴染の箒と、チョロ過ぎお嬢様オルコットであった。
(キイイイィ!! どうしてあの3人は何時も一夏さんに簡単に近づけると言うのですの! わたくしが近付こうとしたらあのメサさんがフライパン片手に【坊ちゃまに近付くな、雌豚 凸( ̄ヘ ̄)】って、見せられて追い返されたというのに!)
(クソッ! なんであいつ等は何時も何時も一夏の傍に居るんだ! 其処に居ていいのは私だけだと言うのに! あのメサとか言う奴、【近付いたら千冬様を呼ぶぞ?(#・∀・)】と見せられて追い返されたというのに!)
ギリッと歯ぎしりをする箒と、ハンカチを噛み締めるオルコット。
すると
「ん? イッチー、お口に一杯粉ついてるよぉ」
「え?」
本音からの指摘に一夏は思わず手で口を触ろうとする。
「あぁ、手で触ると付くよぉ。ちょっと待ってねぇ」
そう言いながら本音はポケットからハンカチを取り出し一夏の口周りについている粉をとる。
「はい、これで良いよぉ」
「あ、ありがとう」
【本音様、ありがとうございます。(人∀`●)アリガトォ♪】
照れた表情でお礼を言う一夏と、エへへへ。と嬉しそうな顔をする本音。その光景に生徒達は
(((はぁあぁぁああぁ、癒やされるぅ)))
と心が浄化されるような気分になっていた。するとその光景を見て我慢が出来なくなったのか、セシリアが突然机に手を叩きつけながら立ち上がる。
「もう、我慢できません! 布仏さん、貴方に決闘を申し込みますわ!」
突然の宣言にクラスメイト達は呆けた顔を浮かべていた。
「どうしたのよ、オルコットさん。急に決闘だなんて」
「申したくもなりますわ! 皆さんはあの光景を見て羨まじゃなくて、可笑しいと思いませんの! クラスの代表と副代表があんな風にしているのが!」
「「「「いや、別に。むしろ癒されるからOK」」」」
セシリアの言葉に対し生徒達は間髪入れずに全然問題無しと答える。うぐぐぐ。と唸るセシリア。すると
「廊下にまで聞こえる程ギャーギャーと喚くな、オルコット」
そう言いながら入って来たのは千冬と真耶であった。
「それでオルコット。先ほどの決闘の件だが、許可してやろう。山田先生、確か今日第2アリーナが空いているよな?」
「えっと、はい。セキュリティー強化と設備の修繕が終わっているので使用は可能です」
「なら使用出来る様予約を取っておいてくれ」
分かりました。と言い真耶はタブレット端末を取り出してアリーナの予約を取る。
「さて、布仏」
「はい、何ですかぁ?」
「奴は決闘を望んでいる。“全力”でやれ。出し惜しみは無しだ」
千冬の言葉に本音は一瞬疑問を浮かべる様な表情を浮かべるも、その意味を理解したのかニパーと笑みを浮かべる。
「分かりましたぁ!“全力”でいきまぁす!」
そう言いながら両手を上げる本音。
「うむ。では、セシリアが勝ったら副代表。布仏が勝ったらそのままで。試合は今日の放課後に行う。では全員席に「待って下さい、千冬さ」フンッ!」
説明を終え席に着くよう指示する千冬に声を上げる箒。だが毎度の如く呼び方を間違えた為に出席簿を投げつけられ、痛みから蹲る。
「織斑先生だ、馬鹿者。それでなんだ?」
「わ、私も参加し「却下だ」ど、どうしてですか!?」
「当たり前だ。お前は織斑に接近を禁止している。そんな奴を決闘に参加させる訳無いだろうが」
そう睨みながら言う千冬。千冬に睨まれた箒は歯を噛み締めながら悔しがることしか出来なかった。
そしてそれから時間が経ち放課後。
第2アリーナにて1組の生徒達や何処からか聞いたのか他のクラスの生徒達も観客席に座って見学していた。
そんな中一夏は本音が居るピットに居た。
「本音さん、それでどのスーツで行くの?」
「セッシーは遠距離戦が得意だから、遠距離と近距離が得意な『カリス』を使うよぉ」
「そっかぁ。その、頑張ってください」
「うん、任せてぇ!」
一夏の声援を受けながら本音はイージスベルトを腰に巻き、ライダーパスを右手に持つ。
『それでは試合を開始しますので、選手はアリーナに出て下さい』
そうアナウンスが流れると、本音は腰のカリスのボタンを押す。
「変身!」
【変身 カリス!】
カリスに変身した本音はそのままアリーナへと続く扉を抜け外へと出る。
「ちょっ、ちょっと布仏さん!? 貴女のスーツは白黒の物ではありませんでしたのっ?」
ピットから出てきたカリスの姿にセシリアは驚きの表情を浮かべながら叫んでいると、放送が入る。
『布仏の持っているベルトはPEC社特製の物で、4つのスーツを内蔵した特殊なベルトだ』
「そ、そんな…。そ、それでは此方が不利ではありませんか!」
『馬鹿者。布仏のベルトはISではない。それに貴様は決闘を申し込んだんだろうが。そんな細かい事でいちいち喚くな』
千冬の説教にぐうの音も出なくなり、セシリアは仕方なく目の前の本音に意識をしっかり向ける。
『ではこれより試合を開始します。カウント! 3…2…1…試合開始!』
真耶の試合開始の合図と共にセシリアは空高く上がりライフルを構える。
「一瞬で勝負を決めますわ!」
そう叫びながらセシリアは狙いを素早く本音に向け撃ち放つ。
本音はその攻撃に慌てることなく素早くカードホルダーからハートの8が書かれたカードを素早くカリスアローに付けたラウザーに通す。
【リフレクト】
とラウザーから聞こえると同時にセシリアが放ったビームが命中する。
セシリアは内心やった!と思い喜んでいた。だが白煙の中から突然自分が放ったビームが帰ってきた瞬間、我が目を疑いながら回避軌道をとる。
(どうしてですの!? 何故私のビームが帰って来たというのですの!)
セシリアはそう内心驚きでいっぱいであった。
本音がカードホルダーから出したハートの8のカード【リフレクトモス】は、自身の体にシールドを纏いあらゆる攻撃を防ぐ。更にこのカードの特徴として、受けた攻撃をそのまま相手に向かって返す効果も持っているのだ。
そんな事も知らないセシリアは驚きながらもビームを放つが、攻撃は全て跳ね返されてしまう。
その間にも本音は次のカードを取り出していた。
(えっとぉ、確かハートの5と6で必殺技が出せるんだっけぇ)
本音は渡された説明書に書かれていた必殺技の出し方を思い出しながら5と6のカードを取り出してラウザーに通す。
【ドリルシ】
【トルネード】
【スピニングアタック!】
ラウザーからそう聞こえると同時に本音の体は突如風を纏い始め空高く上がり始める。
突然の事にセシリアや観客席に居た生徒達は驚きの目で見つめ、管制室に居た真耶も驚いた表情を浮かべる。
「の、布仏さんが飛びました!?」
「見たら分かる。恐らく終わりにさせるんだろう」
後ろに居た千冬がそう言いニンマリと笑みを浮かべる。
(オルコット、お前は自分の腕に過信し過ぎだ。あの
その頃空高く舞い上がった本音は、終わらせるべくセシリアに狙いをつけていた。
「そろそろ終わらせるよぉ!」
そう叫びながら本音は蹴りの体勢に入る。
「そう簡単に終わらせませんわ!」
セシリアもそう叫びながらビットを展開して本音に向かって放つも、攻撃は全て竜巻によって遮られる。そして
「ライダーーー、キィック!!」
本音はそう叫び声を上げて竜巻を纏いながらきりもみ状態でセシリアに向かって蹴りを放つ。セシリアは避けようともせずビームで攻撃し続けるも、すべて弾かれそのままキックを受け大きく後方に飛んでいく。
「ぐほぉっ!!????!!」
大きく飛んだセシリアはそのまま後方にあった壁に激突し、ISを強制解除され気を失ってしまう。
『其処まで! オルコットさんが戦闘不可となった為、勝者は布仏さんです!』
そうアナウンスが流れると、観客席から盛大な拍手が送られた。
本音はイェーイ!とブイブイと見せた後ピットへと戻って行った。
こうして副代表を賭けた決闘は幕を閉じた。
次回予告
副代表を掛けた決闘から数日後、一夏は何時もお昼を一緒にとってくれる本音達に少しでもお礼が返せたらなと、家庭科室で料理を作り始める。
その頃アリーナでは鈴とセシリア、そしてボーデヴィッヒが喧嘩をしていた。
次回
仲裁~よし、全員ぶちのめすか~